キンチャクダイ科

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キンチャクダイ科
Pomacanthus semicirculatus 1.jpg
サザナミヤッコ Pomacanthus semicirculatus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : スズキ亜目 Percoidei
: キンチャクダイ科 Pomacanthidae
英名
Marine angelfish
下位分類
本文参照

キンチャクダイ科Pomacanthidae)は、スズキ目スズキ亜目に所属する魚類の分類群の一つ。8属で構成され、タテジマキンチャクダイサザナミヤッコなどサンゴ礁に生息する熱帯魚を中心に82種が含まれる。

概要[編集]

サザナミヤッコ属の1種 Pomacanthus rhomboides の稚魚。本科魚類は成長段階によって体色が大きく異なる

キンチャクダイ科は太平洋インド洋大西洋熱帯域に分布する海水魚のグループで、特に西部太平洋に住む仲間が多い。ほとんどは水深20mより浅い海で暮らし、深所にまで分布する種類はまれである。同じスズキ亜目のチョウチョウウオ科ベラ亜目の仲間と並び、サンゴ礁魚類の代表的存在として知られる[1]

鮮やかで美しい体色をもつ種類が多く、一般には「ヤッコの仲間」として親しまれる。体色は成長段階によって著しく変化し、稚魚と成魚ではまったく異なる色彩・斑紋を呈することがしばしばある。性別による体色の差も大きく、いわゆる性的二形を示す種類が多い。また、キンチャクダイ類の多くは雌性先熟型の雌雄同体で、すべての個体が当初は雌として成長し、ある程度大きくなると雄に性転換する。1匹あるいは複数の大型の雄によってハーレムが形成されるものとみられるが、繁殖行動については詳細が明らかになっていない種類が多い[1]

本科魚類はその美しい色彩から、水族館などで観賞魚として飼育されるほか、スクーバダイビングでの観察対象としても一般的な存在である。日本ではサザナミヤッコロクセンヤッコなどの中型種を食用として利用する。

キンチャクダイ類は「エンゼルフィッシュ Angelfish」の英名をもつが、日本語で「エンゼルフィッシュ」と言った場合はベラ亜目シクリッド科に属する淡水魚エンゼルフィッシュPterophyllum 属)を指すことが多い。英語ではシクリッド科のエンゼルフィッシュを「Freshwater angelfish」、キンチャクダイ類を「Marine angelfish」として区別する。

形態[編集]

キンチャクダイ科魚類は、著しく側扁した平べったい体型をもつ。一見してチョウチョウウオ科の仲間に類似するが、前鰓蓋骨にはチョウチョウウオ類にはない強いトゲが存在する[1]。オスにはこのトゲが2対ある。また、チョウチョウウオの仲間に見られる腹鰭の付け根のトゲ、および浮き袋の突起をいずれも欠く[2]。さらに、頭部を骨板に覆われたトリクティス幼生期を経ずに成長することも、チョウチョウウオ科との重要な鑑別点となる[1]

連続した一つの背鰭をもち、棘条および軟条はそれぞれ9-15本・15-37本。臀鰭は3棘14-25軟条で構成される。多くの種類では背鰭・臀鰭の中央から後方にかけての軟条が大きく発達し、後方に細長く突き出ることもある。尾鰭は15本の分枝した鰭条からなり、辺縁は丸みを帯びるか、あるいはタテジマヤッコ属のように三日月型になる。椎骨は24個。

分類[編集]

ニシキヤッコ Pygoplites diacanthus (ニシキヤッコ属)。鰓蓋から後方に突き出した水色のトゲが明瞭である
キンチャクダイ Chaetodontoplus septentrionalis (キンチャクダイ属)。温帯域にも分布する普通種
セダカヤッコ Pomacanthus maculosus (サザナミヤッコ属)。日本からも採集記録があるが、例外的な迷入と考えられている[1]

キンチャクダイ科は8属82種で構成される[2]。日本および台湾の近海に分布するスミレヤッコ Centropyge venustus は当初 Holacanthus 属として記載され、後に独立の Sumireyakko 属とされたが、同属は現在ではアブラヤッコ属のシノニムとして扱われることが多い[1][2]

  • アブラヤッコ属 Centropyge
  • キンチャクダイ属 Chaetodontoplus
  • サザナミヤッコ属 Pomacanthus
  • シテンヤッコ属 Apolemichthys
  • シマヤッコ属 Paracentropyge
  • タテジマヤッコ属 Genicanthus
  • ニシキヤッコ属 Pygoplites
  • Holacanthus

主な種類[編集]

キンチャクダイ Chaetodontoplus septentrionalis
成魚は赤みがかかった茶色の地色に青色の縦縞をもつ。水深30m以浅の岩礁に生息し、カイメン類ホヤ類を食べる。日本近海の太平洋側ではよくみられる。アカネキンチャクダイは本種とキヘリキンチャクダイの交雑種であることが最近の研究によりわかった。
タテジマキンチャクダイ Pomacanthus imperator
太平洋インド洋に生息する。幼魚は濃紺の体に白色の縞模様をもち、縞が同心円状になることは本種ならではの特徴である[1]。成魚は青と黄色の縦縞をもつ。本科の中では比較的大きくなり、全長40cmほどにまで成長する。英名はエンペラー・エンゼルフィッシュ。
アデヤッコ Pomacanthus xanthometopon
西部太平洋からインド洋にかけて生息し、成魚は名前の通り艶やかで美しい。幼魚は濃紺の地にさざなみのような白い縞模様が入る。英名はブルーフェイス・エンゼル。比較的大型の種類で、全長40cm。
サザナミヤッコ Pomacanthus semicirculatus
西部太平洋を代表するヤッコ。丈夫で入荷量も多く値段も安いため、個人のアクアリウム飼育においてヤッコの入門種として知られている。幼魚は特徴的なさざなみ模様をもつ。
セダカヤッコ Pomacanthus maculosus
西部インド洋・紅海に生息する、最大で50cmほどになる大型のヤッコ。英名は「イエローバンド・エンゼルフィッシュ」で、こちらのほうが、良く使われ、和名はあまり聞かない。また、愛称があり、「マクロスス」と呼ばれる。「マクロスス」は主に飼育愛好家など、一部の人が使っている。(店により、「マクロスス」を使っていることもある。)幼魚は黒い体に白や水色の横縞模様が多数入る色彩をしている。成長につれて体の中央に三日月型の黄色い斑紋が現れ、縞模様は不鮮明になる。成魚は背鰭と臀鰭の軟条が伸長し、美しい姿から観賞魚として人気が高い。

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 『日本の海水魚』 pp.402-412
  2. ^ a b c 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.379-380

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]