オリバー・ツイスト

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オリヴァー・ツイスト
Oliver Twist
1838年発行の初版より口絵と表題紙イラストとデザインはジョージ・クルックシャンク。
1838年発行の初版より口絵と表題紙
イラストとデザインはジョージ・クルックシャンク
著者 チャールズ・ディケンズ
発行日 1838年
イギリス
言語 英語
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オリヴァー・ツイスト』(Oliver Twist )は、チャールズ・ディケンズの長編小説。1837年から1839年まで「ベントリーズ・ミセラニー」に月刊分載、単行本は1838年刊。

孤児オリヴァーが様々な困苦にもめげずに立派に成長するまでを描く。作者の出世作。

あらすじ[編集]

救貧院で暮らす孤児オリヴァーは、ここを管理する教区吏のバンブルからほかの孤児たちと同じように虐待を受けていた。ある日オリヴァーはくじで選ばれたために、孤児の代表として粥を哀願しに行くが、このためにオリヴァーは教区から問題児と見なされる。そして葬儀屋に働きに出されるが、我慢ができずロンドンへ逃げた。

そこではユダヤ人フェイギンを頭とする窃盗団にむりやり入らされ、オリヴァーに盗みをするように仕込もうとする。だがオリヴァーは悪に染まらず、ふとしたことがきっかけで紳士ブラウンローに保護される。この温かい一家にオリヴァーは幸福感に浸るが、やがてまたフェイギン一味に捕らえられ、ビル・サイクスとともに盗みへ出かけることになった。オリヴァーは盗みに入る家に侵入する際にしくじり負傷、しかしそのメイリー家のローズに介抱され、そこで親切にされる。

一方そのころモンクスという男が、オリヴァーに不利な情報をもってフェイギンに接近しようとしていた。オリヴァーに同情していたサイクスの情婦ナンシーは、オリヴァーを醜聞から助けようと、一味の巣窟を教えるが、それがためにサイクスに惨殺される。しかし一味には警察が入り、フェイギンは捕らえられ絞首刑、サイクスは逃走の末事故死する。そしてオリヴァーの出生が明らかになり、ブラウンロー紳士とともに幸せに暮らすことになった。

主な登場人物[編集]

オリヴァー・ツイスト
主人公。養育院で生まれ、すぐに母親が死亡。純粋な心を持った孤児。常に感謝の心を忘れることなく生きる。9歳のころ移された救貧院を抜け出しロンドンへ逃亡するが、フェイギン率いる窃盗団に捕まる。その後、紆余曲折を経て紳士のブラウンロー氏の元で幸せな生活を送る。その出生には大きな秘密があった。
バンブル
教区吏。孤児たちをコントロールするためなら暴力も辞さない。オリヴァーに対しても虐待を加える。オリヴァーが救貧院で起こした問題をきっかけに、彼に強い敵意を抱くようになる。その後、物語中盤のある出来事がきっかけで転落人生を歩むことになる。
ノア・クレイポール
サワベリー氏に仕える徒弟の少年。両親はいるようだが、慈善院で育てられていた。性格は怠惰で意地悪。自分より悲惨な境遇のオリヴァーを苛めて愉しんでいた。しかし、オリヴァーがサワベリー氏に重用されるようになると、彼の母親を口汚く罵り、彼を激怒させた挙句サワベリー氏らに讒言して追い落とす。物語終盤に再登場し、小悪党として立ち回る。
サワベリー氏
葬儀屋を営む気弱な老人。救護院からオリヴァーを引き取る。清楚で悲しげな表情をしたオリヴァーを葬儀のお供係に抜擢するが、もう一人の徒弟であるノア・クレイポールの反感を買ってしまう。ノアとオリヴァーの喧嘩の仲裁に入った際、サワベリー夫人とノアに言いくるめられ、やむなくオリヴァーに対して鞭を振るう。
フェイギン
窃盗団の頭であるユダヤ人。少年を集めて窃盗の訓練をさせる。警察に裁かれ、絞首刑が確定。執行前に発狂。悲劇の悪党。
ビル・サイクス
フェイギンの仲間。登場時35歳。フェイギンよりも血の気が多く、悪事を密告しようとしたナンシーを容赦なく撲殺する。警察に追われて逃げようとするも、ロープを使い屋根から降下している最中にロープが首に絡まって事故死(ミュージカル映画作品では、警察にピストルで射殺される死に方だった)。
ジャック・ドーキンズ
通称ドジャー。フェイギン配下のスリ少年。ロンドンへ逃げてきたオリヴァーに近付きフェイギンの巣窟へ案内する。面倒見が良い。
ナンシー
サイクスの情婦。オリヴァーよりも幼いころからサイクスに仕える。口は悪いが、性根は素直で心優しい女性。オリヴァーの身を案じ、ブラウンロー氏にフェイギンとサイクスの悪事を密告。そのせいでサイクスに撲殺されてしまう。
ブラウンロー
ペントンヴィルに住む紳士。オリヴァーを自宅に入れ介抱する。性格は温厚でリベラルだが、ときどき短気になる。オリヴァーを引き取り教育を施す。
グリムウィグ
ブラウンローの友人である初老の紳士。「僕は自分の頭を食う」が口癖の変人。あまのじゃくな性格で、オリヴァーに対して好感を抱いたにも拘らず、友のブラウンローも同じく彼に好感を抱いているという理由から、彼のことをわざと悪く言っている。終盤ではオリヴァーとも打ち解ける。
モンクス
オリヴァーと何らかの深い因縁を持ち、陰惨な過去を持つ26歳前後の青年。その因縁と過去のためにオリヴァーを激しく敵視し、フェイギンやバンブルらと接触し、オリヴァーを破滅させるべく暗躍している。陰惨な過去のせいか精神に疾患を抱えており、雷鳴などのふとしたきっかけで自傷行為などの強い発作が時折起こる。性格は情緒不安定で小心者。
コーニー夫人
オリバーが生まれた救貧院の婦長。夫はすでに他界。物語後半頃に教区吏のバンブルと再婚。とある事件をきっかけにこの物語の核心と関わるようになる。気性激しく、自分より目下の者には徹底して強圧的な人物。
ローズ・メイリー
メイリー家に侵入し負傷したオリヴァーを介抱した女性。登場時16歳。メイリー夫人の姪に当たる人物なのだが・・・。

作品解説[編集]

話の筋に不自然さが顕著に見られ、主人公であるはずのオリヴァーに特色がなく話に流されていくだけ、などといった欠点があるが、サフロン・ヒルでの泥棒生活といった下層階級の描写はこの作家の得意とするところであり、読者に好意を持って迎えられた。この点、ピカレスク小説の影響も重要である。

テーマとしては、イギリスの新救貧法に対する批判が重要視される。1834年に改正された救貧法は下層階級の反発を招き、作品中のマン夫人やバンブルなどは、下層階級を酷使する中層階級の典型的な例である。しかしディケンズが本質的に批判したのは、制度に従う人物ではなく、その背後にある制度そのものであった。ディケンズの特色として善と悪の区別がはっきりしていることが挙げられるが、この小説では善はオリバー、つまり下層階級の人々で、悪は社会制度と、それを認めている社会風潮であった。この小説の中で、オリヴァーが「もう少し下さい」と粥のお代わりを請う場面が最も有名で、かつ象徴的でもある。

狡猾な盗品売買屋である悪党フェイギンの描かれ方が『ヴェニスの商人』のシャイロックのように偏見に満ちたユダヤ人像で差別的であると批判されてきた。これを受けて、原作では純然とした悪党であるフェイギンが、映像化作品では時代が進むと共に「善良さを併せ持った悪党」に変化していることが多い。

翻案[編集]

日本語訳[編集]

舞台化・映像化作品[編集]

外部リンク[編集]

オンラインの原文

批評・評論