コククジラ

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コククジラ
コククジラ
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
階級なし : クジラ目 Cetacea
亜目 : ヒゲクジラ亜目 Mysticeti
上科 : ナガスクジラ上科
: ?コククジラ科 Eschrichtiidae
: コククジラ属 Eschrichtius
: コククジラ E. robustus
学名
Eschrichtius robustus
(Lilljeborg1861)
和名
コククジラ
英名
Gray Whale
コククジラ生息域
コククジラ生息域

コククジラ(克鯨、児童鯨、学名:Eschrichtius robustus)は、ヒゲクジラ亜目 コククジラ科に属する水棲哺乳類。コククジラ科は、コククジラ1属1種のみで構成される。体長 12-14 m と、クジラのなかでは比較的小型で、和名においてもコクジラコクチゴクジラなどと、小柄であることに由来する名称である。

形態と生態

コククジラの体表は灰色だが、ある程度年を経た個体は、全身にフジツボエボシガイクジラジラミなどの寄生生物を付着させているため、白のまだら模様になっている。尾部の背面には数個の小さな瘤(こぶ)が連なっており、背びれはない。

コククジラは外洋に出ることなく、沿岸部を南北に往復し、2万kmを回遊する。これは、現生哺乳類の年間の回遊距離としては、おそらく最長のものである。現在生存している北太平洋のコククジラは、アジア側の沿岸を回遊する西の系統と、北米側の沿岸を回遊する東の系統とに分かれる。西の系統は、夏はオホーツク海で過ごし、冬に中国広東地方の沖で繁殖する。春と秋の回遊時には、朝鮮近海から日本の太平洋沿岸を通過する。東の系統はカリフォルニア州メキシコの沿岸を繁殖場とするが、ホエールウォッチングの人々がボートで訪れると、寄ってきて体をさわらせてくれることもある。

また、前述の通り沿岸棲であり、その食性も他のヒゲクジラ類がプランクトンを捕食するのに対し、コククジラは海底の泥や砂をヒゲでこしとることによってカニなどのベントス(底生動物)を捕食する。そのため、クジラヒゲは短く硬いものとなっている。

寿命は50-60年と考えられている。

分類

コククジラの系統については長らく議論されてきた。上方へと湾曲した吻の形状からセミクジラ科と近縁であるとする意見も出される一方祖先的な形態を留める事からケトテリウム科と近縁であるとする説もある[1]。しかしSINEを使用した遺伝子解析においては、ナガスクジラ内の3系統と挿入パターンの矛盾が見られる。これは、祖先多系[2]を保った状態のまま、急激に四つの系統に分化した事を示している[3][4]これらのことから、コククジラの分類は見直される可能性もある。

個体数

かつては北半球全域に生息していた。沿岸性であり、クジラとしてはさほど巨大でなかったことから、古くから捕鯨の対象とされてきたが、特に近世になってからは乱獲により急速に個体数が減少させられた。北大西洋の個体群は18世紀ごろまでに絶滅し、北太平洋においても激減した。その後の捕鯨禁止が功を奏し、北太平洋のうち北アメリカ沿岸の個体群はかなり回復してきているが、他方、東アジア沿岸の個体群は一時は絶滅と判断されたほどで残存数わずか100-150頭と危機的な状況にある。コククジラは沿岸凄で東アジア(日本を含む)の沿岸の開発の影響を受けるのだが、更に現在樺太島北部で行われているロシア油田開発(サハリン2)によって生存を脅かされている。

脚注

  1. ^ 『鯨類学』 42 - 43頁
  2. ^ 一つの種内で異なるサイン配列を持ったグループが存在する事。この状態は長続きせず、いずれ一つの配列パターンに落ち着く。
  3. ^ こうした現象は真獣類の三大系統北方真獣類アフリカ獣上目異節上目の間にも見られる。
  4. ^ 雑記 - 進化・分類学 ヒゲクジラの系統も SINE 法で〆(2006.08.01)

関連項目

参考文献

  • 村山司『鯨類学』東海大学出版会〈東海大学自然科学叢書〉、2008年、42 - 43頁頁。ISBN 978-4-486-01733-2 

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