コンテンツにスキップ

井上忠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
いのちゅうから転送)

井上 忠(いのうえ ただし、1926年3月25日 - 2014年9月20日[1])は、日本哲学者博士(学術)論文博士・1996年)。東京大学名誉教授[2]古代ギリシア哲学が専門だが、言語哲学自然科学との関係の上に哲学研究を行った。2006年瑞宝中綬章受勲。

来歴

[編集]

広島県呉市生まれ[1]広島県立呉第一中学校を経て、1943年、第一高等学校に入学[3]田中小実昌は呉第一中学の同級[3][4]。1945年春、戦中の特例で2年で一高を卒業し、東京大学法学部政治学科に入学[5]。1948年、法学部を卒業後、文学部哲学科に入学[6]出隆の指導のもと今道友信加藤信朗の後輩として古代哲学を専攻[6]同大学院特別研究生満期退学。1957年、東京大学教養学部専任講師となる[7]

1967年、同僚の大森荘蔵に触発されてアメリカに留学し、ハーバード燕京研究所客員研究員としてハーバードに滞在、G・E・L・オーエンモートン・ホワイトと交流する[8]。1968年、帰国して大学紛争の対処に追われる[9]

1987年、東京大学教養学部哲学教授を定年退官。日本大学教授、聖徳大学教授を歴任。1996年「パルメニデス」で博士(学術)学位を取得。2006年秋、瑞宝中綬章受勲[10]

2014年9月20日、横浜市内の病院で逝去[2]。88歳没[2]

著書

[編集]
  • 『根拠よりの挑戦 ギリシア哲学究攻』東京大学出版会 1974
  • 『哲学の現場 アリストテレスよ、語れ』勁草書房 1980
  • 『哲学の刻み1 性と死を超えるもの』法蔵館 1985  
  • 『哲学の刻み2 言葉に射し透されて』法蔵館 1985  
  • 『哲学の刻み3 知の階梯を昇りつつ』法蔵館 1986 
  • 『哲学の刻み4 運命との舞踏』法蔵館 1986
  • 『モイラ言語 アリストテレスを超えて』東京大学出版会 1988、オンデマンド版2012
  • 『超=言語の探究 ことばの自閉空間を打ち破る』法蔵館 1992
  • 『パルメニデス』青土社 1996、新版2004
  • 『究極の探究 神と死の言語機構分析』法蔵館 1998

編著

[編集]
  • 『西洋哲学史』山崎正一原佑共編 東京大学出版会 1965
  • 『哲学』弘文堂入門双書 1979
  • 『倫理 愛の構造』 東京大学出版会 1985
  • 『ギリシア哲学の最前線』山本巍共編著 東京大学出版会 1986

共著

[編集]
  • 『倫理学のすすめ』筑摩書房 1970   
  • 『講座哲学 第一巻 哲学の基本概念』東京大学出版会 1973  
  • 『「心‐身」の問題』産業図書 1980   
  • 『世界思想と道元 講座道元Ⅴ』春秋社 1980   
  • 『〈かたち〉の時空系』朝日出版社 1984

翻訳

[編集]
  • アリストテレス全集1』「分析論前書」、岩波書店 1971
  • ケン・ウィルバー編『空像としての世界 ホログラフィをパラダイムとして』伊藤笏康渡辺邦夫・井上章子・山本巍共訳 青土社 1983
  • デヴィッド・ボーム『全体性と内蔵秩序』伊藤笏康・佐野正博共訳 青土社 1986 新版2005
  • ルイス・キャロル/イプシュタイン『不思議の国の相対性理論』久保田陽子共訳 新水社 1986
  • 『ギリシア哲学の最前線 1・2』山本巍共編訳 東京大学出版会 1986

参考文献

[編集]
  • 伊佐敷隆弘「哲学者井上忠の生涯 : 誕生から最初の論文の完成まで」『研究紀要. 一般教育・外国語・保健体育 = Research bulletin. Liberal arts』第83巻、日本大学経済学部、19-42頁、2017年。 NAID 40021390445http://www.eco.nihon-u.ac.jp/about/magazine/kiyo/pdf/83/83-04.pdf 
  • 伊佐敷隆弘「哲学者井上忠の生涯:若手研究者時代」『研究紀要. 一般教育・外国語・保健体育 = Research bulletin. Liberal arts』第86巻、日本大学経済学部、73-100頁、2018年。 NAID 40021856564http://www.eco.nihon-u.ac.jp/about/magazine/kiyo/pdf/86/86-09.pdf 
  • 伊佐敷隆弘「哲学者井上忠の生涯 : アメリカ留学から『哲学の現場』まで」『研究紀要. 一般教育・外国語・保健体育 = Research bulletin. Liberal arts』第88巻、日本大学経済学部、39-73頁、2020年。 NAID 40022513063https://www.eco.nihon-u.ac.jp/about/magazine/kiyo/pdf/88/88-05.pdf 

脚注

[編集]
  1. ^ a b 伊佐敷 2017, p. 19f.
  2. ^ a b c “井上忠氏死去(東京大名誉教授・哲学)”. 時事通信. (2014年10月3日). http://www.jiji.com/jc/c?g=obt_30&k=2014100300666 2014年10月3日閲覧。 
  3. ^ a b 伊佐敷 2017, p. 21.
  4. ^ 吉田隼人 (2022年4月12日). “死にたがり読書録 田中小実昌”. 「web春秋 はるとあき」. 春秋社. 2022年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月11日閲覧。
  5. ^ 伊佐敷 2017, p. 29.
  6. ^ a b 伊佐敷 2017, p. 33;38.
  7. ^ 伊佐敷 2020, p. 43.
  8. ^ 伊佐敷 2020, p. 42-49.
  9. ^ 伊佐敷 2020, p. 52.
  10. ^ 平成18年秋の叙勲 瑞宝中綬章受章者” (PDF). 内閣府. p. 2 (2006年11月3日). 2007年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。