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サッカーのフォーメーション

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サッカーのフォーメーション(Formation)とは、戦術の基本となる選手の配置を示す。11人全員の配置隊形を示すこともあれば、特定の局面における数人の配置隊形を示すこともある。

システムという言葉も同じ意味で用いられる。両者は日本では同じ意味として用いられることが多いが、ヨーロッパでは異なる概念として用いられることもある。システムはどのように選手を動かすかという戦術で、実際に配置として現れたものをフォーメーションとして区別する。

無論、例えば同じ4-4-2であってもチーム毎にその内容は全く異なる。このように単にフォーメーションの数字だけを並べることには意味は無い。

以下では便宜上「フォーメーション」に用語を統一する。

概要

サッカーのポジションは大まかにゴールキーパー(GK)、ディフェンダー(DF、バックスとも言う)、ミッドフィールダー(MF、ハーフとも言う)、フォワード(FW、トップとも言う)の4種類に分類される。ルールによってGKは必ず一人置かなければならないが、残りのフィールドプレーヤー10人の選手をどう配置するかは自由であり、それがサッカーの醍醐味の一つで、監督の腕の見せ所の一つである。例えばDFが多くなれば守備的なサッカーになるし、FWが多くなれば攻撃的なサッカーになる。

ただ、FWを増やせば点が取れるかといえば、MFやDFが少ない→ボールの支配力が下がる→得点力が落ちる、となるなど、単純ではない。フォーメーション同士の相性や、プレーする選手の適性や理解度にも左右され、「最強のフォーメーション」は存在しない。

代表チームがどのフォーメーションを採用するかには、その国の国民性や文化、サッカーの戦術理解度が反映される。

フォーメーションの呼称

フォーメーションには、「4-4-2」や「3-5-2」といった数字の羅列が使用される。これは、DF-MF-FWの順番でポジションの人数を表したものである。すなわち「4-4-2」だと、DF4人、MF4人、FW2人という意味である。「3-5-2」ではDF3人、MF5人、FW2人という意味になる。GKが含まれないのはルールによって必ず1人置くことが決まっているためだが、ヨーロッパでは1-4-4-2のようにGKを含め表記する。

「4-2-3-1」や「4-3-1-2」と表記される場合もある。MFを守備的MFと攻撃的MFに分けて表記しているもので、「4-3-1-2」であればDF4人、守備的MF3人、攻撃的MF1人、FW2人という意味である。

3バックや4バックという表記は、DFの人数のみを表したものである。DFの数はフォーメーションを考える上での基本で、守備だけでなく攻撃の考え方も決まるため、フォーメーションの分類方法として広く使用されている。

歴史

サッカーとラグビーは、ともに中世のフットボールに起源を持ち、19世紀になって手を用いる事を認めないサッカーと手を用いる事を認めるラグビーに分かれた。そのため、最も初期のサッカーでは現在のオフサイドに相当するルール(アウト・オブ・プレーに関するルール)がラグビーと同じで、ボールより前にいる選手にパスが認められなかった。近代サッカーは19世紀初頭のイングランドが発祥と言われており、現在でもラグビーでは15人の選手全員が横一線になってラインを形成するが、最も原始的なサッカーもこれに類似しており、0-0-10や1-0-9、2-0-8というフォーメーションを形成していた。近代サッカーは19世紀初頭のイングランドが発祥と言われており、当時のサッカーは現在のラグビーのようにボールを前方に向かって蹴り全員でゴールに向かう、あるいはドリブルで進むと言うスタイルだった。

以後、初期のサッカーにおけるフォーメーションは、オフサイド(アウト・オブ・プレー)に関するルールの変更によって大きく影響を受けてきた。20世紀初頭は「3人制オフサイドルール」が採用されており、パスのキックの瞬間に受けての前方のGK+2人がいなければオフサイドとなった。その後「2人制オフサイドルール」に変更され、GK+1人いればオフサイドにならなくなった。このルールの変更によりゴールの数が大幅に減ることとなった。[1]

1866年以降 Vフォーメーション (2-3-5)

Vフォーメーション

1866年にアウト・オブ・プレー規定が見直され、前にいる選手へのパスが認められた。ただし、ゴールラインとパスを受ける選手の間に、相手選手が3人以上いなくてはならなかった。このルールを通称「3人制オフサイド」と呼ぶ。オフサイドラインはかなり高い位置で、DF2人で十分に対応できた。この頃のフォーメーションは2-3-5で、依然としてかなり前がかりで、後ろの選手に比べて前の選手がかなり多かった。上から見るとGK含めV字に見えるため、Vフォーメーションと呼ばれた。

フォーメーションの歴史は、この2-3-5から守備人数が増えていく歴史であり、現在でもイギリスで左右のサイドバック(以下、SB)を単にright back/left back、センターバック(以下、CB)をcentre halfと呼ぶことがあるのは、2-3-5フォーメーションでのポジション名の名残りである。また、この頃はDFを「バックス」、MFを「ハーフ」と呼んだ。

1925年以降 WMフォーメーション (3-2-5)

WMフォーメーション

1925年にオフサイドルールが改正、ゴールラインとパスを受ける選手の間に相手選手が2人いればよいことになった。オフサイドラインは下がり、2人のDFで敵の5人のFWに対応するのが難しくなった。そのため、2-3-5フォーメーションのセンターハーフ(以下、CF)が左右DFの間に入ってディフェンスを務める3-2-5が主流となった。FWの配置がW字、DF・MFがM字に見えるため、WMフォーメーションと呼ばれた。WMフォーメーションのFWは、左から左ウイング-左インナー-CF-右インナー-右ウイングであり、ウイングとCFが最前線に出て、インナーの2人は下がり目というポジショニングとなった。ウイングの上げたセンタリングをCFがはたき、左右のインナーがシュートするのが基本で、下がり目に位置していたインナーが実際には得点を狙うポジションとなった。 DF陣は、前の2人をハーフバック、後ろの3人をフルバックと呼び、両者を総称してバックスと呼んだ。

1930年代初頭にこのWMフォーメーションをいち早く採用したのが、クラブチームではアーセナル、代表チームではヴンダーチームと呼ばれたオーストリア代表だった。1950年代前半にマジック・マジャールと呼ばれて4年間無敗の記録を作り、ヨーロッパを席巻したハンガリー代表のMMフォーメーションもこれを応用した。

WMフォーメーションのフォワード陣形とバックス陣形を入れ替えた、MWフォーメーションも生まれた。

1950年代 4-2-4

4-2-4

ヨーロッパでWMフォーメーションが主流だった1950年代、南米で2-3-5を発展させた4-2-4が生み出された。ゾーンディフェンスとともに生み出されたもので、FW4人、DF4人に加えMF2人という構成だった。WMフォーメーションのFW5人、DF5人に対しMFの2人が攻守を兼ねFW6人、DF6人という数的優位を作り出し、WMフォーメーションを圧倒した。

4-2-4は1958年ワールドカップスウェーデン大会で優勝したブラジル代表に採用され一時代を築いた。この後1970年代にリヌス・ミケルスが世界に轟かせて有名になったトータルフットボールも、この4-2-4或いは4-3-3をベースに進化させた戦術だった。

1960年代 4-3-3

4-3-3

1960年代、4-2-4から変化したもので、FWを1人減らしてMFを1人増やしバランスをとった。以降、20年にわたり4-2-4とともに世界の主流となっていった。

1970年代には、4-3-3からFWをさらに1人減らして4バックの背後に5人目のDFを置き守備重視でカウンターを主体としたスタイルのイタリアのカテナチオや、4バックのうち1人を余らせ攻守にわたってゲームをコントロールする攻撃的なリベロを置くドイツのベッケンバウアーの高い能力を生かしたリベロが生まれた。

1980年代前半 4-4-2

一般的な4-4-2

1980年代以降は、中盤が重要視されMFの人数が増えた。1982年のスペインW杯では黄金のカルテットを擁するブラジルや、シャンパンサッカーと呼ばれたミシェル・プラティニ率いるフランスが4-4-2を採用、4-4-2がフォーメーションの主流となった。4-4-2は現在でも多くのチームに使われ、最もベーシックである。

1980年代後半 3-5-2

一般的な3-5-2

4-4-2で相手の2トップに対しDF4人を置くのは無駄なので、2人をマークして1人をスイーパーとしてあまらせる3バックが生み出される。1984年の欧州選手権でデンマーク代表監督のゼップ・ピオンテックによって生み出された3-5-2は、1986年のメキシコW杯の時にアルゼンチン代表監督のカルロス・ビラルドによって熟成し、それ以降、世界中のクラブや代表チームで3-5-2が採用された。

1980年代後半 4-4-2/4-3-3

80年代の後半にはアリゴ・サッキ率いるACミランが欧州を席巻した。サッキはプレッシングの発明と共にゾーンプレスをチームに導入した。ゾーンはピッチの地域を選手ごとに分担して守る方法であり、ピッチの横幅を担当する人数は、ピッチの広さと人数の関係から4人に収まった。DFラインとMFに4人ずつ並べて4×4の守備ブロックが構成された。残りの2人のフィールドプレーヤーの内一人はFWの位置に置くのでもう一人の置き方によって4-4-2か4-3-3のフォーメーションになった。FWの残り1人をFWに置けば4-4-2に、アンカーに置けば4-3-3に、トップ下に置けば4-2-3-1になった。[2]

1990年代後半 4-3-3

1990年代の後半までは4-4-2と言えばイングランドフットボールの代名詞であり、イングランドの多くのクラブがこのフォーメーションで成功をおさめていた。そして、77年から82年までの6年間はイングランドのクラブがヨーロッパチャンピオンズカップを独占していたように、このころのヨーロッパのサッカーはイングランドのサッカーが中心であった。しかし、'95年のボスマン判決以後はイングランドに国外やヨーロッパ外からの外国人選手の選手が流入するようになり、国内リーグのダイレクトプレー主義は失われていった。当時は南米やイングランド以外のヨーロッパのチームはボールをキープして試合をコントロールするチームが多く、イングランドもその影響を受けるようになっていった。上位のチームが伝統的な4-4-2のフォーメーションをやめて4-3-3を採用し始めると、それにならうしかない下位のチームも4-3-3などのフォーメーションを採用するようになっていった。[3]

2000年代 4-5-1

4-2-3-1

そして現在は、新たな方向性として4-3-3のウィングを中盤まで下がらせた4-2-3-1や4-1-4-1、1トップ2シャドーを軸とした4-3-2-1なども誕生した。4-2-3-1は、中央へのプレッシャーが増す現代サッカーにおいて、サイドアタックと中盤の構成力を重視したもので、1トップといっても守備的ではなく、戦術しだいでは高い攻撃力を見せる。

DFラインのフォーメーション

3バック

3バックは相手FWが2人の場合(以下、ツートップ)を想定する。FWが2人の場合はFW対DFで常に数的有利を作ることができる。相手がワントップあるいはスリートップでも3バックがとられる場合もある。3バックでは3人全員をCBとするのが普通であり、中央の人数が多いために中央で強さを発揮する。しかし、両サイドにDFがいないため、サイドの守備の大部分をMFが負担しなければならない。両サイドのMFが守備のために常に下がっていると5バックのような形になり、非常に守備的なフォーメーションとなる。現在では4バックが主流となり、特にクラブでは、余り見られなくなった。

スイーパー型

スイーパー型3バック

3バックにおいては、ストッパーの背後にスイーパーを配置するのが一般的である。3人のCBのうち2人(ストッパー)が相手2トップに対してマンマークを行い、残る1人(スイーパー)がこぼれたボールを奪取したり、中盤から飛び出してくる選手をマークすることで守備を安定させる。しかし、スイーパーの深い配置がゴール前の両サイドの深い位置にスペースを発生させることになってしまうので、サイド攻撃に弱い。

フラット型

フラット型3バック

3人のCBを横一列にならべてゾーンディフェンスを行うが、あまり一般的でない。DFラインの人数が少なくて横一列に並んでいるのでラインコントロールは非常に行いやすい。最終ラインをゾーンに分けてディフェンスするが、3人では個々のゾーンが広くなってしまうためスペースを埋めることが難しい。ゾーンの間に飛び込んでくる選手への対応やマークの受け渡し、抜かれたときのカバーが困難である。フィリップ・トルシエが率いた日本代表が用いた。

4バック

通常の4バックは、4人のDFのうち中央の2人はCBとして中央の守備を担当し、左右のSBはサイドの守備を行う。相手チームがワントップの場合には中央が2対1となり、あるいはスリートップの場合でも両サイドは1対1、中央は2対1となって守備が安定する。しかし、ツートップの場合には中央で2対2になるので1対1の局面が多くなり、個々のDFの能力が重要になる。DFの数が多いため前線の人数が少なくなるので、攻撃の厚みを増すためには状況に応じてDFのオーバーラップが求められる。通常の戦術としてはCBは守備的に行動し、SBは積極的に攻撃に参加する場合が多いが、4人のDFすべてにCBを起用して極端に守備を重視する場合もある。両SBが攻撃のために常に上がると2バックのような形になり、非常に攻撃的なフォーメーションとなる。

フラット型

フラット型4バック

4バックではスイーパーを置かずDFを横に並べゾーンディフェンスによって守るのが一般的。DFが4人いることで最終ラインをゾーンに分けてディフェンスしたとき、ゾーンを簡単に埋めることができる。横に並ぶことによりラインコントロールも比較的行いやすい。

スイーパー型

スイーパー型4バック

2人のCBのうち1人をDFラインとGKの間に配置し、3人のDFをカバーするスイーパーとして機能させる。ストッパーとスイーパーの配置のギャップが自陣後方にスペースを作り出してしまうため、DFラインを高くすることはできないが、ゴール前に強固な守備陣を構築できるため、自陣に引いて守る場合には有効である。

フォワードのフォーメーション

ワントップ

ワントップ

最前線(1列目)にFWを1人置くフォーメーションのことを指す。

通常、ポストプレイヤーが起用されることが多い。この場合、FWは自分自身で得点することだけでなく、ボールをキープした上で2列目以降から飛び出してくる選手の得点をアシストする役割も期待される。

1トップに攻撃的MFタイプを配置して中盤までボールを受けに来させ、ボールをキープしつつ後ろから湧き上がるようにMFが上がってくるのも可能になる。ローマのスパレッティ時代にフランチェスコ・トッティを1トップに配置し一時代を築いた。このフォーメーションは正規のCFを置かないことにより0トップと呼ばれた。

ワントップのメリットは、MFやDFの人数が多いため、守備で人数を多く掛けることができる。前線にスペースができる。その分、攻撃面で人数を補うため中盤ないしサイドからのオーバーラップが必須で、中盤に走力とダイナミズムが要求される。

ツートップ

ツートップ

最前線(1列目)にFWを2人置くフォーメーションのことを指す。

近代サッカーで多く選択されるフォーメーションで、FW2人の特長とその組み合わせによって、同じツートップでもさまざまな戦術が考えられる。例えば一方のFWに背が高くポストプレーが得意な選手を起き、その選手が落としたボールをもう一方の選手に拾わせる、あるいはボールをキープできる選手に前線でためを作らせ、その選手から出されたパスを相手DFの裏に走り込ませたもう一人の俊足のFWに受けさせる、など。

スリートップ

スリートップ

最前線(1列目)にFWを3人置くフォーメーションのことを指す。

オランダにおいて現在でも多数のクラブが採用している。左右に一人ずつ位置するウイングと中央でボールを待つCFで構成される。ウイングが敵陣深くドリブルしたのちセンタリングを上げ、それを得点力に秀でるCFが合わせてゴールするのが定石。前線の人数が多いため個々の能力さえ保つことができれば半ば強引でも得点機を作り出すことができ、中盤に課せられた役目は前線に良質なパスを一本通し、後は手詰まりになった時にバックパスをもらうか守備に徹するだけだった。しかし極端にウイングが外に位置するこの構成だとボールの反対側のウイングプレーヤーが遊んでしまうことが多く、また中央も2トップと違いニアやフォアへの蹴り分けがないため、能力のあるCBにクリアされることも多かった。そこでドリブルで攻めているサイドと逆のサイドのウイングがCFと並んで中央に寄るといったように、状況に応じて役割を変化させるフォーメーションが次第に採用されるようになった。

近年では同じようにFWを3人置くスリートップでも、かつて提唱された戦術と大きく異なる現代的なスリートップが度々見受けられる。マンマークが常識だった1980年代前半までは個々の役割が攻守ともに細分化されていて、攻撃時にはまず相手を抜くことが求められ、逆に守備時には自分が担当する選手の突破を防ぐことが重要視されていた。しかし近年ではゾーンディフェンスが主流となり、個々の突破や守備よりもチーム全体での流動的な攻撃と守備及びその2つの切り替えが求められるようになったため、たとえ生粋のウインガーであっても時にはサイド突破ではなく中央にボールを運んだり、比較的フリーになりやすいサイドでパスを受けて味方に渡すという、ショートポストの役割を果たす必要性が生まれてきた。同時にかつては前線の3人で攻める一定のパターンを繰り返していたのに対し、個々のスペースを大きく取った前線と細かいパスに有利なコンパクトなトライアングルを形成する中盤の選手とがボール共々入り乱れ、ボールと人の双方が動いてチームでゴールを目指すという動きが主流になった。

2011年のバルセロナではリオネル・メッシをウインガーより後方の中央に置き、逆三角形の形になるようなフォーメーションを採用している。メッシがプレスを避けつつウインガーにパスも出せ、ウインガーが押し上げたDFラインのスペースをドリブルで切り込むことができる。これをメッシは「Vフォーメーション」と呼んでいる。

現代の一般的なフォーメーション

4-4-2

4-4-2は4バックを主体とした中で最も普遍的で、DFが4人、MFが4人、FWが2人。4バックの基本フォーメーションとも言える。理論上フィールドプレーヤーが満遍なくピッチをカバーできる。そのため、世界的にコーチングスクールの教科書には4-4-2か4-3-3が基礎戦術として掲載されている。

フラット型

フラット型の4-4-2

中盤の構成がセントラルMFが2人、サイドMFが2人とMFを横一列に配置し、バランスに優れる。フィールドに選手が均等に配置されているので、守備において個々が分担するゾーンが明確でゾーンディフェンスが行いやすい。中盤が一列なのでチーム全体をコンパクトに保つことが容易で、プレッシングも効かせやすい。高い位置からのプレッシングによるショートカウンター攻撃と、両サイドの人数の多さを活かしてサイドMFとSBによるサイド攻撃が中心となる。中央が手薄なので、セントラルMFには攻守にわたる高い総合能力と豊富な運動量が求められる。イングランドが伝統的にこのフォーメーションを採用している。

ダイアモンド型

ダイアモンド型の4-4-2

中盤の構成が守備的MFが1人、サイドMFが2人、攻撃的MFが1人とMFをダイアモンド型に配置し、攻撃を重視する。ダイアモンド型に配置された4人のMFによる細かいパス回しが特徴。サイド攻撃はSBが担当する。守備的MFには、DFラインの前のスペースのカバーからSBがオーバーラップしたときのフォローまで、相当な守備負担を強いられる。

ボックス型

ボックス型の4-4-2

中盤の構成が守備的MFが2人、攻撃的MFが2人と、MFをボックス型に配置し、構成力に優れる。MFの役割分担が明確で、攻防の素早い切り替えによるカウンターと、中盤での前後のパス回しが容易に行える。攻撃時に使えるスペースが広く有るためMFに起用される選手の特徴の変化によって(例えばサイドアタッカーと中央を得意とする選手のどちらを起用するのかで)攻め方を変え易くバリエーションを持たせやすい。フォーメーションが縦に長く伸びやすいためプレッシングを行うことが困難で、前線MFの後方、ボランチ脇のスペースができやすくSBに負担がかかる等の弱点を持つ。中央は、DFライン前にCHが残る形になるためブロックを作りやすく、守備が安定しやすい。

トリプルボランチ型

トリプルボランチの4-4-2

中盤の構成が守備的MFが3人、攻撃的MFが1人で、守備を重視したもの。3人のMFがDFラインの前に張り付くことによって守備は強固なものとなるが、攻撃は攻撃的MFとFWの能力しだいとなる。攻撃的MFに高いボールキープ力があれば、守備的MFやSBのオーバーラップを引き出すことができ、有効なフォーメーションとなる。

4-5-1

DFが4人、MFが5人、FWが1人。MFが5人になることで中盤に厚みを持たせる。FWが1トップとなるため1トップのFWに高い能力が期待され、得点には中盤のサポートが不可欠で、攻撃的MFの選手には攻撃を組み立てる能力だけでなくシャドーストライカー的な動きも求められる。

4-2-3-1

4-2-3-1

中盤の構成が守備的MFが2人、サイドMFが2人、攻撃的MFが1人で、サイド攻撃を重視したもの。攻撃的MFが1人、守備的MFが2人の4-3-3の両ウィングを下げ、サイドMFはウィングのように前線の奥深くまで侵入する。両サイドの人数を活かしたサイド攻撃は非常に強力だが、FWと攻撃的MFの得点能力が重要となる。

4-1-4-1

攻撃的MFが1人、守備的MFが2人の4-3-3の両ウィングが下がったのが4-2-3-1であるのに対し、攻撃的MFが2人、守備的MFが1人の4-3-3の両ウィングが下がったのが4-1-4-1。

4-3-2-1

4-3-2-1

中盤の構成が守備的MFが3人、攻撃的MFが2人で、中央の構成力を重視したもの。3人の守備的MFで守備を安定させ、1トップ2シャドーのFW1人と攻撃的MF2人の連携による攻撃が基本。MFが中央に密集してしまうため、サイド攻撃を行うにはSBのオーバーラップが不可欠。「クリスマスツリー」と呼ばれる。カルロ・アンチェロッティがこのフォーメーションをよく採用していた。

4-3-3

4-3-3

DF4人、MF3人、FW3人を置き、フィールドに選手が均等に配置されるので、フラット型の4-4-2に近い特性を持ち、ゾーンディフェンスやプレッシングが行いやすい。中盤のMFの構成で攻撃型をFWに近い位置に置き、中盤の底を2人が務める攻撃的な形。3人ともセンターMFにして、状況に合わせて役割を変えるバランスを取った形。アンカーをセンターに配置し、残り2人がテクニカルボランチを務める守備的な形。3人とも守備的な位置に置き、門番の役割をしてロングカウンターを狙う形など、中盤の構成によってさまざまな攻撃パターンを作れるが、中盤の能力や連携によっては前線が孤立してしまう。プレイヤー1人1人の役割がわかりやすく、指導しやすいため、少年サッカーや急造のチームではこのフォーメーションが採用されることも多い。ポジションが均等に配置されているため固定的になりやすいので、変化をつけられる選手或いは戦術がないと単調な攻撃しかできない。

3-5-2

3バックを主体としたフォーメーションで最も普遍的で、DFが3人、MFが5人、FWが2人。左右のウイングバック(以下、WB)が豊富な運動量で攻守に上下動を繰り返すのが特徴で、両WBの位置取りしだいで攻撃的にも守備的にも変化する。片方のWBを前方に突出させ殆どFWに近い位置でプレーさせる例(主に1990年代にアルゼンチン国内で流行した)や、相手のサイド攻撃を牽制するために両WBとも前方に突出させる特異な例や、守備を重視(WBの背後のスペースを埋める)して両WBをDFラインにまで後退させる例(5-3-2)もある。

ダブルボランチ型

ダブルボランチの3-5-2

中盤の構成が守備的MFが2人、両サイドMFが2人、攻撃的MFが1人で、3-5-2のうち最もバランスに優れる。守備的MFが2人いることでDFラインの前やWBが上がったときのサイドのカバーが容易で、守備が安定する。攻撃においては攻撃的MFが非常に重要な役割を担うが、2人の守備的MFのうち1人が前線に上がって攻撃に参加して攻撃的MFをサポートする。

ワンボランチ型

ワンボランチの3-5-2

中盤の構成が守備的MFが1人、両サイドMFが2人、攻撃的MFが2人で、攻撃を重視したもの。1人しかいない守備的MFには広範囲をカバーする運動量と高い能力が求められる。攻撃的MFが2人いることで攻撃に厚みを持たせることが可能。

トリプルボランチ型

トリプルボランチの3-5-2

中盤の構成が守備的MFが3人、両サイドMFが2人で、非常に守備的。3人の守備的MFにより守備は非常に強固なものとなるが、攻撃は2人のFWによるカウンター頼みになってしまう。ASローマなどが採用したことがあるが、得点力に問題があるため、あまり使用されない。

3-4-3

3-4-3は3バックを主体とした、DFが3人、MFが4人、FWが3人という前線の人数が多いフォーメーション。両サイドのFW(ウィング)とMF(ウィングバック)による強力なサイドアタックを展開することができる。

フラット型

フラット型の3-4-3

中盤の構成がセントラルMFが2人、両サイドMFが2人で、攻撃を重視したもの。最も均等にピッチ上に選手を配置するので、ピッチ全体を使いやすいが、個々の能力とチームプレイとの融合が求められるサッカーでは、最も難しいフォーメーション。

ダイアモンド型

ダイアモンド型の3-4-3

中盤の構成が守備的MFが1人、両サイドMFが2人、攻撃的MFが1人で、極端に攻撃を重視する。多くのトライアングルを構成することができる。バルセロナのエル・ドリーム・チームや国内リーグの無敗優勝を達成した際のアヤックスのフォーメーションとしても知られる。3バックに限定しても、現代サッカーにおいては基本フォーメーションとして用いられることは少ない。

3-6-1

3-6-1

3-5-2を発展させたもので、DF、守備的MF、両サイドMFまでは同じだが、FWを1人外してワントップにし、攻撃的MFに2人を配し中盤に厚みを持たせているのが特徴。両サイドのMFはWBとしてピッチを上下移動して守備、攻撃に参加しなければならないので高い運動量が要求される。比較的守備が安定し、中盤のパス回しが効果的に行える事により、美しいロングカウンターを仕掛ける事が出来る。3-4-2-1と呼ぶ場合もある。

特殊なフォーメーション

非対称フォーメーション

非対称の3-5-2

フォーメーションの左右のバランスを意図的に崩して、左右で攻守の対応を切り替えるもの。一方のサイドに攻撃の起点を置くことや片方を攻撃的にもう片方を守備的にすることなどで、突出した攻撃能力を持つサイドの選手を活かしたり、チーム全体に変化をつける。

N-BOX

N-BOX

N-BOXとは3-5-2でありながら両サイドMFのWBを配置しない極めて特殊なフォーメーション。中盤の構成が守備的MFが2人、セントラルMFが1人、攻撃的MFが2人となり、サイド後方の守備は2人の守備的MFが左右に開いて行う。その分薄くなった中央の守備は中央に配置されたセントラルMFがカバーする。中央での強力なプレッシングが可能で、プレッシングから前線の4人によるカウンターが有効。複雑に構成された中盤の構成力を活かした遅攻も可能。各ポジションの役割が複雑で多岐にわたり、セントラルMFには攻守にわたって高い能力が求められる。

0トップ フォーメーション

4-6-0
3-7-0

3トップまたは1トップのCFが、トップ下の位置まで下がりMFとして機能する。CF不在なので0トップとよばれる。1列目の並びが、緩やかなV字を描く。ウインガーがFW登録であればワイドに開いた超変則2トップになる。センターのトップがプレスを避けつつウインガーにパスも出せ、ウインガーが押し上げたDFラインのスペースに入り込める。CFのスペースをわざと空けてることで、不特定攻撃が可能。激しくポジションチェンジを行うことで相手のマークを外しDF陣にスペースを生み出し攻撃を仕掛ける。中盤に人数をかけているため、ボールボゼッションを高められる。

脚注

  1. ^ 西部謙司「戦術史」『戦術リストランテ』ソル・メディア、2011年、p.223頁。 
  2. ^ 西部謙司「新戦術が誕生するメカニズム」『戦術リストランテ』ソル・メディア、2011年、p.14-18頁。 
  3. ^ 西部謙司「新戦術が誕生するメカニズム」『戦術リストランテ』ソル・メディア、2011年、p.24-26頁。 

関連項目