「オフセット印刷」の版間の差分

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オフセット印刷の大半が平版(へいはん)を用いて行われているため、オフセットと言えば平版オフセット印刷のことを指すようになった。略して「オフセット」「オフ」と呼ばれることが多い。しかし、版に[[凸版]]を用いるドライオフセット印刷や、電子写真方式の[[オンデマンド印刷機]]にもオフセット方式を用いたもの(コダック・ネクスプレスなど)がある。
オフセット印刷の大半が平版(へいはん)を用いて行われているため、オフセットと言えば平版オフセット印刷のことを指すようになった。略して「オフセット」「オフ」と呼ばれることが多い。しかし、版に[[凸版]]を用いるドライオフセット印刷や、電子写真方式の[[オンデマンド印刷機]]にもオフセット方式を用いたもの(コダック・ネクスプレスなど)がある。

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== 概要 ==
== 概要 ==
=== 印刷の原理 ===
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平版とは印刷の版式の一つで、版の撥水性を利用した印刷方法である。版材に石を用いる[[リトグラフ|石版]]印刷が平版の最初だが、現在ではアルミに感光剤を塗布したPS版(pre-sensitized plate)が主流となっている。
平版とは印刷の版式の一つで、版の撥水性を利用した印刷方法である。版材に石を用いる[[リトグラフ|石版]]印刷が平版の最初だが、現在ではアルミに感光剤を塗布したPS版(pre-sensitized plate)が主流となっている。


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|<small>オフセット印刷の刷版<br>上図は層の厚みが誇張されているが、実際には凹凸がほとんど無い版のため「平版」という</small>
|<small>オフセット印刷の刷版<br>上図は層の厚みが誇張されているが、実際には凹凸がほとんど無い版のため「平版」という</small>
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=== 湿式と乾式 ===
オフセット印刷には、湿式オフセットと水なしオフセットの2種類がある。湿式オフセット・リソグラフィは、インキの付着を管理し、非画像部を保護するために、湿潤液(湿し液)を混合して使用する。水なしオフセット・リソグラフィーは、インクをはじくシリコンの層によって版の非画像部を保護する、異なる方法を採用している。[[水なし印刷|水なしオフセット・リソグラフィ]]は新しいもので、1960年代に3M社によって発明された。その後、東レによって販売・商品化された<ref>{{Cite web |title=History of Waterless Printing |url=https://classiccolours.co.uk/history-of-waterless-printing/ |website=Classic Colours |access-date=5 January 2023}}</ref>。

====== オフセット印刷の利点 ======
他の印刷方法と比較したオフセット印刷の利点は以下の通り。

・オフセット印刷は、鮮明できれいな画像を生成し、[[活版印刷]]などよりもシャープできれいな画像や活字が簡単に印刷できる。 これは、ゴムブランケットが印刷面の質感に適合するためである。

・[[刷版]]を迅速かつ容易に製造できる。

・刷版と印刷面が直接接触しないため、ダイレクト・リソ印刷機よりも刷版の寿命が長い。最適化されたインキと湿し水とともに使用される適切に現像された版は、100万インプレッション以上の印刷長を達成することができる。

・コストが安価である。オフセット印刷は、商業印刷で高品質の印刷物を大量に生産するための最も安価な方法である。

・スクリューキーでファウンテンローラーのインク量を調整する機能。最も一般的なのは、金属製のブレードで、インキダクトからファウンテンローラーに転写されるインキ量をコントロールする。スクリューを調整することで、オペレーターはブレードとファウンテンローラー間のギャップを変え、特定の領域でローラーに塗布されるインキ量を増減させます。その結果、画像の各領域の色の濃度が変化する。古い機械では、ねじを手動で調整するが、最新の機械では、ねじのキーは、機械を制御するプリンタによって電子的に操作され、はるかに正確な結果を可能にする<ref>{{Cite web |url=http://www.dynodan.com/printing-process-explained/lithography-files/ink-systems.html |title=Printing Process Explained - Lithography |publisher=Dynodan.com |access-date=2012-11-15}}</ref>。

=== オフセット印刷の欠点 ===
・[[グラビア印刷]]に比べ、画質がやや劣る。

・アルマイト印刷版は、現像された版が適切に手入れされないと、(化学的酸化により)感度が低下し、画像背景以外の部分に印刷される傾向がある。

・版の製作や印刷機のセットアップにかかる時間とコストが削減された。その結果、ごく少量の印刷であれば、デジタルオフセット印刷機が使われるようになった。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
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=== オフセット印刷機の開発 ===
=== オフセット印刷機の開発 ===
最初のオフセット印刷機には、1875年にイギリスのロバート・バークレー(Robert Barclay)<ref>{{Cite web |title=Shining A Light on The Power of Offset Printing |url=https://soloprinting.com/blog/shining-a-light-on-the-power-of-offset-printing/ |website=Commercial Printing Company in Florida {{!}} Solo Printing |date=2022-03-29 |access-date=2024-03-06 |language=en-US |first=Jackie |last=Gonzalez}}</ref>がブリキに印刷するために開発したものと、1904年にアメリカのアイラ・ワシントン・ルーベル(Ira Washington Rubel)が紙に印刷するために開発したものがある<ref>{{Cite encyclopedia |title=offset printing (printing technique) |encyclopedia=[[Encyclopædia Britannica]]}}</ref>。
最初のオフセット印刷機には、1875年に[[イギリス]]のロバート・バークレー(Robert Barclay)<ref>{{Cite web |title=Shining A Light on The Power of Offset Printing |url=https://soloprinting.com/blog/shining-a-light-on-the-power-of-offset-printing/ |website=Commercial Printing Company in Florida {{!}} Solo Printing |date=2022-03-29 |access-date=2024-03-06 |language=en-US |first=Jackie |last=Gonzalez}}</ref>が[[ブリキ]]に印刷するために開発したものと、1904年にアメリカのアイラ・ワシントン・ルーベル(Ira Washington Rubel)が紙に印刷するために開発したものがある<ref>{{Cite encyclopedia |title=offset printing (printing technique) |encyclopedia=[[Encyclopædia Britannica]]}}</ref>。


バークレーが1875年に取得した特許<ref name="meggs146-150" />は、19世紀半ばの転写印刷技術と、{{仮リンク|リチャード・マーチ・ホー|en|Richard March Hoe}}が1843年に開発した輪転印刷機(平らな石の代わりに金属製のシリンダーを使用する印刷機)を組み合わせたものであった<ref name="meggs146-150" />。
バークレーが1875年に取得した特許<ref name="meggs146-150" />は、19世紀半ばの転写印刷技術と、{{仮リンク|リチャード・マーチ・ホー|en|Richard March Hoe}}が1843年に開発した輪転印刷機(平らな石の代わりに金属製のシリンダーを使用する印刷機)を組み合わせたものであった<ref name="meggs146-150" />。
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新聞社の{{仮リンク|ステイリー・T・マクブレイヤー|en|Staley T. McBrayer}}は、新聞印刷用のバンガード[[ウェブ (製造業)|ウェブ]][[輪転印刷機]]を発明し、1954年に[[テキサス州]][[フォートワース]]で発表した<ref>{{Cite news |url=http://articles.latimes.com/2002/apr/18/local/me-staley18 |title=Staley McBrayer, 92; Inventor of Offset Press for Newspaper Printing |date=April 18, 2002 |access-date=October 19, 2017 |publisher=[[Associated Press]]}}</ref>。
新聞社の{{仮リンク|ステイリー・T・マクブレイヤー|en|Staley T. McBrayer}}は、新聞印刷用のバンガード[[ウェブ (製造業)|ウェブ]][[輪転印刷機]]を発明し、1954年に[[テキサス州]][[フォートワース]]で発表した<ref>{{Cite news |url=http://articles.latimes.com/2002/apr/18/local/me-staley18 |title=Staley McBrayer, 92; Inventor of Offset Press for Newspaper Printing |date=April 18, 2002 |access-date=October 19, 2017 |publisher=[[Associated Press]]}}</ref>。

== 輪転オフセット印刷 ==
{{Main|輪転印刷機}}
現代の輪転オフセット印刷は、大きなリールの紙を数回に分けて、通常は数メートルにわたって大きな印刷機に通し、紙が通されると同時に連続的に印刷を行う。


== オフセット印刷の種類 ==
== オフセット印刷の種類 ==
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== 軽オフセット ==
== 軽オフセット ==
製版にPS版でなく、'''ピンクマスター'''や'''シルバーマスター'''と呼ばれる紙やフィルムの版を使う印刷形式を「軽オフセット印刷」略して「軽オフ」と呼ぶ。網点がつぶれやすく、写真を含む精密な印刷には不向きであるが、製版コストが安く、手軽なところがメリットであり、小ロットで短納期の、いわゆる[[軽印刷]]の代表的な印刷技術となっている。近年は紙版の製版機もデジタル化が進みPS版と比べ遜色のないレベルまで網点の再現性が向上している。
製版にPS版でなく、'''ピンクマスター'''<ref name=":0">{{Cite web |url=https://www.vanfu.co.jp/yougo/page.php?w=%E7%B4%99%E7%89%88%E3%80%81%E3%83%95%E3%83%AC%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88#:~:text=%E6%96%87%E5%AD%97%E4%B8%AD%E5%BF%83%E3%81%A7%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%81%AA%E3%81%A9,%E9%8A%80%E5%A1%A9%E6%96%B9%E5%BC%8F%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82&text=%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%81%A8%E5%90%8C%E3%81%98%E5%8E%9F%E7%90%86%E3%81%A7,%E3%81%8B%E3%82%89%E3%80%81%E9%80%9A%E7%A7%B0%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82 |title=印刷用語集 紙版、フレキシブルプレート |access-date=2024-03-06 |publisher=バンフーオンラインショップ}}</ref>や'''シルバーマスター<ref name=":0" />'''と呼ばれる紙やフィルムの版を使う印刷形式を「軽オフセット印刷」略して「軽オフ」と呼ぶ。網点がつぶれやすく、写真を含む精密な印刷には不向きであるが、製版コストが安く、手軽なところがメリットであり、小ロットで短納期の、いわゆる[[軽印刷]]の代表的な印刷技術となっている。近年は紙版の製版機もデジタル化が進みPS版と比べ遜色のないレベルまで網点の再現性が向上している。


== オフセット印刷機械メーカー ==
== オフセット印刷機械メーカー ==

2024年3月6日 (水) 10:30時点における版

オフセット印刷機(ハイデルベルグ社製)

オフセット印刷(オフセットいんさつ)は、印刷技術のひとつである。実際に印刷イメージが作られている刷版が直接触れないのが特徴である。版に付けられたインキを、一度ゴムブランケットなどの中間転写体に転写した後、紙などの被印刷体に印刷するため、オフセット印刷と呼ばれる。

オフセット印刷の大半が平版(へいはん)を用いて行われているため、オフセットと言えば平版オフセット印刷のことを指すようになった。略して「オフセット」「オフ」と呼ばれることが多い。しかし、版に凸版を用いるドライオフセット印刷や、電子写真方式のオンデマンド印刷機にもオフセット方式を用いたもの(コダック・ネクスプレスなど)がある。

サムネイル
サムネイル
オフセット印刷工程の側面図。複数のインキローラーでインキを分散・均一化する[1]

概要

印刷の原理

平版とは印刷の版式の一つで、版の撥水性を利用した印刷方法である。版材に石を用いる石版印刷が平版の最初だが、現在ではアルミに感光剤を塗布したPS版(pre-sensitized plate)が主流となっている。

イメージを作る前の原版(PS版)は、親水性の支持体を、親油(撥水)性の感光層で覆ったものである。この上に、版下から製版したフィルムを載せ、フォトリソグラフィにより、非画線部の親油層を除去する。この原版を版胴に巻き付け、水ローラーで湿し水(しめしみず)を付けると、親油層の除去された部分にのみ水が乗る。

続いてインキを付けるが、非画線部には水があるためインキが乗らず、画線部にのみインキが付着した状態になる。このインキを、原版からブランケットと呼ばれるゴム筒に一旦移した後、改めて紙に転写する。

非常に鮮明な印刷が可能で、版が直接紙に触れないことから胴の磨耗が少なく、大量印刷にも適する。輪転機を使用すれば短時間で大量の印刷が可能になる。紙に施す印刷技術としては、立体感が劣る、設備投資にかかる費用が高いといった点以外はほとんど欠点らしい欠点が無く、オフセット印刷用の用紙の発達もあり、現在世界中で供給される商業印刷機の多くをオフセット機が占めている。

一方で、湿し水には、揮発性有機化合物が使用されていることが多く(表面張力低下能力と増粘性のために約5〜20%程度のイソプロピルアルコールが添加される[2])、環境問題が指摘されることも多い。そのため、近年では、水の替わりにシリコン層を代用する「水なし印刷方式」が開発され、徐々にシェアを伸ばしている。なお、刷版に凸版やグラビア版を用いる「ドライオフセット印刷」は、平版を用いる「水なし印刷」とは別物である。

オフセット印刷の刷版
上図は層の厚みが誇張されているが、実際には凹凸がほとんど無い版のため「平版」という

湿式と乾式

オフセット印刷には、湿式オフセットと水なしオフセットの2種類がある。湿式オフセット・リソグラフィは、インキの付着を管理し、非画像部を保護するために、湿潤液(湿し液)を混合して使用する。水なしオフセット・リソグラフィーは、インクをはじくシリコンの層によって版の非画像部を保護する、異なる方法を採用している。水なしオフセット・リソグラフィは新しいもので、1960年代に3M社によって発明された。その後、東レによって販売・商品化された[3]

オフセット印刷の利点

他の印刷方法と比較したオフセット印刷の利点は以下の通り。

・オフセット印刷は、鮮明できれいな画像を生成し、活版印刷などよりもシャープできれいな画像や活字が簡単に印刷できる。 これは、ゴムブランケットが印刷面の質感に適合するためである。

刷版を迅速かつ容易に製造できる。

・刷版と印刷面が直接接触しないため、ダイレクト・リソ印刷機よりも刷版の寿命が長い。最適化されたインキと湿し水とともに使用される適切に現像された版は、100万インプレッション以上の印刷長を達成することができる。

・コストが安価である。オフセット印刷は、商業印刷で高品質の印刷物を大量に生産するための最も安価な方法である。

・スクリューキーでファウンテンローラーのインク量を調整する機能。最も一般的なのは、金属製のブレードで、インキダクトからファウンテンローラーに転写されるインキ量をコントロールする。スクリューを調整することで、オペレーターはブレードとファウンテンローラー間のギャップを変え、特定の領域でローラーに塗布されるインキ量を増減させます。その結果、画像の各領域の色の濃度が変化する。古い機械では、ねじを手動で調整するが、最新の機械では、ねじのキーは、機械を制御するプリンタによって電子的に操作され、はるかに正確な結果を可能にする[4]

オフセット印刷の欠点

グラビア印刷に比べ、画質がやや劣る。

・アルマイト印刷版は、現像された版が適切に手入れされないと、(化学的酸化により)感度が低下し、画像背景以外の部分に印刷される傾向がある。

・版の製作や印刷機のセットアップにかかる時間とコストが削減された。その結果、ごく少量の印刷であれば、デジタルオフセット印刷機が使われるようになった。

歴史

リトグラフ

リトグラフは当初、芸術作品を安価に複製する方法として考案された[5][6]。この印刷プロセスは、印刷版石灰岩から作られるため、平らで多孔質の表面での使用に限定されていた[5]。実際、ギリシャ語(λιθογραφία)に由来する「リトグラフ」という言葉は、「石からの像」または「石に書かれたもの」を意味する。

オフセット印刷機の開発

最初のオフセット印刷機には、1875年にイギリスのロバート・バークレー(Robert Barclay)[7]ブリキに印刷するために開発したものと、1904年にアメリカのアイラ・ワシントン・ルーベル(Ira Washington Rubel)が紙に印刷するために開発したものがある[8]

バークレーが1875年に取得した特許[5]は、19世紀半ばの転写印刷技術と、リチャード・マーチ・ホー英語版が1843年に開発した輪転印刷機(平らな石の代わりに金属製のシリンダーを使用する印刷機)を組み合わせたものであった[5]

ヨーロッパ大陸でルーベルと同時代に活躍したのは、オフセット印刷機の原型(1904年)の作者であり、オフセットディスク印刷機(2つのゴム製転写ローラーが向かい合う)、すなわちローリングプレスの特許を持つカシュパル・ヘルマン(Kašpar Hermann)であった。1907年、彼はトライアンフ枚葉オフセット印刷機を使ってドイツで印刷を始めることに成功した[9]

その後、オフセット・シリンダーの厚紙はゴムに変更され[5]、現在も最も一般的に使用されている素材である。

オフセット印刷機の普及

19世紀が終わり、写真が普及すると、多くの石版印刷会社が廃業した[[10]。イラストレーションの代わりにハーフトーン技術を使ったフォト・エングレーヴィング英語版が、この時代の主要な美学となった。ニュージャージー州のアイラ・ワシントン・ルーベルを含む多くの印刷業者が、写真や書籍の複製を作成するために低コストの石版印刷プロセスを使用していた[11]。 ルーベルは1901年に、シートの装填を忘れたことで、金属ではなくゴムローラーから印刷することで、印刷されたページがより鮮明でシャープになることを発見した[11]。さらに改良を重ね、1903年にはニューヨークのポッタープレス印刷会社(Potter Press printing Company)が印刷機を製造した[11]]。1907 年までにルーベルオフセット印刷機がサンフランシスコで使用されるようになった[12]

ハリス・オートマチック・プレス社(Harris Automatic Press Company)も同時期に同様の印刷機を作った。チャールズ・ハリスとアルバート・ハリス(Charles and Albert Harris)は「輪転式レタープレス機」をモデルにしていた[13]

新聞社のステイリー・T・マクブレイヤー英語版は、新聞印刷用のバンガードウェブ輪転印刷機を発明し、1954年にテキサス州フォートワースで発表した[14]

輪転オフセット印刷

現代の輪転オフセット印刷は、大きなリールの紙を数回に分けて、通常は数メートルにわたって大きな印刷機に通し、紙が通されると同時に連続的に印刷を行う。

オフセット印刷の種類

  • 一般枚葉オフセット印刷
  • 枚葉UVオフセット印刷
  • オフセット輪転(オフ輪)
  • ビジネス・フォーム印刷(BF)
  • 軽オフセット(軽オフ)

軽オフセット

製版にPS版でなく、ピンクマスター[15]シルバーマスター[15]と呼ばれる紙やフィルムの版を使う印刷形式を「軽オフセット印刷」略して「軽オフ」と呼ぶ。網点がつぶれやすく、写真を含む精密な印刷には不向きであるが、製版コストが安く、手軽なところがメリットであり、小ロットで短納期の、いわゆる軽印刷の代表的な印刷技術となっている。近年は紙版の製版機もデジタル化が進みPS版と比べ遜色のないレベルまで網点の再現性が向上している。

オフセット印刷機械メーカー

脚注

  1. ^ Kipphan, Helmut (2001). Handbook of print media: technologies and production methods (Illustrated ed.). Springer. pp. 130–144. ISBN 3-540-67326-1. https://books.google.com/books?id=VrdqBRgSKasC 
  2. ^ 田中 克則「プリプレスと副資材の環境対応 2. オフセット印刷薬品の環境対応」『日本印刷学会誌』第47巻第1号、2010年、21-23頁、doi:10.11413/nig.47.021 
  3. ^ History of Waterless Printing”. Classic Colours. 2023年1月5日閲覧。
  4. ^ Printing Process Explained - Lithography”. Dynodan.com. 2012年11月15日閲覧。
  5. ^ a b c d e Meggs, Philip B. (1998). A History of Graphic Design (Third ed.). John Wiley & Sons, Inc.. pp. 146–150. ISBN 978-0-471-29198-5 
  6. ^ Carter, Rob, Ben Day, Philip Meggs. Typographic Design: Form and Communication, Third Edition. (2002) John Wiley & Sons, Inc. p 11
  7. ^ Gonzalez, Jackie (2022年3月29日). “Shining A Light on The Power of Offset Printing” (英語). Commercial Printing Company in Florida | Solo Printing. 2024年3月6日閲覧。
  8. ^ "offset printing (printing technique)". Encyclopædia Britannica.
  9. ^ Stejskalova, Helena (2016年11月14日). “Ofsetová tisková technika: Přišla na svět díky zapomnětlivosti?”. EpochaPlus (Podzim). https://epochaplus.cz/ofsetova-tiskova-technika-prisla-na-svet-diky-zapomnetlivosti/ 2022年12月30日閲覧。 
  10. ^ Meggs, Philip B. (1998). A History of Graphic Design (Third ed.). John Wiley & Sons, Inc.. pp. 146–150. ISBN 978-0-471-29198-5 
  11. ^ a b c Howard, Nicole (2005). The book: the life story of a technology. Greenwood Publishing Group. pp. 140–148. ISBN 0-313-33028-X. https://books.google.com/books?id=4WwdMJKXzhEC 
  12. ^ Rubel Offset Lithographic Press”. HistoryWired: A few of our favorite things. Smithsonian Institution. 2012年9月30日閲覧。
  13. ^ "Short History of Offset Printing"
  14. ^ “Staley McBrayer, 92; Inventor of Offset Press for Newspaper Printing”. Associated Press. (2002年4月18日). http://articles.latimes.com/2002/apr/18/local/me-staley18 2017年10月19日閲覧。 
  15. ^ a b 印刷用語集 紙版、フレキシブルプレート”. バンフーオンラインショップ. 2024年3月6日閲覧。
  16. ^ 新聞関連機器”. 西研グラフィックス株式会社. 2024年3月6日閲覧。
  17. ^ 新聞用輪転機”. 東京機械製作所(TKS). 2024年3月6日閲覧。
  18. ^ 製品情報 | 太陽機械製作所”. www.taiyo-kikai.co.jp. 2024年3月6日閲覧。

関連項目

外部リンク