中間値の定理
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中間値の定理(ちゅうかんちのていり、英: intermediate value theorem)とは、実数の区間の連結性に関する以下のような存在型の定理である。
中間値の定理 ― 実数直線 R の閉区間 I =[a, b]上で定義される連続な実数値関数 f が f(a) < f(b) を満たすとき、閉区間[f(a), f(b)]内の任意の点 γ に対して、γ = f(c) となる I 内の点 c が存在する。
概要[編集]
直感的には、平面上に異なる2点をとり、適当にこの2点を結ぶ連続な曲線を描く。そしてこの2点の位置関係が互いに反対側になるように直線を引いたとき、その曲線と直線とがどこかで必ず交点を持つ、ということに相当している。
ある種自明のように思われるが、これは実数の閉区間が連結であり、その連続像が再び閉区間したがって連結となること(一般に連結な位相空間の連続写像による像はやはり連結である)から成り立つ定理である。
なお、「任意の閉区間が連結である」事と「実数の連続性が成立する」事は同値であり(例えば、有理数体上では[a, b]は連結でない)、中間値の定理自体も結局は実数の連続性と同値である[注 1]。
証明[編集]
概略のみ述べる。必要な事実は
- 通常の位相に関して実数の閉区間は連結な位相空間である。
- 連結空間の連続像は連結である。
の二つだけである(この事実はここでは認めて話を進めることにする)。
いま、定理の仮定を満たす関数 f について Im(f) = {f(x)|x ∈ I} とおく。また、f(a) < γ < f(b) とする(どちらかの点に一致するときは定理は自明である)。このとき U = {α ∈ Im(f)|α < γ} と V = {β ∈ Im(f)|γ < β} とおくと、f(a) ∈ U, f(b) ∈ V だから、U, V は何れも空集合でなく、しかも互いに共通部分をもたない Im(f) 内の開集合である。
ここでもし γ が Im(f) に属さないならば、U と V は Im(f) を被覆する。しかしこれは上で述べた二つの事実から Im(f) が連結であることに矛盾する。ゆえに γ ∈ Im(f) すなわち適当な c ∈ I が存在して γ = f(c) となる。[証明終]
存在型の定理[編集]
この種の定理は「存在」に関しては保証してくれるが、「具体的にどこにあるか」については分からない。具体的にどこにあるのか知りたい場合には別の考察が必要であるが、「存在」さえ確かめられれば、それでいい場合も多い[注 2]。
似たような存在型の定理に、ロルの定理や平均値の定理などがある。
脚注[編集]
注[編集]
出典[編集]
関連項目[編集]
- 実数の連続性
- デデキント切断
- ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理
- ロルの定理
- 平均値の定理
- ポアンカレ=ミランダの定理(一般化された中間値の定理)
- ハイネ・ボレルの被覆定理
関連文献[編集]
- 杉浦光夫『解析入門1』東京大学出版会、1980年4月。ISBN 978-4-13-062005-5。
- 高木貞治、黒田成俊 補遺『定本 解析概論』岩波書店、2010年9月15日。ISBN 978-4-00-005209-2。