ライリー・アン・ソーヤーズ殺害事件
| 日付 | 2007年7月24日 |
|---|---|
| 場所 |  アメリカ合衆国・テキサス州スプリング |
| 逮捕者 | キンバリー・ドーン・トレナー ロイス・ザイグラー |
| 有罪判決を 受けた人 | トレナー、ザイグラー |
| 罪状 | 第一級殺人（トレナー） 第一級殺人および証拠隠滅行為（ザイグラー） |
| 判決 | 仮釈放なしの終身刑。 |
ライリー・アン・ソーヤーズ殺害事件（ライリー・アン・ソーヤーズさつがいじけん）は、アメリカ合衆国・テキサス州において、2007年に、9歳の少女が母親らの虐待により殺害された事件である。
事件の概要[編集]
米国テキサス州に住む9歳の少女ライリー・アン・ソーヤーズ（Riley Ann Sawyers、2005年3月11日 - 2007年7月24日）は、彼女の母親のキンバリー・ドーン・トレナー（Kimberly Dawn Trenor）と継父のロイス・ザイグラー（Royce Zeigler）による虐待により死亡した。彼女の遺体は同年10月29日にテキサス州ガルベストン湾で発見された[1]。
遺体発見後、警察は腐敗のために身元特定が難しく、身元特定のための全国的な調査を開始した[1]。彼女の祖母であるシェリル・ソーヤーズが合成スケッチを見て警察に連絡し、2014年11月30日のDNA型鑑定によって特定された[2][3]。
被害者の家庭環境[編集]
ライリー・アン・ソーヤーズ | |
|---|---|
| 生誕 |
2005年3月11日 アメリカ合衆国・オハイオ州メンター |
| 死没 |
2007年7月24日（2歳） アメリカ合衆国・テキサス州スプリング |
| 死因 | 児童虐待 |
| 遺体発見 | 2007年10月29日（2歳） |
| 埋葬地 | メンター・ミュニシパル墓地 |
| 国籍 |
アメリカ合衆国 |
| 別名 | ベビーグレース |
| 親 |
キンバリー・ドーン・トレナー (母) ロイス・ザイグラー (継父) |
ライリー・アンは、彼女の母親のキンバリー・ドーン・トレナーが15歳の時に高校の同級生ロバート・トーマス・ソーヤーズとの間にもうけた子供である[4][5]。彼の父親は高校を中退し、家族はオハイオ州メンターにあるロバートの母親シェリル・ソーヤーズの自宅で生活していた[5]。また、ライリー・アンの面倒は主に祖母のシェリルが見ていた。その後家族は同居を続けるも交際関係が破綻し、父親はキャサリン・プリスターという別の女性と後に結婚した。その間母親のトレナーはロバートから家庭内暴力を受けており、2006年10月にトレナーは娘と共にソーヤーズ家を離れた[5]。
2007年1月1日、トレナーはロイス・クライド・ザイグラー・ジュニアと結婚し、5月にはテキサス州スプリングへと引っ越した[6][7]。ザイグラーとトレナーが出会ったのはWorld of Warcraftというオンラインゲームを通じてであり、トレナーは次第にこのゲームに熱中するようになった[5]。
継父のザイグラーはライリー・アンの言葉遣いを良くするには体罰が最も良いと考えており、彼女に対して頻繁に暴力を振るっていた。ザイグラーのかつての継母の話によると、彼自身も父親から体罰を受けて育った経験があるという。他の継母も、彼の経験がライリー・アンの虐待死と繋がっていると述べている[8]。
殺害[編集]
母親のトレナーは、宣誓供述書に署名した上で証言を行なった。彼女によると事件の起きた2007年7月24日、彼女と父親のザイグラーはライリー・アンを革のベルトで打ち、その頭を掴んで浴槽に沈めた[5]。そしてザイグラーが彼女の髪を掴んで部屋まで引っ張っていき、頭部を硬い床に打ちつけた[6]。彼女はこれによって負傷し、「立て」という命令に従うことができなかった。その間ライリー・アンは母親のトレナーに対して「愛してる（I love you）」と言い、暴力から逃れようとしていた[9][10]。なお、この事件についてトレナーは「行き過ぎたしつけ」による事故だったと供述した。
娘の死に気づいた後、2人はウォルマートでプラスチックのコンテナを購入し[1]、ゴミ袋に詰めた娘の遺体をコンテナに収めた[7]。そしてその後、コンテナ内で2ヶ月放置した後にガルベストン湾へ捨てた[5][4]。
遺体発見・身元特定[編集]
被害者の遺体がガルベストン湾で見つかったのは、死亡から2ヶ月以上が経過した10月29日であった[5][11]。 検死によって頭蓋骨に3つの骨折が見られたため、警察は殺人事件として捜査を始めた[1][12]。 なお、傷の様子は深刻で屋上から転落したのと同程度の力がかけられたようであった[11]。 遺留品から身元の特定ができなかったため、警察はフォレンジック・アーティストのロイス・ギブソンに法科学に基づく復顔を依頼した[13][14][15]。 この遺体は、身元が特定されるまで仮名の「ベイビー・グレース」という名で呼ばれていた[7]。
ギブソンによる似顔絵は全国に公開され[16]、たまたまそれをネット上で見かけた被害者の祖母シェリル・ソーヤーズが当局に申し出た[11][6][13]。その後DNA鑑定が実施され、実際にシェリルの孫であるライリー・アン・ソーヤーズの遺体であることが特定された[12][8]。
裁判[編集]
継父のザイグラーは感謝祭の直前に抗うつ薬の過剰摂取による自殺未遂を行なった。遺書には「私だけが罪を負うべきであり妻は無実だ」と書かれていた[6][12]が、彼は法廷において被害者が死亡した際には別の部屋にいたので無実だと主張した[17]。
夫妻の逮捕後2人にはそれぞれ35万ドルの保釈金がかけられた。2人は当初傷害罪と証拠の隠滅で起訴されたが[18]、妊娠中だった母トレナーの裁判は2009年1月の被告の出産を待って行われた[9]。
殺人罪の適用[編集]
最終的に夫妻はライリー・アンの死に対して責任があると判断された[16][19]。そして2009年2月2日、トレナーは殺人罪で仮釈放のない終身刑を言い渡された[20][21]。ザイグラーには殺人罪と証拠隠滅の罪が適用され、同年11月6日に仮釈放のない終身刑が言い渡された[20]。
脚注[編集]
- ^ a b c d “'Baby Grace' Sketch Unleashes Wave of Tips”. Associated Press. ABC News. (2007年11月5日). オリジナルの2007年11月9日時点におけるアーカイブ。 2007年12月1日閲覧。
- ^ Sara McDonald (2007年11月30日). “DNA confirms Sawyers is 'Baby Grace'”. Galveston Daily News. 2007年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年12月1日閲覧。
- ^ “Resolved Cases”. www.doenetwork.org. The Doe Network. 2014年9月11日閲覧。
- ^ a b Christian, Carol (2014年10月23日). “9 notorious crimes with ties to Galveston Island”. Houston Chronicle 2016年6月16日閲覧。
- ^ a b c d e f g Langford, Terri (2007年12月2日). “How did Riley Ann Sawyers' mom end up here?”. Houston Chronicle (Houston, Texas) 2016年6月14日閲覧。
- ^ a b c d Sean Callebs (2007年11月26日). “Police: Mother describes beating of 2-year-old, hiding her body”. CNN
- ^ a b c Celizic, Mike (2007年11月29日). “Father, grandmother say 'Baby Grace' was loved”. Today News. NBC 2016年6月14日閲覧。
- ^ a b Austin Peterson, Liz (2007年12月11日). “Ex-wives of accused killer's father say Baby Grace case familiar”. exas District & County Attorneys Association (Associated Press) 2016年6月15日閲覧。
- ^ a b “The 'Baby Grace' Case”. About. 2016年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月15日閲覧。
- ^ MÄKELÄ, KATRIINA (2007年11月29日). “Isäpuoli pieksi kuoliaaksi "Baby Grace ei osannut kohteliaisuuksia"” (フィンランド語). Iltalehti 2016年6月16日閲覧。
- ^ a b c Shofar, Cassandara (2011年6月15日). “Investigation Discovery to air episode on murder of Riley Ann Sawyers, 'Baby Grace'”. The News Herald 2016年6月15日閲覧。
- ^ a b c “Report: Woman details death of 'Baby Grace'”. USA Today. The Associated Press (Gannett Co. Inc.). (2007年11月27日) 2016年6月15日閲覧。
- ^ a b McLaughlin, Michael (2012年7月23日). “Lois Gibson's Composite Sketches Have Helped Catch Texas Criminals For 30 Years”. The Huffington Post 2016年6月16日閲覧。
- ^ Reece, Kevin (2016年5月25日). “HPD forensic artist helping identify missing children”. KHOU (Tegna) 2016年6月16日閲覧。
- ^ “Lois Gibson - Forensic Art”. Nic Herbert (2012年). 2016年6月15日閲覧。
- ^ a b Freidman, Emily (2010年4月20日). “Texas: Authorities Search For Identity of Boy Found Dead in Park”. ABC News. ABC 2016年6月16日閲覧。
- ^ Juan A. Lozano (2009年11月6日). “Stepfather convicted in death of 'Baby Grace'”. Associated Press
- ^ “Cops: Mom says couple tortured 'Baby Grace'”. NBC News. NBC. (2007年11月26日) 2016年6月15日閲覧。
- ^ M.R. Kropko (2008年1月15日). “Ashes of 'Baby Grace' Flown to Ohio”. ABC News. 2020年6月28日閲覧。
- ^ a b “Royce Zeigler, stepfather of 'Baby Grace' -- Riley Ann Sawyer -- sentenced to life for murder”. Plain Dealer. Cleveland Scene (Cleveland, Ohio). (2009年11月7日) 2016年6月15日閲覧。
- ^ “Mom found guilty of murder in 'Baby Grace' case - CNN.com”. CNN. (2009年2月3日) 2010年5月19日閲覧。