はさみ

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はさみ

  1. (鋏)物をはさみこむことによって、物を切断するための道具。本項目で主に解説する。
  2. (挟み、挿み)物をはさみこむことによって、物を握持するための道具。洗濯用の洗濯ばさみ、炭火用あるいは清掃用の火ばさみ、角氷用の氷ばさみなど。なお、物を掴む道具である「やっとこ」にも「鋏」の字があてられる。
  3. (螯、鉗)節足動物の肢の先にある道具の鋏のような構造の部分 - はさみ (動物)

和鋏(日本式の鋏)
ラシャ鋏(洋裁鋏)
金切り鋏 複式レバー方式(Compound action snips)
スキ鋏(櫛状の刃)
セラミックの鋏(京セラ製)
事務用洋鋏。左-左手用(総左)。右-右手用
理美容鋏各部名称

はさみ剪刀)は、物を切断するための道具である。形態としては、支点作用点から離れている和鋏型、支点が中間にある洋鋏型がある。

洋鋏

構造

洋鋏は通常2枚の細長い金属板が蝶番を中心軸として重なり合う構造となっており、それぞれの金属板の内側に向かってが付けられ、2枚の刃が交わった部分が閉じていくことで間に挟んである紙や布などが切断されるしくみである。構造的にはてこのうち第1種てこの構造をもち、二枚の刃の部分が作用点、刃をつなげる部分が支点、反対側の持ち手の部分が力点となる。洋鋏は使用していない時には安全のため閉じておかれることが多く、先端の刃の部分を覆うキャップやカバー付きのものも存在する。

刃の接触点に剪断する力を集中するように、刃はわずかにひねられている。これをひねりと呼ぶ。また、切る対象に依って、刃と刃のあたる角度を変えるために裏側にスキと呼ばれる隙間をつくっている。これによって例えば、髪の毛のような軽い材質でかつ、硬い表面のものでも切ることができる。正確に切らなければならないものほど、精密に調整したスキとひねりが必要である。

なお、英語ではscissorsというが、金切り鋏やケーブル鋏など、刃が柄に対して小さく、強力なものはsnipsと呼び分けている。

材質

はさみは切断工具であるため、固いを使ったものが多い。一般の事務用、工作用のものでは錆に強いステンレス鋼を使ったものが主流である。最近では、表面にフッ素コート加工を施してテープによるベタつきを防ぐ工夫をした商品も一般化している。

子供用にはプラスチック製のはさみもある。

特殊な用途向けに、切断されるものに対して磁気の影響を及ぼすことがないように、セラミックで作られたはさみもある。

さらに理美容師などが使用するはさみの高級品にはコバルト基合金製の物がある。

右利き用と左利き用

通常のはさみは右利き用に作られているが、左利き用のものも少数であるが市販されている。利き手と異なる向きにつくられたはさみを使用するのは困難が伴う。これは、はさみのかみ合わせ部分に対する力の配分が逆になってしまうため、かみ合わせ部分を広げる方向に力が入ってしまうからである。

左利き用のはさみは、右利き用のはさみと完全に左右が反転した、総左と呼ばれるものと、持ち手の部分のみ左右が反転した足左と呼ばれるもの(かみ合わせ部分は右利き用と同じ)がある。足左は、右利き用のはさみになれた人、すなわち、かみ合わせの力配分を右利き用にしている人が、持ち手の部分だけ左用にしたい場合に使われる。逆に、足左になれている人は、総左のはさみをうまく使いこなせない。これは、足左のはさみの力の配分方法と、総左のはさみの力の配分方法が反対になるからである。

足左のはさみは、本来の左利きのはさみとは違い、一種便宜的なはさみであるため、市場に出回る量は少ない。

なお、右利き用のはさみではあるが、右手、左手どちらでも持てるような、ユニバーサルデザインにしたはさみもある。足左のはさみと同じように使うことができる。

用途

次のようなものが市販されている。

  • 工作・加工用
    • 紙細工用(紙切り用)
    • ピンギング鋏(山形・波形に切るために用いられる)
    • 金切鋏
    • 板金鋏
    • ゴムホース用鋏
    • ケーブル鋏
  • 料理用(キッチン鋏)
  • 理容用
    • スキ鋏
  • 手芸用
    • 洋裁鋏
  • 園芸用
    • 生花用
    • 植木鋏
    • 刈込鋏
    • 葉刈鋏
    • 盆栽鋏
    • 摘果鋏
    • 採果鋏
    • 芽切鋏
    • 高枝切り鋏
  • 理科実験用
    • 解剖鋏
  • 式典用
    • テープカット用
    • 断髪式用

和鋏

日本では和鋏も用いられる。和鋏は通常1枚の細長い金属板の両端に刃が付けられ、これをU字形の曲げてばね状にし両側から力を加えることで刃の部分が重なり合う構造となっており、2枚の刃が交わった部分が閉じていくことで間に挟んである紙や布などが切断されるしくみである。構造的にはてこのうち第3種てこの構造をもち、二枚の刃の部分が作用点、金属板がU字型に曲げられた部分が支点、刃に近い持ち手の部分が力点となる。和鋏は使用していない時にはばねの力で刃は開いているが、安全のため先端の刃の部分を閉じた状態で覆うキャップやカバー付きのものも存在する。

現代の日本では洋鋏が主流であるが、和鋏は糸切り鋏や飴細工用などの用途に使用されることが多い。握り鋏とも。

歴史

紀元前1000年ごろの古代ギリシアのものとされるはさみが発見されており、古代から使われていたと考えられている。

日本では6世紀に中国を通して伝わったと考えられており、この時代の古墳からの出土例もある。量産されるようになったのは江戸時代からといわれる。

法律による規制

日本においては、所持には法律による規制がある。正当な理由[1]を持たずに隠して携帯[2]することは軽犯罪法に抵触するため、科料勾留されることがある。

また、刃体の長さが8センチメートルを超える鋏は、銃刀法第22条によって、業務[3]その他正当の理由のない限り携帯することが禁止されている。

脚注

  1. ^ 社会通念上正当な理由が存在する場合であり、例えば、店からはさみを購入して自宅に持ち帰るような場合等
  2. ^ 自宅または居室以外の場所で、手に持ったり、身体に帯びるなど直ちに使用できる状態で、人目につかないよう隠して身辺に置くこと
  3. ^ 社会生活上の地位に基づき、反復継続してはさみを使用することがその人にとって仕事であり、はさみを使うことが業務にあたる場合

関連項目

外部リンク