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{{要出典|date=2021年10月|人工内耳をつけた場合、一般的に90 - 100[[デシベル|dB]]以上の聴力レベルが、35 - 40dBぐらいの聞こえ方になる。}} |
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{{要出典|date=2021年10月|電極の数には限界があり、プロセッサのプログラミングにも限界があるので、蝸牛本来の信号は得られないが、現状でも一般的に言えば、かなりの程度で言葉を聞き取ることができるようになる。しかしこれには個人差があり、劇的に聞こえるようになる人もいれば、成人の聾者に多い例だが、中にはあまり効果がなく外してしまう人もいる。すなわち人工内耳は万能の聴力回復技術ではなく、一定の限界がある医療技術であると言える。}} |
{{要出典|date=2021年10月|電極の数には限界があり、プロセッサのプログラミングにも限界があるので、蝸牛本来の信号は得られないが、現状でも一般的に言えば、かなりの程度で言葉を聞き取ることができるようになる。しかしこれには個人差があり、劇的に聞こえるようになる人もいれば、成人の聾者に多い例だが、中にはあまり効果がなく外してしまう人もいる。すなわち人工内耳は万能の聴力回復技術ではなく、一定の限界がある医療技術であると言える。}} |
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=== 人工内耳とQOL === |
=== 人工内耳とQOL === |
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黒田は、人工内耳が単に音声言語の使用可能性の問題に留まらず、装用者の[[生活の質]] （QOL:Quality of Life） に大きな影響を及ぼすことを報告している。黒田が調査対象とした中途失聴者の二つの事例においては、人工内耳装用が障害認識・障害受容<ref>障害者本人が、自身に障害があることを認めることを障害認識、自らの障害を受け容れるようになることを障害受容と呼ぶ。</ref>の面でも大きな効果をもたらした<ref>人工内耳の手術を行うまでは自身が聴覚障害者であることを受け容れられず、他の聴覚障害者との交流も頑なに阻んでいた人物が、人工内耳装用によってQOLの大幅な改善を見た結果、かつての自分がろう者に極めて近い存在であったことを無意識のうちに認めるようになり、また同障者との交流も行うようになった |
黒田は、人工内耳が単に音声言語の使用可能性の問題に留まらず、装用者の[[生活の質]] （QOL:Quality of Life） に大きな影響を及ぼすことを報告している。黒田が調査対象とした中途失聴者の二つの事例においては、人工内耳装用が障害認識・障害受容<ref>障害者本人が、自身に障害があることを認めることを障害認識、自らの障害を受け容れるようになることを障害受容と呼ぶ。</ref>の面でも大きな効果をもたらした<ref>人工内耳の手術を行うまでは自身が聴覚障害者であることを受け容れられず、他の聴覚障害者との交流も頑なに阻んでいた人物が、人工内耳装用によってQOLの大幅な改善を見た結果、かつての自分がろう者に極めて近い存在であったことを無意識のうちに認めるようになり、また同障者との交流も行うようになった{{harv|黒田生子|p=98}}</ref>。とされている他、職場でのストレスの低減や、鳥や虫の鳴き声に季節を感じるようになったことなどが紹介されている。なお、ここでのろう者とは自然言語としての手話の話者である重度聴覚障害者という定義ではなく、医学的な観点からの聾者という意味である。 |
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また乳幼児の事例においても、音声言語による会話すなわちバーバル・コミュニケーションだけでなく、[[非言語コミュニケーション]]すなわちノンバーバル・コミュニケーションの量も飛躍的に増大し、親子ともにQOLが改善したとの報告がなされている |
また乳幼児の事例においても、音声言語による会話すなわちバーバル・コミュニケーションだけでなく、[[非言語コミュニケーション]]すなわちノンバーバル・コミュニケーションの量も飛躍的に増大し、親子ともにQOLが改善したとの報告がなされている{{sfn|黒田生子|p=146-151}}。 |
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=== 人工内耳と手話・指文字 === |
=== 人工内耳と手話・指文字 === |
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日本における事例では、人工内耳を先天性の重度聴覚障害児が装用した結果、それまで当該児とのコミュニケーションを断念していた親族が積極的に手話や指文字を学んでコミュニケーションを試みるようになったという現象が報告されている |
日本における事例では、人工内耳を先天性の重度聴覚障害児が装用した結果、それまで当該児とのコミュニケーションを断念していた親族が積極的に手話や指文字を学んでコミュニケーションを試みるようになったという現象が報告されている{{sfn|黒田生子|p=157-159}}。 |
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== 留意点 == |
== 留意点 == |
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人工内耳の手術においては[[顔面神経]]の麻痺や痙攣など若干のリスクが存在している。例えば黒田が報告した、日本の成人女性の二つの事例では、いずれも手術後数ヶ月に渡って顔面神経の麻痺が見られた |
人工内耳の手術においては[[顔面神経]]の麻痺や痙攣など若干のリスクが存在している。例えば黒田が報告した、日本の成人女性の二つの事例では、いずれも手術後数ヶ月に渡って顔面神経の麻痺が見られた{{sfn|黒田生子|p=52-54}}。宮崎医科大学は1995年までの26件中の症例で2件の顔面神経刺激を報告した<ref>{{Cite journal|和書|author=坪井康浩, 東野哲也, 牛迫泰明, 森満保 |title=<nowiki>[内耳臨床]人工内耳術後の顔面神経刺激症例の検討</nowiki> |journal=耳鼻と臨床 |ISSN=0447-7227 |publisher=耳鼻と臨床会 |year=1996 |volume=42 |issue=5Supplement2 |pages=717-725 |naid=130004133371 |doi=10.11334/jibi1954.42.5Supplement2_717 |url=https://doi.org/10.11334/jibi1954.42.5Supplement2_717}}</ref>。 |
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元々聴覚者であり聴覚を失った場合は、埋め込み手術をした後、音に慣れるために1 |
元々聴覚者であり聴覚を失った場合は、埋め込み手術をした後、音に慣れるために1 - 2ヶ月ぐらいの[[リハビリテーション]]が必要になる。リハビリテーション後は、電話での会話も出来るほどに回復する例も多い。大体5歳以降に[[難聴]]になったのであれば言語習得期間後になるため、言語習得機能上は成人とほぼ変わらない<ref name="PART1" />。 |
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体内に機械を埋め込む事に対して抵抗を感じる人が多い |
体内に機械を埋め込む事に対して抵抗を感じる人が多い{{sfn|黒田生子|p=50-51}}。 |
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== 人工内耳の利用状況 == |
== 人工内耳の利用状況 == |
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鳥越隆士「[[バイリンガルろう教育]]の展開-スウェーデンからの報告」によると、スウェーデンでは新たに生まれるろう児の90%は人工内耳手術を受けているとされる<ref>鳥越隆士（[[兵庫教育大学]]）『バイリンガルろう教育の展開-スウェーデンからの報告』[http://www.edu.hyogo-u.ac.jp/torigoe/sweden1.pdf |
鳥越隆士「[[バイリンガルろう教育]]の展開-スウェーデンからの報告」によると、スウェーデンでは新たに生まれるろう児の90%は人工内耳手術を受けているとされる<ref>鳥越隆士（[[兵庫教育大学]]）『バイリンガルろう教育の展開-スウェーデンからの報告』[http://www.edu.hyogo-u.ac.jp/torigoe/sweden1.pdf (1)][http://www.edu.hyogo-u.ac.jp/torigoe/sweden2.pdf (2)][http://www.edu.hyogo-u.ac.jp/torigoe/sweden3.pdf (3)][http://www.edu.hyogo-u.ac.jp/torigoe/sweden4.pdf (4)]</ref>。 |
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== 手術の時期 == |
== 手術の時期 == |
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2歳未満で、あるいは生まれつき難聴の場合、人工内耳手術の年齢が音・言葉判別の能力を大きく左右する。乳幼児の頃に人工内耳を埋め込めば聴者に近いレベルで音を判別する能力を得る可能性が少なくない。一方、ろう者として成長した後の施術の場合には、[[前頭葉]]内にある聴覚を司る聴覚皮質が音に対する刺激を受けないまま育っているため、人工内耳を埋め込んでもそもそも音を信号として受け取ることが難しく、聴覚言語を理解できるようになる見込みはごく小さい<ref name="PART1">聴覚・音声・言語障害の取り扱い (Part1) |
2歳未満で、あるいは生まれつき難聴の場合、人工内耳手術の年齢が音・言葉判別の能力を大きく左右する。乳幼児の頃に人工内耳を埋め込めば聴者に近いレベルで音を判別する能力を得る可能性が少なくない。一方、ろう者として成長した後の施術の場合には、[[前頭葉]]内にある聴覚を司る聴覚皮質が音に対する刺激を受けないまま育っているため、人工内耳を埋め込んでもそもそも音を信号として受け取ることが難しく、聴覚言語を理解できるようになる見込みはごく小さい<ref name="PART1">聴覚・音声・言語障害の取り扱い (Part1) 本庄巌 著 金原出版 ISBN 978-4307370578</ref>。2歳から4歳程度の言語習得期間に難聴になった場合も、内耳を通して入ってくる音と言語を結びつける脳内のネットワークが未発達な状態で難聴になってしまうため、仮に手術をしたとしても音と言葉を結びつけることが難しく、聴覚言語の判別や発話には相当な訓練期間を要する。その後も聴覚言語の判別率が低く、[[読唇術|読話]]や[[手話]]を好む傾向が強い<ref name="PART1" />。 |
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乳幼児を手術した場合、1年以上をかけて[[オーディオロジスト]]などの専門家をまじえて経過を観察しケアする<ref>[http://www.jibika.or.jp/members/about/admission/kijyun.html 小児人工内耳適応基準]</ref><ref>[https://www.chop.edu/pages/post-operative-cochlear-implant-care Post-operative Cochlear Implant Care | Children's Hospital of Philadelphia]</ref>。 |
乳幼児を手術した場合、1年以上をかけて[[オーディオロジスト]]などの専門家をまじえて経過を観察しケアする<ref>[http://www.jibika.or.jp/members/about/admission/kijyun.html 小児人工内耳適応基準]</ref><ref>[https://www.chop.edu/pages/post-operative-cochlear-implant-care Post-operative Cochlear Implant Care | Children's Hospital of Philadelphia]</ref>。 |
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=== 乳幼児への人工内耳手術に関する議論 === |
=== 乳幼児への人工内耳手術に関する議論 === |
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乳幼児への手術については、当人の自由意志ではなく親の意思により手術の決断がなされることに関わる倫理的問題が指摘される<ref name=audiology57>伊藤壽一 |
乳幼児への手術については、当人の自由意志ではなく親の意思により手術の決断がなされることに関わる倫理的問題が指摘される<ref name=audiology57>{{Cite journal|和書|author=伊藤壽一 |title=聴覚に関わる社会医学的諸問題:「人工内耳医療の現状と問題点」 |journal=AUDIOLOGY JAPAN |ISSN=0303-8106 |publisher=日本聴覚医学会 |year=2014 |volume=57 |issue=3 |pages=175-180 |naid=130004714077 |doi=10.4295/audiology.57.175 |url=https://doi.org/10.4295/audiology.57.175}}</ref><ref name=nagase>{{Cite journal|和書|author=長瀬修 |title=ろう児の人工内耳手術の問題点(第8回日本生命倫理学会年次大会セッション「その他」) |journal=生命倫理 |ISSN=1343-4063 |publisher=日本生命倫理学会 |year=1997 |volume=7 |issue=1 |pages=125-129 |naid=110001237028 |doi=10.20593/jabedit.7.1_125 |url=https://doi.org/10.20593/jabedit.7.1_125}}</ref>。ろう者として生きるか聴者として生きるかの選択ができない段階の乳幼児を持つ親が当人に代わって人工内耳を選択しようとすることを、{{仮リンク|聴能主義|en|Audism}}（[[エイブリズム]]、健常主義の一種）的態度であるとして問題視する立ち場がある<ref name=nagase/>。 |
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人工内耳が生む神経刺激から言語情報を取り出せるようになるまでには長い訓練と労力が必要とされ、そのために手話に触れることが遅れ、言語獲得に適した時期に手話を母語として獲得するチャンスが阻害される場合がある<ref>"Sticky: Taboo topics in deaf communities" in ''The Oxford Handbook of Taboo Words and Language'' (Janmi N. Fisher, Gene Mirus and {{仮リンク|Donna Jo Napoli|en|Donna Jo Napoli}})</ref><ref name=novic>[https://www.nytimes.com/2018/11/21/opinion/deaf-cochlear-implants-sign-language.html Opinion | A Clearer Message on Cochlear Implants - The New York Times] {{仮リンク|Sara Novic|en|Sara Novic}} 2018年11月21日。2019年11月21日閲覧。</ref>。 |
人工内耳が生む神経刺激から言語情報を取り出せるようになるまでには長い訓練と労力が必要とされ、そのために手話に触れることが遅れ、言語獲得に適した時期に手話を母語として獲得するチャンスが阻害される場合がある<ref>"Sticky: Taboo topics in deaf communities" in ''The Oxford Handbook of Taboo Words and Language'' (Janmi N. Fisher, Gene Mirus and {{仮リンク|Donna Jo Napoli|en|Donna Jo Napoli}})</ref><ref name=novic>[https://www.nytimes.com/2018/11/21/opinion/deaf-cochlear-implants-sign-language.html Opinion | A Clearer Message on Cochlear Implants - The New York Times] {{仮リンク|Sara Novic|en|Sara Novic}} 2018年11月21日。2019年11月21日閲覧。</ref>。 |
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イギリスで人工内耳の普及を推進するThe Ear Foundation<ref>[https://www.earfoundation.org.uk/about-us/our-story The Ear Foundation | Our Story]</ref>の著者らと{{仮リンク|英国聴覚障害児協会|en|National Deaf Children's Society}}の著者が2007年に公表した調査で、[[イギリス]]の2つの人工内耳センターの生徒から抽出した128名のうち調査に同意した約30名（年齢は13歳から17歳で、人工内耳手術を受けた時期はそれぞれ異なる）に{{仮リンク|構造化面接法|en|Structured interview}}で質問を行い、肯定的な結果を得た<ref>[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17533173 Wheeler, A., Archbold, S., Gregory, S.: "Cochlear implants: young people's perspective", The Ear Foundation & The National Deaf Children's Society, 2007 |
イギリスで人工内耳の普及を推進するThe Ear Foundation<ref>[https://www.earfoundation.org.uk/about-us/our-story The Ear Foundation | Our Story]</ref>の著者らと{{仮リンク|英国聴覚障害児協会|en|National Deaf Children's Society}}の著者が2007年に公表した調査で、[[イギリス]]の2つの人工内耳センターの生徒から抽出した128名のうち調査に同意した約30名（年齢は13歳から17歳で、人工内耳手術を受けた時期はそれぞれ異なる）に{{仮リンク|構造化面接法|en|Structured interview}}で質問を行い、肯定的な結果を得た<ref>[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17533173 Wheeler, A., Archbold, S., Gregory, S.: "Cochlear implants: young people's perspective"], The Ear Foundation & The National Deaf Children's Society, 2007</ref>。 |
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* 生徒の3分の2は音声言語を選好し、3分の1は音声言語と手話を選好している。相手によって音声言語か手話かを柔軟に使い分けできる生徒が大半である。 |
* 生徒の3分の2は音声言語を選好し、3分の1は音声言語と手話を選好している。相手によって音声言語か手話かを柔軟に使い分けできる生徒が大半である。 |
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{{仮リンク|Sara Novic|en|Sara Novic}}は人工内耳は訓練と労力を必要とする機器である点、成人聾者が機器を利用して聴覚言語と読話と手話とを併用することは珍しくない点を指摘し、乳幼児に人工内耳を装着させる判断をする場合も、聴覚言語だけでなく手話の学習環境も与えることを奨励する<ref name=novic/>。 |
{{仮リンク|Sara Novic|en|Sara Novic}}は人工内耳は訓練と労力を必要とする機器である点、成人聾者が機器を利用して聴覚言語と読話と手話とを併用することは珍しくない点を指摘し、乳幼児に人工内耳を装着させる判断をする場合も、聴覚言語だけでなく手話の学習環境も与えることを奨励する<ref name=novic/>。 |
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[[全日本ろうあ連盟]]は2016年の声明で、日本での人工内耳装着児の増加を受けて、聴者である保護者が児童も自分たちと同じ言語で育つことを望む心情は理解できるとした上で、児童が口話でなく手話で育つことは不幸ではないことを保護者らが理解することを希望し、聴力の程度や障害の様態に応じて手話で育つ方が当人に適した選択である可能性や口話と手話の[[バイリンガル]]教育の可能性も検討するよう保護者らに呼びかけた<ref name=roua>[https://www.jfd.or.jp/2016/12/01/pid15873 全日本ろうあ連盟 |
[[全日本ろうあ連盟]]は2016年の声明で、日本での人工内耳装着児の増加を受けて、聴者である保護者が児童も自分たちと同じ言語で育つことを望む心情は理解できるとした上で、児童が口話でなく手話で育つことは不幸ではないことを保護者らが理解することを希望し、聴力の程度や障害の様態に応じて手話で育つ方が当人に適した選択である可能性や口話と手話の[[バイリンガル]]教育の可能性も検討するよう保護者らに呼びかけた<ref name=roua>[https://www.jfd.or.jp/2016/12/01/pid15873 全日本ろうあ連盟 ≫ 全日本ろうあ連盟の人工内耳に対する見解] 掲載日：2016年12月01日。2019年11月21日閲覧。</ref>。 |
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==参考文献== |
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* {{Cite book|和書|author=黒田生子 |title=人工内耳とコミュニケーション : 装用後の日常と「私」の変容をめぐる対話 |publisher=ミネルヴァ書房 |year=2008 |NCID=BA84616004 |ISBN=9784623050376 |url=https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009241887-00 |ref=harv}} |
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== 脚注・出典 == |
== 脚注・出典 == |
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== 関連文献 == |
== 関連文献 == |
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日本語のオープンアクセス文献 |
日本語のオープンアクセス文献 |
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* 枝松 |
* {{Cite journal|和書|author=枝松秀雄 |title=人工内耳 : 聾からの聴力回復と社会復帰 |journal=東邦醫學會雜誌 |ISSN=00408670 |publisher=東邦大学 |year=2005 |month=sep |volume=52 |issue=5 |pages=290-295 |naid=110004631710 |url=https://search.jamas.or.jp/link/ui/2006102704}} {{要購読)) |
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* 武田 |
* {{Cite journal|和書|author=武田篤 |title=人工内耳装用者の実生活での使用状況 : 日常生活のアンケート調査から |journal=秋田大学教育文化学部研究紀要 教育科学 |ISSN=13485288 |publisher=秋田大学教育文化学部 |year=2005 |month=mar |volume=60 |pages=45-50 |naid=110004614461 |url=https://hdl.handle.net/10295/203}} |
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* 関 |
* {{Cite journal|和書|author=関要次郎 |title=聴力回復 : 人工内耳から聴性脳幹インプラントへ |journal=脳神経外科ジャーナル |ISSN=0917-950X |publisher=日本脳神経外科コングレス |year=2002 |volume=11 |issue=5 |pages=320-325 |naid=110003812402 |doi=10.7887/jcns.11.320 |url=https://doi.org/10.7887/jcns.11.320}} |
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== 関連項目 == |
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* [[バイリンガルろう教育]] |
* [[バイリンガルろう教育]] |
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* [[心臓ペースメーカー]] - [[人工心肺]] |
* [[心臓ペースメーカー]] - [[人工心肺]] |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* {{Citeweb|title=人工内耳について（一般の皆さん）|url=http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/naiji.html|publisher=日本耳鼻咽喉科学会|accessdate=2018-09-23}} |
* {{Citeweb|title=人工内耳について（一般の皆さん）|url=http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/naiji.html|publisher=日本耳鼻咽喉科学会|accessdate=2018-09-23}} |
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* [https://www.normanet.ne.jp/~acita/info/index.html 人工内耳友の会 |
* [https://www.normanet.ne.jp/~acita/info/index.html 人工内耳友の会 「人工内耳」って？] |
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{{典拠管理}} |
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{{DEFAULTSORT:しんこうないし}} |
{{DEFAULTSORT:しんこうないし}} |
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[[Category:人工臓器]] |
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2021年10月16日 (土) 12:11時点における版
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人工内耳（じんこうないじ、英：Cochlear implant）は、聴覚障害者の内耳の蝸牛に電極を接触させ、聴覚を補助する器具である。
装着と訓練により、中途失聴者が一定程度音声を聞き取れるようになったり、聴覚障害のある乳幼児の言語発達を支援できる場合がある。
構成
人工内耳はマイクロホン、音声分析装置、刺激電極、電波の送・受信機からなる。マイクロホンが外の音声をとらえ、体外にある音声分析装置で音を電気信号に変換する。電気信号は、非接触で内耳にある電極へ送られ、電極が聴覚神経を刺激する。蝸牛は部位による周波数特異性をもつので、電極は複数個埋め込む。どの電極をどの程度刺激するかは音声分析装置の中のプロセッサが決定する。
人工内耳は通常、どちらか片方の耳につける。これは日本の医療保険制度の為である。自由診療で手術費が負担できるのであれば、両耳装用することにより、音声の立体感など、片耳のみの場合より大きな効果を期待することも可能である。いずれにせよ、医師と患者双方の理解、信頼、リハビリテーションが大きな鍵になる。[要出典]
効果
人工内耳をつけた場合、一般的に90 - 100dB以上の聴力レベルが、35 - 40dBぐらいの聞こえ方になる。[要出典]
電極の数には限界があり、プロセッサのプログラミングにも限界があるので、蝸牛本来の信号は得られないが、現状でも一般的に言えば、かなりの程度で言葉を聞き取ることができるようになる。しかしこれには個人差があり、劇的に聞こえるようになる人もいれば、成人の聾者に多い例だが、中にはあまり効果がなく外してしまう人もいる。すなわち人工内耳は万能の聴力回復技術ではなく、一定の限界がある医療技術であると言える。[要出典]
人工内耳の効果の大小は失聴時期と人工内耳手術を行った時期によって大きく左右される。早い時期の手術が効果が高いともされるが、自己選択のできない乳幼児への手術には議論がある（#手術の時期）。
聴覚による音声言語の獲得後、事故や病気で難聴になった中途失聴者の場合、人工内耳によって言葉の判別は可能となる場合が多い。[要出典]
人工内耳とQOL
黒田は、人工内耳が単に音声言語の使用可能性の問題に留まらず、装用者の生活の質 （QOL:Quality of Life） に大きな影響を及ぼすことを報告している。黒田が調査対象とした中途失聴者の二つの事例においては、人工内耳装用が障害認識・障害受容[2]の面でも大きな効果をもたらした[3]。とされている他、職場でのストレスの低減や、鳥や虫の鳴き声に季節を感じるようになったことなどが紹介されている。なお、ここでのろう者とは自然言語としての手話の話者である重度聴覚障害者という定義ではなく、医学的な観点からの聾者という意味である。
また乳幼児の事例においても、音声言語による会話すなわちバーバル・コミュニケーションだけでなく、非言語コミュニケーションすなわちノンバーバル・コミュニケーションの量も飛躍的に増大し、親子ともにQOLが改善したとの報告がなされている[4]。
人工内耳と手話・指文字
日本における事例では、人工内耳を先天性の重度聴覚障害児が装用した結果、それまで当該児とのコミュニケーションを断念していた親族が積極的に手話や指文字を学んでコミュニケーションを試みるようになったという現象が報告されている[5]。
留意点
人工内耳の手術においては顔面神経の麻痺や痙攣など若干のリスクが存在している。例えば黒田が報告した、日本の成人女性の二つの事例では、いずれも手術後数ヶ月に渡って顔面神経の麻痺が見られた[6]。宮崎医科大学は1995年までの26件中の症例で2件の顔面神経刺激を報告した[7]。
元々聴覚者であり聴覚を失った場合は、埋め込み手術をした後、音に慣れるために1 - 2ヶ月ぐらいのリハビリテーションが必要になる。リハビリテーション後は、電話での会話も出来るほどに回復する例も多い。大体5歳以降に難聴になったのであれば言語習得期間後になるため、言語習得機能上は成人とほぼ変わらない[8]。
体内に機械を埋め込む事に対して抵抗を感じる人が多い[9]。
人工内耳の利用状況
鳥越隆士「バイリンガルろう教育の展開-スウェーデンからの報告」によると、スウェーデンでは新たに生まれるろう児の90%は人工内耳手術を受けているとされる[10]。
手術の時期
2歳未満で、あるいは生まれつき難聴の場合、人工内耳手術の年齢が音・言葉判別の能力を大きく左右する。乳幼児の頃に人工内耳を埋め込めば聴者に近いレベルで音を判別する能力を得る可能性が少なくない。一方、ろう者として成長した後の施術の場合には、前頭葉内にある聴覚を司る聴覚皮質が音に対する刺激を受けないまま育っているため、人工内耳を埋め込んでもそもそも音を信号として受け取ることが難しく、聴覚言語を理解できるようになる見込みはごく小さい[8]。2歳から4歳程度の言語習得期間に難聴になった場合も、内耳を通して入ってくる音と言語を結びつける脳内のネットワークが未発達な状態で難聴になってしまうため、仮に手術をしたとしても音と言葉を結びつけることが難しく、聴覚言語の判別や発話には相当な訓練期間を要する。その後も聴覚言語の判別率が低く、読話や手話を好む傾向が強い[8]。
乳幼児を手術した場合、1年以上をかけてオーディオロジストなどの専門家をまじえて経過を観察しケアする[11][12]。
乳幼児への人工内耳手術に関する議論
乳幼児への手術については、当人の自由意志ではなく親の意思により手術の決断がなされることに関わる倫理的問題が指摘される[13][14]。ろう者として生きるか聴者として生きるかの選択ができない段階の乳幼児を持つ親が当人に代わって人工内耳を選択しようとすることを、聴能主義（エイブリズム、健常主義の一種）的態度であるとして問題視する立ち場がある[14]。
人工内耳が生む神経刺激から言語情報を取り出せるようになるまでには長い訓練と労力が必要とされ、そのために手話に触れることが遅れ、言語獲得に適した時期に手話を母語として獲得するチャンスが阻害される場合がある[15][16]。
イギリスで人工内耳の普及を推進するThe Ear Foundation[17]の著者らと英国聴覚障害児協会の著者が2007年に公表した調査で、イギリスの2つの人工内耳センターの生徒から抽出した128名のうち調査に同意した約30名（年齢は13歳から17歳で、人工内耳手術を受けた時期はそれぞれ異なる）に構造化面接法で質問を行い、肯定的な結果を得た[18]。
- 生徒の3分の2は音声言語を選好し、3分の1は音声言語と手話を選好している。相手によって音声言語か手話かを柔軟に使い分けできる生徒が大半である。
- 会話が家族に「常に又はほとんどの場合に」理解されていると感じている生徒が回答者の3分の2程度。
- 生徒は、聴こえない世界と聴こえる世界の両方に所属していると感じており、そのことをポジティブに受け止めている。
- 生徒のうち多数が、人工内耳を付けるかどうかの判断に自分の意思が関係しなかったと答えた（18人、62%）。自分の意思が関係したと答えたのは8歳より後に付けた生徒のみであった。自分にかわって親が判断したことについて恨む回答はなく、むしろ肯定的な捉え方が多かった。
Sara Novicは人工内耳は訓練と労力を必要とする機器である点、成人聾者が機器を利用して聴覚言語と読話と手話とを併用することは珍しくない点を指摘し、乳幼児に人工内耳を装着させる判断をする場合も、聴覚言語だけでなく手話の学習環境も与えることを奨励する[16]。
全日本ろうあ連盟は2016年の声明で、日本での人工内耳装着児の増加を受けて、聴者である保護者が児童も自分たちと同じ言語で育つことを望む心情は理解できるとした上で、児童が口話でなく手話で育つことは不幸ではないことを保護者らが理解することを希望し、聴力の程度や障害の様態に応じて手話で育つ方が当人に適した選択である可能性や口話と手話のバイリンガル教育の可能性も検討するよう保護者らに呼びかけた[1]。
黒田が報告した日本における事例においては、近年でもなお聴覚障害児の保護者が人工内耳装用について検討する際、乳幼児への人工内耳装用に反対する団体の問題が考慮されているという[19]。
参考文献
- 黒田生子『人工内耳とコミュニケーション : 装用後の日常と「私」の変容をめぐる対話』ミネルヴァ書房、2008年。ISBN 9784623050376。 NCID BA84616004。
脚注・出典
- ^ a b 全日本ろうあ連盟 ≫ 全日本ろうあ連盟の人工内耳に対する見解 掲載日：2016年12月01日。2019年11月21日閲覧。
- ^ 障害者本人が、自身に障害があることを認めることを障害認識、自らの障害を受け容れるようになることを障害受容と呼ぶ。
- ^ 人工内耳の手術を行うまでは自身が聴覚障害者であることを受け容れられず、他の聴覚障害者との交流も頑なに阻んでいた人物が、人工内耳装用によってQOLの大幅な改善を見た結果、かつての自分がろう者に極めて近い存在であったことを無意識のうちに認めるようになり、また同障者との交流も行うようになった(黒田生子, p. 98)
- ^ 黒田生子, p. 146-151.
- ^ 黒田生子, p. 157-159.
- ^ 黒田生子, p. 52-54.
- ^ 坪井康浩, 東野哲也, 牛迫泰明, 森満保「[内耳臨床]人工内耳術後の顔面神経刺激症例の検討」『耳鼻と臨床』第42巻5Supplement2、耳鼻と臨床会、1996年、717-725頁、doi:10.11334/jibi1954.42.5Supplement2_717、ISSN 0447-7227、NAID 130004133371。
- ^ a b c 聴覚・音声・言語障害の取り扱い (Part1) 本庄巌 著 金原出版 ISBN 978-4307370578
- ^ 黒田生子, p. 50-51.
- ^ 鳥越隆士（兵庫教育大学）『バイリンガルろう教育の展開-スウェーデンからの報告』(1)(2)(3)(4)
- ^ 小児人工内耳適応基準
- ^ Post-operative Cochlear Implant Care | Children's Hospital of Philadelphia
- ^ 伊藤壽一「聴覚に関わる社会医学的諸問題:「人工内耳医療の現状と問題点」」『AUDIOLOGY JAPAN』第57巻第3号、日本聴覚医学会、2014年、175-180頁、doi:10.4295/audiology.57.175、ISSN 0303-8106、NAID 130004714077。
- ^ a b 長瀬修「ろう児の人工内耳手術の問題点(第8回日本生命倫理学会年次大会セッション「その他」)」『生命倫理』第7巻第1号、日本生命倫理学会、1997年、125-129頁、doi:10.20593/jabedit.7.1_125、ISSN 1343-4063、NAID 110001237028。
- ^ "Sticky: Taboo topics in deaf communities" in The Oxford Handbook of Taboo Words and Language (Janmi N. Fisher, Gene Mirus and Donna Jo Napoli)
- ^ a b Opinion | A Clearer Message on Cochlear Implants - The New York Times Sara Novic 2018年11月21日。2019年11月21日閲覧。
- ^ The Ear Foundation | Our Story
- ^ Wheeler, A., Archbold, S., Gregory, S.: "Cochlear implants: young people's perspective", The Ear Foundation & The National Deaf Children's Society, 2007
- ^ 黒田生子, p. 142-145.
関連文献
日本語のオープンアクセス文献
- 枝松秀雄「人工内耳 : 聾からの聴力回復と社会復帰」『東邦醫學會雜誌』第52巻第5号、東邦大学、2005年9月、290-295頁、ISSN 00408670、NAID 110004631710。 {{要購読))
- 武田篤「人工内耳装用者の実生活での使用状況 : 日常生活のアンケート調査から」『秋田大学教育文化学部研究紀要 教育科学』第60巻、秋田大学教育文化学部、2005年3月、45-50頁、ISSN 13485288、NAID 110004614461。
- 関要次郎「聴力回復 : 人工内耳から聴性脳幹インプラントへ」『脳神経外科ジャーナル』第11巻第5号、日本脳神経外科コングレス、2002年、320-325頁、doi:10.7887/jcns.11.320、ISSN 0917-950X、NAID 110003812402。
関連項目
外部リンク
- “人工内耳について（一般の皆さん）”. 日本耳鼻咽喉科学会. 2018年9月23日閲覧。
- 人工内耳友の会 「人工内耳」って？
| 典拠管理データベース: 国立図書館 |
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