「自然吸気」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Addbot (会話 | 投稿記録)
m ボット: 言語間リンク 10 件をウィキデータ上の d:q795410 に転記
編集の要約なし
1行目: 1行目:
'''自然吸気'''(しぜんきゅうき)とは、[[ターボチャージャー]]や[[スーパーチャージャー]]などの[[過給機|過給器]]を使わず[[大気圧]]でシリンダー内に吸気する、[[エンジン]]の区別方法のひとつ。'''NA'''(エヌエー:Natural Aspiration〈ナチュラルアスピレーション〉、またはNormal Aspiration〈ノーマルアスピレーション〉の略)<ref>記述の際には「N/A」あるいは「N.A.」と書かれるもある。</ref>や'''無過給'''<!--バス雑誌「バスラマ・インターナショナル」ではこの書き方が多いようです。同誌24号だけでp44・45・46で使用-->と呼ばれることもある。とくに[[自動車]]において、このようなエンジンを'''自然吸気エンジン'''と呼ぶ。本項ではこの自動車エンジンにおける自然吸気について述べる。
'''自然吸気'''(しぜんきゅうき)とは、[[ターボチャージャー]]や[[スーパーチャージャー]]などの[[過給機|過給器]]を使わず[[大気圧]]でシリンダー内に吸気する、[[エンジン]]の区別方法のひとつ。'''NA'''(エヌエー:Natural Aspiration〈ナチュラルアスピレーション〉、またはNormal Aspiration〈ノーマルアスピレーション〉の略)<ref>記述の際には「N/A」あるいは「N.A.」と書かれることもある。</ref>や'''無過給'''<!--バス雑誌「バスラマ・インターナショナル」ではこの書き方が多いようです。同誌24号だけでp44・45・46で使用-->と呼ばれることもある。とくに[[自動車]]において、このようなエンジンを'''自然吸気エンジン'''と呼ぶ。本項ではこの自動車エンジンにおける自然吸気について述べる。


== 概要 ==
== 概要 ==
23行目: 23行目:


*出力分布が平坦である。
*出力分布が平坦である。
:過給エンジンでは、過給器の内部が回転して過給を始めた以降には膨大なトルクを発生する。従って、上記の高回転でのトルク低下と合わせ、トルクの分布は急峻な山をなすこととなる。これはしばしば「ドッカンターボ」と俗され、アクセルの加減のしさを表現する。自然吸気エンジンにはその特性はない。
:過給エンジンでは、過給器の内部が回転して過給を始めた以降には膨大なトルクを発生する。従って、上記の高回転でのトルク低下と合わせ、トルクの分布は急峻な山をなすこととなる。これはしばしば「ドッカンターボ」と俗され、アクセルの加減のしづらいさを表現する。自然吸気エンジンにはその特性はない。


*[[スロットル]](アクセル)操作に対する出力レスポンスに優れる
*[[スロットル]](アクセル)操作に対する出力レスポンスに優れる
36行目: 36行目:
同[[排気量]]の過給エンジンよりも非力である。したがって、より出力を上昇させるためにさまざまな工夫が考えられた。
同[[排気量]]の過給エンジンよりも非力である。したがって、より出力を上昇させるためにさまざまな工夫が考えられた。


出力上昇のための方法には、過給器追加と[[メカチューン]]とがある。過給器追加では過給エンジンの特性を持つようになる。単に出力を重視する場合はこれを選ぶ。同一モデルの車に過給器付きエンジンがある場合は、[[エンジンスワップ|そのエンジンに載せ換えたり]]、アフターパーツとして過給器を追加<ref>このような後付けによるものを、ターボチャージャーの場合は「[[ボルトオン]]ターボ」または「ボルトオンターボチャージャー」、スーパーチャージャーの場合は「ボルトオンスーパーチャージャー」とう。</ref>することがある。
出力上昇のための方法には、過給器追加と[[メカチューン]]とがある。過給器追加では過給エンジンの特性を持つようになる。単に出力を重視する場合はこれを選ぶ。同一モデルの車に過給器付きエンジンがある場合は、[[エンジンスワップ|そのエンジンに載せ換えたり]]、アフターパーツとして過給器を追加<ref>このような後付けによるものを、ターボチャージャーの場合は「[[ボルトオン]]ターボ」または「ボルトオンターボチャージャー」、スーパーチャージャーの場合は「ボルトオンスーパーチャージャー」とう。</ref>することがある。
メカチューンは高価で、手段も限定的であるが、自然吸気の特性を保存あるいは増強することができる。
メカチューンは高価で、手段も限定的であるが、自然吸気の特性を保存あるいは増強することができる。



2013年12月24日 (火) 06:19時点における版

自然吸気(しぜんきゅうき)とは、ターボチャージャースーパーチャージャーなどの過給器を使わず大気圧でシリンダー内に吸気する、エンジンの区別方法のひとつ。NA(エヌエー:Natural Aspiration〈ナチュラルアスピレーション〉、またはNormal Aspiration〈ノーマルアスピレーション〉の略)[1]無過給と呼ばれることもある。とくに自動車において、このようなエンジンを自然吸気エンジンと呼ぶ。本項ではこの自動車エンジンにおける自然吸気について述べる。

概要

本来、自動車に限らずエンジンはすべて自然吸気であったので、過給器が自動車に普及し始めてから生まれた「自然吸気」と言う呼び名は、過給器付きエンジンの対立項としてのレトロニムである。自然吸気エンジンは特に低燃費や低排出ガスなどの面により、現在の自動車用ガソリンエンジンの主流のエンジンとなっている。

特性

一般に言われる自然吸気エンジンの特性は、上においてそもそもの語の成り立ちが過給エンジンの対義語であったことに反映されているのと同様に、過給器のもたらすメリットを得ていないこと、過給器の持つデメリットを持っていないことにある。

  • 一般に同排気量の自然吸気エンジンは過給器付エンジンに比べ構造がシンプルかつ軽量である。
これは過給器付きエンジンが、過給器を持つだけでなく、過給器を冷却/潤滑するためのオイルパイプラインを持ち、さらに排気系統と吸気系統を引き合わせるような構造を必要とすることによる。また、過給エンジンには自然吸気エンジン以上に膨大な圧力がかかるので、ブロックは頑丈であることが必要で、強度上昇のため必然的にエンジン重量も増加する。
  • 自然吸気エンジンは熱効率が高く、燃費もよい傾向がある。
ただし、ディーゼル直噴ターボなどを含む最先端のエンジンには当てはまらない。適度な排気過給は、排気エネルギーの再回収という面で、原理的には熱効率が上がるはずだからである。また、燃費の良い傾向があることは、エンジンの軽さや、低出力故の軽い車体(頑丈でなくとも良い)によるところも大きい。
  • 発熱が過給エンジンより低い。
過給エンジンは、同体積の燃焼室内で、燃料を圧縮空気で大量に燃やすことができるので、発熱が高くなる。これは熱効率を低下させる。熱効率は基本的には低温と高温の温度差が広いほど良く(大きく)なるからである。
  • 圧縮比が過給エンジンより高く、過給ガソリンエンジンでは7前後であるのに対し、自然吸気では9以上を持つことが多い。
また、低い圧縮比も熱効率を低下させる。この低圧縮比も、高温によるノッキングを避けるための処置である。(ディーゼルエンジンでは過給器付きであっても圧縮比を下げることは少ない。このことがディーゼルエンジンの熱効率を高めている)
  • 高回転型である。
過給エンジンでは、吸気を強制的に行うことができる。しかし過給器は同時に、排気ガスを吸入空気の圧縮に使う際、排気ガスの流速を奪ってしまう。このことは、燃焼済みガスの排気がうまく行われない、すなわち排気効率が下がった状態を生み出す。排気効率が下がれば、排気工程でシリンダが上昇する際に排気ガスから受ける抵抗が上昇する。すなわち、エンジンの出力の一部がガスの排気のために消耗される。高回転時のピストンスピードの早い領域ではこの効果がより顕著になるので、過給器付きエンジンは高回転領域でトルクが下がる傾向にある。自然吸気ではこの性質がないので、高回転までもたつきなくトルクを発揮する。
  • 出力分布が平坦である。
過給エンジンでは、過給器の内部が回転して過給を始めた以降には膨大なトルクを発生する。従って、上記の高回転でのトルク低下と合わせ、トルクの分布は急峻な山をなすこととなる。これはしばしば「ドッカンターボ」と俗され、アクセルの加減のしづらいさを表現する。自然吸気エンジンにはその特性はない。
  • スロットル(アクセル)操作に対する出力レスポンスに優れる
これは吸気に過給器が介在しないためである。過給器が介在すると、アクセルを踏み込んだときにその過給器の内部が回転するために一瞬の時間を要してしまう。過給器が慣性モーメントをもつということと同様である。
このレスポンスに優れる特性がもたらすメリットは、ドライバビリティという意味で決して小さいものではない。前述の平坦なトルク特性と併せ、絶対的な出力として過給エンジンに一歩劣ることの多い自然吸気エンジンがスポーティカー、GTカーにおいて根強い支持を得ている一因といえる。

改造

自然吸気エンジンは、アクセルに対する反応が俊敏かつリニア(踏んだ量に比例して増える)である反面、 同排気量の過給エンジンよりも非力である。したがって、より出力を上昇させるためにさまざまな工夫が考えられた。

出力上昇のための方法には、過給器追加とメカチューンとがある。過給器追加では過給エンジンの特性を持つようになる。単に出力を重視する場合はこれを選ぶ。同一モデルの車に過給器付きエンジンがある場合は、そのエンジンに載せ換えたり、アフターパーツとして過給器を追加[2]することがある。 メカチューンは高価で、手段も限定的であるが、自然吸気の特性を保存あるいは増強することができる。

自然吸気による実用的高出力エンジン

可変バルブタイミング機構(リフト機構)により出力(特に馬力)を上げることができる。自動車メーカーでは積極的に採用している。代表的な物にホンダのVTECi-VTEC)やトヨタのVVT-i(VVTL-i)、日産のNEO VVL・三菱のMIVEC(派生モデルMIVEC-MD)などがある。

脚注

  1. ^ 記述の際には「N/A」あるいは「N.A.」と書かれることもある。
  2. ^ このような後付けによるものを、ターボチャージャーの場合は「ボルトオンターボ」または「ボルトオンターボチャージャー」、スーパーチャージャーの場合は「ボルトオンスーパーチャージャー」という。

関連項目