春雨物語

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春雨物語』(はるさめものがたり)は、上田秋成による小説集。収録されるのは、「血かたびら」「天津処女(あまつをとめ)」「海賊」「二世の縁(にせのえにし)」「目ひとつの神」「死首の咲顔(しくびのゑがほ)」「捨石丸」「宮木が塚(みやぎがつか)」「歌のほまれ」「樊噲(はんかい)」の十篇。

諸本[編集]

刊本ではなく、写本により伝えられる。(1) 富岡鉄斎旧蔵本(五巻本)(2) 漆山又四郎旧蔵本(十巻本)(3) 桜山文庫本(十巻本)(4) 西荘文庫本(十巻本)(5) 田原本などがあり、本文は諸本によって異なる。このうち、 (2)(3)(4) は、奥書から、文化5年に成立したテクストに基づいていることが分かる。 (1) は、秋成自身により、その後大幅に改稿されたものである。

内容(部分)[編集]

海賊
土佐国司としての任期が終え、京へと進む紀貫之の舟へ、海賊が追いかけてきた。海賊は、貫之に『続万葉集』の名義、『古今集真名序の内容や撰歌のあり方に疑義を呈する。また、三善清行意見封事十二箇条を引きながら、社会批判をも行う。滔々と論じる海賊に、周囲の舟人らも賛同し、本来、歌文の道を事とする貫之は言い返すこともできない。海賊はさらに帰京後の貫之に書状を送りつける。見れば、一部分は三善清行を讃える史論であり、また一部分は貫之は漢字の字義から考えれば「ツラヌキ」と読むべきだと難癖であった。後に聞けば、海賊は放蕩狼藉が原因で都を追われた文屋秋津であるという。
目ひとつの神
相模国小余綾(こゆるぎ)の浦で育った若者が、歌を教わりたいと考え、京を目指す。途中近江老曾(おいそ)の森で、夜中、修験者、一つ目の神、法師、神主、獣らによる宴に出くわす。神は若者に、「京では芸道という枠組みにより、個人の才能の発露が制約されており、そのような環境で歌を学んでも益はない。東国でしかるべき師匠を見つけ、自身が歌を深めていくことこそ大事である」と説くのであった。

評価[編集]

秋成晩年の思想・認識の到達点がうかがえる作品。物語の持つ、歴史的要素(正史としての性質)と虚構的要素(寓言としての性質)のどちらにもとらわれず、両者を自由に駆使しながら作品を形成している。文章は極度に省筆されている。

活字本[編集]

(以上、国立国会図書館OPACへのリンク)