(1)落下する水、(2)照明用ガス、が与えられたとせよ

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『(1)落下する水、(2)照明用ガス、が与えられたとせよ』
フランス語: Étant donnés: 1° la chute d'eau / 2° le gaz d'éclairage
画像外部リンク
英語版Wikipedia
作者マルセル・デュシャン
製作年1946–66
種類Sculpture
所蔵フィラデルフィア美術館フィラデルフィア

(1)落下する水、(2)照明用ガス、が与えられたとせよ』 (いち らっかするみず に しょうめいようガス があたえられたとせよ、フランス語: Étant donnés: 1° la chute d'eau / 2° le gaz d'éclairage) は、マルセル・デュシャンの主な作品のうち最後のもの。日本語においては『1.落ちる水 2. 照明用ガス、が与えられたとせよ』『与えられたとせよ 1. 落ちる水 2. 照明用ガス』『(一)水の落下、(二)照明用ガス/が与えられたとせよ』とも訳され、『遺作』とも呼ばれる[1][2][3][4]。多作であった美術界でのキャリアの後は美術を放棄し、ほぼ25年間チェス競技に没頭していると思われていたため、この作品は美術界を驚かせた。デュシャンが『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』(通称、『大ガラス』)を制作したときは、シュールレアリストたちと作品を制作していた[5]。この作品は絵画(タブロー)であり、木製のドアにある一対ののぞき穴(それぞれの目に対応している)を通してのみ見ることができる。絵には、仰向けになって顔を隠し、足を広げ、片手でガス灯を持った裸の女性が風景を背景にして描かれている。

デュシャンは、1946年から1966年までニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるアトリエでひそかにこの作品に取り組んでいた[6]。1946年から1951年までデュシャンの交際相手であったブラジルの彫刻家マリア・マルティンス英語版が作品の女性の体のモデルを務め、2番目の妻であるアレクシーナ・デュシャン英語版(ティニー)が腕のモデルを務めた[7]。デュシャンは4リングバインダーで「取扱説明書」を作成し、この作品の組み立てと分解の方法を説明し図解した[6]

当時フィラデルフィア美術館の若いキュレーターで、後に館長を務めるアン・ダノンコート英語版が、この作品の購入とフィラデルフィアへの移送作業にあたった。作品の設置と鑑賞は自分の死後にせよとのデュシャンの希望どおり、未亡人アレクシーナと継息子のポール・マティス英語版が、デュシャンの死の1年後である1969年にフィラデルフィア美術館にこの作品を設置し一般公開した[8]

脚注[編集]

  1. ^ マルセル・デュシャン”. 美術手帖. BTCompany. 2021年4月30日閲覧。
  2. ^ チェックシート・プログラム サポートシート(参考資料)”. 横浜美術館. 「マルセル・デュシャンと 20 世紀美術」展. 2021年4月30日閲覧。
  3. ^ 東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」”. 東京国立博物館. 2021年4月30日閲覧。
  4. ^ 北山, 研二 (2014-03). “新しい知覚概念・新しい対象着想法としてのアンフラマンスとは”. ヨーロッパ文化研究 (成城大学) 33: 186. NAID 110009830976. 
  5. ^ "Collections Object: Étant donnés", Philadelphia Museum of Art, Retrieved 23 November 2014.
  6. ^ a b "Marcel Duchamp: The Manual", Philadelphia Museum of Art, Retrieved 23 November 2014.
  7. ^ Cotter, Holland. "Landscape of Eros, Through the Peephole", The New York Times, August 27, 2009.
  8. ^ "Marcel Duchamp: Étant donnés", Philadelphia Museum of Art, Retrieved 23 November 2014.

参考文献[編集]

外部リンク[編集]