マルグリット・デュラス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
マルグリット・デュラス
Marguerite Duras
Marguerite Duras 1993.jpg
1993年
誕生 マルグリット・ドナディユ
Marguerite Donnadieu
1914年4月4日
Flag of Colonial Annam.svg仏領インドシナ・サイゴン
(現ベトナムの旗 ベトナムホーチミン市
死没 1996年3月3日(満81歳没)
フランスの旗 フランス・パリ
職業 作家映画監督
国籍 フランスの旗 フランス
主な受賞歴 ゴンクール賞(1984)
オーストリア・ヨーロッパ文学賞(1989)
Portal.svg ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

マルグリット・デュラス(Marguerite Duras, 1914年4月4日 - 1996年3月3日)は、フランスの小説家、脚本家、映画監督

ヌーヴォー・ロマンの作家の一人に数えられることもあるが、キャリアの点でも作風の点でもヌーヴォー・ロマンの枠内には収まらない。

経歴[編集]

1914年にフランス領インドシナ(現ベトナム)のサイゴンに生まれる。

法律を学ぶため、1932年にフランスに帰国し、大学で法律・数学を専攻する。1939年、ロベール・アンテルムと結婚する。1942年に初めての子供を出産後に失う。

1943年に、処女作『あつかましき人々』を発表する。また、この頃、ディオニス・マスコロと知り合う。1950年に発表した、現地で教師をしていたが早くに夫に先立たれた母が、現地の役人にだまされ、海水に浸ってしまう土地を買わされ、それ以後、彼女達一家は貧困を余儀なくされるという一家の苦難と母の悲哀を描いた自伝的小説の『太平洋の防波堤』は、わずかの差でゴンクール賞を逃す。

1984年に発表した、インドシナに住んでいた時に知り合った華僑の青年との初めての性愛体験を描いた自伝的小説『愛人/ラマン』は、ゴンクール賞を受賞し、世界的ベストセラーとなった。1992年にはフランス・イギリス合作で映画化され、この映画も原作同様ヨーロッパでヒットした。なお、この作品の姉妹編とも言うべき『北の愛人』は、かつてのデュラスの愛人だった中国人青年の死を聞いて執筆を始めたという。この作品は1991年に発表された。

ペンネームのデュラスは、彼女の父の出身地から取ったもの。

年譜[編集]

  • 1943年、「あつかましき人々」(原題 Les Impudents)を発表。ディオニス・マスコロと知り合う。F・ミッテランの下でレジスタンス運動に加わる。
  • 1944年、下の兄がインドシナで死去。アンテルム、強制収容所に送られる。共産党に入党する。
  • 1946年、アンテルムと離婚。
  • 1947年、マスコロとの息子のジャンを出産。
  • 1958年、「モデラートカンタービレ」(原題 Moderato Cantabile)を発表。
  • 1966年、「ラ、ミュジカ」で初めて映画監督を務める。
  • 1968年、五月革命に参加。
  • 1969年、≪断絶≫叢書から「破壊しに、と彼女は言う」を発表。文庫版訳者後書きによると、前作までタイトルに付記されていた"Roman"というジャンル名が本作から消えた。「私自身は、もうロマンは読めなくなっている。こんにち、バルザックやプルーストのように書くことは出来ない」というデュラスの発言も後書きに紹介されている。
  • 1971年、堕胎処罰法の廃止を求める「343」アピールに署名する。
  • 1980年、トゥルーヴィルの海岸沿いのマンションに住む。夏、38歳年下の青年、ヤン・アンドレアと知り合う。その後、彼と恋人関係になる。
  • 1981年、「アウトサイド」(原題 Outside)出版
  • 1982年、アルコール中毒で入院。
  • 1984年、「愛人 ラマン」(原題 L'Amant)出版、ゴンクール賞を受賞。
  • 1985年、「苦悩」(L'Ete80)を発表。
  • 1986年、「青い目、黒い髪」(原題 Les yeux bleus cheveux noirs)を発表。
  • 1987年、「愛と死、そして生活」(原題 La Vie materielle)、「エミリー・L」(原題 Emily L)を発表。
  • 1990年、「夏の雨」(原題 La Pluie d'ete)を発表。
  • 1991年、「北の愛人」(原題 L'Amant de la Chine du Nord)を発表。
  • 1992年、「ヤン・アンドレア・シュタイナー」(原題 Yann Andrea Steine)を発表。
  • 1993年、「エクリール」(原題 Ecrire)を発表。
  • 1996年、「これでおしまい」(原題 C'est tout)遺稿。3月3日にパリの自宅で死去。

著作[編集]

  • 1943年「Les Impudents(あつかましき人々)/Plon」
  • 1944年「La Vie tranquille(静かな生活)/Gallimard」
  • 1950年「Un barrage contre le Pacifique(太平洋の防波堤)/Gallimard」
  • 1952年「Le Marin de Gibralter(ジブラルタルの水夫)/Gallimard」
  • 1953年「Des journées entières dans les arbres(タルキニアの小馬)/Gallimard」
  • 1954年「Des journess entrieres dans les arbres/(木立ちの中の日々)/Gallimard」
  • 1955年「Le square(辻公園)/Gallimard」
  • 1958年「Moderato Cantabile(モデラートカンタービレ)/Ed.de Minuit」
  • 1959年「Les Viaducs de la seine-et-Oise(セーヌ=エ=オワーズの陸橋)/Gallimard」
  • 1960年「Dix heures et demi du soir en été(夏の夜の10時半)/Gallimard」
  • 1960年「Hiroshima mon amour(ヒロシマ、私の恋人)/Gallimard」
  • 1962年「L'après-midi de monsieur Andesmas(アンデスマ氏の午後)/Gallimard」
  • 1964年「Le Ravissement de Lol V. Stein(ロル・V・シュタインの歓喜)/Gallimard
  • 1965年「Le Vice-consul(ラホールの副領事)/Gallimard」
  • 1967年「L'Amante Anglaise(ヴィオルヌの犯罪)/Gallimard」
  • 1969年「Détruire, dit-elle(破壊しに、と彼女は言う)/Ed.de minuit」
  • 1970年「Abahan,Sabana,David(ユダヤ人の家)/Gallimard」
  • 1971年「L'Amour(愛)/Gallimard」
  • 1971年「<Ah! Ernesto>(<ああ!エルネスト>) Harlin Quist」
  • 1973年「India Song(インディア・ソング)/Gallimard」
  • 1973年「Natalie Granger(ナタリー・グランジェ),suivi de La Femme du Gange/Gallimard」
  • 1974年「Les Parleuses(entretiens avec Xavière Gauthier)/Ed.de Minuit」
  • 1977年「Le Camion(トラック)/(suivi de Entretien avec Michelle Porte)/Ed.de Minuit」
  • 1977年「Les Lieux de Marguerite Duras (en collaboration avec Michelle Porte)/Ed.de Minuit」
  • 1977年「L'Eden Cinema(エデン・シネマ)/Mercuse de France」
  • 1979年「Le Navire Night(船舶ナイト号),suivi de Cesarée, les Mains négatives, Aurélia Steiner/Mercure de France」
  • 1980年「Vera Baxter ou les plages de l'Atlantique(ヴェラ・バクスター、 あるいは太平洋の浜辺)/Al-batros」
  • 1980年「L'Homme assis dans le couloir(廊下に座っている男)/ Ed.de Minuit」
  • 1980年「L'Eté 80(80年夏)/Ed.de Minuit」
  • 1980年「Les Yeux verts(緑色の日)/ Cahiers du cinéma」
  • 1981年「Agatha(アガタ)/Ed.de minuit」 渡辺守章光文社古典新訳文庫 2010年
  • 1981年「Outside(アウトサイド)/Albin Michel」
  • 1982年「L'Homme atlantique(大西洋の男)/Ed.de Minuit」
  • 1982年「La Maladie de la mort(死の病)/Ed.de Minuit」
  • 1983年「Savannah Bay(サヴァナ・ベイ)/Ed.de Minuit」
  • 1984年「L' Amant(愛人 ラマン)Ed.de minuit」 清水徹訳 河出文庫 1992年
  • 1985年「Le Douleur(苦悩)/POL」
  • 1985年「La Musica deuxième(ラ・ミュジカ第二)/Gallimard」
  • 1986年「Les yeux bleus cheveux noirs(青い眼、黒い髪)/ Ed.de Minuit」
  • 1986年「La Pute de la côte normande(ノルマンディーの売春婦)/Ed.de Minuit」
  • 1987年「La Vie matérielle(物質的生活/愛と死、そして生活)/POL」
  • 1987年「Emily L.(エミリー・L)/Ed.de Minuit」
  • 1990年「La Pluie d'été(夏の雨)/POL」
  • 1991年「L'Amant de la Chine du Nord(北の愛人)/Gallimard」
  • 1992年「Yann Andrea steiner(ヤン・アンドレア・シュタイナー)/POL」
  • 1993年「Ecrire(エクリール)/Gallimard」
  • 1993年「Le Monde exterieur&Outside2(外部の世界・アウトサイド2)/POL」
  • 1996年「C'est tout(これで、おしまい)/POL」
  • 1997年「Romans, Cinéma, Théâtre, un parcours 1943 – 1993 (Oeuvre posthume)/ Gallimard - Quarto」

映画[編集]

監督[編集]

  • 冬の旅・別れの詩 La Musica (1967年)
  • 破壊しに、と彼女は言う Détruire, dit-elle (1969年)
  • ナタリー・グランジェ/女の館 Nathalie Granger (1972年)
  • ガンジスの女 La Femme du Gange (1974年)
  • インディア・ソング India Song (1975年)
  • 木立ちの中の日々 Des journées entières dans les arbres (1976年)
  • ヴェネツィア時代の彼女の名前 Son nom de Venise dans Calcutta désert (1976年)
  • トラック Le Camion (1977年)
  • バクスター、ヴェラ・バクスター Baxter, Vera Baxter (1977年)
  • 船舶ナイト号 Le Navire Night (1978年)
  • セザレ Césarée (1979年)
  • 陰画の手 Les Mains négatives (1979年)
  • オーレリア・シュタイネル メルボルン Aurelia Steiner, dit Aurélia Melbourne (1979年)
  • オーレリア・シュタイネル ヴァンクーヴァー Aurélia Steiner, dit Aurélia Vancouver (1979年)
  • アガタ Agatha et les lectures illimitées (1981年)
  • 子供たち Les Enfants (1984年)

原作・脚本[編集]

愛人/ラマンについて[編集]

マルグリット・デュラスの『愛人/ラマン』は、1992年に仏・英合作で映画化された。主演は香港の人気俳優レオン・カーフェイ、イギリス人女優ジェーン・マーチ。監督はジャン・ジャック・アノー。なお、デュラスは映画の出来に大きな不満を持つ。

なお、2001年にはデュラスの最後の恋人ヤン・アンドレアの著作『デュラス あなたは僕を(本当に)愛していたのですか』が『愛人 ラマン 最終章』としてフランスで映画化された。主演は『愛人/ラマン』でナレーションを務めたジャンヌ・モロー、エメリック・ドゥマリニー。監督はジョゼ・ダヤン

関連人物[編集]