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| 画像=[[Image:Potassium nitrate.jpg|180px|硝酸カリウムの結晶]]
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| 組成式=KNO<sub>3</sub> | 式量=101.10
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'''硝酸カリウム'''(しょうさん&mdash;)は化学式 KNO<sub>3</sub> で表される[[硝酸|硝酸塩]]の一種であり、天然には[[硝石]]として産出する。燃焼させるとピンクから紫の炎を上げる。

英語では potassium nitrate、または saltpetre とも呼ばれ、これは石の塩、もしくは[[ペトラ]]の塩を意味するラテン語 sal petrae に由来する。アメリカ英語では salt peter、nitrate of potash、あるいは単に nitre とも称される。[[硝酸ナトリウム]]が salt peter と呼ばれることもある。

[[黒色火薬]]に[[酸化剤]]([[酸素]]の供給源)として配合されるが、硝酸カリウム自体は燃えない。[[ハーバー・ボッシュ法]]によって窒素が大量に供給されるようになるまでは、洞窟の壁面に堆積した結晶から、または有機物を分解・乾燥することによって得ていた。特に屎尿が一般的な供給源で、[[尿素]]の分解によって生成する[[アンモニア]]などの窒素化合物が微生物による酸化を受け、硝酸塩となる。[[肥料]]としても用いられ、そのNPK比(窒素・リン・カリウムの重量比)は13-0-44である。

==製造==
歴史的には以下のようにして作られていた。まず、厩肥、漆喰か木灰、藁などの有機物を混ぜ、およそ高さ1.5メートル、幅2メートル、長さ5メートルほどの塊を作る。覆いをして雨などで濡れるのを避けながら尿を掛け、分解を促進させるために度々かき混ぜる。およそ1年後に水で溶かして液状化する。その液体には様々な硝酸塩が含まれるが、木灰でカリウム塩としたのち結晶化によって精製し、火薬として使用に供される。

1588年以前からのイングランドでは、記録家として知られる[[ジョン・イヴリン]]の一家に爆薬製造を独占する特権が王家から与えられていた。

今日では、チリの砂漠に莫大な埋蔵量を有する硝酸ナトリウムを原料として製造されている。硝酸ナトリウムを精製したのち[[塩化カリウム]] (KCl) と反応させると、より溶解度の低い硝酸カリウムが析出する。

==用途==
最も有用な用途は硝酸の製造である。硝酸カリウムの水溶液に[[硫酸]]を加えることによって硝酸と[[硫酸カリウム]]が得られ、これを[[蒸留]]によって精製する。

肥料、試作ロケットの推進剤、[[発煙筒]]などの発火剤としても用いられる。糖との混合物は元の600倍の体積の煙を作り出す。[[スクロース]]の場合硝酸カリウムと40:60の比で、混合物をそのままか、ホットプレートで注意深く加熱・融解して使用される。

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広く敷衍している誤解として、硝酸カリウムは禁欲剤として作用し、男子校などで食事に添加されている、というものがある。実際にはヒトに対してそのような効果を及ぼすことはない<ref>http://www.straightdope.com/classics/a3_221.html</ref>。

==書物にみられる硝酸カリウム==
*[[エドガー・アラン・ポー]]の短編「アモンティラアドの樽」の中で nitre として登場し、モンストレソー (Monstresor) がフォートゥナトー (Fortunato) を生き埋めにした地下堂はこれで満たされていた。
*[[アルベルトゥス・マグヌス]]の作とされる『秘密の本 (Book of Secrets)』で、"Stony Salt" として触れられている。

==関連項目==
*[[硝酸]]
*[[硝石]]
*[[火薬]]
*[[硝酸ナトリウム]]
*[[亜硝酸カリウム]]

==参考文献==
<references />

[[Category:無機化合物|しようさんかりうむ]]
[[Category:窒素の化合物|しようさんかりうむ]]
[[Category:酸素の化合物|しようさんかうむ]]
[[Category:カリウムの化合物|しようさんかうむ]]

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[[de:Kaliumnitrat]]
[[en:Potassium nitrate]]
[[es:Nitrato de potasio]]
[[fr:Salpêtre]]
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[[it:Nitrato di potassio]]
[[he:אשלגן חנקתי]]
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[[sl:Kalijev nitrat]]
[[sr:Калијум нитрат]]
[[fi:Salpietari]]
[[sv:Kaliumnitrat]]
[[zh:硝酸钾]]

2006年9月30日 (土) 20:42時点における版

硝酸カリウム
硝酸カリウムの結晶
IUPAC名 硝酸カリウム
組成式 KNO3
式量 101.10 g/mol
形状 無色結晶
結晶構造 斜方晶系
CAS登録番号 7757-79-1
密度 2.1 g/cm3, 固体
水への溶解度 35.7 g/100 mL (25 °C)
融点 333–334 °C
沸点 400 °C(分解)
出典 ICSC

硝酸カリウム(しょうさん—)は化学式 KNO3 で表される硝酸塩の一種であり、天然には硝石として産出する。燃焼させるとピンクから紫の炎を上げる。

英語では potassium nitrate、または saltpetre とも呼ばれ、これは石の塩、もしくはペトラの塩を意味するラテン語 sal petrae に由来する。アメリカ英語では salt peter、nitrate of potash、あるいは単に nitre とも称される。硝酸ナトリウムが salt peter と呼ばれることもある。

黒色火薬酸化剤酸素の供給源)として配合されるが、硝酸カリウム自体は燃えない。ハーバー・ボッシュ法によって窒素が大量に供給されるようになるまでは、洞窟の壁面に堆積した結晶から、または有機物を分解・乾燥することによって得ていた。特に屎尿が一般的な供給源で、尿素の分解によって生成するアンモニアなどの窒素化合物が微生物による酸化を受け、硝酸塩となる。肥料としても用いられ、そのNPK比(窒素・リン・カリウムの重量比)は13-0-44である。

製造

歴史的には以下のようにして作られていた。まず、厩肥、漆喰か木灰、藁などの有機物を混ぜ、およそ高さ1.5メートル、幅2メートル、長さ5メートルほどの塊を作る。覆いをして雨などで濡れるのを避けながら尿を掛け、分解を促進させるために度々かき混ぜる。およそ1年後に水で溶かして液状化する。その液体には様々な硝酸塩が含まれるが、木灰でカリウム塩としたのち結晶化によって精製し、火薬として使用に供される。

1588年以前からのイングランドでは、記録家として知られるジョン・イヴリンの一家に爆薬製造を独占する特権が王家から与えられていた。

今日では、チリの砂漠に莫大な埋蔵量を有する硝酸ナトリウムを原料として製造されている。硝酸ナトリウムを精製したのち塩化カリウム (KCl) と反応させると、より溶解度の低い硝酸カリウムが析出する。

用途

最も有用な用途は硝酸の製造である。硝酸カリウムの水溶液に硫酸を加えることによって硝酸と硫酸カリウムが得られ、これを蒸留によって精製する。

肥料、試作ロケットの推進剤、発煙筒などの発火剤としても用いられる。糖との混合物は元の600倍の体積の煙を作り出す。スクロースの場合硝酸カリウムと40:60の比で、混合物をそのままか、ホットプレートで注意深く加熱・融解して使用される。

保存食の製造過程において、塩漬けされた肉への添加物として使われる。心臓病の患者はその摂取には注意する必要がある。防腐剤として番号E249が与えられている。

切り株除去剤 (stump remover) の主成分であり、自然に分解するのを促進する。一般的な切り株除去剤は純度約98%の硝酸カリウムである。

アイスクリームの製造、および過敏になった歯の歯磨剤にも使われる。近年、歯磨剤としての利用が増加しているが、歯痛の過敏症に有効であると言う結論は得られていない[1]

広く敷衍している誤解として、硝酸カリウムは禁欲剤として作用し、男子校などで食事に添加されている、というものがある。実際にはヒトに対してそのような効果を及ぼすことはない[2]

書物にみられる硝酸カリウム

  • エドガー・アラン・ポーの短編「アモンティラアドの樽」の中で nitre として登場し、モンストレソー (Monstresor) がフォートゥナトー (Fortunato) を生き埋めにした地下堂はこれで満たされていた。
  • アルベルトゥス・マグヌスの作とされる『秘密の本 (Book of Secrets)』で、"Stony Salt" として触れられている。

関連項目

参考文献

  1. ^ Poulsen, S.; Errboe, M.; Lescay Mevil, Y.; Glenny, A. M. (2006). "Potassium containing toothpastes for dentine hypersensitivity". Cochrane Database Syst Rev. 3: CD001476. doi:10.1002/14651858.CD001476.pub2 PMID 16855970
  2. ^ http://www.straightdope.com/classics/a3_221.html