ツルニンジン

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ツルニンジン
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asterdiae
: キク目 Asterales
: キキョウ科 Campanulaceae
: ツルニンジン属
Codonopsis
: ツルニンジン
C. lanceolata
学名
Codonopsis lanceolata (Siebold et Zucc.) Trautv. (1879)[1]
和名
ツルニンジン(蔓人参)

ツルニンジン(蔓人参[2]学名: Codonopsis lanceolata)は、キキョウ科つる性多年草。地下に太い塊根があり、食用や薬用にされる。

名称[編集]

和名「ツルニンジン」は、は同科のキキョウツリガネニンジンと同様に太く、ウコギ科のオタネニンジン(高麗人参)に似るということから、名がつけられた[3]。別名、キキョウカラクサ[3]ジイソブ(爺のそばかすの意)ともいい[1]、これは類似種であるバアソブ(婆のそばかすの意で、花冠にある斑点による)に似てより大きいことによる。ツルニンジンの中国名は羊乳(ようにゅう)といい[3]、羊奶參の別名もある[1]

分布・生育地[編集]

東アジア一帯の森林に生育する。日本では北海道本州四国九州の平地から高山に分布する[2]。丘陵地や山地の林内や、林縁のやや湿り気のある場所にまばらに群生する[2]

形態・性質[編集]

つる性多年生草本[2]塊根は太く、オタネニンジン(人参)状である[2]

に茎を出し、他物に巻きつきながら伸びる。茎や根を切ると白い粘性のある乳液が出て、異臭を放つ[2]。葉は長楕円形から狭卵形で、側枝に4枚集まってつく[2]

花期は晩夏からにかけて[2]。側枝の先に淡緑色のを1個つけ、下向きに開く[2]萼片は大きく、花冠は釣鐘状で、外側は淡緑色、内側は紫褐の斑紋がある[2]子房下位で、果実は萼片のついた蒴果となる。

ツルニンジン属は55種ほどあり、中国を中心に東アジア一帯に分布する。日本には他にバアソブがある。

利用[編集]

地下茎を食用とし、4 - 11月ごろに掘り上げた塊根を適当な大きさに裂き、天ぷら醤油だれでつけ焼きなどにする[2]。塊根を茹でたものは、白和え酢の物酢味噌和えにする[2]。資源保護のため、採取の際はつるのつけ根の部分を残して、土の中に浅く埋めておくとよい[2]。韓国ではトドック(더덕)といい、代表的な山菜である。根をキムチや揚げ物、和え物にし、若芽も食べる。野生品は少ないので栽培もする。沙参とも呼ぶが、これは本来ツリガネニンジン属(シャジン)の呼び名である。

また、塊根は薬用にされ、山海螺(さんかいら)、四葉参(しようじん)と称する生薬になる[3]。8 - 9月ごろに塊根を掘り採って、きざんで天日乾燥して調製される[3]。高麗人参と同じような効能があるといわれ、薬用にもされる。漢方では、ツルニンジン属の他種を含めて党参(トウジン)と呼ぶ。

民間療法では、痰切りや倦怠疲労時に、1日量で塊根の乾燥品5グラムを400 ccの水で煎じて、3回に分けて服用する用法が知られる。また、容器の半量に分量でホワイトリカーに1か月漬け込んで薬用酒とし、体質を問わず1日量でお猪口1杯ほど飲まれる[3]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Codonopsis lanceolata (Siebold et Zucc.) Trautv. ツルニンジン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 高橋秀男監修 2003, p. 148.
  3. ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 102.

参考文献[編集]

  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、102頁。ISBN 4-09-208016-6 
  • 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、148頁。ISBN 4-05-401881-5 

外部リンク[編集]

  • ウィキメディア・コモンズには、ツルニンジンに関するメディアがあります。