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'''フランソワルトン'''(Trachypithecus francoisi)は、[[霊長類]][[オナガザル科]][[ラングール属]]に分類される[[サル]]。近年の研究でこの種はコロブス亜科に属するとされている。 <ref name="Zhou2006">{{cite journal|year=2006|title=Diet and food choice of (''Trachypithecus francoisi'') in the Nonggang Nature Reserve, China|journal=International Journal of Primatology|volume=27|pages=1441–1458|doi=10.1007/s10764-006-9082-8|author1=Zhou, Qihai|author2=Fuwen, W.|author3=Li, M.|author4=Chengming, H.|author5=Luo, B.}}</ref>
'''フランソワルトン'''(''Trachypithecus francoisi'')は、[[霊長類]][[オナガザル科]][[ラングール属]]に分類される[[サル]]であり、この種群の[[模式種]]とされている。近年の研究でこの種はコロブス亜科に属するとされている<ref name="Zhou2006">{{cite journal|year=2006|title=Diet and food choice of (''Trachypithecus francoisi'') in the Nonggang Nature Reserve, China|journal=International Journal of Primatology|volume=27|pages=1441–1458|doi=10.1007/s10764-006-9082-8|author1=Zhou, Qihai|author2=Fuwen, W.|author3=Li, M.|author4=Chengming, H.|author5=Luo, B.}}</ref>


この種は[[中国西南部]]から[[ベトナム]]北部に分布している。野生のフランソワルトンの総数は把握されていないが、ベトナムに生息しているのは500頭以下、中国には1400~1650頭ほどだと言われている<ref name="iucn">{{Cite journal|author=Bleisch, B.|date=2008|title=''Trachypithecus francoisi''|url=http://www.iucnredlist.org/details/39853/0|journal=[[The IUCN Red List of Threatened Species]]|volume=2008|page=e.T39853A10277000|publisher=[[IUCN]]|doi=10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T39853A10277000.en|author2=Manh Ha, N.|author3=Khat Quyet, L.|author4=Yongcheng, L.|last-author-amp=yes|access-date=12 January 2018}}</ref> 種名は当時中国南部の領事であったAuguste François (1857–1935)によって名付けられた<ref>The Eponym Dictionary of Mammals - Page 141 Bo Beolens, Michael Watkins, Michael Grayson - 2009 "François' Leaf Monkey ''Trachypithecus francoisi'' Pousargues, 1898 [Alt. François' Langur] Auguste François (1857–1935) was the French Consul at Lungchow in southern China, where he was the first person to bring this monkey to the ..."</ref>
この種は[[中国西南部]]から[[ベトナム]]北部に分布している。野生のフランソワルトンの総数は把握されていないが、ベトナムに生息しているのは500頭以下、中国には1400~1650頭ほどだと言われている<ref name="iucn">{{Cite journal|author=Bleisch, B.|date=2008|title=''Trachypithecus francoisi''|url=http://www.iucnredlist.org/details/39853/0|journal=[[The IUCN Red List of Threatened Species]]|volume=2008|page=e.T39853A10277000|publisher=[[IUCN]]|doi=10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T39853A10277000.en|author2=Manh Ha, N.|author3=Khat Quyet, L.|author4=Yongcheng, L.|last-author-amp=yes|access-date=12 January 2018}}</ref>。60頭ほどが北米の動物園で飼育されている。種名は当時中国南部の領事であったAuguste François (1857–1935)にちなんで名付けられた<ref>The Eponym Dictionary of Mammals - Page 141 Bo Beolens, Michael Watkins, Michael Grayson - 2009 "François' Leaf Monkey ''Trachypithecus francoisi'' Pousargues, 1898 [Alt. François' Langur] Auguste François (1857–1935) was the French Consul at Lungchow in southern China, where he was the first person to bring this monkey to the ..."</ref>


== 形態 ==
== 形態 ==
フランソワルトンは中くらいの大きさのサルで、毛の色はと白である。耳から頰の下部分にかけて非常に目立つ白い毛が生えている。 形態学的特徴はその複雑な[[胃]]にあり、4つの胃袋に分かれている。これは植物中心の食物を消化するために必要な適応であった。
フランソワルトンは中くらいの大きさのサルで、艶やかない体毛をもっている。耳から頰の下部分にかけて非常に目立つ白い毛が生えている<ref name=arkive>{{cite web|title=Arkive - Francois Langur|url=http://www.arkive.org/francoiss-langur/trachypithecus-francoisi/#text=Facts|publisher=Arkive.org|accessdate=25 March 2012}}</ref>。形態学的特徴はその複雑な[[胃]]にあり、4つの胃袋に分かれている。これは植物中心の食物を消化するために必要な適応であった<ref name=Zhou2006/>


大きさにおいて性的二型が見られる。オスは体長が55-64センチメートル、メスが47-59センチメートルである。尾長はオスが82-96センチメートル、メスが74-89センチメートルと、オスのほうが尻尾が長い傾向にある。体重はオスの方が顕著に重く、オス6.5-7.2キログラムなのに対し、メスは5.5-5.9キログラムである。子どもは0.45-0.50キログラムで生まれてくる。
大きさにおいて性的二型が見られる。オスは体長が55-64センチメートル、メスが47-59センチメートルである。尾長はオスが82-96センチメートル、メスが74-89センチメートルと、オスのほうが尻尾が長い傾向にある。体重はオスの方が顕著に重く、オス6.5-7.2キログラムなのに対し、メスは5.5-5.9キログラムである。子どもは0.45-0.50キログラムで生まれてくる<ref name=arkive />




フランソワルトンは硬い葉の繊維を消化するための巨大な唾液腺をもっている。さらに進化的適応がよくわかるものとして2つの小部屋に分かれた胃がある。第1胃ではバクテリアが唾液によって始まった繊維の消化をしつづける。第1胃は中性であり、バクテリアが増殖するのに適した環境である。第2胃では他の哺乳類と同じように酸によって食物の破砕が完了する。
フランソワルトンは硬い葉の繊維を消化するための巨大な唾液腺をもっている。さらに進化的適応がよくわかるものとして2つの小部屋に分かれた胃がある。第1胃ではバクテリアが唾液によって始まった繊維の消化をしつづける。第1胃は中性であり、バクテリアが増殖するのに適した環境である。第2胃では他の哺乳類と同じように酸によって食物の分解が完了する<ref name=arkive />


== 行動 ==
== 行動 ==
[[ファイル:Trachypithecus_francoisi_los_angeles_zoo.jpg|サムネイル|''くつろいだ様子で切り株に座るフランソワルトン'' ロサンゼルス動物園]]
[[ファイル:Trachypithecus_francoisi_los_angeles_zoo.jpg|サムネイル|くつろいだ様子で切り株に座るフランソワルトン ロサンゼルス動物園]]
フランソワルトンは[[昼行性]]であり、1日のほとんどを休息と餌探しに費やす<ref name=Yang2007>{{cite journal | doi = 10.1016/S1872-2032(07)60043-2 |author1=Yang, Lou |author2=Minghai, Z. |author3=Jianzhang, M. |author4=Ankang, W. |author5=Shusen, Z. | year = 2007 | title = Time budget of daily activity of Francois’ langur (''Trachypithecus francoisi'') in disturbance habitat | journal = Acta Ecologica Sinica | volume = 27 | pages = 1715–1722}}</ref>。ある研究では、撹乱を受けた環境における行動の時間配分は、休息が35.41%、餌探しが31.67%、移動が14.44%、身を寄せ合っているのが9.61%、遊びが8.56%、グルーミングが0.33%であった<ref name=Yang2007/>。移動・遊び・グルーミング・身の寄せ合いは季節によって大きく変化する<ref name=Zhou2007b>{{cite journal | doi = 10.1007/s10764-007-9144-6 |author1=Zhou, Qihai |author2=Wei, F. |author3=Chengming, H. |author4=Li, M. |author5=Ren, B. |author6=Luo, B. | year = 2007b | title = Seasonal Variation in the Activity Patterns and Time Budgets of ''Trachypithecus francoisi'' in the Nonggang Nature Reserve, China | journal = International Journal of Primatology | volume = 28 | pages = 657–671}}</ref>。興味深いことにグルーミングは春には観察されていない<ref name=Yang2007/>。冬期にはより多くの時間を移動に使い(20.12%)、春期には身の寄せ合いが多くなる(14.62%)<ref name=Zhou2007b/>。
フランソワルトンは[[昼行性]]であり、1日のほとんどを休息と餌探しに費やす。


フランソワルトンは4-27匹の群を作る多くは12匹ほどの群である。 群はメスが優勢である。その群の中でメスは共同で子育てをし、群に定住する傾向がある 男性グループ内一切の引き上げは、若手の若い性のグループ到達す前に性的成熟します 子ザルは乳離れをする生後2歳ごろまで面倒を見られるが、一度離乳すると親族との関係は群の他の個体に対するものと同じになる。
フランソワルトンは4-27匹の群を作るが、多くは12匹ほどの群である<ref name=arkive/><ref name=Zhou2007a/>。群はメスが優勢な母系社会である。その群の中でメスは共同で子育てをし、群に定住する傾向がある<ref name=Zhou2007a/>。グループ内のオス子育てには関わらず、若いオスは成熟群を離れ<ref name=Zhou2007a/>。子ザルは乳離れをする生後2歳ごろまで面倒を見られるが、一度離乳すると親族との関係は群の他の個体に対するものと同じになる<ref name=arkive />


フランソワルトンの食物の50%以上は植物の葉である。他にも果実(17.2%)、種子(14.2%)、花、茎、根、樹皮などを食べることもあり、時おり岩の表面や崖の鉱物や虫を食べることもある。4月から9月の乾季の間は彼らの好物である若い葉をよくたべる。10月から3月までの期間は若い葉があまり手に入らないため、種子や葉柄、茎を食べることで補っている。
フランソワルトンの食物の50%以上は植物の葉である。他にも果実(17.2%)、種子(14.2%)、花、茎、根、樹皮などを食べることもあり、時おり岩の表面や崖の鉱物や虫を食べることもある。4月から9月の乾季の間は彼らの好物である若い葉をよくたべる。10月から3月までの期間は若い葉があまり手に入らないため、種子や葉柄、茎を食べることで補っている<ref name=Zhou2006/>




フランソワルトンは食物に選択的であることが、中国の弄国立自然保護区(Nonggang National Nature Reserve)で観察されている。主に10種の植物の若い葉を主に食べるが、そのうち2種のみが保護区でよく見られる種である。別の研究では、分断された生息地では、たった4種の植物(Litsea glutinosa, Pittosporum glabratum, Cipadessa cinerascens, Desmos chinensis)しか好んで食べないとされている。その研究によると、食事の時間の61.6%はこれらの種の植物を、残りの36%はその他の既知の植物を食べるのに費やされている。
フランソワルトンは食物に選択的であることが、中国の弄国立自然保護区(Nonggang National Nature Reserve)で観察されている。主に10種の植物の若い葉を主に食べるが、そのうち2種のみが保護区でよく見られる種である。もっとも、場合によってはこの10種以外の植物も食べる<ref name=Zhou2006/>。別の研究では、分断された生息地では、たった4種の植物(''Litsea glutinosa'', ''Pittosporum glabratum'', ''Cipadessa cinerascens'', ''Desmos chinensis'')しか好んで食べないとされている。その研究によると、食事の時間の61.6%はこれらの種の植物を、残りの38.4%はその他の36種の植物を食べるのに費やされている<ref name="Youbang2009"/>


== 生息地と分布 ==
== 生息地と分布 ==
フランソワルトンが好む生息地は[[カルスト地形]]、すなわち熱帯および亜熱帯でみられる[[石灰岩]]の崖と洞窟である<ref name=Li2007>{{cite journal | doi = 10.1017/S0030605307001500 | author = Li, Youbang | author2 = Huang, C. | author3 = Ding, P. | author4 = Tang, Z. | author5 = Wood | last-author-amp = yes | year = 2007 | title = Dramatic decline in Francois' langur (''Trachypithecus francoisi'') in Guangxi Province, China | journal = Oryx | volume = 41 | pages = 38–43}}</ref>。そのような石灰岩の崖に住むことにより、彼らは睡眠時の状況において有利な立場にいる。彼らは岩棚でも洞窟でも寝るが、洞窟の方を好む<ref name=Zhou2009>{{cite journal | doi = 10.1007/s10764-009-9348-z |author1=Zhou, Qihai |author2=Chengming, H. |author3=Ming, L. |author4=Fuwen, W. | year = 2009 | title = Sleeping site use by ''Trachypithecus francoisi'' at Nonggang Nature Reserve China | journal = International Journal of Primatology | volume = 30 | pages = 353–365}}</ref>。フランソワルトンは[[常緑樹林]]帯の中で気温16℃以上の場所を睡眠の場所として選ぶことも知られている<ref name="Shuangling2011">{{cite journal|last=Shuangling|first=Wang|author2=Yang Luo |author3=Guofa Cui |title=Sleeping site selection of Francois's langur in two habitats in Mayanghe National Nature Reserve, Guizhou, China|journal=Primates|year=2011|volume=51|pages=51/2|doi=10.1007/s10329-010-0218-2|url=http://ehis.ebscohost.com/eds/detail?vid=2&hid=22&sid=c5726cd4-580e-47a0-93e4-69bfa660b02e%40sessionmgr10&bdata=JnNpdGU9ZWRzLWxpdmU%3d#db=eda&AN=57240398|accessdate=25 March 2012}}</ref>。平らな土地ではなく石灰岩質の崖や洞窟に生息・睡眠することにより、捕食される割合を大きく減少させている<ref name="Shuangling2011" />。彼らは常に身を隠すように行動し、就寝のために洞窟に入る際には捕食者を避ける戦術として非常に警戒深くなる<ref name=Zhou2009/>。さらに、彼らは自分のなわばりを主張するために大きな鳴き声を上げる<ref name=Li1993>{{cite journal |author1=Li, Zhaoyuan |author2=E. Rogers | year = 1993 | title = Time budgets of ''Presbytis leucocephalus'' | journal = Acta Theriol Sin | volume = 12 | pages = 7–13}}</ref>。フランソワルトンはまた、採餌のしやすさによって寝場所を変える。採餌できそうな場所の近くに寝場所を選べば、エネルギーを節約し移動コストを低減させることができる<ref name="Shuangling2011" />。寝場所に最適な場所と採餌に最適な場所は必ずしも同一ではないので寝場所は採餌場所の中心に位置するわけではなく、近接した場所に位置する<ref name="Shuangling2011" />。捕食を避けるために、採餌に向かう際には同じルートをとり、連夜同じ寝場所に戻る傾向がある<ref name=Zhou2009/>。フランソワルトンは通常およそ6-10箇所の寝場所を持っており、水資源・食物資源の変動によって年間にその中の様々な場所を利用する<ref name="Shuangling2011" />。
フランソワルトンが好む生息地は[[カルスト地形]]、すなわち熱帯および亜熱帯でみられる[[石灰岩]]の崖と洞窟である。


フラソワルトンの生息できる場所の範囲は限定されている。彼らは主に中国南西部とベトナム北部で見られる。野生におけるフランソワルトンの研究の多くは[[広西チワン族自治区]]の弄崗自然保護区と扶綏自然保護区(Fusui Nature Reserve)で行われている<ref name=Zhou2007a>{{cite journal | doi = 10.1007/s10329-006-0027-9 |author1=Zhou, Qihai |author2=Chengming, H. |author3=Li, Y. |author4=Cai, X. | year = 2007a | title = Ranging behavior of the Francois langur (''Trachypithecus francoisi'') in the Fusui nature Reserve, China | journal = Primates | volume = 48 | issue = 4 | pages = 320–323 | pmid = 17171396}}</ref>。本種のなわばりの平均的な広さは19ヘクタールほどであり、一日の行動域は341-577平方メートルである<ref name=Zhou2007a/>。一般的に、食物としている葉の品質が低いと、栄養面での危機やなわばりの縮小、移動に費やす時間の短縮化をもたらす。最大の群は500-600個体を含むもので、麻陽河国立自然保護区(Mayanghe National Nature Reserve)で観察されたものである<ref name=Yang2007>{{cite journal | doi = 10.1016/S1872-2032(07)60043-2 |author1=Yang, Lou |author2=Minghai, Z. |author3=Jianzhang, M. |author4=Ankang, W. |author5=Shusen, Z. | year = 2007 | title = Time budget of daily activity of Francois’ langur (''Trachypithecus francoisi'') in disturbance habitat | journal = Acta Ecologica Sinica | volume = 27 | pages = 1715–1722}}</ref>。群の平均的な個体数は4-27個体である<ref name=arkive />。2009年の扶綏自然保護区からの報告では、フランソワルトンの個体数はそれまでの5年で73%も減少し、そのため分布域はさらに縮小している<ref name=Zhou2007a/>。最近の個体数調査では、彼らは10の県の14地域にのみ限定されているとしている<ref name="Youbang2009">{{cite journal|last=Youbang|first=L|author2=Ping D |author3=Pingping J |author4=Wood C |author5=Chengming H |title=Dietary response of a group of Francois' langur ''Trachypithecus francoisi'' in a fragmented habitat in the county of Fusui, China|journal=Wildlife Biology|date=June 2009|volume=15|series=2|pages=137|doi=10.2981/08-006}}</ref>。


== 保護状況 ==
== 保護状況 ==
[[ファイル:Francois'_Langur_0938.jpg|サムネイル|サンアントニオ動物園のフランソワルトン]]
[[ファイル:Francois'_Langur_0938.jpg|サムネイル|サンアントニオ動物園のフランソワルトン]]
フランソワルトンの個体数はここ30年で着実に減少している。今日において彼らの生存を脅かしている原因の中で、最も影響力が大きいのは狩猟である 最も多くのフランソワルトンが生息する弄では、地元の人たちからフランソワルトンには薬効があると信じられており、特にその骨から作られたwineは疲労とリューマチに効くと信じられているため、地元の住民はフランソワルトンを狩っていた。[[広西チワン族自治区|広西]]では推定で90%の個体数の減少が1980年代から見られている。2002年から2003年にかけての調査では14の群で307頭が現存することが確認された。 1973年には4000~5000頭であった。1970年には1400頭以上が、1980年代には1500頭以上が殺されたという狩猟記録が残されている。
フランソワルトンの個体数はここ30年で着実に減少している。今日において彼らの生存を脅かしている原因の中で、最も影響力が大きいのは狩猟である<ref name=Li2007/>。最も多くのフランソワルトンが生息する弄では、地元の人たちからフランソワルトンには薬効があると信じられており、特にその骨から作られた薬用酒は疲労とリューマチに効くと信じられているため、地元の住民はフランソワルトンを狩っていた<ref name=Li2007/>。[[広西チワン族自治区]]では推定で90%の個体数の減少が1980年代から見られている。2002年から2003年にかけての調査では14の群で307頭が現存することが確認された<ref name=Li2007/>1983年には推定4000~5000頭であった。1970年には1400頭以上が、1980年代には1500頭以上が殺されたという狩猟記録が残されている。

その他のフランソワルトンに対する危機は、生息域の破壊である。このサルは石灰岩質の崖に住むが、農民が自分の土地を耕そうとして斜面下部に火を付けることがある<ref name=arkive />。石灰岩は火に対して非常に弱く、これにより彼らの生息地が破壊されるだけでなく、主な食物が葉であるために深刻な食糧不足をももたらされることになる<ref name=Li2007/>。フランソワルトンの主な捕食者は、地上性のものと飛行性のものがいる<ref name=Zhou2009/>。[[ウンピョウ]]は潜在的な捕食者ではあるが、その数が非常に少ないためフランソワルトンの主要な敵ではない。[[カンムリワシ]]や[[クマタカ]]のような空中からの捕食者のほうが弄崗のフランソワルトン(特に子ども)にとってはより大きな脅威である<ref name=Zhou2009/>。

その大規模かつ継続的な個体数の減少にも関わらず、この種と生息域の保護に向けた活動はいまだに最小限である。現在の個体数は2500を切っている<ref name=Li2007/>。"Conservation Action Plan"と呼ばれる森林の保全と狩猟の禁止を目的とした計画が1996年に起草されたが、いまだに実施されてはいない。このサルを保護するには、狩猟の禁止が実施されるだけでなく、生息地も同様に保全される必要がある<ref name=arkive />。2003年に国家林業局はフランソワルトンが大幅に減少していることを認め、この地域において彼らをハンターから守るための法整備の強化に同意した<ref name=Li2007/>。さらに[[アジア開発銀行]]は、燃料となる薪の採集を減らし、ひいては火災の件数も減少させるため、このサルの生息地近辺に居住している住民が[[バイオガス]]施設を建設することへの援助を始めた<ref name=Li2007/>。最後に、[[地球環境ファシリティ]]による自然保護区とそこに住むフランソワルトンを守るための計画が現在進行中である<ref name=Li2007/>。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2018年1月29日 (月) 22:20時点における版

フランソワルトン
フランソワルトン
フランソワルトン
保全状況評価[1]
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: サル目Primates
: オナガザル科 Cercopithecidae
: ラングール属 Trachypithecus
: フランソワルトン T. francoisi
学名
Trachypithecus francoisi
(de Pousargues1898)
Geographic range
Geographic range

フランソワルトンTrachypithecus francoisi)は、霊長類オナガザル科ラングール属に分類されるサルであり、この種群の模式種とされている。近年の研究でこの種はコロブス亜科に属するとされている[2]

この種は中国西南部からベトナム北東部に分布している。野生のフランソワルトンの総数は把握されていないが、ベトナムに生息しているのは500頭以下、中国には1400~1650頭ほどだと言われている[1]。60頭ほどが北米の動物園で飼育されている。種名は当時中国南部龍州県の領事であったAuguste François (1857–1935)にちなんで名付けられた[3]

形態

フランソワルトンは中くらいの大きさのサルで、艶やかな黒い体毛をもっている。耳から頰の下部分にかけて非常に目立つ白い毛が生えている[4]。形態学的特徴はその複雑なにあり、4つの胃袋に分かれている。これは植物中心の食物を消化するために必要な適応であった[2]

大きさにおいて性的二型が見られる。オスは体長が55-64センチメートル、メスが47-59センチメートルである。尾長はオスが82-96センチメートル、メスが74-89センチメートルと、オスのほうが尻尾が長い傾向にある。体重はオスの方が顕著に重く、オス6.5-7.2キログラムなのに対し、メスは5.5-5.9キログラムである。子どもは0.45-0.50キログラムで生まれてくる[4]


フランソワルトンは硬い葉の繊維を消化するための巨大な唾液腺をもっている。さらに進化的適応がよくわかるものとして2つの小部屋に分かれた胃がある。第1胃ではバクテリアが唾液によって始まった繊維の消化をしつづける。第1胃は中性であり、バクテリアが増殖するのに適した環境である。第2胃では他の哺乳類と同じように酸によって食物の分解が完了する[4]

行動

くつろいだ様子で切り株に座るフランソワルトン ロサンゼルス動物園

フランソワルトンは昼行性であり、1日のほとんどを休息と餌探しに費やす[5]。ある研究では、撹乱を受けた環境における行動の時間配分は、休息が35.41%、餌探しが31.67%、移動が14.44%、身を寄せ合っているのが9.61%、遊びが8.56%、グルーミングが0.33%であった[5]。移動・遊び・グルーミング・身の寄せ合いは季節によって大きく変化する[6]。興味深いことにグルーミングは春には観察されていない[5]。冬期にはより多くの時間を移動に使い(20.12%)、春期には身の寄せ合いが多くなる(14.62%)[6]

フランソワルトンは4-27匹の群を作るが、多くは12匹ほどの群である[4][7]。群はメスが優勢な母系社会である。その群の中でメスは共同で子育てをし、群に定住する傾向がある[7]。グループ内のオスは子育てには関わらず、若いオスは性成熟の前に群を離れる[7]。子ザルは乳離れをする生後2歳ごろまで面倒を見られるが、一度離乳すると親族との関係は群の他の個体に対するものと同じになる[4]

フランソワルトンの食物の50%以上は植物の葉である。他にも果実(17.2%)、種子(14.2%)、花、茎、根、樹皮などを食べることもあり、時おり岩の表面や崖の鉱物や虫を食べることもある。4月から9月の乾季の間は彼らの好物である若い葉をよくたべる。10月から3月までの期間は若い葉があまり手に入らないため、種子や葉柄、茎を食べることで補っている[2]


フランソワルトンは食物に選択的であることが、中国の弄崗国立自然保護区(Nonggang National Nature Reserve)で観察されている。主に10種の植物の若い葉を主に食べるが、そのうち2種のみが保護区でよく見られる種である。もっとも、場合によってはこの10種以外の植物も食べる[2]。別の研究では、分断された生息地では、たった4種の植物(Litsea glutinosa, Pittosporum glabratum, Cipadessa cinerascens, Desmos chinensis)しか好んで食べないとされている。その研究によると、食事の時間の61.6%はこれらの種の植物を、残りの38.4%はその他の36種の植物を食べるのに費やされている[8]

生息地と分布

フランソワルトンが好む生息地はカルスト地形、すなわち熱帯および亜熱帯でみられる石灰岩の崖と洞窟である[9]。そのような石灰岩の崖に住むことにより、彼らは睡眠時の状況において有利な立場にいる。彼らは岩棚でも洞窟でも寝るが、洞窟の方を好む[10]。フランソワルトンは常緑樹林帯の中で気温16℃以上の場所を睡眠の場所として選ぶことも知られている[11]。平らな土地ではなく石灰岩質の崖や洞窟に生息・睡眠することにより、捕食される割合を大きく減少させている[11]。彼らは常に身を隠すように行動し、就寝のために洞窟に入る際には捕食者を避ける戦術として非常に警戒深くなる[10]。さらに、彼らは自分のなわばりを主張するために大きな鳴き声を上げる[12]。フランソワルトンはまた、採餌のしやすさによって寝場所を変える。採餌できそうな場所の近くに寝場所を選べば、エネルギーを節約し移動コストを低減させることができる[11]。寝場所に最適な場所と採餌に最適な場所は必ずしも同一ではないので寝場所は採餌場所の中心に位置するわけではなく、近接した場所に位置する[11]。捕食を避けるために、採餌に向かう際には同じルートをとり、連夜同じ寝場所に戻る傾向がある[10]。フランソワルトンは通常およそ6-10箇所の寝場所を持っており、水資源・食物資源の変動によって年間にその中の様々な場所を利用する[11]

フラソワルトンの生息できる場所の範囲は限定されている。彼らは主に中国南西部とベトナム北部で見られる。野生におけるフランソワルトンの研究の多くは広西チワン族自治区の弄崗自然保護区と扶綏自然保護区(Fusui Nature Reserve)で行われている[7]。本種のなわばりの平均的な広さは19ヘクタールほどであり、一日の行動域は341-577平方メートルである[7]。一般的に、食物としている葉の品質が低いと、栄養面での危機やなわばりの縮小、移動に費やす時間の短縮化をもたらす。最大の群は500-600個体を含むもので、麻陽河国立自然保護区(Mayanghe National Nature Reserve)で観察されたものである[5]。群の平均的な個体数は4-27個体である[4]。2009年の扶綏自然保護区からの報告では、フランソワルトンの個体数はそれまでの5年で73%も減少し、そのため分布域はさらに縮小している[7]。最近の個体数調査では、彼らは10の県の14地域にのみ限定されているとしている[8]

保護状況

サンアントニオ動物園のフランソワルトン

フランソワルトンの個体数はここ30年で着実に減少している。今日において彼らの生存を脅かしている原因の中で、最も影響力が大きいのは狩猟である[9]。最も多くのフランソワルトンが生息する弄崗では、地元の人たちからフランソワルトンには薬効があると信じられており、特にその骨から作られた薬用酒は疲労とリューマチに効くと信じられているため、地元の住民はフランソワルトンを狩っていた[9]広西チワン族自治区では推定で90%の個体数の減少が1980年代から見られている。2002年から2003年にかけての調査では14の群で307頭が現存することが確認された[9]。1983年には推定4000~5000頭であった。1970年代には1400頭以上が、1980年代には1500頭以上が殺されたという狩猟記録が残されている。

その他のフランソワルトンに対する危機は、生息域の破壊である。このサルは石灰岩質の崖に住むが、農民が自分の土地を耕そうとして斜面下部に火を付けることがある[4]。石灰岩は火に対して非常に弱く、これにより彼らの生息地が破壊されるだけでなく、主な食物が葉であるために深刻な食糧不足をももたらされることになる[9]。フランソワルトンの主な捕食者は、地上性のものと飛行性のものがいる[10]ウンピョウは潜在的な捕食者ではあるが、その数が非常に少ないためフランソワルトンの主要な敵ではない。カンムリワシクマタカのような空中からの捕食者のほうが弄崗のフランソワルトン(特に子ども)にとってはより大きな脅威である[10]

その大規模かつ継続的な個体数の減少にも関わらず、この種と生息域の保護に向けた活動はいまだに最小限である。現在の個体数は2500を切っている[9]。"Conservation Action Plan"と呼ばれる森林の保全と狩猟の禁止を目的とした計画が1996年に起草されたが、いまだに実施されてはいない。このサルを保護するには、狩猟の禁止が実施されるだけでなく、生息地も同様に保全される必要がある[4]。2003年に国家林業局はフランソワルトンが大幅に減少していることを認め、この地域において彼らをハンターから守るための法整備の強化に同意した[9]。さらにアジア開発銀行は、燃料となる薪の採集を減らし、ひいては火災の件数も減少させるため、このサルの生息地近辺に居住している住民がバイオガス施設を建設することへの援助を始めた[9]。最後に、地球環境ファシリティによる自然保護区とそこに住むフランソワルトンを守るための計画が現在進行中である[9]

参考文献

  1. ^ a b Bleisch, B.; Manh Ha, N.; Khat Quyet, L.; Yongcheng, L. (2008). Trachypithecus francoisi. The IUCN Red List of Threatened Species (IUCN) 2008: e.T39853A10277000. doi:10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T39853A10277000.en. http://www.iucnredlist.org/details/39853/0 2018年1月12日閲覧。. 
  2. ^ a b c d Zhou, Qihai; Fuwen, W.; Li, M.; Chengming, H.; Luo, B. (2006). “Diet and food choice of (Trachypithecus francoisi) in the Nonggang Nature Reserve, China”. International Journal of Primatology 27: 1441–1458. doi:10.1007/s10764-006-9082-8. 
  3. ^ The Eponym Dictionary of Mammals - Page 141 Bo Beolens, Michael Watkins, Michael Grayson - 2009 "François' Leaf Monkey Trachypithecus francoisi Pousargues, 1898 [Alt. François' Langur] Auguste François (1857–1935) was the French Consul at Lungchow in southern China, where he was the first person to bring this monkey to the ..."
  4. ^ a b c d e f g h Arkive - Francois Langur”. Arkive.org. 2012年3月25日閲覧。
  5. ^ a b c d Yang, Lou; Minghai, Z.; Jianzhang, M.; Ankang, W.; Shusen, Z. (2007). “Time budget of daily activity of Francois’ langur (Trachypithecus francoisi) in disturbance habitat”. Acta Ecologica Sinica 27: 1715–1722. doi:10.1016/S1872-2032(07)60043-2. 
  6. ^ a b Zhou, Qihai; Wei, F.; Chengming, H.; Li, M.; Ren, B.; Luo, B. (2007b). “Seasonal Variation in the Activity Patterns and Time Budgets of Trachypithecus francoisi in the Nonggang Nature Reserve, China”. International Journal of Primatology 28: 657–671. doi:10.1007/s10764-007-9144-6. 
  7. ^ a b c d e f Zhou, Qihai; Chengming, H.; Li, Y.; Cai, X. (2007a). “Ranging behavior of the Francois langur (Trachypithecus francoisi) in the Fusui nature Reserve, China”. Primates 48 (4): 320–323. doi:10.1007/s10329-006-0027-9. PMID 17171396. 
  8. ^ a b Youbang, L; Ping D; Pingping J; Wood C; Chengming H (June 2009). “Dietary response of a group of Francois' langur Trachypithecus francoisi in a fragmented habitat in the county of Fusui, China”. Wildlife Biology. 2 15: 137. doi:10.2981/08-006. 
  9. ^ a b c d e f g h i Li, Youbang; Huang, C.; Ding, P.; Tang, Z.; Wood (2007). “Dramatic decline in Francois' langur (Trachypithecus francoisi) in Guangxi Province, China”. Oryx 41: 38–43. doi:10.1017/S0030605307001500. 
  10. ^ a b c d e Zhou, Qihai; Chengming, H.; Ming, L.; Fuwen, W. (2009). “Sleeping site use by Trachypithecus francoisi at Nonggang Nature Reserve China”. International Journal of Primatology 30: 353–365. doi:10.1007/s10764-009-9348-z. 
  11. ^ a b c d e Shuangling, Wang; Yang Luo; Guofa Cui (2011). “Sleeping site selection of Francois's langur in two habitats in Mayanghe National Nature Reserve, Guizhou, China”. Primates 51: 51/2. doi:10.1007/s10329-010-0218-2. http://ehis.ebscohost.com/eds/detail?vid=2&hid=22&sid=c5726cd4-580e-47a0-93e4-69bfa660b02e%40sessionmgr10&bdata=JnNpdGU9ZWRzLWxpdmU%3d#db=eda&AN=57240398 2012年3月25日閲覧。. 
  12. ^ Li, Zhaoyuan; E. Rogers (1993). “Time budgets of Presbytis leucocephalus”. Acta Theriol Sin 12: 7–13. 

外部リンク

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