「放射性同位体」の版間の差分
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より正確には、[[安定同位体]]の存在する[[元素]]の放射性核種の事のみを言い、同位体が全て放射能をもつ場合放射性同位元素などというのだが、実質上同義語として用いられている<ref name="r" />。 |
より正確には、[[安定同位体]]の存在する[[元素]]の放射性核種の事のみを言い、同位体が全て放射能をもつ場合放射性同位元素などというのだが、実質上同義語として用いられている<ref name="r" />。 |
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== 概要 == |
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同じ元素で[[中性子]]の数が違う核種の関係を[[同位体]]と呼ぶ。同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは時間とともに放射性崩壊して[[放射線]]を発する。崩壊する確率は放射性同位体によって異なる[[崩壊定数]]に比例し、崩壊定数が大きいほど高い確率で崩壊する。これが'''放射性同位体'''である。放射性同位体の例としては、[[三重水素]]、[[炭素14]]、[[カリウム]] |
同じ元素で[[中性子]]の数が違う核種の関係を[[同位体]]と呼ぶ。同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは時間とともに放射性崩壊して[[放射線]]を発する。崩壊する確率は放射性同位体によって異なる[[崩壊定数]]に比例し、崩壊定数が大きいほど高い確率で崩壊する。これが'''放射性同位体'''である。放射性同位体の例としては、[[三重水素|水素3]]、[[炭素14]]、[[カリウム40]]、[[ヨウ素131]]、[[プルトニウム239]]などがあげられる。 |
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放射性同位体の崩壊は核種の変位法則に従い<ref name="rikagaku" />、[[アルファ崩壊]]により[[原子番号]]と[[質量数]]の異なる核種へ<ref>原子番号2、質量4それぞれ減少し、[[ |
放射性同位体の崩壊は核種の変位法則に従い<ref name="rikagaku" />、[[アルファ崩壊]]により[[原子番号]]と[[質量数]]の異なる核種へ<ref>原子番号2、質量4それぞれ減少し、[[ヘリウム4]](<sup>4</sup>He)原子核を放出する</ref>、または[[ベータ崩壊]]により同質量数で原子番号の異なる核種<ref>中性子1つが陽子1つに変化し、電子を放出して原子番号1増加する壊変をβ<sup>-</sup>崩壊、陽子1つが中性子一つに変化し、[[陽電子]]を放出して原子番号が1つ減少する壊変をβ<sup>+</sup>崩壊という。なお、β<sup>+</sup>壊変をする核種はすべて人工放射性同位体である。軌道電子を捕獲して、陽子が中性子へと変化する崩壊もある。</ref>へと放射性崩壊を起こす。[[ガンマ崩壊]]ではでは質量数も原子番号も不変である。一部の超ウラン元素等は自重に耐えられずに自発的に核分裂を起こして崩壊し、中性子を出すこともある。 |
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元素の中には放射性同位体しか持たないものもある。このような元素を'''放射性元素'''と呼ぶ。放射性元素に該当する元素は、[[テクネチウム]]、[[プロメチウム]]、および[[ビスマス]](原子番号83)以上の原子番号を持つ全ての元素である<ref>ビスマス209の半減期はきわめて長く、[[2003年]]まで安定核種と考えられていた。</ref>。自然界に存在する元素を分離することで発見された放射性元素は天然放射性元素または天然放射性核種<ref name="rikagaku">長倉三郎ほか編 『理化学辞典第5版』、岩波書店、1998年、項目「放射性核種」参照。ISBN 4-00-080090-6 </ref>と呼ばれる。一方、[[粒子加速器]]や原子炉を利用して[[核種変換]]することで発見された放射性元素は[[人工放射性元素]]または人工放射性核種<ref name="rikagaku" />と呼ばれ、多くの元素の人工放射性核種が実験的に作られている<ref name="rikagaku" />。人工放射性核種の持つ放射能は人工放射能と呼ばれることもある<ref name="rikagaku" />。 |
元素の中には放射性同位体しか持たないものもある。このような元素を'''放射性元素'''と呼ぶ。放射性元素に該当する元素は、[[テクネチウム]]、[[プロメチウム]]、および[[ビスマス]](原子番号83)以上の原子番号を持つ全ての元素である<ref>ビスマス209の半減期はきわめて長く、[[2003年]]まで安定核種と考えられていた。</ref>。自然界に存在する元素を分離することで発見された放射性元素は天然放射性元素または天然放射性核種<ref name="rikagaku">長倉三郎ほか編 『理化学辞典第5版』、岩波書店、1998年、項目「放射性核種」参照。ISBN 4-00-080090-6 </ref>と呼ばれる。一方、[[粒子加速器]]や原子炉を利用して[[核種変換]]することで発見された放射性元素は[[人工放射性元素]]または人工放射性核種<ref name="rikagaku" />と呼ばれ、多くの元素の人工放射性核種が実験的に作られている<ref name="rikagaku" />。人工放射性核種の持つ放射能は人工放射能と呼ばれることもある<ref name="rikagaku" />。 |
2013年7月2日 (火) 14:23時点における版
放射性同位体(ほうしゃせいどういたい)とは、構造が不安定なため時間とともに放射性崩壊していく核種(原子核)である。ラジオアイソトープ(英語:radioisotope、またはradioactive isotope[1]略称RI[1])や放射性核種(ほうしゃせいかくしゅ、英語:radionuclide)、放射性同位元素とも呼ばれる。意味としては正しくないが、放射線治療や核医学の現場ではアイソトープとも呼ばれることがある。
より正確には、安定同位体の存在する元素の放射性核種の事のみを言い、同位体が全て放射能をもつ場合放射性同位元素などというのだが、実質上同義語として用いられている[1]。
概要
同じ元素で中性子の数が違う核種の関係を同位体と呼ぶ。同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは時間とともに放射性崩壊して放射線を発する。崩壊する確率は放射性同位体によって異なる崩壊定数に比例し、崩壊定数が大きいほど高い確率で崩壊する。これが放射性同位体である。放射性同位体の例としては、水素3、炭素14、カリウム40、ヨウ素131、プルトニウム239などがあげられる。
放射性同位体の崩壊は核種の変位法則に従い[2]、アルファ崩壊により原子番号と質量数の異なる核種へ[3]、またはベータ崩壊により同質量数で原子番号の異なる核種[4]へと放射性崩壊を起こす。ガンマ崩壊ではでは質量数も原子番号も不変である。一部の超ウラン元素等は自重に耐えられずに自発的に核分裂を起こして崩壊し、中性子を出すこともある。
元素の中には放射性同位体しか持たないものもある。このような元素を放射性元素と呼ぶ。放射性元素に該当する元素は、テクネチウム、プロメチウム、およびビスマス(原子番号83)以上の原子番号を持つ全ての元素である[5]。自然界に存在する元素を分離することで発見された放射性元素は天然放射性元素または天然放射性核種[2]と呼ばれる。一方、粒子加速器や原子炉を利用して核種変換することで発見された放射性元素は人工放射性元素または人工放射性核種[2]と呼ばれ、多くの元素の人工放射性核種が実験的に作られている[2]。人工放射性核種の持つ放射能は人工放射能と呼ばれることもある[2]。
一般に、半減期が地球の年齢より十分に短い核種は、地球誕生から現在までの間に、崩壊しているため自然界には存在しない。ただし、ラドンやポロニウムのように半減期は短い核種でも、ウランやトリウムの崩壊生成物として生まれ続けている核種は、自然界に存在する。
天然放射性元素には、ウラン238やトリウム232などの、半減期が地球の年齢と同等かそれ以上の核種が存在する。天然に存在する元素としては、ウランの原子番号92が一般に最大とされている。ウラン235は約7億年、ウラン238は44.6億年と半減期が長く、地球の歴史を持ちこたえて残存したが、原子番号93のネプツニウム以降は半減期の短い核種しかないためである。ゆえに、ネプツニウム以降の人工放射性元素は、超ウラン元素とも呼ばれる。(ただし、ネプツニウムとプルトニウム(原子番号94)はウラン238の崩壊生成物として、微量ながら自然界にも存在することがわかっている。アメリシウム(原子番号95)以上の原子番号の元素は自然界には存在しない)。ウランやプルトニウム、トリウムのような原子番号の大きな放射性同位体は、娘核種もまた放射性同位体となり、その娘核種も・・・という系列をなしており、これを崩壊系列と呼ぶ。崩壊系列は質量数を4で割った時の余りにより4種類に分別され、ウラン系列やアクチニウム系列などがある。
このように10億年以上の長い半減期を持っていて太陽系形成時から現代まで生き残っている核種を一次天然放射性核種という[2]。また、これらの崩壊によって生成された娘核種のなかで、ラドンのような放射能をもっている核種を二次天然放射性核種といい[2]、安定核種は放射性起源の核種といわれる[2]。またトリチウムや炭素14のように、宇宙線との核反応で生じているような核種を誘導天然放射性核種(induced natural radionuclide)という[2]。
応用
放射性同位体は様々な分野に応用される。これらは放射線自体を利用するものと、放射性によってそれを含む放射性物質を検出するものとに分けられる。
放射性同位体(密封線源)から出る放射線は、放射線療法によるがんなどの治療、突然変異誘発による作物育種、非破壊検査、火災報知機などに応用される。
放射性物質(非密封線源)は、物質自体はごく微量であっても確実に検出・定量することができる。この性質に基づく物質の検出への応用として、医療関係ではシンチグラフィなどによる検査・診断が挙げられる。化学では、分子の一部分を放射性同位体で標識(ラベル)することによって化学反応の詳細を調べる方法があり、特に生化学で盛んに用いられる。また生体高分子を標識してこれを検出する方法は、免疫学的検定やDNAの塩基配列決定などに応用される。
脚注
- ^ a b c 長倉三郎ほか編、『岩波理化学辞典』、岩波書店、1998年、項目「放射性同位体」より。ISBN 4-00-080090-6
- ^ a b c d e f g h i 長倉三郎ほか編 『理化学辞典第5版』、岩波書店、1998年、項目「放射性核種」参照。ISBN 4-00-080090-6
- ^ 原子番号2、質量4それぞれ減少し、ヘリウム4(4He)原子核を放出する
- ^ 中性子1つが陽子1つに変化し、電子を放出して原子番号1増加する壊変をβ-崩壊、陽子1つが中性子一つに変化し、陽電子を放出して原子番号が1つ減少する壊変をβ+崩壊という。なお、β+壊変をする核種はすべて人工放射性同位体である。軌道電子を捕獲して、陽子が中性子へと変化する崩壊もある。
- ^ ビスマス209の半減期はきわめて長く、2003年まで安定核種と考えられていた。
関連項目
- 物理学
- 核物理学
- 核種
- 半減期
- 半減期順の放射性同位体の一覧
- 崩壊系列
- 放射年代測定
- 同位体
- 放射能
- 放射性物質
- 超ウラン元素
- アクチノイド
- 炭素14
- ポロニウムの同位体
- 核医学
- 放射線医学
- ラジオアイソトープ検査
- シンチグラフィ
- ポジトロン断層法
- 放射免疫検定
- 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
外部リンク