ハバチ亜目

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ハバチ亜目(広腰亜目)
マツハバチの一種Monoctenus sp.01.JPG
Monoctenus sp.
(マツハバチ科)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハチ目(膜翅目) Hymenoptera
亜目 : ハバチ亜目広腰亜目Symphyta
上科

ハバチ亜目(ハバチあもく、Symphyta)、または、広腰亜目(こうようあもく、ひろこしあもく)は、昆虫綱ハチ目(膜翅目)を構成する2亜目のうちのひとつ。

他方の細腰亜目(ハチ亜目)に比べ原始的なハチ類であると考えられている。ヤドリキバチ科以外は全て植物に依存しており、食草が限られる単食性や狭食性のものが多い。栽培植物樹木を食害するものは農林害虫として防除の対象となることもある。

成虫は基本的に肉食であるが、水分以外にはほとんど食物をとらずに次世代を残し短期間で死ぬものから、小型の昆虫を捕食して卵巣成熟の栄養源となるタンパク質を摂取したり、アブラムシ類やカイガラムシ類の排泄する甘露から活動のエネルギー源である分を摂ったりしながら一定期間産卵し続けるものまである。また、成虫が捕食者を避けるための不快な味や臭いを発する物質を、植物から摂取するもの(例:カブラハバチ属 Athalia によるクサギ幼葉の毛茸(もうじょう)からのジテルペンの一種クレロデンドリン(clerodendrin)の摂取)も知られている。

特徴[編集]

原始的なハチ[編集]

6本の、4枚の、3個の単眼、2個の複眼といった有翅型昆虫の基本構造をよく保っており、完全変態をする。最大の特徴は、胸部と腹部が広い面積で繋がっていることで、そのためくびれのない寸胴型の体型をしている。アシナガバチやミツバチなどが属するくびれをもつ細腰亜目とはこの点で見分けられる。広腰亜目という名もこのことに由来するが、学名のSymphytaはギリシャ語のsyn(σύν:~と共に)+phyton(φυτόν:植物)に由来し、本亜目のもう一つの特徴である植物への依存を表している。ハバチ(葉蜂)という呼び方もまた同様である。

細腰亜目のハチに比べ翅には網目状の翅脈がよく発達し、その本数も多い。また、クキバチ科以外は後胸背面に一対の背粒(単:cenchrus・複:cenchri)と呼ばれる構造をもつ。これは閉じた前翅を固定するためのものとも言われるが、広腰亜目に特徴的なものである。幼虫には細腰亜目では消失している胸脚や腹脚(いぼあし)が発達しているイモムシ形のものが多く、それらは一見チョウ目(チョウやガ)の幼虫によく似ている。しかし長いをもたないことや、腹脚が通常5対以上あることなどから見分けられる。また細腰亜目に見られる社会性の種や、翅が消失した種なども広腰亜目には見られない。

これらの特徴の多くは、これらの昆虫がハチ目の中でも原始であることを示す特徴とみなされている。また、その食性が植物に強く依存していることから、ハチ目は広腰亜目の植物食をのものを起源とし、細腰亜目の寄生蜂を経て肉食性を獲得、狩り蜂へと進化したと考える研究者が多い。この場合、ハナバチ類は肉食のものから二次的に植物食に変化したと考える。

毒針を持たない[編集]

人を刺すハチ(それらは細腰亜目に属する)の毒針は産卵管が変化したものである。従って毒針を持つ種でも刺すのは雌だけであるが、広腰亜目では産卵管が毒針になっていないため、雌と言えども人を刺すことはない。亜目の代表ともいえるハバチ上科の産卵管は平たいノコギリ状で、英名をsawflyと言い、キバチ科のように木に産卵するものでは錐状の産卵管を持ち、英名をhorntailというが、彼女たちの持つ産卵管はいずれも植物体に切れ込みを入れたり穴を穿ったりして産卵をするためのものであり、他の動物を刺すためのものではない。そのため、もちろん毒もない。中には捕まえると腹部を曲げて刺す真似をするものもあるが、上述のように実際には刺すことができない。このような行動はハチに擬態した他の昆虫でも見られることがあり、捕食者が驚いて離す場合も多いと考えられ、行動による一種の擬態とみなされる。

分類[編集]

各科について記してあるの数はあくまでもおおまかな目安である。日本に産するものでさえまだ解明されていないと言われ、十分に解明されれば日本産だけで軽く1,000種を超えると考えられている。環境の悪化によっては記載される前に絶滅してしまう種がいる可能性さえあるという。当然世界全体では無数の名前のない種がおり、今後も長期間にわたり多くの種類が追加され続けるはずである。

広腰亜目(ハバチ亜目)Symphyta[編集]

世界に約14科10,000種、そのうち日本産約11科720種

  • ナギナタハバチ上科 Xyeloidea(1科)
    • ナギナタハバチ科 Xyelidae
      • 世界に約6属50種。うち日本産は約4属10種。マツの雄花やモミなどの新梢に穿孔するものと、広葉樹の葉を食うものがある。中生代三畳紀の化石が知られ、これはハチ目の確実な記録としては最も古いものとされる。微小な種が多く、ナギナタハバチは3mm程度。
  • アギトハバチ上科 Megalodontoidea(2科)(別名:クシヒゲヒラタハバチ上科)
    • アギトハバチ科 Megalodontidae(別名:クシヒゲヒラタハバチ科)
    • ヒラタハバチ科 Pamphilidae
      • 世界ではユーラシアと北米に約200種。うち日本産は約6属70種以上。幼虫は植物の葉を食い、群れとなることがある。口から糸を吐き足場や巣を作る。群れによる巣の様子はある種のガの幼虫のそれによく似る。
ミフシハバチ科ツツジ類に来たルリチュウレンジ。触角は3節で、根元の小さい2節の先に大部分を占める長い第3節がある。幼虫はツツジ類の葉を食べる。
コンボウハバチ科:外国産のモモブトハバチ属の一種(Cimbex sp.)の幼虫
  • ハバチ上科 Tenthredinoidea(世界に6科)♀の産卵管はノコギリ状。
    • ヨフシハバチ科 Blasticotomidae
      • 世界ではユーラシアの温帯に約2属10種。うち日本産約2属6種。触角は普通4節で3節目が非常に長く4節目は極めて短い。幼虫はシダ類の葉柄に穿孔する。古生代リンボクの化石に本科の幼虫の糞の可能性のある化石が含まれていたという。これが本科のものであるならハチ目の歴史は古生代までさかのぼることになる。
    • ミフシハバチ科 Argidae
      • 熱帯を中心に数十属800種。うち日本産約5属40種。触角は3節で3節目が非常に長い。幼虫は種々の植物を食う。チュウレンジバチ、クワガタハバチなど。
    • コンボウハバチ科 Cimbicidae
      • 世界に約20属130種。うち日本産約10属30種。触角の先端が膨んだ棍棒状。幼虫は広葉樹を食うが、群れにはならない。中型から大型の種が多く、キイロアシブトハバチは30mm以上。
    • マツハバチ科 Diprionidae
      • 世界に約7属100種。うち日本産約6属30種。触角は13節以上。幼虫は針葉樹を食う。
    • ハバチ科 Tenthredinidae
      • 世界では北半球を中心に百数十属6000種以上。日本産は約109属500種以上。広腰亜目で最大種数を誇り7亜科に分けられる。触角は7~12節。幼虫は種々の植物を食い、潜葉性のものや虫こぶを作るものもいる。カブラハバチなどの幼虫はアブラナ科の葉を食害し、菜の黒虫(なのくろむし)として知られる。
    • ペルガハバチ科 Pergidae
      • 北米に少数種がいるほかは主としてオーストラリア・中南米を中心に約50属400種以上。日本産なし。幼虫は広葉樹を食い、潜葉性の種も少数ある。
  • クキバチ上科 Cephoidea(世界に1科)
    • クキバチ科 Cephidae
      • ユーラシアを中心に世界に約12属100種。日本産約8属15種。幼虫はイネ科の茎内部や広葉樹の新梢内部を食う。
  • キバチ上科 Siricoidea(世界に1科)
    • キバチ科 Siricidae
      • 世界に広く分布し約9属100種。日本産約6属20種。産卵管は錐状。産卵時に体内に持つ腐朽菌を共に注入することで木を腐らせ、幼虫は菌により分解された木の幹内を食う。そのため森林害虫とされる。大型の種が多くニホンキバチは40mm近い。
  • ヤドリキバチ上科 Orussoidea(世界に1科)
    • ヤドリキバチ科 Orussidae
      • 世界で約16属80種。日本産約2属5種。特にアフリカで種類が多い。カミキリムシ科、タマムシ科、キバチ科などの木材穿孔性幼虫に外部寄生する。広腰亜目では唯一寄生性で、産卵管が非常に長く、卵もきわめて大きい特異な群。
  • 上科不詳
    • クキバチモドキ科 Anaxyelidae
      • 世界に1属1種で日本産なし。中生代に栄えた科で、北米産の唯一の現生種Syntexis libocedrii生きた化石といわれる。幼虫はヒノキ科の針葉樹の内部を食う。
    • クビナガキバチ科 Xiphydriidae
      • 世界に約22属80種。日本産約7属20種。広葉樹の木部を食う。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]