キムチ
提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
| キムチ | |
|---|---|
| 各種表記 | |
| ハングル: | 김치 |
| 片仮名: (現地語読み仮名) |
キムチ |
| ラテン文字転写: | Kimchi |
キムチ(김치)は白菜などの野菜を薬念(ヤンニョム)と呼ばれる薬味で漬けた、朝鮮を代表する漬物。朝鮮漬とも。
目次 |
[編集] 概要
一般的なキムチは唐辛子がふんだんに使われており、真っ赤な色が特徴的の辛い漬物である。辛いだけでなく薬念と乳酸発酵による旨味と酸味が混じり合った複雑な味を持ち、韓国以外でも米食文化圏においては一般的に食されている。一方で、その辛さ酸味、また薬念に使うニンニクの臭いから敬遠する人も多い(ただし、本来、キムチとは朝鮮語で「野菜を漬けたもの」という意味であり、唐辛子の有無は関係がない。唐辛子やニンニクを使わないキムチも存在する)。 韓国、北朝鮮だけでなく海外の朝鮮民族の多く暮らす地域では市場などで簡単に手に入る。
日本でも一般的であり、単独であるいは付け合せ(特に焼肉店)として食べられるほか、豚肉と一緒に炒めた「豚キムチ」などの材料や、チゲの具(キムチチゲ)としても用いられる。
[編集] 言葉
朝鮮語で「野菜を漬けたもの」の意である沈菜(침채、チムチェ)が語源であるとされる。ただし、沈漬(チムチ)、鹹菜(ハムチェ)等、その他の語源説もある。
[編集] 英語表記
キムチの英語表記について、Kimuchi(日本語・カナから転写)と表記し発売・輸出したものが日本で定着し世界に広がりつつあったが、韓国側は正しくはKimchi(朝鮮語音からマッキューン=ライシャワー式にて転写)であると主張し、論戦となった。そのため、1996年3月に国際食品規格委員会(CODEX)のアジア部会にて韓国側のメンバーから国際的な「キムチ」の定義を行おうと提案があり、韓国側の主張が認められた。なお、文化観光部2000年式ではGimchiであり、こちらの表記で書かれる場合もある。
[編集] 歴史
文献上キムチがはじめて登場したのは13世紀初頭、李奎報の詩においてだが、少なくともそれ以前から存在していたと考えられている。
16世紀、朝鮮半島に日本から唐辛子が伝来し、現在のように赤く辛いものが作られるようになった。唐辛子の普及以前においてはもっぱら山椒が使用されていた。なぜ唐辛子を山椒の代わりに使用し始めたかについては明らかにされていない。
持ち込まれた当初、朝鮮では唐辛子のことを倭芥子、若しくは倭椒と呼び、毒があるとして忌避していたが、後にキムチをはじめとした料理に用いるようになった。1670年のハングル料理書『飲食知味方』に出てくるキムチは、唐辛子を使用したものは一つも見られず、 19世紀の文献『閨閤叢書』(1809)に出てくるキムチを見ると、粉トウガラシではなく千切りの唐辛子が少し入っている記録が残っており、19世紀前後に唐辛子が使用され始めたことが推測される。韓国人は子供の頃からキムチを食べているので辛さに慣れている。しかし、韓国人も皆辛さに強いわけではないため、キムチは近年子供が嫌いな食べ物のワースト一、二を常に争っている。近代化にしたがい、若者がキムチを食べるよう強いられる機会も減り、キムチの消費量は減少傾向にある。
2005年10月、韓国で中国産の輸入キムチから寄生虫の卵が検出され問題となった。韓国政府が調査した結果、同国産のキムチにも寄生虫卵が発見された。寄生虫卵は未熟性のものであり、主に白菜から検出された。これらは、土中の人糞、犬猫などの動物の糞尿が感染源と見られ、製造過程に於ける白菜の洗浄が適切でなかったためと見られている。食べても問題はないとしたが、韓国政府は該当する製造メーカーに対し洗浄の徹底と寄生虫卵の残留可否を検査するように義務付けた。
ソビエト連邦時代に沿海州から朝鮮系住民(高麗人)が強制移住させられたウズベキスタンでは、現在市場やレストランでキムチ(シムシャとも呼ばれる)がよく見られるほどに普及している。
[編集] 種類
様々な具材を使ったキムチがあり、その数は200種類以上あると言われている。
- ペチュギムチ(배추김치)
- 白菜のキムチ。単に「キムチ」と称した際はこの白菜キムチを指すことが多い。19世紀に中国で新品種の白菜が輸入され一般的になった。
- オイギムチ(오이김치)
- 胡瓜のキムチ。オイソバキ、オイキムチとも。
- カクトゥギ(깍두기)
- 大根のキムチ。カクテキとも。大根を六面体に切って作る。
- チョンガクキムチ(총각김치)
- チョンガク大根(小型の大根)のキムチ。
- ポサムキムチ(보쌈김치)
- 開城地方の名物。生のイカや牡蠣などを白菜の葉で包んで漬ける。保存がきかないため二、三日で食べきらなくてはいけない。ポッサムキムチとも。
- ヤンベチュキムチ(양배추김치)
- キャベツ(양(洋)배추、洋白菜の意)のキムチ。白菜の手に入りにくいヨーロッパなどへ移住した朝鮮系住民によってよく作られていた。近年開発された特殊な乳酸菌を用いて、キムチにすることに成功し、現在一部で市販されている。長期保存可能な食品に加工できることは、キャベツが生産過剰となった場合の有効な利用も期待できる。
- ムルギムチ(물김치、水キムチ)
- 唐辛子とニンニクを使わない、汁気の多い白いキムチ。汁ごと食べる。ムルギムチの汁は冷麺の汁には欠かせない。
|
レンコンのムルギムチ |
[編集] 製造法
一般的な白菜キムチは以下のように漬ける。
白菜を一日ほど塩に漬ける。
これを水で洗って塩抜きし、葉に薬念をまぶして壺に本漬けする。薬念としては、唐辛子、塩漬けされたアキアミ(日本ではアミエビの名が一般的)、イカ、イシモチ、イワシなどの塩辛の他、牛肉や煮干し、昆布などの出汁を合わせたものが用いられる。リンゴ、梨、栗、ナツメなど果物を加えて味をまろやかにすることもある。
本漬けで四、五日ほど発酵させると出来上がりである。
[編集] 健康
キムチは発酵食品であり、乳酸菌またビタミンも豊富である。[1]。 一方、漬物ではあるので、大量に食べるとやはり塩分過多になる。韓国保健産業振興院の調査により、キムチを平均の3倍程度食べる高齢女性は肥満、高血圧、高脂血症にかかりやすいということがわかっている[2]。 韓国政府(保健福祉部)が2005年に行なった調査によると、韓国成人の塩分摂取量が世界保健機構(WHO)推奨値の2.7倍と極端に多いことが判明した。[1]WHOの塩分摂取推奨値(成人)は一日あたり5グラムだが、韓国成人は13.5グラム摂取(男性14.9グラム・女性12.2グラム)している。又松大学校のチョン・ヘジョン教授が2009年6月30日に発表した説によると、韓国人は1日の塩分摂取量の31.2%をキムチ類から取っているという。[2] なお唐辛子を多く摂る韓国のような国では胃癌の発癌率が高く、唐辛子の過剰摂取との関連性が指摘されている[3][4][5][6][7]。
[編集] 日本とキムチ
キムチに使われる唐辛子は、朝鮮出兵の際に日本が朝鮮半島に持ち込んだものが起源とされる。この頃日本で唐辛子は毒草と考えられており食用ではなく武器であった。凍傷予防の薬として持ち込んだという説もある。また、江戸時代に朝鮮通信使が持ち帰ったという説もある。それ以前は塩などに漬けられていた。
昭和後期に入る頃までは、その辛さが日本人の味覚に合わなかったことから、存在は知られていてもあまりなじみのないものであり、キムチという名称も一般的ではなく「朝鮮漬」と呼ばれることが多かった。
しかし1980年代後半に激辛ブームが起こると消費量が増加、ブームが沈静化した後も高い人気を保ち、一般のスーパーマーケットやコンビニエンスストアで手に入るほか、コリア・タウンで本場のキムチを買い求める客も多い。一般のスーパーでは当初、日本国産のキムチが売られていたが、1990年代から急速に消費量が増え、韓国から輸入されたキムチも流通しはじめた。社団法人・食品需給研究センターによると、キムチは2004年に日本国内で浅漬けに次いで二番目に多く消費された漬け物である[8]。
日本で売られているキムチは、日本人向けに味付けされたものがほとんどで、韓国のキムチと比べると酸味が抑えられ甘みが強い。(「本場」と書かれていても、本場のキムチとは味が大きく異なるものが少なくない。)コリア・タウンで売られているものでも日本人向けに味付けされた物も多く、本場のキムチを手に入れたい場合は確認が必要である。
[編集] 日本式キムチ
「浅漬け」も参照
日本では浅漬けの製法(白菜の塩漬けに調味料を加える方法)でもキムチが作られており、浅漬けキムチ、和風キムチなどと呼ばれ、伝統的な製法のものとは区別される。地方によっては唐辛子をやや多めに使った白菜漬のことを「朝鮮漬」と称する例も多い。
伝統製法のキムチと、日本式キムチの違いは、主に乳酸発酵の有無にある。韓国式伝統製法では乳酸発酵が行われる。時間の経過で乳酸発酵が進み、酸味が強くなるので、食べ頃には好みが生ずる。一方、日本式のキムチは浅漬けに唐辛子のキムチ風辛み味付けをした物で、日本人の好みに合わせあっさりした味付けの物が多い。どちらの品も日本では受け入れられている。なお、日本式キムチをチゲなどの鍋物・汁物に用いると、白菜の表面の調味料が流れ落ち、単なる浅漬け入りの辛い鍋になってしまう場合もあるので、極力伝統製法のキムチを使った方が良い。
近年では、キムチの素と称する調味料が販売されており、一般家庭でも本格的な物には劣るが、容易にキムチを作れるようになっている。
[編集] その他
この節に雑多な内容が羅列されているので、本文として組み入れるか整理・除去する必要があります。
- 伝統的な製法のキムチは発酵食品であるためガスが発生する。そのため、完全な密閉容器にキムチを詰めて室温で保管していると、数日で破裂する恐れがある。
- 韓国では、日本でいう味噌汁のように家庭の味を象徴する料理であり、「良いキムチを作れる女性は良い妻となれる」という言葉まであるが、最近はスーパーなどで既製品のキムチを買う主婦も多い。特に若い世代では、65%がキムチの作り方を知らないと回答していると2007年10月25日、コリア・タイムズが伝えた[9]。
- 韓国ではポピュラーな家電製品として、発酵や保存に適切な温度を保つことが出来るキムチ専用の冷蔵庫が存在する。LG電子では日本でも「食品貯蔵庫」として発売している。
- 朝鮮半島では毎年秋に越冬用として大量のキムチを漬ける。これを「キムジャン」という。大企業などではそのためのボーナスも出る。
- 韓国には「キムチ債」と称する債券がある。これは日本でいう「ショーグン債」に該当するもので、外国企業が外貨建てで韓国において募集する外貨建外債を指す。
- 韓国は自国産のキムチを日本などに輸出する一方、安価な中国産キムチを輸入しており、輸入量が輸出量を上回るほどである。安価な中国産キムチの用途は、主として飲食店で出される「突き出し」である。日本の喫茶店で出される水や寿司屋のガリが基本的に無料であるのと同様に、韓国の飲食店ではキムチを含む副菜は無料で、無くなるつど補充される(韓国料理の特徴を参照)。
- 韓国では写真を撮る際、主に「チーズ」の代わりに「キムチ」と言う。ただし「チーズ」も時々使われることがある。詳しくはチーズ#写真を撮る際の「チーズ」参照。
- オリンピック選手の証言などでは、キムチを大量に食べると覚醒剤反応が出るので摂取を控えるように指導を受けるという(辛い物を大量に食すると身体が興奮し、興奮物質が分泌されて覚醒剤投与時と同様な状態になってしまうため)。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ "キムチが世界の5大健康食品に選ばれる". 朝鮮日報. 2006年3月27日 閲覧。
- ^ "キムチの食べ過ぎで生活習慣病の危険". 中央日報. 2007年4月1日 閲覧。
- ^ 新宿健康塾ニュース10月号「味覚障害」【Health Index】FINE-club~健康で元気な暮らし情報
- ^ Mathew A, Gangadharan P, Varghese C, Nair MK (2000). “Diet and stomach cancer: a case-control study in South India”. Eur. J. Cancer Prev. 9 (2): 89–97. DOI: 10.1097/00008469-200004000-00004. PMID 10830575.
- ^ López-Carrillo L, López-Cervantes M, Robles-Díaz G, et al (2003). “Capsaicin consumption, Helicobacter pylori positivity and gastric cancer in Mexico”. Int. J. Cancer 106 (2): 277–82. DOI: 10.1002/ijc.11195. PMID 12800206.
- ^ Archer VE, Jones DW (2002). “Capsaicin pepper, cancer and ethnicity”. Med. Hypotheses 59 (4): 450–7. DOI: 10.1016/S0306-9877(02)00152-4. PMID 12208187.
- ^ López-Carrillo L, Hernández Avila M, Dubrow R (1994). “Chili pepper consumption and gastric cancer in Mexico: a case-control study”. Am. J. Epidemiol. 139 (3): 263–71. PMID 8116601.
- ^ http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=home&NWID=2005033101000060
- ^ "【こぼれ話】韓国女性の65%がキムチの作り方「知らない」". 時事通信. 2007年10月25日 閲覧。
[編集] 参考文献
- 家永泰光、盧宇炯(共著)『キムチ文化と風土』 古今書院、1987年12月、ISBN 4772211012
- 李連順『キムチ物語』 光村推古書院、2002年12月、ISBN 4838199163
- 李御寧、李圭泰、金晩助(共著、金淳鎬訳)『キムチの国』千早書房、2000年12月、ISBN 488492259X
- 李信徳『韓国料理 伝統の味・四季の味』 柴田書店、2001年12月、ISBN 4388058955
- 講談社編『極辛版キムチ大探検』(講談社文庫) 講談社、1988年8月、ISBN 4061842285
- ジョン・キョンファ『キムチの味』 晶文社、1993年12月、ISBN 4794961510
- 田村研平『在日キムチにおける誤解 食と難民をつなぐ関係』 情報センター出版局、1988年4月、ISBN 4795807426
- 谷川彰英(監修)『国際理解にやくだつNHK地球たべもの大百科 9 韓国』 ポプラ社、2001年4月、ISBN 4591067149
- 崔弘植(盧宇炯訳)『キムチ力』 YB出版、2001年6月、ISBN 4901337130
- 鄭大聲『焼肉・キムチと日本人』(PHP新書) PHP研究所、2004年2月、ISBN 4569634001
- 豊田有恒、豊田久子(共著)『豊田さんちのキムチ大作戦 キムチの漬け方、食べ方、健康法』 有楽出版社、1999年3月、ISBN 4408591246
- 韓福麗(守屋亜記子訳)『キムチ百科 韓国伝統のキムチ100』 平凡社、2005年9月、ISBN 4582127215
- Visson, Lynn. The Art of Uzbek Cooking. Hippocrene, New York, 1999. ISBN 0781806690
[編集] 外部リンク
- ソウル市観光公式サイト-キムチ
- 韓国食品開発研究院: Kimchi(ハングル・英語)