逆性石鹸

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本来の表記は「逆性石鹼」です。この記事に付けられた題名は記事名の制約から不正確なものとなっています。

逆性石鹸(ぎゃくせいせっけん)は、高級アミンからなる界面活性剤であり、殺菌剤柔軟剤リンスの成分として利用されるものをいう。

概要[編集]

逆性石鹸という言葉は、一般に広く利用されている石鹸との対比から名付けられたもので、通常の石鹸(普通石鹸)が水に溶けると脂肪酸陰イオンになるのに対して、逆性石鹸は水中で陽イオンになる。このため陽性石鹸陽イオン界面活性剤とも呼ばれる。

逆性石鹸は普通石鹸に比べると界面活性作用はあまり強くないものが多く、このため洗浄力では劣ることが多い。しかし陽性に荷電した逆性石鹸は、セルロースたんぱく質など、陰性に荷電した高分子とは電気的に吸着しやすいという性質がある。この性質のため、細菌カビなどの微生物に作用させると、その表面の生体高分子に吸着して変性させることで殺菌作用を示すため、消毒薬などの殺菌剤として利用される。また衣類や頭髪に吸着することで、空気中の水分が保持されやすくなり柔軟性を与えることから、衣類の柔軟剤や頭髪用リンスなどとしても利用される。

普通石鹸と逆性石鹸を混ぜると、会合して両者ともに界面活性を失い、普通石鹸の洗浄効果も、逆性石鹸の殺菌や柔軟効果も共に減弱してしまう。例えばシャンプー(普通石鹸)とリンス(逆性石鹸)を混ぜたり、手洗い用の石鹸と消毒用の逆性石鹸を混ぜると、充分な効果は得られなくなる。また逆性石鹸は、溶液中に汚れなどの有機物が大量に存在するとそれらと結合してしまい、本来意図している微生物や衣類、頭髪への結合が阻害される結果、その効果が減弱する。このため逆性石鹸を用いるときは、まず普通石鹸で汚れを十分に落とした後、水で十分にすすいで普通石鹸を洗い流し、その後で逆性石鹸を使うのが効果的である。

殺菌剤としての逆性石鹸[編集]

逆性石鹸のうち、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムが外用の消毒薬として器具や手などの消毒に、塩化セチルピリジニウムトローチうがい薬などに配合されて口腔や気道の殺菌に用いられる。

逆性石鹸は、一般的な細菌菌類(真菌)、原生生物、一部のウイルスなど、広範な微生物に対して殺菌作用を示し、その効果には持続性がある。ただし芽胞に対しては無効であり、真菌、緑膿菌結核菌エンベロープを持たないウイルスに対する殺菌作用は弱い。E. H. Spauldingが提唱した消毒薬の殺菌力の区分では3段階(高水準、中水準、低水準)のうちの低水準のグループに分類されており、消毒対象としては、環境、器具、手指、粘膜の消毒に使用可能だが、排泄物の消毒には注意が必要とされる。また対象微生物は、一般細菌に使用可能だが、真菌に対しては高濃度長時間処理が必要となり、芽胞、結核菌、ウイルスには使用不可、とされている。

また上述したように、普通石鹸や汚れとなる有機物と混合すると殺菌力が低下するため注意が必要である。特に薬用石鹸(普通石鹸に他の殺菌成分を配合したもの)との混同から、逆性石鹸に洗浄力を期待した使い方をするなどの誤った使い方がなされることもあるため、逆性石鹸以外の名称を用いる場合もある。さらに近年は、他の消毒薬と同様、使用中の逆性石鹸の中から緑膿菌やセラチア菌などの細菌が検出される例も報告されており、適切な使用、保管が重要であることが再認識されている。

逆性石鹸は水溶液として用いる他、エタノールと混合して速乾性の手指消毒薬(スクラブ)として用いられることもある。スクラブは速乾性で水がなくても使用可能であることに加え、エタノールと逆性石鹸という、作用点が異なる二種類の消毒薬によって相乗的な殺菌効果を得ることができ、しかも逆性石鹸の殺菌力が持続することから、有用な消毒薬として用いられている。特に、塩化ベンザルコニウムではエタノール溶液が、水溶液とともに医療分野などで利用されている。

関連項目[編集]