イギリスの戦争の擁護
イギリスの戦争の擁護(British Authors Defend England's War,またはFamous British Authors Defend England's War)とは、第一次世界大戦中の1914年9月17日、ロンドンにおいてイギリスの代表的作家53人が連名で出した声明[1]。10月18日にはニューヨーク・タイムズに掲載された[2][3]。
戦時下のイギリス・ドイツ知識人による相互の声明・反応
- 1914年9月4日、自由党議員チャールズ・マスターマンは、イギリス外務省機関ウェリントンハウス(Wellington House)の戦争プロパガンダ局に代表的な作家を招待して意見を聞いた[4]。
- 同9月17日、「イギリスの戦争の擁護」ロンドンで発表[1]。
- 同10月4日、ドイツの作家、学者、芸術者93人が93人のマニフェストを発表。
- 同10月16日にはドイツの大学人3000人余が署名したドイツ帝国大学声明が出された。
- 同10月18日にはニューヨーク・タイムズに「イギリスの戦争の擁護」が掲載[1]。
- 同10月21日に大英帝国の大学人117人が連名でドイツ大学人への返答を出した。
- 同11月14日、ジョージ・バーナード・ショーはCommon Sense About the Warで、戦争当事国は等しく犯罪者であるとし、「世界を軍事支配するためにイギリスとドイツのユンカーと軍国主義者が何年も切望していたチャンスに飛びついている」とした[5]。ショーの主張はイギリス知識人や友人の間で怒りを買った[6][7]。「イギリスの戦争の擁護」に署名していたアーノルド・ベネットは「ショーのナンセンス」でショーを批判し[8]、ショーはここで衝突して何になろうか、ベネットを自宅に招待すると返答した[9]。ショーは1917年にダグラス・ヘイグ司令官に招かれて西部戦場に記者として従軍し、兵士の人間的側面をレポートして称賛された。ショーはアメリカの参戦を「戦争の原因であるユンカー主義に対する第一級の道徳的な価値を持つもの」として絶賛した[10]。
内容
[抄出[1]]
イギリスの作家の中にはドイツへの善意に満ちた者もいれば、平和主義者もいる。しかし、イギリスが世界大戦に参戦することを拒否することを回避できなかった。イギリスはベルギーの中立性を維持するようフランスに要請すると、フランスは受諾した。しかし、ドイツはベルギーの中立性の維持を拒否した。フランスもドイツによって戦争に引きずり込まれて破壊されたが、フランスの破滅を許すことは自由と文明に対する犯罪となる。
私達はドイツ文化には敬意を表す。しかし、他の国家に文化を押し付ける権利を持っているとは認めることはできない。
ドイツの運命がどうなろうとも、大英帝国は運命と義務を意識する。大英帝国および英語圏の人々は、「血と鉄」による軍事支配に対して、諸文明に共通する正義による支配、小国の権利を保護し、自由と法を守る理想を維持する。
署名者
- ウィリアム・アーチャー
- H. GRANVILLE BARKER
- ジェームス・マシュー・バリー,『ピーター・パン』の作者
- ヒレア・ベロック
- アーノルド・ベネット
- ARTHUR CHRISTOPHER BENSON
- EDWARD FREDERIC BENSON
- VERY REV. MONSIGNOR ROBERT HUGH BENSON
- LAWRENCE BINYON
- ANDREW CECIL BRADLEY
- ROBERT BRIDGES
- HALL CAINE
- R.C. CARTON
- CHARLES HADDON CHAMBERS
- G・K・チェスタトン
- HUBERT HENRY DAVIES
- アーサー・コナン・ドイル
- HERBERT ALBERT LAURENS FISHER
- ジョン・ゴールズワージー
- エフ・アンスティ
- ヘンリー・ライダー・ハガード
- トーマス・ハーディ
- JANE ELLEN HARRISON
- アンソニー・ホープ
- MAURICE HEWLETT
- ROBERT HICHENS
- ジェローム・K・ジェローム
- HENRY ARTHUR JONES
- ラドヤード・キップリング
- WILLIAM J. LOCKE
- E・V・ルーカス
- JOHN WILLIAM MACKAIL
- ジョン・メイスフィールド
- ALFRED EDWARD WOODLEY MASON
- GILBERT MURRAY
- HENRY NEWBOLT
- BARRY PAIN
- SIR GILBERT PARKER
- イーデン・フィルポッツ
- SIR ARTHUR WING PINERO
- アーサー・キラークーチ
- SIR OWEN SEAMAN
- GEORGE R. SIMS
- MAY SINCLAIR
- FLORA ANNIE STEEL
- ALFRED SUTRO
- GEORGE MACAULAY TREVELYAN
- RT. HON. GEORGE OTTO TREVELYAN
- HUMPHRY WARD
- Mary Augusta Ward
- ハーバート・ジョージ・ウェルズ
- MARGARET L. WOODS
- イズレイル・ザングウィル,シオニスト作家
脚注
- ^ a b c d NYTimes Current History,p.83.
- ^ Famous British Authors Defend England's War, The New-York Times,october 18, 1914.
- ^ Milne,2014
- ^ P.M.Taylor, p.36.
- ^ NYTimes Current History,p.11-60.
- ^ Weintraub 2013.
- ^ Ervine 1956, p. 464.
- ^ NYTimes Current History,p.61-.
- ^ NYTimes Current History,p.64.
- ^ Holroyd 1989, pp. 371–374.
参考文献
- New York Times (1915). Current History,Vol 1,From the Beginning to March, 1915. The New York Times Company. p. 83-7
- Nick Milne (2014年1月10日). “Pen and Sword Pt. I: The Authors' Declaration”. World War I Centenary,University of Oxford. 2018年2月19日閲覧。
- Philip M.Taylor (1999). British Propaganda in the Twentieth Century. Edinburgh University Press. ISBN 9780748610396
- Ervine, St John (1956). Bernard Shaw: His Life, Work and Friends. London: Constable. OCLC 37129043
- Holroyd, Michael (1989). Bernard Shaw, Volume 2: 1898–1918: The Pursuit of Power. London: Chatto & Windus. ISBN 978-0-7011-3350-4
- Weintraub, Stanley (2013年). “Shaw, George Bernard (1856–1950)”. Oxford Dictionary of National Biography, online edition. Oxford University Press. 2018年2月18日閲覧。