「馬の毛色」の版間の差分

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== 概要 ==
== 概要 ==
馬の毛色は複雑に見えるが、何れも[[ユーメラニン]](真正[[メラニン]])と[[フェオメラニン]]の量と微細構造、[[メラノサイト]]自体の数や分布によって表現される肌や毛の色にすぎない。[[人]]は太古からこれらの中にいくつかのパターンを見出し、鹿毛、栗毛などと呼んできた。馬の個体識別に非常に有用であり、多くの場合血統登録時に記載が義務付けられる。
馬の毛色は主に[[ユーメラニン]](真正[[メラニン]])と[[フェオメラニン]]の量によって決まり、体毛にユーメラニンが多いとその色は濃く、フェオメラニンが多いと赤みを帯びた色になる。この配合比は殆ど[[遺伝子]]によって決定されている。基本的にはユーメラニンの量が多い鹿毛系、フェオメラニンの量が多い栗毛系、どちらとも少ない佐目毛系、肌には色素が存在するが毛には少ない芦毛、白い毛が混生する粕毛、ユーメラニン・フェオメラニン共に殆ど無い白毛に分けられる。なお[[アルビノ]]は発見されていない<ref>[http://news.bbc.co.uk/cbbcnews/hi/newsid_5140000/newsid_5149900/5149968.stm 日焼けに弱いアルビノの警察馬に愛の手を!](この個体はアルビノではなく白のぶちを持つ芦毛である)</ref>。


毛色は馬の個体識別に非常に有用であり、[[血統書]]には記載が義務付けられている。主な毛色としては鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、栗毛、栃栗毛、芦毛、青毛、佐目毛、河原毛、粕毛、月毛(パロミノ)、白毛、ぶち毛等があり([[サラブレッド]]ではこのうち鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、栗毛、栃栗毛、芦毛、青毛、白毛などが主に認められる)、細かく分類すると100種類以上になる。なおイエウマの元になった野生馬特定毛色だったと考えられ、現生する唯一の野生馬[[モウコノウマ]]は暗い河原毛のうに見える<ref>わゆBay Dun(遺伝子型はwwggCCEEAADD)</ref>有史以来家畜化されるに従徐々に変異が蓄積され今ような多彩な毛色が生まれるに至った考えられる。[[家畜]]化されたくの[[動物]]に見られ傾向である。
主な毛色としては鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、栗毛、栃栗毛、芦毛、青毛、佐目毛、河原毛、粕毛、月毛(パロミノ)、白毛、ぶち毛等があり、細かく分類すると100種類以上になる。これら極めて多くの[[遺伝子]]って制御されている。いくつか主要な毛色については発現機構解明さつつあが、なお細かなところで不明な点が数あ。例えば黒鹿毛や青鹿毛の遺伝型は不明である。


毛色は直接的には馬の運動能力、性格その他に何の影響も及ぼさない<ref>黒い馬は暑さに弱いといったことはある</ref>。ただし、野生状態では天敵から戦場では敵軍から見つけられる確率は毛色によって変化する。毛色に関連する疾病も存在する。馬によっては交配相手に特定の毛色を好む場合もある。
毛色は直接的には馬の運動能力、性格その他に何の影響も及ぼさない。ただし、野生状態では天敵から戦場では敵軍から見つけられる確率は毛色によって変化すると言われてきた。毛色に関連する疾病も存在する。馬によっては交配相手に特定の毛色を好む場合もある。

[[日本語]]では表現できない日本語圏に殆ど出現したことが無い毛色もあるため、[[英語]]も併記する。


== 化学的性質 ==
== 化学的性質 ==
体毛の色はメラニンによるものである。メラニンには、黒~茶褐色のユーメラニン(真性メラニン)と赤褐色~黄色のフェオメラニンの2種類がある。色の濃淡はユーメラニンにより決定され、黄色み・赤みはフェオメラニンに左右される。つまりユーメラニンが多ければ毛色は[[黒色]]に近付き、フェオメラニンが多ければ[[暖色]]に近付く。フェオメラニンは赤褐色の色素であるが、濃度が低いと黄色や象牙色を呈する。つまり、体毛の黄色み・赤みは同一の色素によるものである。ほとんどの馬はこれらの2種類の色素を混合して持っている。
体毛の色は[[メラニン]]によるものである。メラニンには、黒~茶褐色のユーメラニン(真性メラニン)と赤褐色~黄色のフェオメラニンの2種類がある。色の濃淡はユーメラニンにより決定され、黄色み・赤みはフェオメラニンに左右される。つまりユーメラニンが多ければ毛色は[[黒色]]に近付き、フェオメラニンが多ければ[[暖色]]に近付く。フェオメラニンは赤褐色の色素であるが、濃度が低いと黄色や象牙色を呈する。つまり、体毛の黄色み・赤みは同一の色素によるものである。ほとんどの馬はこれらの2種類の色素を混合して持っている。


フェオメラニンはユーメラニンよりも化学的に安定しており、体毛が[[酸化]]された場合にはユーメラニンから先に破壊されていく。長毛の先の色が薄いのはこのためで、季節による体毛の僅かな変化もユーメラニンの分解による。
フェオメラニンはユーメラニンよりも化学的に安定しており、体毛が[[酸化]]された場合にはユーメラニンから先に破壊されていく。長毛の先の色が薄いのはこのためで、[[季節]]による体毛の僅かな変化もユーメラニンの分解による。

=== メラニン合成の基本 ===
メラニンを合成する[[細胞]]は[[メラニン細胞|メラノサイト]]と呼ばれる。メラノサイトは、[[アミノ酸]]の一つ[[チロシン]]を出発物質とし、いくつかの段階を経てメラニンを合成している。メラニン合成の詳細は以下のとおりである。

まず、チロシンが[[チロシナーゼ]]によって酸化され、ドーパ、ついでドーパにもチロシナーゼが作用しドーパキノンへと変化する。ドーパキノンは不安定な物質であり、自発的にドーパクロム、インドールキノンへと変化し、最終的にこれらが酸化重合しユーメラニンとなる。また、ドーパキノンは[[システイン]]と重合することで、システイニルドーパを経てフェオメラニンの合成にも使用される。

このメラニン合成の最終段階であるドーパキノンから2つのメラニンの合成量は、細胞内の[[環状アデノシン一リン酸|cAMP]](サイクリックAMP)濃度が深く関与する。途中の制御機構はかなり複雑だが、省略して簡単に説明すると、cAMP濃度が高いときユーメラニンの合成が増加し、フェオメラニンの合成は抑制される。逆にcAMP濃度が低下すればフェオメラニンの合成量が増加する。


== 体色決定メカニズム ==
== 体色決定メカニズム ==
少なくとも7つ以上の[[遺伝子]]が馬の毛色の決定に関わっている<ref>ただし多くの遺伝子については何番[[染色体]]に存在するかといったことしか分かっていない</ref>。このうちアグーチシグナリングタンパク(ASIP:agouti-signalingprotein)遺伝子、メラノサイト刺激ホルモン[[受容体|レセプター]](MC1R:melanocortin-1-receptor)遺伝子の2つについてはよく研究されている。白毛遺伝子、芦毛遺伝子、佐目毛遺伝子についても研究が進行中である。このほか栗毛と栃栗毛、鹿毛と黒鹿毛を区別する遺伝子も想定されている<ref>鹿毛遺伝子をホモで持つと黒鹿毛になる。MC1R受容体の活性が亢進すると黒鹿毛になる。[[チロシナーゼ]]活性が亢進すると栃栗毛や黒鹿毛になる、色素粒子の形を変化させる遺伝子によって栃栗毛や黒鹿毛になっているなど。ただし何れも証明されていない</ref>
少なくとも数十の[[遺伝子]]が馬の毛色の決定に関わっている。このうちアグーチシグナリングタンパク(ASIP:agouti-signalingprotein)遺伝子、メラノサイト刺激ホルモン[[受容体|レセプター]](MC1R:melanocortin-1-receptor)遺伝子の2つについてはよく研究されている。


MC1Rは細胞内のcAMP濃度を調整することで間接的にメラニン合成に関与する。MC1Rにメラノサイト刺激ホルモン(MSH:melanocyte-stimulating hormone)が結合することによって[[Gタンパク質]]を経て[[アデニル酸シクラーゼ]]が活性化、[[アデノシン三リン酸|ATP]]からcAMPが合成され、最終的にユーメラニンの合成が促進される。
馬の毛色を左右するメラニンは[[アミノ酸]]の一つ[[チロシン]]を出発物質とし、チロシナーゼによってドーパ、ついでドーパキノンとなる。ドーパキノンはドーパクロム、インドールキノンへと変化し、最終的にユーメラニンとなる。この際システインが存在するとドーパキノンは[[システイン]]と重合しシステイニルドーパを経てフェオメラニンとなる。


対して、ASIP濃度が高いとMSHとMC1Rの結合が阻害され、cAMPが合成量が低下する。よってフェオメラニンの合成へと傾く。なお、ここまでの過程は多くの動物で共通している。
[[哺乳類]]の[[メラノサイト]]での2つのメラニンの合成量は、細胞内のcAMP(サイクリック[[アデノシン一リン酸|AMP]])濃度によって調整されている。cAMP濃度が上昇することによってユーメラニンの合成が増加し、フェオメラニンの合成は抑制される。逆にcAMP濃度が低下すればフェオメラニンの合成量が増加する。cAMP濃度はMC1Rによって調整されておりMC1Rにメラノサイト刺激ホルモン(MSH:melanocyte-stimulating hormone)が結合することによってMC1Rが活性化され、[[アデノシン三リン酸|ATP]]からcAMPが合成される。ただし、MC1RにMSHが結合するのを特異的に[[阻害]]するASIPが存在するとこの働きは低下する。つまりユーメラニン/フェオメラニンの合成量はMSHとASIPの競合によって調節され結果的にMSHが存在するとユーメラニンを、ASIPが存在するとフェオメラニンの合成へと傾く。この過程は多くの動物で共通である。


馬の毛色のうち少なくとも鹿毛、青毛、栗毛を上記メカニズムで説明できる。鹿毛はMSHASIPバランスが取れているためユーメラニンとフェオメラニンが適度に合成され茶色っぽくなる。さらに馬のアグーチ遺伝子は四肢・長毛では転写量が低く制御されているため、これらの部位ではASIPが合成されずユーメラニン優位の黒色になる。対して、青毛ASIPを欠いているためユーメラニンを過剰に合成し全身真っ黒になる。一方、栗毛はMC1R自体を欠いているため鹿毛よりもユーメラニンが少なくフェオメラニンが多い栗のような色になり、MSHASIPの競合も意味を失うため全身が一様の色になる。
馬の毛色のうち少なくとも鹿毛、青毛、栗毛を上記メカニズムで説明できる。野生型、つまりMC1R、MSHASIP何れもバランスが取れている場合、ユーメラニンとフェオメラニンが適度に合成され茶色っぽくなる。さらに馬のアグーチ遺伝子は四肢・長毛では転写量が低く制御されているため、これらの部位ではASIPが合成されずユーメラニン優位の黒色になる。この状態は鹿毛と呼ばれる。
もうひとつ、メラノサイトそのものの数も毛色を左右する重要な要素である。芦毛は[[人間]]の[[白髪]]とほぼ同じメカニズムで発生する。生まれたときは普通の毛色から灰色にかけての色を帯びるが、徐々に毛根からメラノサイトが失われ白い毛になっていく。


また、仮にASIPの活性を欠く場合、MSHによりMC1Rが過剰に活性化され、全身ユーメラニンによる真っ黒になる。これは青毛と呼ばれる。一方、MC1Rが変異するなどして活性を失った場合、ユーメラニンよりもフェオメラニンの合成に傾き、[[栗]]のような色になる。同時に、MC1Rを欠くとASIPによる模様もつかないため、全身が一様に着色する。つまり栗毛となる。
このほかにメラニン合成量を調整するあるいはメラノサイト自体の数や分布を調整する、色素粒子の形を変え色調を変化させる未解明の遺伝子が数多く存在している。

=== 遺伝 ===
=== 毛色に関連する主な遺伝子 ===
{| class="wikitable" style="text-align:right"
{| class="wikitable" style="text-align:right;float:right;"
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!
!KIT
!MATP
!佐
!STX17
!芦
!MC1R
!黒
!ASIP
!限
|
!表現型
|-style="text-align:center"
!W / W
|・
|・
|・
|・
|''(胎児のうちに死亡)''
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!Rn / Rn
!WW
|・
|・
|・
|・
44行目: 55行目:
|''(胎児のうちに死亡)''
|''(胎児のうちに死亡)''
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!W / w
!Ww
|・
|・
|・
|・
51行目: 62行目:
|style="background-color:#ffffff"|白毛
|style="background-color:#ffffff"|白毛
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!w / w
!ww
!C<sup>cr</sup>C<sup>cr</sup>
!C<sup>cr</sup> / C<sup>cr</sup>
|・
|・
|・
|・
58行目: 69行目:
|style="background-color:#fffff0"|佐目毛
|style="background-color:#fffff0"|佐目毛
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!w / w
!ww
!C-
!C / -
!G-
!G / -
|・
|・
|・
|・
|style="background-color:#dfdfdf"|芦毛
|style="background-color:#dfdfdf"|芦毛
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!w / w
!ww
!CC<sup>cr</sup>
!C / C<sup>cr</sup>
!g / g
!gg
!E-
!E / -
|・
|・
|style="background-color:#d2b48c"|河原毛
|style="background-color:#d2b48c"|河原毛
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!w / w
!ww
!CC<sup>cr</sup>
!C / C<sup>cr</sup>
!g / g
!gg
!e / e
!ee
|・
|・
|style="background-color:#ffff93"|月毛
|style="background-color:#ffff93"|月毛
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!w / w
!ww
!C / C
!CC
!g / g
!gg
!E-
!E / -
!A-
!A / -
|style="background-color:#a52a2a"|鹿毛
|style="background-color:#a52a2a"|鹿毛
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!w / w
!ww
!C / C
!CC
!g / g
!gg
!E-
!E / -
!a / a
!aa
|style="background-color:#000000"|<span style="color:#ffffff">青毛</span>
|style="background-color:#000000"|<span style="color:#ffffff">青毛</span>
|-style="text-align:center"
|-style="text-align:center"
!w / w
!ww
!C / C
!CC
!g / g
!gg
!e / e
!ee
|・
|・
|style="background-color:#f4a460"|栗毛
|style="background-color:#f4a460"|栗毛
|-style="text-align:center"
!SB1 / ・
!任意
!任意
!任意
!任意
|サビノの一種
|-style="text-align:center"
!TO / ・
!任意
!任意
!任意
!任意
|トビノの一種
|-style="text-align:center"
!Rn / w
!任意
!任意
!任意
!任意
|粕毛の一種
|}
|}
毛色に関連のある遺伝子をリストする。右図に主要な8つの毛色と、数種のブチ毛、その遺伝子型の関係を示す。(※何れも一部異説あり)
右図に主要な8つの毛色とその遺伝子型の関係を示す。このほかの毛色は、これらを基本としてさらに別の遺伝子が関わって形成されている。例えば粕毛遺伝子(Roan gene)を持つと基本となる毛色+粕毛、仮に原色毛が鹿毛であるならば鹿粕毛となる。同様に駁(ぶち)毛遺伝子の一種・Tobino geneを持つと体が白と原色毛のまだらもようになり、駁鹿毛、鹿駁毛などになる。他にもDun gene(体が全体的に暗いくすんだ色になる)など数多くの遺伝子が関わっている。
* MC1R: 3番染色体に存在するメラノサイト刺激ホルモンレセプター(MC1R)をコードする遺伝子であり、鹿毛馬における色の濃さと模様に関連する。この受容体はMSHの指示を受け取りアデニル酸シクラーゼを活性化、ユーメラニンの合成を促進する。結果黒っぽい色になる。表中では'''E'''が野生型である。野生型の他に馬ではS83F変異型(表中では'''e'''と表記)が知られている。S83Fは機能上の問題によりcAMPが合成されず、フェオメラニンの合成が促進され、結果赤っぽい毛色になる。
* ASIP: 22色体に存在するアグーチシグナルタンパク(ASIP)をコードする遺伝子であり、鹿毛や栗毛に関連する。ASIPはMSHを拮抗阻害し、MC1Rの働きを抑えるとともに体に模様をつける。表中では'''A'''が野生型、'''a'''がその変異型。
* KIT: 3番染色体にコードされているチロシンキナーゼの一種。複数の機能を持つと言われているが、その内の1つにメラノサイトの増殖やメラニン産生の制御が含まれており、白毛やブチ毛に関連する。幾つかの変異が知られている。表中では'''w'''が野生型、'''W'''(白毛型)や'''SB1'''(サビノ)、'''TO'''(トビノ)が変異型である。白毛型や粕毛型('''RN''')の変異遺伝子をホモで持つと発生段階で死亡すると言われている。KITの変異により、これらの毛色の白化部分は完全にメラノサイトが失われている。眼球のメラニンは皮膚メラノサイトとは起源が異なるため失われない。
* MATP: 21番染色体に存在する膜関連輸送タンパク質遺伝子の一つ。佐目毛、河原毛、月毛に関連する。メラニン合成におけるMATPの働きは不明であるが、変位すると色素異常を引き起こす。通常の野生型('''C''')の他に、馬ではG457A変異型('''C<SUP>cr</SUP>''')が知られており、この変異型を持つ個体は体色が薄くなる。[[不完全優性]]遺伝子でありその働きはヘテロよりもホモの方が強い。なお、ヒトにおけるMATPの変異は眼皮膚白皮症IV型(アルビノ)を誘発する。佐目毛、河原毛、月毛がサラブレッドで出ないのは、遺伝子集団内にこの変異遺伝子を持たないことによる。
* STX17: 膜貫通受容体であり、隣接するNR4A3と共に芦毛に関連する。芦毛発生のメカニズムは長く不明であったが、[[2008年]]に[[スウェーデン]]の研究者らによって、25番染色体に存在するSTX17の変異が芦毛の原因になることが解明された。この遺伝子の[[イントロン]]部分に4600塩基対の重複が発生することで、STX17及び隣接するNR4A3の過剰発現を引き起こし、メラノサイトの分化が異常に亢進、このため[[皮膚]]のメラノサイト密度が高くなり黒く着色するとともに、[[毛根]]のメラノサイト[[幹細胞]]が早期に枯渇し、加齢とともに体毛が白くなっていく。表中では'''g'''が野生型、芦毛を引き起こす変異型を'''G'''と表現する。
;表の見方
優性・劣性どちらの遺伝子が入っても、発現する毛色に影響を与えない場合は"'''-'''"で表している。"・"は、この遺伝子の働きが他の遺伝子によって抑えられる、あるいは隠されることを示す。


なおサラブレッドに佐目毛、河原毛、月毛が出ないのはこの品種の[[遺伝子プール]]に佐目毛遺伝子(Cream gene)が存在しないことで説明できる。粕毛、駁毛なども同様の理由による。
* 白毛遺伝子(White gene):'''W''' - [[ヘテロ接合型|ヘテロ]]で白毛になる。[[ホモ接合体|ホモ]]で致死。
* 佐目毛遺伝子(Cream gene):'''C<SUP>cr</SUP>''' - 体色を薄くする。[[不完全優性]]遺伝子でありその働きはヘテロよりもホモの方が強い。
* 芦毛遺伝子(Grey gene):'''G'''
* 鹿毛遺伝子(MC1R gene):'''E''' - メラノサイト刺激ホルモンレセプター(MC1R)をコードする。この受容体はMSHの指示を受け取りユーメラニンの合成を促進する。'''e'''はその変異型。
* 限定遺伝子(Agouti gene):'''A''' - アグーチシグナルタンパク(ASIP)をコードする。ASIPはMSHを拮抗阻害し、MC1Rの働きを抑えるとともに体に模様をつける。'''a'''はその変異型。
* w、C、g - いずれも各遺伝子と同一の遺伝子座を占める[[対立遺伝子]]。
; 表の見方
優性・劣性どちらの遺伝子が入っても、発現する毛色に影響を与えない場合は"'''-'''"で表している。"・"は、この遺伝子の働きが他の遺伝子によって抑えられるあるいは隠されることを示す。


== 各毛色の特徴 ==
== 各毛色の特徴 ==
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: 最も一般的な毛色の1つで、[[シカ|鹿]]の毛のように茶褐色。ただしタテガミ・尾・足首に黒い毛が混じる。[[サラブレッド]]では約半数を占める。
: 最も一般的な毛色の1つで、[[シカ|鹿]]の毛のように茶褐色。ただしタテガミ・尾・足首に黒い毛が混じる。[[サラブレッド]]では約半数を占める。
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画像:Stinger 20010603.jpg|[[スティンガー (競走馬)|スティンガー]]
画像:Arabian Purebred Stallion 0001.jpg
画像:Arabian Purebred Stallion 0001.jpg
画像:Pernod Al Ariba 0046b.jpg
画像:Pernod Al Ariba 0046b.jpg
画像:BayMare.jpg
画像:BayMare.jpg
File:Ardennerpäerd.jpg
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=== 黒鹿毛 ===
=== 黒鹿毛 ===
* 黒鹿毛(くろかげ、Dark Bay)
* 黒鹿毛(くろかげ
: 黒みがかった鹿毛。青鹿毛とは区別しづらいが、四肢や長毛の黒さに対して胴体がやや褐色を帯びている。サラブレッドでは鹿毛、栗毛についで多く、約14%を占める。鹿毛と同じく鹿毛遺伝子とアグーチ遺伝子をもつ、鹿毛との色合の差はどの遺伝子によるか明らかでない。英語ではDark Bayというがしばしば青鹿毛とあわせてdark bay/brownとする
: 黒みがかった鹿毛。青鹿毛とは区別しづらいが、四肢や長毛の黒さに対して胴体がやや褐色を帯びている。サラブレッドでは鹿毛、栗毛についで多く、約14%を占める。英語では青鹿毛と区別しない場合(Dark Bay、Brown、dark bay/brown)
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画像:Special Week 19991031.jpg|[[スペシャルウィーク]]
画像:Special Week 19991031.jpg
画像:He012002 1.jpg
画像:He012002 1.jpg
画像:Andalusier - rückwärtsgehend.jpg
画像:Andalusier - rückwärtsgehend.jpg
134行目: 164行目:


=== 青鹿毛 ===
=== 青鹿毛 ===
* 青鹿毛(あおかげ、Brown)
* 青鹿毛(あおかげ
: サラブレッドでは2-3%を占める。黒鹿毛より黒く全身ほとんど黒色、鼻先や臀部など部分的にわずかに褐色が見られる事もある。青毛と同じく鹿毛遺伝子を持ち、アグーチ遺伝子を持たない。しかし両者の差がどの遺伝子により生まれるのかは不明。英語ではBrownというが、しばしば黒鹿毛とあわせdark bay/brownとする。
: サラブレッドでは2-3%を占める。黒鹿毛より黒く全身ほとんど黒色、鼻先や臀部など部分的にわずかに褐色が見られる事もある。
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画像:Manhattan Cafe 20020428.jpg|[[マンハッタンカフェ]]
画像:Manhattan Cafe 20020428.jpg
画像:Mounted.police.buckingham.palace.arp.jpg
画像:Mounted.police.buckingham.palace.arp.jpg
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143行目: 173行目:
=== 青毛 ===
=== 青毛 ===
* 青毛(あおげ、Black)
* 青毛(あおげ、Black)
: 全身真っ黒の最も黒い毛色。この色は大量のユーメラニンの色で、鹿毛と違いアグーチ遺伝子を欠いているため全身が真っ黒になっている。季節により毛先が褐色を帯び青鹿毛に近くなることがある。個体数が比較的少ない毛色でサラブレッドでの出現頻度は1%以下、白毛、月毛等を除けば最も少数派だが[[フリージアン]]や[[ペルシュロン]]などではよく見られる。
: 全身真っ黒の最も黒い毛色。季節により毛先が褐色を帯び青鹿毛に近くなることがある。個体数が比較的少ない毛色でサラブレッドでの出現頻度は1%以下、白毛、月毛等を除けば最も少数派だが[[フリージアン]]や[[ペルシュロン]]などではよく見られる。
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画像:Altwürttemberger.jpg
画像:Altwürttemberger.jpg
153行目: 183行目:
=== 栗毛 ===
=== 栗毛 ===
* 栗毛(くりげ、Chestnut)
* 栗毛(くりげ、Chestnut)
: 全身が褐色の毛で覆われている。最も一般的な毛色の1つで、[[クォーターホース]]の約半数<ref>Sorrel含む</ref>、サラブレッドの1/4を占める。
: 全身が褐色の毛で覆われている。最も一般的な毛色の1つで、[[クォーターホース]]の約半数(Sorrel含む、サラブレッドの1/4を占める。
: 栗毛の名前の由来は[[クリ|クリ]]のような色をしていることから。英語でもChestnutである。細かく分ければ黒い順にBlack Chestnut(黒栗毛)、紅梅栗毛、紅栗毛、liver/dark chestnut(栃栗毛)、chestnut(栗毛)、Sorrel(柑子栗毛、こうじくりげ)、blonde chestnut、light chestnut(白栗毛)などがある。
: 栗毛の名前の由来は[[クリ|クリ]]のような色をしていることから。英語でもChestnutである。細かく分ければ黒い順にBlack Chestnut(黒栗毛)、紅梅栗毛、紅栗毛、liver/dark chestnut(栃栗毛)、chestnut(栗毛)、Sorrel(柑子栗毛、こうじくりげ)、blonde chestnut、light chestnut(白栗毛)などがある。
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画像:Grass Wonder 19991226.jpg|[[グラスワンダー]]
画像:Grass Wonder 19991226.jpg
画像:Shetland Pony.jpg
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画像:Equus Arabian1.JPG
画像:Equus Arabian1.JPG
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* 尾花栗毛(おばなくりげ、Chestnut with flaxen mane and tail)
* 尾花栗毛(おばなくりげ、Chestnut with flaxen mane and tail)
: 栗毛馬(栃栗毛などでもよい)のうち[[タテガミ]]、尻尾が金色のものをこう呼ぶ。金色の尻尾を[[ススキ]]の穂(尾花)に例えたことが由来。英語ではFlaxen mane and tail([[亜麻色]]の尻尾とたてがみ)などと表現する。登録上栗毛との区別はない。一般に見栄えがよいとされる。
: 栗毛馬(栃栗毛などでもよい)のうち[[タテガミ]]、尻尾が金色のものをこう呼ぶ。金色の尻尾を[[ススキ]]の穂(尾花)に例えたことが由来。英語ではFlaxen mane and tail([[亜麻色]]の尻尾とたてがみ)などと表現する。
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画像:IMG 5497.JPG
画像:IMG 5497.JPG
184行目: 214行目:
* 芦毛(葦毛、あしげ、Gray)
* 芦毛(葦毛、あしげ、Gray)
: 灰色の毛色。一般に白馬といえば年をとって白くなった芦毛馬のことを言う。サラブレッドでは約7%を占める。生まれたときは灰色や黒、もしくは母親と同じ毛色であったりするが、年を重ねるにつれ白くなっていく。このため芦毛だと気づくのが遅れ、一旦鹿毛や栗毛と登録されたものが後に芦毛に変更されることもある。
: 灰色の毛色。一般に白馬といえば年をとって白くなった芦毛馬のことを言う。サラブレッドでは約7%を占める。生まれたときは灰色や黒、もしくは母親と同じ毛色であったりするが、年を重ねるにつれ白くなっていく。このため芦毛だと気づくのが遅れ、一旦鹿毛や栗毛と登録されたものが後に芦毛に変更されることもある。
: また、高齢になると芦毛えの[[メラノーマ|黒色腫]]と呼ばれる[[腫瘍]](人間で言うところの[[皮膚癌]](ひふがん)に当たる)の発症率が高くなることが知られている。この腫瘍は基本的には良性だが、悪性化し死亡に至ることもある。[[シービークロス]]はこれを発症し死亡。[[オグリキャップ]]は発症するも[[手術]]の甲斐が有り救われた
: また、芦毛を引き起こすSTX17の変異に加、別毛色関連遺伝子であるASIPの変異が共存すると[[メラノーマ|黒色腫]]と呼ばれる[[腫瘍]]の発症率が高くなること指摘されている。この腫瘍は基本的には良性だが、悪性化し死亡に至ることもある。
: 芦毛は白馬として珍重されたが、この特殊な[[悪性腫瘍|癌]]の発症率が高いことや軍馬としては敵に見つかりやすい等の弱点のためサラブレッドでは排斥された歴史もあ(「芦毛」の語源は「悪し毛」とも言われている)、[[20世紀]]初頭には殆ど見られなくなっていた。その後[[ザテトラーク]]とその父・[[ロアエロド]]などの活躍により勢力を回復したため、サラブレッドにおいては殆ど全ての芦毛馬がロアエロドを祖としている。血統書で可能な限り遡ると[[オルコックアラビアン系|オルコックアラビアン]]、又はブラウンロータークまで遡ることができる
: 芦毛は白馬として珍重されたが、この特殊な[[悪性腫瘍|癌]]の発症率が高いことや軍馬に使用する場合敵に見つかりやすい等の弱点のため、品種によっては排斥された歴史もあ(「芦毛」の語源は「悪し毛」とも言われている)。
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* 佐目毛(さめげ、Cremello, Perlino)
* 佐目毛(さめげ、Cremello, Perlino)
: 全身が真っ白か象牙色。肌の色はピンク。目は青。頻度の低い佐目毛遺伝子をホモで持たなければならないため意識的に配合しないかぎりなかなか出ない。日本では[[北海道和種]]にまれに見られる程度で稀少。クォーターホースで比較的高頻度に出る。
: 全身が真っ白か象牙色。肌の色はピンク。目は青。頻度の低い佐目毛遺伝子をホモで持たなければならないため意識的に配合しないかぎりなかなか出ない。日本では[[北海道和種]]にまれに見られる程度で稀少。クォーターホースで比較的高頻度に出る。
: 佐目毛はその希少性から吉兆とされ、神社に奉納されることもあった。特に白い個体の場合一見して白毛に見えるが、微妙にクリームが掛かっており白毛とは異なる。原色毛が栗毛のものをCremelloといい、白毛並に白く見える。対して鹿毛のものをPerlino、青毛のものをSmoky Creamともいう。
: 佐目毛はその希少性から吉兆とされ、神社に奉納されることもあった。特に白い個体の場合一見して白毛に見えるが、微妙にクリームが掛かっており白毛とは異なる。原色毛が栗毛のものをCremelloといい、白毛並に白く見える。対して鹿毛のものをPerlino、青毛のものをSmoky Creamともいう。後者は紅梅月毛ともいう。
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画像:NemesisChalm19Feb06Z9horses6.jpg
画像:NemesisChalm19Feb06Z9horses6.jpg
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* 月毛(つきげ、Palomino)
* 月毛(つきげ、Palomino)
: クリーム系の色。色は個体によって差異が大きく、白毛や佐目毛に近くなることもある。この場合目の色で判断できる(白毛、佐目毛の目が[[青色]]なのに対し、月毛は[[茶色]])。
: クリーム系の色。色は個体によって差異が大きく、白毛や佐目毛に近くなることもある。この場合目の色で判断できる(白毛、佐目毛の目が[[青色]]なのに対し、月毛は[[茶色]])。
: 金色にも見える馬体から好む人も多い。特に[[スペイン]]女王・[[イサベル1世 (カスティーリャ女王)|イサベル1世]]は月毛を好んだ。伝承にすぎないが100頭もの月毛馬を所有し、うち5頭を[[メキシコ]]に送ったという<ref>くまで伝説。[http://www.palominohorseassoc.com/history.htm The Palomino Horse Association]によ</ref>。今日でもアメリカンクォーターホースを筆頭としてアメリカ乗用馬、モルガン、テネシー壌歩馬などで比較的見られる。日本では北海道和種などでまま出る。Cremello(栗佐目毛)と栗毛を交配することでほぼ確実に得られる。
: 金色にも見える馬体から好む人も多い。特に[[スペイン]]女王・[[イサベル1世 (カスティーリャ女王)|イサベル1世]]は月毛を好み、100頭もの月毛馬を所有し、うち5頭を[[メキシコ]]に送ったという伝承がある。今日でもアメリカンクォーターホースを筆頭としてアメリカ乗用馬、モルガン、テネシー壌歩馬などで比較的見られる。日本では北海道和種などでまま出る。Cremello(栗佐目毛)と栗毛を交配することでほぼ確実に得られる。
: 月毛は栗毛と同じくフェオメラニンの色が基本になっている。フェオメラニンは濃度によって淡い黄色~赤褐色を呈するが、月毛は栗毛遺伝子に加え佐目毛遺伝子を持つことによってフェオメラニンの濃度が下げられているため淡い黄色から[[象牙色]]に見える。
: 月毛は栗毛と同じくフェオメラニンの色が基本になっている。フェオメラニンは濃度によって淡い黄色~赤褐色を呈するが、月毛は栗毛遺伝子に加え佐目毛遺伝子を持つことによってフェオメラニンの濃度が下げられているため淡い黄色から[[象牙色]]に見える。
: なおサラブレッドには基本的に存在しない毛色とされていたが、[[2004年]]に認められた。現在登録されている月毛のサラブレッドは何れも[[1966年]]に突然変異の結果生まれたミルキー(Milkie)の血を受け継いでいる<ref>[http://www.blazingcoloursfarm.com/Sato.html Sato]、月毛+ぶち毛のサラブレッド。</ref>。その他、[[上杉謙信]]の愛馬・[[放生月毛]]等が有名。
: なおサラブレッドには基本的に存在しない毛色とされていたが、[[2004年]]に認められた([http://www.blazingcoloursfarm.com/Sato.html 例])。現在登録されている月毛のサラブレッドは何れも[[1966年]]に突然変異の結果生まれたミルキー(Milkie)の血を受け継いでいる。その他、[[上杉謙信]]の愛馬・[[放生月毛]]等が有名。
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画像:Palomino.jpg
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=== 白毛 ===
=== 白毛 ===
* 白毛(しろげ、White)
* 白毛(しろげ、White)
: 知られている中では最も白い毛色。全身の白い毛と肌が特徴。一部有色毛が混じることもあるが芦毛とは違い、基本的に生まれたときからほぼ全身が真っ白で肌もピンク色である(芦毛は生まれたときは原色毛に近い色で、白化後も肌は黒い)。佐目毛とは見た目が区別できない場合もあるが別の遺伝子による。なお、よく誤解されるが[[アルビノ]]ではない。全身が完全に白い個体でも目は少量のメラニンによって青く着色している。
: 知られている中では最も白い毛色。全身の白い毛と肌が特徴。一部有色毛が混じることもあるが芦毛とは違い、基本的に生まれたときからほぼ全身が真っ白で肌もピンク色である(芦毛は生まれたときは原色毛に近い色で、白化後も肌は黒い)。佐目毛とは見た目が区別できない場合もあるが別の遺伝子による。なお、よく誤解されるが[[アルビノ]]ではない。全身が完全に白い個体でも目は少量のメラニンによって青く着色している。白毛よりもむしろMATPに変異を持つ佐目毛の方がアルビノに近い
: 出現率は全ての品種を通じ非常に稀。日本の軽種馬においては、[[ハクタイユー]]で初めて登録が認められた。以後20例(突然変異7頭)ほど報告がある。
: 出現率は全ての品種を通じ非常に稀。太古から散発的に出現していたとは思われるが、初めて認知されたのは[[1896年]]、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で生まれた[[ホワイトクロス]]であった(この馬は両親が栗毛と青毛)。また、[[1922年]]の[[プール・デッセ・デ・プーラン]]を制したMont Blanc(モンブラン)も白毛だったと言われているが、同馬は両親ともに栗毛だったため栗毛として登録されている。日本では軽種馬(サラブレッド、[[サラブレッド系種|同系種]]、[[アングロアラブ]]など)の統計しかないが、[[1979年]]に生まれた[[東京優駿|東京優駿(日本ダービー)]]馬のロングエース産駒の[[ハクタイユー]]で初めて登録が認められた。以後20例(突然変異7頭)ほど報告がある。個体数が極端に少ないため、[[競馬場]]などでもめったにお目にかかれない。伝説の毛色とまで言われることもある。
: 白毛はレースの出走数が少ないこととアルビノだと勘違いされることが多かったことから虚弱傾向が強く出ると誤解され(ちなみにアルビノもそれ自体が虚弱の原因となっているわけではない。[[アルビノ]]を参照)、大成しないとされた。しかし日本ではハクタイユーこそ未勝利で終わったが、その産駒の[[ハクホウク]]が[[1997年]][[12月30日]]に大井競馬場で歴史的な初勝利を挙げた。数年後、全妹の[[ホワイトワンダー]]勝利をあげる。また別系統から突然変異で産まれた白毛の牝馬[[シラユキヒメ]]の産駒から[[ホワイトベッセル]]・[[ユキチャン]]兄妹[[中央競馬]]でも勝利を成し遂げ、ユキチャンは[[ダートグレード競走|交流重賞]]ではあるものの[[重賞]]での白毛馬の初勝利を成し遂げた
: 白毛はレースの出走数が少ないこととアルビノだと勘違いされることが多かったことから虚弱傾向が強く出ると誤解され(ちなみにアルビノもそれ自体が虚弱の原因となっているわけではない。[[アルビノ]]を参照)、大成しないとされたが、ユキチャンが[[ダートグレード競走|交流重賞]]勝利するなど活躍例も出おり払拭されつつある。白毛にはいずれもKITの変異ある、白毛遺伝子(White Beautyや[[シラユキヒメ]]など系統)とサビノ遺伝子(Not Quite White系統)の二つの型があると言われている
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画像:Yukichan 20080427P2.jpg|[[ユキチャン]]
画像:Yukichan 20080427P2.jpg
画像:DominantWhiteHorsesA.jpg
画像:DominantWhiteHorsesA.jpg
画像:DominantWhiteHorsesD.jpg|白毛遺伝子によるもの
画像:DominantWhiteHorsesD.jpg
画像:DominantWhiteHorsesE.jpg|白毛遺伝子によるもの
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* 白毛遺伝子
: 6番染色体に存在。優性の白毛と劣性の致死作用を持つ。遺伝形態は[[優性遺伝子|優性遺伝]]であり、両親どちらかから白毛遺伝子を受け継げば白毛になる。ただし数万頭に1頭の確率で白毛ではない両親から突然変異によって生まれ得る。現在知られているWhite Beautyなどの白毛の系統は何れも突然変異の白毛馬を始祖に持っている。
: 白毛遺伝子は優性の白毛の性質と劣性の致死遺伝子の働きを持つ。白毛同士を配合すると1/4の確率で白毛遺伝子がホモ化、致死遺伝子が顕在化する。この場合[[胚]]が正常に発育できず、発生段階で[[子宮]]に吸収されると考えられている。
* サビノ遺伝子<ref>横濱道成・石田生男,2007,“わが国のサラブレッド種における白毛の遺伝について”,東京農業大学農学集報,'''52''' : 76-81</ref>
: [[常染色体]]に存在するが実際のコード領域は不明。ホモで白毛<ref>[http://www.vgl.ucdavis.edu/service/horse/coatcolor.html#sabino1 Sabino1]</ref>、ヘテロでぶち毛の一種を発現させる。Sabino遺伝子をホモで持てば全身の90~100%が白毛になる。ヘテロの場合、基本的にはSabino(ぶち。下記[[#ピント]]参照)だが、白毛になる場合もある。
: 現在、サラブレッドではNot Quite Whiteなどの系統が知られている。ただしこちらは白毛の定着が不安定で、Not Quite Whiteの産駒はぶち毛に出ている。しかし、その産駒で種牡馬をしているAirdrie Apache(毛色はSabino(ぶち))は交配する繁殖牝馬の毛色に関わらず産駒の約半数がほぼ完全な白毛に出るなどよく分からない部分がある。


=== 粕毛 ===
=== 粕毛 ===
* 粕毛(かすげ、Roan)
* 粕毛(かすげ、Roan)
: 原毛色の地に肩や頸、下肢等に白い刺毛が混生する。原色毛によって栗粕毛、鹿粕毛、青粕毛と表記することもある。加齢によって刺毛は増加するが、芦毛と違い完全には白くならない。比較的古い品種に見られ、北海道和種では半数以上を占める。その他にクォーターホース、アメリカ乗用馬、テネシー常歩馬、シェトランドポニーなどで偶に見られる。[[アラブ種]]、サラブレッドではほぼ見られない。
: 原毛色の地に肩や頸、下肢等に白い刺毛が混生する。原色毛によって栗粕毛、鹿粕毛、青粕毛と表記することもある。加齢によって刺毛は増加するが、芦毛と違い完全には白くならない。比較的古い品種に見られ、北海道和種では半数以上を占める。その他にクォーターホース、アメリカ乗用馬、テネシー常歩馬、シェトランドポニーなどで偶に見られる。[[アラブ種|アラブ]]系の馬種ではほぼ見られない。
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画像:Criollo horse 2.jpg
画像:Criollo horse 2.jpg
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* 駁毛(ぶちげ)
* 駁毛(ぶちげ)
: 体に大きな白斑のあるもの。原色毛によって栗駁毛、鹿駁毛、青駁毛と表記され、白斑が体の多くを占めるとき駁栗毛、駁鹿毛、駁青毛という。後述のアパルーサもぶち毛の一種である。
: 体に大きな白斑のあるもの。原色毛によって栗駁毛、鹿駁毛、青駁毛と表記され、白斑が体の多くを占めるとき駁栗毛、駁鹿毛、駁青毛という。後述のアパルーサもぶち毛の一種である。

==== アパルーサ ====
==== アパルーサ ====
* アパルーサ(Appaloosa)
* アパルーサ(Appaloosa)
: 主にアパルーサという品種の持つ毛色(アパルーサ種以外にもこの毛色を持つ馬は存在する)、独特の斑点が特徴。コートパターンは白地に黒ないし茶の斑点のあるLEOPARD、臀部の色だけ異なるBLANKET、濃い地色に白く細かい斑点のあるSNOWFLAKEなどがある。
: 主にアパルーサという品種の持つ毛色(アパルーサ種以外にもこの毛色を持つ馬は存在する)、独特の斑点が特徴。コートパターンは白地に黒ないし茶の斑点のあるLEOPARD、臀部の色だけ異なるBLANKET、濃い地色に白く細かい斑点のあるSNOWFLAKEなどがある。
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画像:The Appaloosa.jpg
File:Appaloosa stallion.JPG
画像:Appaloosa_(DSC00229).jpg
画像:Appaloosa_(DSC00229).jpg
画像:THIEL 619.jpg
画像:THIEL 619.jpg
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画像:Withers.jpg|Frame Overo
画像:Withers.jpg|Frame Overo
画像:Toveromare.jpg|Tovero
画像:Toveromare.jpg|Tovero
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==== ベンドア斑 ====
* ベンドア斑点(Bend Or Spot)
: 馬の皮膚に生じる比較的小さな斑点のこと。どの品種にも出るが、出現率はサラブレッドで比較的高い。この斑点を持つ馬は出生時から[[大豆]]~[[卵]]大の白い斑点を体の複数箇所に持つ。年を経るに従って変化する場合も稀にある。
: 著名な馬としてパンタルーン、[[ベンドア]]、[[ストックウェル (競走馬)|ストックウェル]]、[[ザテトラーク]]、[[ムムタズマハル (競走馬)|ムムタズマハル]]、[[バードキャッチャー]]、[[サーハーキュリーズ]]等の[[19世紀]]から[[20世紀]]初頭のイギリス名馬が多数挙げられるが、現在の日本での出現率は低い。上記の馬は近い血縁関係にあるため(ムムタズマハルの父がザテトラーク、その母の父がベンドア、その祖父がストックウェル、その更に祖父がバードキャッチャーでその父がサーハーキュリーズ等)遺伝するとされたが実際に調べてみると明確な遺伝法則が見つけられず、原因は今もってよく分かっていない。
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画像:TheTetrarch1913.jpg
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commons|Horse coat colors}}
* [[毛 (動物)]]
* [[毛 (動物)]]
* [[髪の色]]
* [[髪の色]]
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{ cite journal | author = Gerli R. Pielberg ''et al.'' | date = 2008 | title = A ''cis''-acting regulatory mutation causes premature hair graying and susceptibility to melanoma in the horse | journal = Nature Genetics | volume = 40 | issue = 8 | pages = 1004 - 1009 | doi = doi:10.1038/ng.185 }}
* [http://www.studbook.jp/ja/faq.html#q10 日本軽種馬登録協会]
* {{ cite journal | author = Haase, B., S. A. Brooks, A. Schlumbaum, P. Azor, E. Bailey ''et al.'' | date = 2007 | title = Allelic Heterogeneity at the Equine KIT Locus in Dominant White (W) Horses | journal = PLoS Genet | volume = 3 | issue = 11 | pages = e195 | doi = 10.1371/journal.pgen.0030195 }}
* [http://www.equinst.go.jp/JP/arakaruto/mame/mame-shikibetsu.html JRA競走馬総合研究所]
* {{Cite web | author = Bailey, Ernest, ''et.al.'' | date = 2007 | url=http://www.uky.edu/Ag/Horsemap/proposal.pdf | title = Proposal to sequence the genome of the domestic horse, Equus caballus | language = 英語 | accessdate = 4月10日 | accessyear = 2009年 }}
* Stefan Rieder他、2001年 "Mutations in the agouti(ASIP), the extension(MC1R), and the brown(TYRP1) loci and their association to coat color phenotypes in horses(Equus caballus)." ''Mamm Genome''. 2001 Jun;12(6):450-5.
* {{ cite journal | author = Rieder, S., Taourit, S., Mariat, D., Langlois, B., Guérin, G. | date = 2001 | title = Mutations in the agouti (ASIP), the extension (MC1R), and the brown (TYRP1) loci and their association to coat color phenotypes in horses (Equus caballus) | journal = Mammalian Genome | volume = 12 | issue = 6 | pages = 450-5 | doi = 10.1007/s003350020017 }}
* [http://www.vgl.ucdavis.edu/~lvmillon/coatcolor/coatclr3.html Bowling, Ann T. "Coat Color Genetics: Positive Horse Identification"]
* {{ cite journal | author = Mariat, D., Taourit, S., Guérin, G. | date = 2003 | title = A mutation in the MATP gene causes the cream coat colour in the horse | journal = Genet Sel Evol | volume = 35 | issue = 1 | pages = 119-33 | doi = 10.1051/gse:2002039 }}
* [http://dreamviewfarm.com/genetics.html]
* {{ cite journal | author = Brooks, S. A., Lear, T. L., Adelson, D. L., Bailey, E. | date = 2007 | title = A chromosome inversion near the KIT gene and the Tobiano spotting pattern in horses | journal = Cytogenet Genome Res | volume = 119 | issue = 3-4 | pages = 225-30 | doi = 10.1159/000112065 }}
* [http://www.thehorse.com/ViewArticle.aspx?ID=9686]
* {{ cite journal | author = Brooks, S. A., Bailey, E. | date = 2005 | title = Exon skipping in the KIT gene causes a Sabino spotting pattern in horses | journal = Mammalian Genome | volume = 16 | issue = 11 | pages = 893-902 | doi = 10.1007/s00335-005-2472-y }}

* {{Cite web | author = 原秀昭 | publisher = JRA競走馬総合研究所 | date = | url = http://www.equinst.go.jp/JP/arakaruto/mame/mame-shikibetsu.html | title = 馬の個体識別 | language = | accessdate = 4月10日 | accessyear = 2009年 }}
== 脚注 ==
* {{Cite web | author = University of California, Davis - Veterinary Genetics Laboratory | publisher = カリフォルニア大学 | url = http://www.vgl.ucdavis.edu/services/coatcolorhorse.php | title = Equine Coat Color Tests | language = 英語 | accessdate = 4月10日 | accessyear = 2009年 }}
{{Commons|Horse coat colors}}
* {{ cite journal | author = 横濱道成・石田生男 | date = 2007 | title = わが国のサラブレッド種における白毛の遺伝について | journal = 東京農業大学農学集報 | volume = 52 |pages = 76-81 }}
<references/>
* {{Cite web | author = | publisher = | url = http://www.palominohorseassoc.com/ | title = Palomino Horse Association | language = 英語 | accessdate = 4月10日 | accessyear = 2009年 }}
* {{ cite journal | author = Brunberg, E., Andersson, L., Cothran, G., Sandberg, K., Mikko, S., Lindgren, G. | date = 2006 | title = A missense mutation in PMEL17 is associated with the Silver coat color in the horse | journal = BMC Genet | volume = 7 | pages = 46 | doi = 10.1186/1471-2156-7-46 }}
* {{ cite journal | author = Cook, D., Brooks, S., Bellone, R., Bailey, E. | date = 2008 | title = Missense mutation in exon 2 of SLC36A1 responsible for champagne dilution in horses | journal = PLoS Genet | volume = 4 | issue = 9 | pages = e1000195 | doi = 10.1371/journal.pgen.1000195 }}
* {{ cite journal | author = Terry, R. B., Archer, S., Brooks, S., Bernoco, D., Bailey, E. | date = 2004 | title = Assignment of the appaloosa coat colour gene (LP) to equine chromosome 1 | journal = Anim Genet | volume = 35 | issue = 2 | pages = 134-7 | doi = 10.1111/j.1365-2052.2004.01113.x }}
* {{ cite journal | author = Marklund, L., Moller, M. J., Sandberg, K., Andersson, L. | date = 1996 | title = A missense mutation in the gene for melanocyte-stimulating hormone receptor (MC1R) is associated with the chestnut coat color in horses | journal = Mammalian Genome | volume = 7 | issue = 12 | pages = 895-899 | doi = 10.1007/s003359900264 }}
* {{ cite journal | author = Metallinos, D. L., Bowling, A. T., Rine, J. | date = 1998 | title = A missense mutation in the endothelin-B receptor gene is associated with Lethal White Foal Syndrome: an equine version of Hirschsprung Disease | journal = Mammalian Genome | volume = 9 | issue = 6 | pages = 426-31 | doi = 10.1007/s003359900790 }}


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[[de:Fellfarben der Pferde]]

2009年4月11日 (土) 13:51時点における版

馬の毛色(うまのけいろ)とはの個体識別要素の一つで、体毛や肌の色、模様のことを指す。

概要

馬の毛色は複雑に見えるが、何れもユーメラニン(真正メラニン)とフェオメラニンの量と微細構造、メラノサイト自体の数や分布によって表現される肌や毛の色にすぎない。は太古からこれらの中にいくつかのパターンを見出し、鹿毛、栗毛などと呼んできた。馬の個体識別に非常に有用であり、多くの場合血統登録時に記載が義務付けられる。

主な毛色としては鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、栗毛、栃栗毛、芦毛、青毛、佐目毛、河原毛、粕毛、月毛(パロミノ)、白毛、ぶち毛等があり、細かく分類すると100種類以上になる。これらは極めて多くの遺伝子によって制御されている。いくつかの主要な毛色については発現機構が解明されつつあるが、なお細かなところでは不明な点が多数ある。例えば黒鹿毛や青鹿毛の遺伝型は不明である。

毛色は直接的には馬の運動能力、性格その他に何の影響も及ぼさない。ただし、野生状態では天敵から、戦場では敵軍から見つけられる確率は毛色によって変化すると言われてきた。毛色に関連する疾病も存在する。馬によっては交配相手に特定の毛色を好む場合もある。

化学的性質

体毛の色はメラニンによるものである。メラニンには、黒~茶褐色のユーメラニン(真性メラニン)と赤褐色~黄色のフェオメラニンの2種類がある。色の濃淡はユーメラニンにより決定され、黄色み・赤みはフェオメラニンに左右される。つまりユーメラニンが多ければ毛色は黒色に近付き、フェオメラニンが多ければ暖色に近付く。フェオメラニンは赤褐色の色素であるが、濃度が低いと黄色や象牙色を呈する。つまり、体毛の黄色み・赤みは同一の色素によるものである。ほとんどの馬はこれらの2種類の色素を混合して持っている。

フェオメラニンはユーメラニンよりも化学的に安定しており、体毛が酸化された場合にはユーメラニンから先に破壊されていく。長毛の先の色が薄いのはこのためで、季節による体毛の僅かな変化もユーメラニンの分解による。

メラニン合成の基本

メラニンを合成する細胞メラノサイトと呼ばれる。メラノサイトは、アミノ酸の一つチロシンを出発物質とし、いくつかの段階を経てメラニンを合成している。メラニン合成の詳細は以下のとおりである。

まず、チロシンがチロシナーゼによって酸化され、ドーパ、ついでドーパにもチロシナーゼが作用しドーパキノンへと変化する。ドーパキノンは不安定な物質であり、自発的にドーパクロム、インドールキノンへと変化し、最終的にこれらが酸化重合しユーメラニンとなる。また、ドーパキノンはシステインと重合することで、システイニルドーパを経てフェオメラニンの合成にも使用される。

このメラニン合成の最終段階であるドーパキノンから2つのメラニンの合成量は、細胞内のcAMP(サイクリックAMP)濃度が深く関与する。途中の制御機構はかなり複雑だが、省略して簡単に説明すると、cAMP濃度が高いときユーメラニンの合成が増加し、フェオメラニンの合成は抑制される。逆にcAMP濃度が低下すればフェオメラニンの合成量が増加する。

体色決定メカニズム

少なくとも数十の遺伝子が馬の毛色の決定に関わっている。このうちアグーチシグナリングタンパク(ASIP:agouti-signalingprotein)遺伝子、メラノサイト刺激ホルモンレセプター(MC1R:melanocortin-1-receptor)遺伝子の2つについてはよく研究されている。

MC1Rは細胞内のcAMP濃度を調整することで間接的にメラニン合成に関与する。MC1Rにメラノサイト刺激ホルモン(MSH:melanocyte-stimulating hormone)が結合することによってGタンパク質を経てアデニル酸シクラーゼが活性化、ATPからcAMPが合成され、最終的にユーメラニンの合成が促進される。

対して、ASIP濃度が高いとMSHとMC1Rの結合が阻害され、cAMPが合成量が低下する。よってフェオメラニンの合成へと傾く。なお、ここまでの過程は多くの動物で共通している。

馬の毛色のうち少なくとも鹿毛、青毛、栗毛を上記メカニズムで説明できる。野生型、つまりMC1R、MSH、ASIP何れもバランスが取れている場合、ユーメラニンとフェオメラニンが適度に合成され茶色っぽくなる。さらに馬のアグーチ遺伝子は四肢・長毛では転写量が低く制御されているため、これらの部位ではASIPが合成されずユーメラニン優位の黒色になる。この状態は鹿毛と呼ばれる。

また、仮にASIPの活性を欠く場合、MSHによりMC1Rが過剰に活性化され、全身ユーメラニンによる真っ黒になる。これは青毛と呼ばれる。一方、MC1Rが変異するなどして活性を失った場合、ユーメラニンよりもフェオメラニンの合成に傾き、のような色になる。同時に、MC1Rを欠くとASIPによる模様もつかないため、全身が一様に着色する。つまり栗毛となる。

毛色に関連する主な遺伝子

KIT MATP STX17 MC1R ASIP
W / W (胎児のうちに死亡)
Rn / Rn (胎児のうちに死亡)
W / w 白毛
w / w Ccr / Ccr 佐目毛
w / w C / - G / - 芦毛
w / w C / Ccr g / g E / - 河原毛
w / w C / Ccr g / g e / e 月毛
w / w C / C g / g E / - A / - 鹿毛
w / w C / C g / g E / - a / a 青毛
w / w C / C g / g e / e 栗毛
SB1 / ・ 任意 任意 任意 任意 サビノの一種
TO / ・ 任意 任意 任意 任意 トビノの一種
Rn / w 任意 任意 任意 任意 粕毛の一種

毛色に関連のある遺伝子をリストする。右図に主要な8つの毛色と、数種のブチ毛、その遺伝子型の関係を示す。(※何れも一部異説あり)

  • MC1R: 3番染色体に存在するメラノサイト刺激ホルモンレセプター(MC1R)をコードする遺伝子であり、鹿毛馬における色の濃さと模様に関連する。この受容体はMSHの指示を受け取りアデニル酸シクラーゼを活性化、ユーメラニンの合成を促進する。結果黒っぽい色になる。表中ではEが野生型である。野生型の他に馬ではS83F変異型(表中ではeと表記)が知られている。S83Fは機能上の問題によりcAMPが合成されず、フェオメラニンの合成が促進され、結果赤っぽい毛色になる。
  • ASIP: 22色体に存在するアグーチシグナルタンパク(ASIP)をコードする遺伝子であり、鹿毛や栗毛に関連する。ASIPはMSHを拮抗阻害し、MC1Rの働きを抑えるとともに体に模様をつける。表中ではAが野生型、aがその変異型。
  • KIT: 3番染色体にコードされているチロシンキナーゼの一種。複数の機能を持つと言われているが、その内の1つにメラノサイトの増殖やメラニン産生の制御が含まれており、白毛やブチ毛に関連する。幾つかの変異が知られている。表中ではwが野生型、W(白毛型)やSB1(サビノ)、TO(トビノ)が変異型である。白毛型や粕毛型(RN)の変異遺伝子をホモで持つと発生段階で死亡すると言われている。KITの変異により、これらの毛色の白化部分は完全にメラノサイトが失われている。眼球のメラニンは皮膚メラノサイトとは起源が異なるため失われない。
  • MATP: 21番染色体に存在する膜関連輸送タンパク質遺伝子の一つ。佐目毛、河原毛、月毛に関連する。メラニン合成におけるMATPの働きは不明であるが、変位すると色素異常を引き起こす。通常の野生型(C)の他に、馬ではG457A変異型(Ccr)が知られており、この変異型を持つ個体は体色が薄くなる。不完全優性遺伝子でありその働きはヘテロよりもホモの方が強い。なお、ヒトにおけるMATPの変異は眼皮膚白皮症IV型(アルビノ)を誘発する。佐目毛、河原毛、月毛がサラブレッドで出ないのは、遺伝子集団内にこの変異遺伝子を持たないことによる。
  • STX17: 膜貫通受容体であり、隣接するNR4A3と共に芦毛に関連する。芦毛発生のメカニズムは長く不明であったが、2008年スウェーデンの研究者らによって、25番染色体に存在するSTX17の変異が芦毛の原因になることが解明された。この遺伝子のイントロン部分に4600塩基対の重複が発生することで、STX17及び隣接するNR4A3の過剰発現を引き起こし、メラノサイトの分化が異常に亢進、このため皮膚のメラノサイト密度が高くなり黒く着色するとともに、毛根のメラノサイト幹細胞が早期に枯渇し、加齢とともに体毛が白くなっていく。表中ではgが野生型、芦毛を引き起こす変異型をGと表現する。
表の見方

優性・劣性どちらの遺伝子が入っても、発現する毛色に影響を与えない場合は"-"で表している。"・"は、この遺伝子の働きが他の遺伝子によって抑えられる、あるいは隠されることを示す。


各毛色の特徴

鹿毛

  • 鹿毛(かげ、Bay)
最も一般的な毛色の1つで、鹿の毛のように茶褐色。ただしタテガミ・尾・足首に黒い毛が混じる。サラブレッドでは約半数を占める。

黒鹿毛

  • 黒鹿毛(くろかげ)
黒みがかった鹿毛。青鹿毛とは区別しづらいが、四肢や長毛の黒さに対して胴体がやや褐色を帯びている。サラブレッドでは鹿毛、栗毛についで多く、約14%を占める。英語では青鹿毛と区別しない場合が多い(Dark Bay、Brown、dark bay/brown)。

青鹿毛

  • 青鹿毛(あおかげ)
サラブレッドでは2-3%を占める。黒鹿毛より黒く全身ほとんど黒色、鼻先や臀部など部分的にわずかに褐色が見られる事もある。

青毛

  • 青毛(あおげ、Black)
全身真っ黒の最も黒い毛色。季節により毛先が褐色を帯び青鹿毛に近くなることがある。個体数が比較的少ない毛色でサラブレッドでの出現頻度は1%以下、白毛、月毛等を除けば最も少数派だがフリージアンペルシュロンなどではよく見られる。

栗毛

  • 栗毛(くりげ、Chestnut)
全身が褐色の毛で覆われている。最も一般的な毛色の1つで、クォーターホースの約半数(Sorrel含む)、サラブレッドの1/4を占める。
栗毛の名前の由来はクリのような色をしていることから。英語でもChestnutである。細かく分ければ黒い順にBlack Chestnut(黒栗毛)、紅梅栗毛、紅栗毛、liver/dark chestnut(栃栗毛)、chestnut(栗毛)、Sorrel(柑子栗毛、こうじくりげ)、blonde chestnut、light chestnut(白栗毛)などがある。
  • 尾花栗毛(おばなくりげ、Chestnut with flaxen mane and tail)
栗毛馬(栃栗毛などでもよい)のうちタテガミ、尻尾が金色のものをこう呼ぶ。金色の尻尾をススキの穂(尾花)に例えたことが由来。英語ではFlaxen mane and tail(亜麻色の尻尾とたてがみ)などと表現する。

栃栗毛

  • 栃栗毛(とちくりげ、Dark Chestnut)
サラブレッドでの出現頻度は1%以下で、青毛の次に少ない。
栗毛よりもやや暗い毛色。長毛は一般的に薄い色だが濃い色の個体もある。鹿毛にかなり近い場合もあるが、区別は色合いのほか脚の色から容易につく(栃栗毛は全身茶色だが、鹿毛は脚の毛が黒い)。

芦毛

  • 芦毛(葦毛、あしげ、Gray)
灰色の毛色。一般に白馬といえば年をとって白くなった芦毛馬のことを言う。サラブレッドでは約7%を占める。生まれたときは灰色や黒、もしくは母親と同じ毛色であったりするが、年を重ねるにつれ白くなっていく。このため芦毛だと気づくのが遅れ、一旦鹿毛や栗毛と登録されたものが後に芦毛に変更されることもある。
また、芦毛を引き起こすSTX17の変異に加え、別の毛色関連遺伝子であるASIPの変異が共存すると黒色腫と呼ばれる腫瘍の発症率が高くなること指摘されている。この腫瘍は基本的には良性だが、悪性化し死亡に至ることもある。
芦毛は白馬として珍重されたが、この特殊なの発症率が高いことや、軍馬に使用する場合敵に見つかりやすい等の弱点のため、品種によっては排斥された歴史もある(「芦毛」の語源は「悪し毛」とも言われている)。
上の写真は芦毛が徐々に白くなっていく各段階を示したもの。

佐目毛

  • 佐目毛(さめげ、Cremello, Perlino)
全身が真っ白か象牙色。肌の色はピンク。目は青。頻度の低い佐目毛遺伝子をホモで持たなければならないため意識的に配合しないかぎりなかなか出ない。日本では北海道和種にまれに見られる程度で稀少。クォーターホースで比較的高頻度に出る。
佐目毛はその希少性から吉兆とされ、神社に奉納されることもあった。特に白い個体の場合一見して白毛に見えるが、微妙にクリームが掛かっており白毛とは異なる。原色毛が栗毛のものをCremelloといい、白毛並に白く見える。対して鹿毛のものをPerlino、青毛のものをSmoky Creamともいう。後者は紅梅月毛ともいう。

河原毛

  • 河原毛(かわらげ、Buckskin)
体は淡い黄褐色か亜麻色で四肢の下部と長毛は黒い。北海道和種等にみられる。月毛との違いは原色毛が鹿毛か栗毛かによって決まっている。鹿毛の原色毛に佐目毛遺伝子が働くとこのような色になる。原色毛が青毛のものを別にSmoky Blackというが、これが河原毛に含まれるかどうかは不明。
  • Dun(鼠色、亜麻色)
この他、いわゆるDunも河原毛と訳される。これは河原毛よりも少し薄暗い毛色である。イエウマ(Equus caballus)では一部の比較的改良されていない品種にのみ見られあまり一般的な毛色ではないが、モウコノウマ(Equus ferus przewalskii)は殆どこの毛色であることが知られている。原因はDun geneという遺伝子で、佐目毛遺伝子とは違いホモでもヘテロでも色は変わらない。原色毛が鹿毛の場合Dun、buckskin Dun、Classic Dun、Bay Dunと呼ばれ、シマウマのような模様が四肢に出現する。殆どの個体は四肢の下部に僅かにしか見られないが稀に広範囲に現れることもある。このためZebra Dunともいう。原色毛が青毛であればMouse Dun、Blue Dun、Grulla、栗毛であればRed Dunとなる。これらにはシマウマのような模様は出ない。

月毛

  • 月毛(つきげ、Palomino)
クリーム系の色。色は個体によって差異が大きく、白毛や佐目毛に近くなることもある。この場合目の色で判断できる(白毛、佐目毛の目が青色なのに対し、月毛は茶色)。
金色にも見える馬体から好む人も多い。特にスペイン女王・イサベル1世は月毛を好み、100頭もの月毛馬を所有し、うち5頭をメキシコに送ったという伝承がある。今日でもアメリカンクォーターホースを筆頭としてアメリカ乗用馬、モルガン、テネシー壌歩馬などで比較的見られる。日本では北海道和種などでまま出る。Cremello(栗佐目毛)と栗毛を交配することでほぼ確実に得られる。
月毛は栗毛と同じくフェオメラニンの色が基本になっている。フェオメラニンは濃度によって淡い黄色~赤褐色を呈するが、月毛は栗毛遺伝子に加え佐目毛遺伝子を持つことによってフェオメラニンの濃度が下げられているため淡い黄色から象牙色に見える。
なおサラブレッドには基本的に存在しない毛色とされていたが、2004年に認められた()。現在登録されている月毛のサラブレッドは何れも1966年に突然変異の結果生まれたミルキー(Milkie)の血を受け継いでいる。その他、上杉謙信の愛馬・放生月毛等が有名。

白毛

  • 白毛(しろげ、White)
知られている中では最も白い毛色。全身の白い毛と肌が特徴。一部有色毛が混じることもあるが、芦毛とは違い、基本的に生まれたときからほぼ全身が真っ白で肌もピンク色である(芦毛は生まれたときは原色毛に近い色で、白化後も肌は黒い)。佐目毛とは見た目が区別できない場合もあるが別の遺伝子による。なお、よく誤解されるがアルビノではない。全身が完全に白い個体でも目は少量のメラニンによって青く着色している。白毛よりもむしろMATPに変異を持つ佐目毛の方がアルビノに近い。
出現率は全ての品種を通じ非常に稀。日本の軽種馬においては、ハクタイユーで初めて登録が認められた。以後20例(突然変異7頭)ほど報告がある。
白毛はレースの出走数が少ないことと、アルビノだと勘違いされることが多かったことから虚弱傾向が強く出ると誤解され(ちなみにアルビノもそれ自体が虚弱の原因となっているわけではない。アルビノを参照)、大成しないとされたが、ユキチャンが交流重賞を勝利するなど活躍例も出ており払拭されつつある。白毛には、いずれもKITの変異型である、白毛遺伝子(White Beautyやシラユキヒメなどの系統)とサビノ遺伝子(Not Quite Whiteの系統)の二つの型があると言われている。

粕毛

  • 粕毛(かすげ、Roan)
原毛色の地に肩や頸、下肢等に白い刺毛が混生する。原色毛によって栗粕毛、鹿粕毛、青粕毛と表記することもある。加齢によって刺毛は増加するが、芦毛と違い完全には白くならない。比較的古い品種に見られ、北海道和種では半数以上を占める。その他にクォーターホース、アメリカ乗用馬、テネシー常歩馬、シェトランドポニーなどで偶に見られる。アラブ系の馬種ではほぼ見られない。

その他の毛色

  • シャンパン(Champagne)
この遺伝子は佐目毛遺伝子と同じような効果をもたらすがホモ接合型になってもヘテロと色は変わらない。原色毛が鹿毛の場合Amber(河原毛に似る)になる。栗毛だとGold(月毛に似る)、青毛はClassic、佐目毛系の場合はIvory(さらに細かく、黒鹿毛か青鹿毛を基盤とするものをSable、月毛を基盤とするものをGold Cream、河原毛だとAmber Cream、青毛+河原毛をClassic Creamに分ける場合もある。
  • シルバーダップル(Silver dapple)
この遺伝子はユーメラニンの色に作用している。このため栗毛、月毛には作用しない。原色毛が鹿毛のものをBay Silver、青毛のものをBlack Silverという。

ぶち毛

  • 駁毛(ぶちげ)
体に大きな白斑のあるもの。原色毛によって栗駁毛、鹿駁毛、青駁毛と表記され、白斑が体の多くを占めるとき駁栗毛、駁鹿毛、駁青毛という。後述のアパルーサもぶち毛の一種である。

アパルーサ

  • アパルーサ(Appaloosa)
主にアパルーサという品種の持つ毛色(アパルーサ種以外にもこの毛色を持つ馬は存在する)、独特の斑点が特徴。コートパターンは白地に黒ないし茶の斑点のあるLEOPARD、臀部の色だけ異なるBLANKET、濃い地色に白く細かい斑点のあるSNOWFLAKEなどがある。

ピント

  • ペイントホース(Pinto horse)
日本では一般的に「まだら馬」と呼ばれる。ペイントホースの毛色を表す言葉は「ピント」が一般的である。アメリカンペイントホースという種類の馬がいるが、その他多種にわたりこの毛色は現れる。コートパターンは茶毛の地に白い斑紋のTOVIANO、その逆のOveroなどがある。なお、一部のOveroは白毛と同じく劣勢致死作用を持つ。例えばFrame Overo同士を配合した場合1/4の確率で致死遺伝子が顕在化し仔は死に至る。この場合生まれた仔は全身白毛で、腸の神経系の欠陥により生後数日以内に死亡する。

関連項目

参考文献

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