「連結空間」の版間の差分

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ここで ''a'', ''b'' を結ぶ'''道''' <span lang="en">(path)</span> とは、''f''(0) = ''a'' かつ ''f''(1) = ''b'' を満たす、単位閉区間 [0, 1] から ''X'' への[[連続写像]] ''f'' のことである。
ここで ''a'', ''b'' を結ぶ'''道''' <span lang="en">(path)</span> とは、''f''(0) = ''a'' かつ ''f''(1) = ''b'' を満たす、単位閉区間 [0, 1] から ''X'' への[[連続写像]] ''f'' のことである。


弧状連結な位相空間は常に連結である。また、[[長い直線|アレクサンドロフの長い直線]]とよばれる、非可算無限個の単位半開区間の直積空間の一点コンパクト化や sin(1/''x'') のグラフ(<span lang="en">topologist's sine curve;</span> 位相幾何学者の正弦曲線)は連結だが弧状連結でない位相空間の例として挙げることができる。
弧状連結な位相空間は常に連結である。また、[[長い直線|アレクサンドロフの長い直線]]とよばれる、非可算無限個の単位半開区間の直積空間の一点コンパクト化や sin(1/''x'') のグラフ(<span lang="en">topologist's sine curve;</span> [[位相幾何学者の正弦曲線]])は連結だが弧状連結でない位相空間の例として挙げることができる。
[[image:tsc.png|thumb|right|位相幾何学者の正弦曲線]]
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2013年9月10日 (火) 15:20時点における版

平面上の連結集合と非連結集合の例: 上側の A は連結、下の飛び飛びになっている集合 B は非連結。

連結空間(れんけつくうかん、connected space)とは、二つ以上の開集合によってわかたれることなく、一つにつながっている位相空間のことである。空間の連結性は位相的性質で、位相空間の区別をつけることに利用できる。さらに強い意味での連結性として弧状連結などの概念がある。

定義

位相空間 Xでない二つの開集合の非交和に表すことができるとき非連結(ひれんけつ、disconnected)であるもしくは不連結であるといい、そうでないとき連結であるという。これはいくつか言い換えができる:

  • 位相空間 X を交わりを持たない二つの閉集合が分かつことはない。
  • 空集合X 以外にかつである部分集合は存在しない。
  • 境界を持たない部分集合は空集合と全体集合 X のほかに無い。
  • X は空でない分離した 2 つの部分集合 A, B の和に表せない(ここで A, B が分離しているとは、A の閉包と B とが交わりを持たず、かつ AB の閉包とも交わりを持たぬことである)。

位相空間 X の部分集合は、相対位相によって連結空間となるとき連結部分集合であるという。必ずしも連結でない位相空間 X の連結部分集合で包含関係に関して極大なものを、X連結成分(れんけつせいぶん、connected component)と呼ぶ。紛れのおそれの無いときはこれを単に成分 (component) とも呼ぶ。明らかなことであるが、ある連結成分が X 全体に一致するとき、X は連結である。

連結成分

位相空間 X に対し、その相異なる連結成分は互いに交わりを持たず、また連結成分すべての和を取ったものは X 全体に一致する。すなわち連結成分の全体は X類別を与える。同じことだが、X の点が同じ連結成分に属するという関係は、X 上の同値関係を定めるということもできる。また、連結成分は必ず閉集合だが、必ずしも開集合でない。

位相空間 X の連結成分がすべて一点からなる集合であるとき、X全不連結または完全不連結(かんぜんふれんけつ、totally disconnected)であるという。このような位相空間の例として、有理数全体の成す集合 Q に絶対値に関する距離位相を入れたものや、p-進数体あるいはその上の線型代数群などを挙げることができる。これに関連して、位相空間 X に相異なる二点が与えられたとき常に、交わりを持たないようにそれぞれの点の開近傍を選び出して X を覆うことができるならば、X全分離あるいは完全分離(かんぜんぶんり、totally separated)的であるという。完全分離空間は完全不連結であるが逆は正しくない。実際、有理数体 Q の二つのコピーを 0 以外の点で(同じ数は同じ数同士で)貼合わせて得られる集合

(ただし関係 ~ は、a(≠ 0) ∈ Ab(≠ 0) ∈ B については a ~ ba = b となるような最小の同値関係とする)に商位相を入れたものは完全不連結であるが、0 のふたつのコピーはどのような開近傍によっても分離することができないのでハウスドルフ空間にすらならず、特に完全分離的ではない。

  • 閉区間 [0, 2] は連結である。これを例えば、[0, 1) と [1, 2] の和集合にかくことはできるが、後者は [0, 2] の開集合ではない。これに対して、[0, 1) と (1, 2] の和集合は非連結空間の例である。実際、[0, 1) および (1, 2] は [0, 1) ∪ (1, 2] の開集合であり、また交わりを持たない。
  • 凸集合は連結である。また特に単連結となる。
  • 原点 (0, 0) を除いたユークリッド平面の全体は連結だが単連結ではない。3 次元ユークリッド空間から原点を取り除いたものも連結である。この場合はさらに単連結となる。これらと対照的に、1次元のユークリッド空間から原点を除くと、これはもはや連結でない。
  • 実数全体の成す集合 R に通常の位相を入れた位相空間は連結である。
  • 離散位相空間は非連結であり、実際はさらに完全不連結である。
  • カントール集合は、非可算無限個の点を含む完全不連結空間である。したがって特に、非可算無限個の連結成分を持つ。
  • 連結空間とホモトピックな空間は、連結である。

弧状連結

平面上の弧状連結集合:任意の二点を弧で結ぶことができる

位相空間 X はその任意の点 a , b を結ぶ道をとることができるとき弧状連結(こじょうれんけつ、path-connected)または道連結(みちれんけつ)であるという。 ここで a, b を結ぶ (path) とは、f(0) = a かつ f(1) = b を満たす、単位閉区間 [0, 1] から X への連続写像 f のことである。

弧状連結な位相空間は常に連結である。また、アレクサンドロフの長い直線とよばれる、非可算無限個の単位半開区間の直積空間の一点コンパクト化や sin(1/x) のグラフ(topologist's sine curve; 位相幾何学者の正弦曲線)は連結だが弧状連結でない位相空間の例として挙げることができる。

位相幾何学者の正弦曲線

一方、実数直線 R の部分集合では連結であることと弧状連結であることとが同値であり、そのようなものは R区間に限られる。n 次元数空間 Rn, Cn に対しても、連結な開部分集合が常に弧状連結となることがいえる。あるいは、有限集合に位相を入れて考えるときにも、連結性と弧状連結性は同値になる。

さらに強く、弧状連結空間がその任意の相異なる二点を結ぶ道 f として常に (arc)、つまり単位区間 [0, 1] と像 f([0, 1]) との間の同相写像を選ぶことができるとき、弧連結 (arc-connected) であるという。弧状連結なハウスドルフ空間は常に弧連結空間である。弧状連結だが弧連結でない空間の例を、負でない実数全体の成す集合 [0, ∞) に第二の 0 として 0′ を加えることによって作ることができる。具体的に、通常の大小関係に加えて、a が正の数ならば 0' < a であるとし、0 と 0' は比較不能であるとして半順序を与える。このとき順序位相、つまり開区間 (a, b) = {x | a < x < b}、半開区間 [0, a) = {x | 0 ≤ x < a} および [0′, a) = {x | 0′ ≤ x < a} を開基とする位相を入れて得られる位相空間は、T1-空間になるがハウスドルフ空間ではない。そして、0 と 0′ は道で結ぶことができるが弧で結ぶことができないのである。

局所連結性

連結集合からなる開基 (位相空間論)を持つ位相空間は、局所連結(きょくしょれんけつ、locally connected)であるという。位相空間 X が局所連結となることと、X のどの開集合に対しても、その任意の連結成分がまた開集合となることとは同値である。連結だが局所連結でない位相空間の例として、再び位相幾何学者の正弦曲線を挙げることができる。

同様にして、弧状連結な部分集合からなる開基を持つ位相空間は局所弧状連結(きょくしょこじょうれんけつ、locally path-connected)であるという。局所弧状連結空間の開集合は、それが連結であるならば弧状連結である。このことは一般に n 次元数空間 Rn, Cn が局所弧状連結であることから、その開部分集合についても言える。したがってなお一般に、位相多様体は(各点の近傍が数空間の開集合に同相であるから)すべて局所弧状連結であることが従う。

性質

既述のものも含めいくつかの性質と、諸概念間の関係性を挙げる。

  • 連結性は位相的性質であり、連続写像によって保たれる。つまり、XY が位相空間で、f: XY が連続写像であるとするとき、X が連結ならば像 f(X) も再び連結である。同様に X が弧状連結ならば像 f(X) も弧状連結となる。この特別の場合として中間値の定理を捉えることができる。
  • 連結部分集合の族 {A1, A2, ...} が与えられていて、この族に属するどの二つの部分集合も交わりを持つならば、族の和 λ Aλ もまた連結である。
  • 連結部分集合の族 {A1, A2, ...} が与えられていて、族の共通分λ Aλ が空でないならば、λ Aλ もまた連結である。
  • 弧状連結空間は常に連結である。
  • 局所弧状連結空間は常に局所連結である。
  • 局所弧状連結空間が弧状連結となるのは、それが連結であるときであり、またそのときに限る。
  • 連結成分は弧連結な成分の非交和として表される。
  • 局所連結空間の連結成分は開かつ閉である。
  • 連結集合の閉包もまた連結である。
  • 連結空間の商空間は連結であり、弧状連結空間の商空間は弧状連結である。
  • 連結集合の直積は連結であり、弧状連結空間の直積はまた弧状連結である。
  • 局所連結空間の開集合は局所連結であり、局所弧状連結空間の開集合もまた局所弧状連結である。
  • 多様体は全て局所弧状連結である。

関連項目

参考文献