ダイソン球

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ダイソン球(だいそんきゅう、Dyson Sphere)とは、恒星の殻のように覆ってしまう仮説上の人工構造物。恒星の発生するエネルギーすべての利用を可能とする宇宙コロニーの究極の姿と言える。名前は高度に発展した宇宙空間文明により実現していた可能性のあるものとしてアメリカ宇宙物理学者フリーマン・ダイソンが提唱したことに由来する。

日本語への定訳はなく、ダイソン球の他にも「ダイソン球殻(きゅうかく)」や「ダイソン殻(かく)」「ダイソン環天体」といった訳語がある。テレビ番組『新スタートレック』では「ダイソンの天球」と訳された。

概要[編集]

1960年にアメリカの物理学者フリーマン・ダイソンは、高度に発展した宇宙文明では恒星の発する熱や光を活用するために、恒星を覆う巨大な球体=殻を建造している可能性があると考察した。自然のままでは恒星が全方位に発するエネルギーのほとんどは宇宙空間に消え、小さな点のような惑星などが受け止めたほんの一部しか利用されない。だが、ダイソン球を作ることで桁違いに大量のエネルギーが利用可能となるというものである。このような恒星を包む人工生命圏の着想はダイソンの発案とされているが、ダイソン自身は自伝『宇宙をかき乱すべきか』の中で、かつて読んだオラフ・ステープルドンの『スターメイカー』に登場する恒星の光を捕獲するための網に由来すると述べている。

ニコライ・カルダシェフは、高度に発達した宇宙文明を3つの段階に分けている。

  • 第一段階 一つの惑星上で得られる全エネルギーを利用する文明
  • 第二段階 一つの恒星系で得られる全エネルギーを利用する文明
  • 第三段階 一つの銀河系で得られる全エネルギーを利用する文明

21世紀初頭現在の地球文明は第一段階にも達していない。ダイソン球殻は第二段階に至るために建設され、第三段階ではすべての銀河系内の恒星がダイソン球殻で覆われることになるであろう。

また、球体をエネルギー的に閉じた状態にしていると蓄積されたエネルギーはエントロピー増大則により熱となりさまざまな問題を起こすことになる。これを防ぐには、外部へエネルギーを赤外線等の形で放出して温度を下げる方法が有効と考えられる。ゆえに、不自然な赤外線放射の探査によりダイソン球を建造できるような高度な地球外文明を発見することができるだろうとダイソンは主張している[1]。 このため、宇宙を飛び交う電磁波から人工的な通信等を発見する地球外知的生命体探査SETI)計画の一環として、天文観測における赤外線放射を調べる分野でのダイソン球発見が期待されている。日本では、1991年12月15日寿岳潤と野口邦男が宇宙科学研究所の赤外線望遠鏡を用いて探査を行った(詳細は、地球外知的生命体探査SETI)を参照)。また公開天文台である兵庫県立西はりま天文台鳴沢真也が、口径2mの反射望遠鏡なゆたを使った赤外線観測によるダイソン球探査を構想している[2]

なお、恒星系と同レベルのスケールを持つこの巨大構造物は「究極の文明」をあらわすものとしてSF等にも登場し、よく知られたアイデアとなっている。ラリー・ニーヴンの「リングワールド」もこのダイソン球の一部を円環状に切り出したものである。

建造法[編集]

ダイソン・リング。独立した人工天体群が公転軌道上に配置され恒星の周りを回る
複数のダイソン・リングが集まったダイソン・スウォーム
ダイソン・バブル。人工天体群を軌道上に配さないもの

ダイソン球は天文単位規模の巨大な構造物であるが、建築の初期段階は人工天体の打ち上げと大して変わらない。ただ、惑星の公転軌道に人工物を並べていき、それらをつなげて恒星を取り巻く“輪”を作るところから始まる。しかし、恒星がいくつかの惑星を従えていた場合、輪をつなぎ合わせ、広い幅を持った“帯”にする段階で、これら惑星の重力を受けて輪にゆがみを生じるという問題が生じる。

細い輪であれば、そのゆがみも大した問題に成らないし、質量がまだ小さいので、修復も比較的容易である。しかし、帯になるころには、最終的には球面状になるよう緩やかに湾曲していなければならないのに、ゆがみによって帯の赤道面や上下の縁が引っ張られたり押し潰されたりして形が崩れてしまうという事態に直面する。

これを解消するには、二つの方法が想定される。一つは、原因となる惑星そのものを球殻の建材に使用するなどして除去すること。もう一つは、固定された一枚の平面ではなしに、重なり合う複数の板状物体の集まりによって帯を構成するなどの工学的な問題として解決することである。

前者では、どんどんと帯の幅を広げていき、最後に残った球殻の“北極・南極”に蓋をしてしまえば完成となり、後者では、完全に閉じてしまわずに、オウムガイの殻で作ったランプシェードのような形の物や帯を何重にも連結したものになると考えられる。

ダイソン球が登場する作品[編集]

小説[編集]

アブリアル伯国をすっぽり覆う反物質工場「帝国の乳房」が登場する。
ダイソン球の外側を舞台としている

漫画・アニメ[編集]

太陽系全域に渡って構築された都市構造体が舞台となっている。
ウルトラジャンプ2008年5号掲載(読み切り)
木星を中心としたダイソン球が建造されているが、工事は中断中となっている。
登場人物の1人がダイソン球をモチーフにしたモンスターカードを使用する。

ゲーム[編集]

暗黒星団帝国本星がダイソン球の中に存在した。球は単一の構造物ではなく、濃密なガス状物質によって構成されている。
古代に栄えた高度な宇宙文明の遺物として登場。
太陽のエネルギーを上位宇宙へのワープゲートへと利用している。
エネルギーよりも惑星上への外敵の降下を防ぐのが主目的である。
人工知能に支配された地球型惑星が、機械に適した環境への徹底した最適化を受けた果てに、中心核が消失しダイソン球へ置き換えられる。

テレビドラマ[編集]

映画[編集]

脚本のデヴィッド・スカルパが、飛来する宇宙船はダイソン球がモデルだと解説で語っている

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Freemann J. Dyson (1960). "Search for Artificial Stellar Sources of Infra-Red Radiation". Science 131: 1667–1668. DOI:10.1126/science.131.3414.1667.
  2. ^ 鳴沢真也 2003 第14回西はりま天文台シンポジウム「2m望遠鏡を使う」集録 p.65

外部リンク[編集]