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;セルラーゼの酵素学的研究がはじめて行われたのは、古くはカタツムリ(''[https://en.m.wikipedia.org/wiki/Helix_pomatia Helix pomatia]'')由来のセルラーゼに関してであることが知られている。その他の動物では、[[巻貝|巻き貝]]や[[二枚貝]]がセルラーゼ、ヘミセルラーゼを産生できる。
;セルラーゼの酵素学的研究がはじめて行われたのは、古くはカタツムリ(''[https://en.m.wikipedia.org/wiki/Helix_pomatia Helix pomatia]'')由来のセルラーゼに関してであることが知られている。その他の動物では、[[巻貝|巻き貝]]や[[二枚貝]]がセルラーゼ、ヘミセルラーゼを産生できる。
;節足動物門
;節足動物門
:[[シロアリ]]や[[ゴキブリ]]はセルラーゼを産生する単細胞の[[原生生物]]を腸内に共生させている。動物自身はセルラーゼを産生できないためこのような共生をおこなっていると考えられてきたが、シロアリの研究では、シロアリ自身の[[ゲノム]]にセルラーゼをコードする[[遺伝子]]が存在し、この遺伝子が共生する[[バクテリア]]や[[原生生物]]から近年に[[遺伝子の水平伝播|水平転移]]したものでは無いことが示唆されている(Watanabe et al. 1998)。[[マツノザイセンチュウ]]もセルラーゼ遺伝子の発現が認められるという報告がある。深海底に生息する[[カイコウオオソコエビ]]がセルラーゼを生産するという報告もある。
:[[シロアリ]]や[[ゴキブリ]]はセルラーゼを産生する単細胞の[[原生生物]]を腸内に共生させている。動物自身はセルラーゼを産生できないためこのような共生をおこなっていると考えられてきたが、シロアリの研究では、シロアリ自身の[[ゲノム]]にセルラーゼをコードする[[遺伝子]]が存在し、この遺伝子が共生する[[バクテリア]]や[[原生生物]]から近年に[[遺伝子の水平伝播|水平転移]]したものでは無いことが示唆されている(Watanabe et al. 1998)。[[マツノザイセンチュウ]]もセルラーゼ遺伝子の発現が認められるという報告がある。深海底に生息する[[カイコウオオソコエビ]]がセルラーゼを生産するという報告<ref>{{Cite journal|last=Kobayashi|first=Hideki|last2=Hatada|first2=Yuji|last3=Tsubouchi|first3=Taishi|last4=Nagahama|first4=Takahiko|last5=Takami|first5=Hideto|date=2012-08-15|title=The Hadal Amphipod Hirondellea gigas Possessing a Unique Cellulase for Digesting Wooden Debris Buried in the Deepest Seafloor|url=https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0042727|journal=PLOS ONE|volume=7|issue=8|pages=e42727|language=en|doi=10.1371/journal.pone.0042727|issn=1932-6203|pmid=22905166|pmc=PMC3419748}}</ref>もある。
;哺乳類
;哺乳類
:[[ウシ]]や[[ヒツジ]]などの反芻動物や[[ウマ]]などの草食動物は消化管にセルラーゼを産生する[[微生物]](細菌、糸状菌、原生生物)を生息させており、これらによるセルロース分解によって植物繊維の消化を可能にしている。
:[[ウシ]]や[[ヒツジ]]などの反芻動物や[[ウマ]]などの草食動物は消化管にセルラーゼを産生する[[微生物]](細菌、糸状菌、原生生物)を生息させており、これらによるセルロース分解によって植物繊維の消化を可能にしている。

2020年10月22日 (木) 00:25時点における版

セルラーゼ(Cellulase)とは、β-1,4-グルカン(例えば、セルロース)のグリコシド結合加水分解する酵素である。主に細菌糸状菌植物において作られる。

多糖分子内部から切断するエンドグルカナーゼ EC 3.2.1.4 と、還元末端と非還元末端のいずれかから分解しセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ)EC 3.2.1.176(還元末端) EC 3.2.1.91 (非還元末端)にわけられる。またタンパク質のアミノ酸配列から、糖加水分解酵素ファミリーに分けられている。セロビオヒドロラーゼの多くがセロビオースを連続的に生成するプロセッシブな加水分解反応によって、結晶性セルロースを効率良く分解することが知られている。

保有生物

菌類など生産能を有している生物のほか、哺乳類では体内に生産能を持つ別の生物を共生させているものがある。

動物類

軟体動物
セルラーゼの酵素学的研究がはじめて行われたのは、古くはカタツムリ(Helix pomatia)由来のセルラーゼに関してであることが知られている。その他の動物では、巻き貝二枚貝がセルラーゼ、ヘミセルラーゼを産生できる。
節足動物門
シロアリゴキブリはセルラーゼを産生する単細胞の原生生物を腸内に共生させている。動物自身はセルラーゼを産生できないためこのような共生をおこなっていると考えられてきたが、シロアリの研究では、シロアリ自身のゲノムにセルラーゼをコードする遺伝子が存在し、この遺伝子が共生するバクテリア原生生物から近年に水平転移したものでは無いことが示唆されている(Watanabe et al. 1998)。マツノザイセンチュウもセルラーゼ遺伝子の発現が認められるという報告がある。深海底に生息するカイコウオオソコエビがセルラーゼを生産するという報告[1]もある。
哺乳類
ウシヒツジなどの反芻動物やウマなどの草食動物は消化管にセルラーゼを産生する微生物(細菌、糸状菌、原生生物)を生息させており、これらによるセルロース分解によって植物繊維の消化を可能にしている。

菌類

子嚢菌類担子菌類にはセルロース分解能を持つものが多い。特に木材の分解は担子菌類が主体となって起こり、木材腐朽菌と言われる。子嚢菌トリコデルマの1種 Trichoderma reesei はセルラーゼ高生産菌として有名な菌である。50~60 g/lのタンパク質を分泌し、その大部分がセルラーゼ、ヘミセルラーゼを占めている。少なくとも5種のエンドグルカナーゼと2種類のセロビオハイドロラーゼといった複数のセルラーゼを生産することが分かっており、セルロース分解において期待されている。
好熱嫌気性セルロース分解細菌 Clostridium thermocellum では複数のサブユニットからなるセルラーゼ複合体 — セルロソーム(Cellulosome)を形成していることが知られており、これが高効率なセルロース分解能につながっていると考えられている。

応用

植物細胞の細胞壁のみを分解してプロトプラスト化する、繊維の間の汚れを取るために市販の洗剤に配合する、ジーンズの風合いを改善するといった用途に使われている。また、セルラーゼはセルロースを常温でグルコースブドウ糖)に変換できることから、非可食バイオマスを原料とするセルロシック・エタノールの生産に用いられる。

脚注

  1. ^ Kobayashi, Hideki; Hatada, Yuji; Tsubouchi, Taishi; Nagahama, Takahiko; Takami, Hideto (2012-08-15). “The Hadal Amphipod Hirondellea gigas Possessing a Unique Cellulase for Digesting Wooden Debris Buried in the Deepest Seafloor” (英語). PLOS ONE 7 (8): e42727. doi:10.1371/journal.pone.0042727. ISSN 1932-6203. PMC PMC3419748. PMID 22905166. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0042727. 

参考文献

関連項目