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'''[[超関数]]'''(ちょうかんすう、<span lang="en">[[:en:Generalized function|generalized function]];</span> 一般関数)は、実変数の[[関数]]を一般化した概念である。通常は[[シュワルツの超関数]]([[:en:Distribution (mathematics)|distribution]])か[[佐藤の超関数]]([[:en:Hyperfunction|hyperfunction]])かのいずれかを指す。
'''一般化された関数'''、あるいは'''超関数'''(ちょうかんすう、{{lang-en-short|generalized function}}は、[[関数]]を一般化した概念である。通常は[[シュワルツの超関数]] {{en|(distribution)}} か[[佐藤の超関数]] {{en|(hyperfunction)}} のいずれかを指す。


超関数は、[[連続関数]]に対する[[微分]]の概念を拡張し、[[偏微分方程式]]の解空間を拡げた。[[物理]]や[[工学]]で扱われる不連続な問題においては、[[ディラックのデルタ関数|デルタ関数]]のような超関数を解とするような[[微分方程式]]が導かれるため重要である。
超関数は、[[連続関数]]に対する[[微分]]の概念を拡張し、[[偏微分方程式]]の解空間を拡げた。超関数は[[不連続関数]]の構成において特に有用であり、[[物理]]や[[工学]]で扱われる離散的な問題においては、[[ディラックのデルタ関数|デルタ関数]]のような超関数を解とするような[[微分方程式]]が導かれるため重要である。たとえば[[点電荷]]のような電荷分布はディラックのデルタ関数を用いて表現される。


超関数の起源は[[演算子法]]に見ることができるが、直接的には、[[セルゲイ・ソボレフ]]や[[ローラン・シュワルツ]]らの仕事がその始まりである。
[[1935年]]に[[セルゲイ・ソボレフ]] (Sergei Sobolev) が、[[部分積分]]を形式的に用いて、微分方程式の解の拡張をしたのをはじめ、何人かの数学者によって[[微分]]の拡張が行われ始め、[[1940年]]代末には[[ローラン・シュワルツ]]がこれらを超関数の理論としてまとめた。そして1960年前後に[[佐藤幹夫 (数学者)|佐藤幹夫]]がまったく別の見地に立って超関数の理論を組み立てた。
[[1935年]]にソボレフが、[[部分積分]]を形式的に用いて、微分方程式の解の拡張をしたのをはじめ、何人かの数学者によって微分の拡張が行われ始め、[[1940年代]]末にはシュワルツがこれらを超関数の理論としてまとめた。1958年に[[佐藤幹夫 (数学者)|佐藤幹夫]]が[[層コホモロジー]]の理論を応用して、シュワルツらとは別の見地に立った超関数論を組み立てた。超関数論に重要な影響を与えたのは、[[偏微分方程式]]や[[群の表現]]の理論などからの技術的な要請であった。


== 概要 ==
== 概要 ==
「超関数」の導入は、[[ディラックのデルタ関数]]のような通常の関数の概念では許されない「関数」をもそれを「超関数」として扱うことで通常の関数と統一的に扱うことを可能にし、不連続関数の「微分」や偏微分方程式の「弱い解」などに合理的根拠を与えるなど、解析演算の自由度を著しく高めた。
「超関数」の導入は、[[ディラックのデルタ関数]]のような通常の関数の概念では許されない「関数」をもそれを「超関数」として扱うことで通常の関数と統一的に扱うことを可能にし、不連続関数の「微分」や偏微分方程式の「弱い解」などに合理的根拠を与えるなど、解析演算の自由度を著しく高めた。


実際に超関数を用いるには、まず通常の関数に対応する要素をもち、かつさらに広い要素にも対処できるつの数学的表現を定め、それを超関数と定義する。そして例えば関数を微分するなどの[[演算]]も対応する超関数の表現に対する操作として定義し直す。こうして例えば[[ヘヴィサイドの階段関数]]では、それを超関数に読み替えたものを微分すると通常の関数とは解釈出来ない表現が得られる。それが[[ディラックのデルタ関数]]という名の超関数である。
実際に超関数を用いるには、まず通常の関数に対応する要素をもち、かつさらに広い要素にも対処できるつの数学的表現を定め、それを超関数と定義する。そして例えば関数を微分するなどの[[演算]]も対応する超関数の表現に対する操作として定義し直す。こうして例えば[[ヘヴィサイドの階段関数]]では、それを超関数に読み替えたものを微分すると通常の関数とは解釈出来ない表現が得られる。それが[[ディラックのデルタ関数]]という名の超関数である。


超関数論では、通常の関数の演算に対応する超関数の表現の操作を定め、超関数の計算規則をつくる。と同時に主な超関数に対して微分や[[フーリエ変換]]といった演算を施した結果を求め、それを公式集としてまとめておく(これらの計算規則や公式は数学的に厳密な表現に対する操作で定義され、実行されているので、数学的な正当性が保証されていることに注意)。すると超関数の計算は、計算規則に則り、公式集の助けを借りて、機械的に行うことが出来て、それを超関数と意識する必要もなくなる。かくして通常の関数に対応する超関数では普通の関数記号''f(x)''を使ってそのまま演算を実行でき、結果が普通の関数でなくなればディラックのデルタ関数のような超関数の記号が現れる。
超関数論では、通常の関数の演算に対応する超関数の表現の操作を定め、超関数の計算規則をつくる。と同時に主な超関数に対して微分や[[フーリエ変換]]といった演算を施した結果を求め、それを公式集としてまとめておく(これらの計算規則や公式は数学的に厳密な表現に対する操作で定義され、実行されているので、数学的な正当性が保証されていることに注意)。すると超関数の計算は、計算規則に則り、公式集の助けを借りて、機械的に行うことが出来て、それを超関数と意識する必要もなくなる。かくして通常の関数に対応する超関数では普通の関数記号 {{math|''f''(''x'')}} を使ってそのまま演算を実行でき、結果が普通の関数でなくなればディラックのデルタ関数のような超関数の記号が現れる。


こうして超関数を用いることにより、不連続関数の微分、デルタ関数、アダマールの発散積分の有限部分、緩増加関数のフーリエ変換など、従来の数学の枠内には納まらない演算まで自由に扱うことが出来るようになった。
こうして超関数を用いることにより、不連続関数の微分、デルタ関数、アダマールの発散積分の有限部分、緩増加関数のフーリエ変換など、従来の数学の枠内には納まらない演算まで自由に扱うことが出来るようになった。


「超関数」は上記の性質を満たすように定義されていれば何でも使えるので、その定義の仕方は通りではない。通常はこの言葉で代表的なつの定義方法である、[[シュワルツの超関数]]か[[佐藤の超関数]]かのいずれかを指す。
「超関数」は上記の性質を満たすように定義されていれば何でも使えるので、その定義の仕方は通りではない。通常はこの言葉で代表的な 2 つの定義方法である、[[シュワルツの超関数]]か[[佐藤の超関数]]かのいずれかを指す。


== 名称 ==
== 名称 ==
「超関数」という言葉自体は日本でつくられた数学用語である。これはシュワルツの著書を訳出するとき、原著ではdistribution(分布)とあった名称を、関数概念を拡張したものの名前であるという実体を取り入れて訳者が「超函数」と意訳したことに始まる<ref>しかし、訳者の岩村自身はこの訳語にためらいがあったようで、訳書のまえがきで「後者(「distribution」)は原語のままで流通することが望ましい」と記している。</ref> 欧米ではシュワルツの超関数は今でも「distribution」と呼ばれるそして超関数全般を指すときは一般化された関数」(generalized function)。それに対し、佐藤の超関数はを発表した英文論文で「hyperfunction(超関数)という言葉を使ったの、欧米もそ名でれている。
「超関数」という言葉自体は日本でつくられた数学用語である。これはシュワルツの著書を訳出するとき、原著では {{en|"distribution"}}(分布)とあった名称を、関数概念を拡張したものの名前であるという実体を取り入れて訳者が「超函数」と意訳したことに始まる<ref>しかし、訳者の岩村自身はこの訳語にためらいがあったようで、訳書のまえがきで「後者 {{en|(distribution)}} は原語のままで流通することが望ましい」と記している。</ref>。英語文献におい、一般の超関数を指すときは {{en|generalized function}}(一般化された関数特にシュワルツや佐藤の超関数を指す場合に、シュワルツの超関数は {{en|"distribution"}} と呼ば、佐藤超関数は {{en|"hyperfunction"}}(超関数)と呼ばれる。{{en|hyperfunction}} という呼称は原論文用いられる用語あり、佐藤超関数に対する称はこに倣っている。


== シュワルツの超関数 ==
== シュワルツの超関数 ==
{{main|シュワルツ超函数}}
シュワルツの超関数は、[[台_(数学)#コンパクト台付きの函数|コンパクトな台]]をもつ無限回微分可能な関数を試験関数として、そのような試験関数全体のなす関数空間上の連続線型汎関数として定義される。こうして超関数は、その微分可能性が試験関数の微分可能性に移されて常に成り立つことになるなど、極めて良好な性質を持つことになる。詳細は[[シュワルツの超関数]]を参照。
シュワルツの超関数は、[[台_(数学)#コンパクト台付きの函数|コンパクトな台]]をもつ無限回微分可能な関数を試験関数として、そのような試験関数全体のなす関数空間上の連続線型汎関数として定義される。こうして超関数は、その微分可能性が試験関数の微分可能性に移されて常に成り立つことになるなど、極めて良好な性質を持つことになる。


一方、その変種として超関数を通常の関数の列の極限として定義して、シュワルツの超関数理論に則って理論体系を作り上げる方法がある。この方法によると、一部数学的厳密性の証明を棚上げにしてではあるが、超関数の非常に解りやすく使い易い理論体系が作られる。参考文献にあるライトヒルの著書を参照
一方、その変種として超関数を通常の関数の列の極限として定義して、シュワルツの超関数理論に則って理論体系を作り上げる方法がある。この方法によると、一部数学的厳密性の証明を棚上げにしてではあるが、超関数の非常に解りやすく使い易い理論体系が作られる<ref>[[#フーリエ解析と超関数|ライトヒル『フーリエ解析と超関数』]]。</ref>


== 佐藤の超関数 ==
== 佐藤の超関数 ==
{{main|佐藤超函数}}
シュワルツ理論の成功に刺激され、[[佐藤幹夫 (数学者)|佐藤幹夫]]は'''[[佐藤の超関数]]''' {{lang|en|(''hyperfunction'')}} のアイデアを導き出した。佐藤の超関数は[[正則関数]]の抽象的境界値として定義される。具体的に云えば、複素平面の上半平面で[[正則]]な関数 ''F<sub>+</sub>(z)'' と下半平面で正則な関数 ''F<sub>-</sub>(z)'' との実軸上での差、''{F<sub>+</sub>(z) - F<sub>-</sub>(z)}<sub>z=x</sub>'' として定義される。
シュワルツ理論の成功に刺激され、[[佐藤幹夫 (数学者)|佐藤幹夫]]は'''[[佐藤の超関数]]''' {{lang|en|(''hyperfunction'')}} のアイデアを導き出した。佐藤の超関数は[[正則関数]]の抽象的境界値として定義される。具体的に云えば、複素平面の上半平面で[[正則]]な関数 {{math|''F''<sub>+</sub>(''z'')}} と下半平面で正則な関数 {{math|''F''<sub>&minus;</sub>(''z'')}} との実軸上での差、{{math|(''F''<sub>+</sub>(''z'') &minus; ''F''<sub>&minus;</sub>(''z'')){{!}}<sub>Im''z'' {{=}} 0</sub>}} として定義される。


厳密な理論は、多変数複素関数の成す[[層 (数学)|層]]係数のコホモロジー理論を用いて、代数的手法によって展開される。こうした代数的手法の解析学への導入は、今日、[[D加群]]等に代表される[[代数解析学]]や、余接バンドル上で {{lang|en|microfunction}} や {{lang|en|microdifferential operator}} 等を用いる[[超局所解析|超局所解析学]]をもたらした。
厳密な理論は、多変数複素関数の成す[[層 (数学)|層]]係数のコホモロジー理論を用いて、代数的手法によって展開される。こうした代数的手法の解析学への導入は、今日、[[D加群]]等に代表される[[代数解析学]]や、余接バンドル上で {{lang|en|microfunction}} や {{lang|en|microdifferential operator}} 等を用いる[[超局所解析|超局所解析学]]をもたらした。
また、物理学における[[ファインマン積分]]のような形式的方法を厳密な数学の理論へと変えることができたのである。詳細は[[佐藤の超関数]]を参照
また、物理学における[[ファインマン積分]]のような形式的方法を厳密な数学の理論へと変えることができたのである。

== 参考文献 ==
*{{Cite book|和書|author=今井功|authorlink=今井功 (物理学者)|year=1981|month=5|title=応用超関数論|volume=Ⅰ|publisher=サイエンス社|isbn=978-4-7819-0215-9}} - 「佐藤の超関数」にもとづく体系化。
*{{Cite book|和書|author=今井功|authorlink=今井功 (物理学者)|year=1981|month=5|title=応用超関数論|volume=Ⅱ|publisher=サイエンス社|isbn=978-4-7819-0216-6}}
*{{Cite book|和書|author=垣田高夫|authorlink=垣田高夫|year=1985|month=8|title=シュワルツ超関数入門|series=日評数学選書|publisher=日本評論社|isbn=4-535-60112-7}}
**{{Cite book|和書|author=垣田高夫|authorlink=垣田高夫|year=1999|month=10|title=シュワルツ超関数入門|edition=新装版|publisher=日本評論社|isbn=4-535-60126-7}}
*{{Cite book|last=Schwartz|first=Laurent|origyear=1950|date=1997-10-21|title=Thèorie des distributions|edition=Nouveau tirage|publisher=Hermann & C<sup>ie</sup>|location=Paris|isbn=2705655514}}({{Cite book|和書|author=L・シュワルツ|authorlink=ローラン・シュワルツ|others=[[岩村聯]]、[[石垣春夫]]、[[鈴木文夫]]訳|origyear=1953|date=1971-09-30|title=超函数の理論|edition=原書第3版|publisher=岩波書店|isbn=4-00-005661-1}})
*{{Cite book|last=Lighthill|first=M. J.|others=Cambridge et. al.|date=1958-01-01|title=Introduction to Fourier Analysis and Generalized Functions|series=Cambridge Monographs on Mechanics|edition=Paperback|publisher=Cambridge University Press|isbn=0-521-09128-4}}({{Cite book|和書|author=M・J・ライトヒル|authorlink=M・J・ライトヒル|others=[[高見頴郎]]訳|year=1975|title=フーリエ解析と超関数|publisher=ダイヤモンド社}}) - 超関数を関数列の極限として定義する手法で解説。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{reflist}}
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== 参考文献 ==
{{div col|small=yes}}
*{{Cite book|和書
|first=功
|last=今井
|authorlink=今井功 (物理学者)
|date=1981-05
|title=応用超関数論
|volume=1
|publisher=サイエンス社
|isbn=978-4-7819-0215-9
|ref = 応用超関数論1}}
*{{Cite book|和書
|first=功
|last=今井
|authorlink=今井功 (物理学者)
|date=1981-05
|title=応用超関数論
|volume=2
|publisher=サイエンス社
|isbn=978-4-7819-0216-6
|ref=応用超関数論2}}
*{{Cite book|和書
|first=高夫
|last=垣田
|authorlink=垣田高夫
|date=1985-08
|title=シュワルツ超関数入門
|series=日評数学選書
|publisher=日本評論社
|isbn=4-535-60112-7
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**{{Cite book|和書
|first=高夫
|last=垣田
|authorlink=垣田高夫
|date=1999-10
|title=シュワルツ超関数入門
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|publisher=日本評論社
|isbn=4-535-60126-7
|ref=シュワルツ超関数入門新装版}}
*{{Cite book
|last=Schwartz
|first=Laurent
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|origdate=1950
|date=1997-10-21
|title=Thèorie des distributions
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**{{Cite book|和書
|first=L.
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|origdate=1953
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|publisher=岩波書店
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|ref=超函数の理論}}
*{{Cite book
|last=Lighthill
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|authorlink=:en:James Lighthill
|others=Cambridge et. al.
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|title=Introduction to Fourier Analysis and Generalized Functions
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** {{Cite book|和書
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|authorlink=ジェームス・ライトヒル
|others=[[高見頴郎]]訳
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|title=フーリエ解析と超関数
|publisher=ダイヤモンド社
|ref=フーリエ解析と超関数}} - 超関数を関数列の極限として定義する手法で解説。
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|first=L.
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|title=Sur l'impossibilité de la multiplication des distributions
|journal=Comptes Rendus de L'Academie des Sciences
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|volume=239
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|origdate=1958
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*{{Citation
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|title=Generalized functions. Vol. 2. Spaces of fundamental and generalized functions
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| title = Rules for integrals over products of distributions from coordinate independence of path integrals
| first1 = H.
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|bibcode=1982TMP....53..952T
|ref=harv}}
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[シュワルツの超関数]]
* [[シュワルツの超関数]]
* [[シュワルツ超函数]]
* [[佐藤の超関数]]
* [[佐藤の超関数]]
* [[佐藤超函数]]
* [[ディラックのデルタ関数]]
* [[超函数]]
* [[部分積分]]
* [[微分方程式]]
* [[微分方程式]]
* [[部分積分]]
* [[ディラックのデルタ関数]]


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2015年1月3日 (土) 10:50時点における版

一般化された関数、あるいは超関数(ちょうかんすう、: generalized function)とは、関数を一般化した概念である。通常はシュワルツの超関数 (distribution)佐藤の超関数 (hyperfunction) のいずれかを指す。

超関数は、連続関数に対する微分の概念を拡張し、偏微分方程式の解空間を拡げた。超関数は不連続関数の構成において特に有用であり、物理工学で扱われる離散的な問題においては、デルタ関数のような超関数を解とするような微分方程式が導かれるため重要である。たとえば点電荷のような電荷分布はディラックのデルタ関数を用いて表現される。

超関数の起源は演算子法に見ることができるが、直接的には、セルゲイ・ソボレフローラン・シュワルツらの仕事がその始まりである。 1935年にソボレフが、部分積分を形式的に用いて、微分方程式の解の拡張をしたのをはじめ、何人かの数学者によって微分の拡張が行われ始め、1940年代末にはシュワルツがこれらを超関数の理論としてまとめた。1958年に佐藤幹夫層コホモロジーの理論を応用して、シュワルツらとは別の見地に立った超関数論を組み立てた。超関数論に重要な影響を与えたのは、偏微分方程式群の表現の理論などからの技術的な要請であった。

概要

「超関数」の導入は、ディラックのデルタ関数のような通常の関数の概念では許されない「関数」をもそれを「超関数」として扱うことで通常の関数と統一的に扱うことを可能にし、不連続関数の「微分」や偏微分方程式の「弱い解」などに合理的根拠を与えるなど、解析演算の自由度を著しく高めた。

実際に超関数を用いるには、まず通常の関数に対応する要素をもち、かつさらに広い要素にも対処できる一つの数学的表現を定め、それを超関数と定義する。そして例えば関数を微分するなどの演算も対応する超関数の表現に対する操作として定義し直す。こうして例えばヘヴィサイドの階段関数では、それを超関数に読み替えたものを微分すると通常の関数とは解釈出来ない表現が得られる。それがディラックのデルタ関数という名の超関数である。

超関数論では、通常の関数の演算に対応する超関数の表現の操作を定め、超関数の計算規則をつくる。と同時に主な超関数に対して微分やフーリエ変換といった演算を施した結果を求め、それを公式集としてまとめておく(これらの計算規則や公式は数学的に厳密な表現に対する操作で定義され、実行されているので、数学的な正当性が保証されていることに注意)。すると超関数の計算は、計算規則に則り、公式集の助けを借りて、機械的に行うことが出来て、それを超関数と意識する必要もなくなる。かくして通常の関数に対応する超関数では普通の関数記号 f(x) を使ってそのまま演算を実行でき、結果が普通の関数でなくなればディラックのデルタ関数のような超関数の記号が現れる。

こうして超関数を用いることにより、不連続関数の微分、デルタ関数、アダマールの発散積分の有限部分、緩増加関数のフーリエ変換など、従来の数学の枠内には納まらない演算まで自由に扱うことが出来るようになった。

「超関数」は上記の性質を満たすように定義されていれば何でも使えるので、その定義の仕方は一通りではない。通常はこの言葉で代表的な 2 つの定義方法である、シュワルツの超関数佐藤の超関数かのいずれかを指す。

名称

「超関数」という言葉自体は日本でつくられた数学用語である。これはシュワルツの著書を訳出するとき、原著では "distribution"(分布)とあった名称を、関数概念を拡張したものの名前であるという実体を取り入れて訳者が「超函数」と意訳したことに始まる[1]。英語文献において、一般の超関数を指すときは generalized function(一般化された関数)というが、特にシュワルツや佐藤の超関数を指す場合には、シュワルツの超関数は "distribution" と呼ばれ、佐藤の超関数は "hyperfunction"(超関数)と呼ばれる。hyperfunction という呼称は原論文で用いられる用語であり、佐藤の超関数に対する呼称はこれに倣っている。

シュワルツの超関数

シュワルツの超関数は、コンパクトな台をもつ無限回微分可能な関数を試験関数として、そのような試験関数全体のなす関数空間上の連続線型汎関数として定義される。こうして超関数は、その微分可能性が試験関数の微分可能性に移されて常に成り立つことになるなど、極めて良好な性質を持つことになる。

一方、その変種として超関数を通常の関数の列の極限として定義して、シュワルツの超関数理論に則って理論体系を作り上げる方法がある。この方法によると、一部数学的厳密性の証明を棚上げにしてではあるが、超関数の非常に解りやすく使い易い理論体系が作られる[2]

佐藤の超関数

シュワルツ理論の成功に刺激され、佐藤幹夫佐藤の超関数 (hyperfunction) のアイデアを導き出した。佐藤の超関数は正則関数の抽象的境界値として定義される。具体的に云えば、複素平面の上半平面で正則な関数 F+(z) と下半平面で正則な関数 F(z) との実軸上での差、(F+(z) − F(z))|Imz = 0 として定義される。

厳密な理論は、多変数複素関数の成す係数のコホモロジー理論を用いて、代数的手法によって展開される。こうした代数的手法の解析学への導入は、今日、D加群等に代表される代数解析学や、余接バンドル上で microfunctionmicrodifferential operator 等を用いる超局所解析学をもたらした。 また、物理学におけるファインマン積分のような形式的方法を厳密な数学の理論へと変えることができたのである。

脚注

  1. ^ しかし、訳者の岩村自身はこの訳語にためらいがあったようで、訳書のまえがきで「後者 (distribution) は原語のままで流通することが望ましい」と記している。
  2. ^ ライトヒル『フーリエ解析と超関数』

参考文献

関連項目