スルフォラファン

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スルフォラファン
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識別情報
CAS登録番号 4478-93-7
PubChem 5350
特性
化学式 C6H11NOS2
モル質量 177.29 g/mol
外観 油状
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

スルフォラファン (sulforaphane) とは、ブロッコリーに微量含まれるフィトケミカルの一種。体内の解毒酵素や抗酸化酵素の生成を促進し、体の抗酸化力や解毒力を高める。

性質[編集]

スルフォラファンはイソチオシアネートの一種でアブラナ科野菜の中でもブロッコリーなどに含まれる。通常、植物細胞内では前駆物質であるスルフォラファングルコシノレート (SGS) の状態で存在する。これが、咀嚼などによってミロシナーゼと反応し、加水分解されることでスルフォラファンに変化する。前駆物質であるSGSは熱に強く、水に溶けやすいが、スルフォラファンは揮発性。

研究[編集]

発見[編集]

がん予防の研究を専門とする米国ジョンズ・ホプキンス大学のポール・タラレーらは、さまざまな植物成分を調査した結果、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンにがん予防効果があることを発見した[1]

高濃度化[編集]

タラレーはその後もスルフォラファンの研究を継続し、スルフォラファンの高濃度化に取り組んだ。そして、ブロッコリーの品種を選抜し、特定品種の発芽3日目のスプラウトの状態が最適だと結論づけた。その発表により、米国ではブロッコリースプラウトブームが起こり、野菜コーナーに並ぶようになった。なおブロッコリースプラウトにおけるスルフォラファン含有量は成熟ブロッコリーの約10倍~品種によっては20倍にものぼるといわれている。

効果[編集]

解毒作用(がん予防)[編集]

人の体には、体内に取り込まれた発癌物質を無毒化し、体外に排出する解毒酵素(第2相酵素)が存在する。タラレーは、スルフォラファンにその解毒酵素の生成を活性化する働きがあることを突き止めた[2][3][4]

抗酸化作用[編集]

スルフォラファンの抗酸化作用は、ビタミンCビタミンEといった代表的な抗酸化物質とは異なり、長時間作用し続けるという特徴を持つ。ビタミンCが摂取後数時間でその効果を失うのに対し、スルフォラファンの効果は約3日間持続することができる。これは、スルフォラファンの抗酸化作用が抗酸化酵素によるものであり、スルフォラファンがこの抗酸化酵素の生成を促すという間接的な働きをするためである。[5]

肝機能[編集]

スルフォラファンが体内に潜在的に存在する解毒酵素を活性化することで、肝臓の解毒力を高め(解毒作用)、肝機能の向上(肝障害抑制など)に寄与する、という研究結果もある。

新陳代謝[編集]

スルフォラファンは体内に摂り込まれると、抗酸化酵素の生成を促進する。これによって、グルタチオンを抗酸化物質として損失することなくDNA合成の材料として使うことができる。また、スルフォラファンにはグルタチオンの生成を促す作用もある。その結果、細胞分裂が活性化され、新陳代謝を上げることができる。

ピロリ菌[編集]

スルフォラファンには胃癌の原因の一つといわれているピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の殺菌効果が報告されている。タラレーの研究グループの一人であるジェド・ファヒーの研究によると、胃炎胃潰瘍十二指腸潰瘍の患者から摂取した48株のピロリ菌全てに対して、スルフォラファンは制菌・殺菌効果をあらわした。抗生物質の耐性を持った菌株でも殺菌効果がみられた[6]。 また、筑波大学の谷中による臨床試験によって、スルフォラファンを多く含む発芽3日目のブロッコリースプラウトを2ヶ月食べ続けたピロリ菌感染者で菌の減少が確認された。

その他[編集]

スルフォラファンには皮膚への紫外線によるダメージを防御する効果や、肝癌高血圧心臓病の予防効果なども報告されている。

参考文献[編集]

  1. ^ Zhang, Y.; Talalay, P.; Cho, C.; Posner, G. H. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 1992, 89, 2399–2403.
  2. ^ Zhang, Y; Kensler, T. W.; Cho, C. G.; Posner, G. H.; Talalay, P. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994 91, 3147–3150.
  3. ^ Fahey, J. W.; Zhang, Y.; Talalay, P. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94, 10367–10372.
  4. ^ Basten, G. P.; Bao, Y.; Williamson, G. Carcinogesis 2002, 23, 1399–1404.
  5. ^ Fahey, J. W.; Talalay, P. Food and Chem. Toxicology 1999, 37, 973–979 DOI: 10.1016/S0278-6915(99)00082-4
  6. ^ Fahey, J. W.; Haristoy, X.; Dolan, P. M.; Kensler, T. W.; Scholtus, I.; Stephenson, K. K.; Talalay, P.; Lozniewski, A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2002, 99, 7610–7615.