「時刻系」の版間の差分

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'''[[恒星時]]'''は[[恒星]]によって決まる時刻である。恒星日は地球が恒星に対して1回自転するのに要する時間である。1恒星日は約23時間56分4秒である。
'''[[恒星時]]'''は[[恒星]]によって決まる時刻である。恒星日は地球が恒星に対して1回自転するのに要する時間である。1恒星日は約23時間56分4秒である。


'''[[グリニッジ標準時]]''' ('''GMT''') は[[本初子午線]]での時刻である。GMT は国際的な時刻基準として使われた。技術的言えばこの目的の GMT は既存在ていないが、[[世界時]]が本質的にかつての GMT 受け継いでいる。グリニッジ標準時は常用時 (civil time) の国際基準としても使われた。この意味でも GMT は技術的にはもはや存在しないが、GMT とい語は現在の国際基準である UTC の同義語として今でも使われている。現在での GMT は厳密には時刻帯の名称としてのみ存在している。
'''[[グリニッジ標準時]]''' ('''GMT''') は[[本初子午線]]での時刻であり、GMT は国際的な時刻基準として使われた。すで前世紀廃止された。かしグリニッヂとう語感を懐かしむ世代は今も口にするが、正しくは下記の[[協定世界時]]を使うべきである。


'''[[国際原子時]]''' ('''TAI''') は UTC を含む他の時刻基準の計算の基となる基礎的な国際時刻基準である。TAI は BIPM([[国際度量衡局]])によって維持されており、環境的・[[相対論]]的効果を補正された世界中の数多くの原子時計の入力を合成して作られている。また、複数の原子時計の値を較正せず、単に平均して得られる原子時を[[自由原子時]] (EAL) と呼ぶ。
'''[[国際原子時]]''' ('''TAI''') は UTC を含む他の時刻基準の計算の基となる基礎的な国際時刻基準である。TAI は BIPM([[国際度量衡局]])によって維持されており、環境的・[[相対論]]的効果を補正された世界中の数多くの原子時計の入力を合成して作られている。また、複数の原子時計の値を較正せず、単に平均して得られる原子時を[[自由原子時]] (EAL) と呼ぶ。

2008年2月17日 (日) 07:46時点における版

時刻系(じこくけい)とは時間が経過する歩度、もしくは時刻、またはその両方の基準である。例えば、常用時の基準は時間間隔とその日の時刻の両方を規定する。

歴史的には、時刻系は地球自転周期に基づいていた。しかし地球が自転する速度は一定ではない。そこで地球自転に基づく基準は最初、地球の公転周期を用いた基準に置き換えられた。しかし地球の軌道は楕円であり、太陽に近い位置では地球の公転は速くなり、公転速度も結局は一定ではない。比較的最近になると、時間間隔の基準は地球の自転や公転の速度に基づく過去の基準に代わって、非常に正確で安定している原子時計に基づく基準に置き換えられている。

国際的に認知されている時間間隔はである。秒は他の様々な時間尺度の基準として用いられている。他の時間間隔(時間)は通常、秒を用いて定義されている。

時刻系の例

太陽時は太陽日、すなわちある日の正午から次の正午までの時間間隔に基づいている。1太陽日は平均すると約24時間である。しかし地球が太陽を公転する軌道は楕円であり、また太陽日には観測者の緯度に依存する変動があるために、太陽時は平均太陽時に比べて最大約15分ずれる。他にも地軸のふらつきなど別の摂動があるが、これらの大きさは1年に1秒以内である。

恒星時恒星によって決まる時刻である。恒星日は地球が恒星に対して1回自転するのに要する時間である。1恒星日は約23時間56分4秒である。

グリニッジ標準時 (GMT) は本初子午線での時刻であり、GMT は国際的な時刻基準として使われた。すでに前世紀に廃止された。しかしグリニッヂという語感を懐かしむ世代は今も口にするが、正しくは下記の協定世界時を使うべきである。

国際原子時 (TAI) は UTC を含む他の時刻基準の計算の基となる基礎的な国際時刻基準である。TAI は BIPM(国際度量衡局)によって維持されており、環境的・相対論的効果を補正された世界中の数多くの原子時計の入力を合成して作られている。また、複数の原子時計の値を較正せず、単に平均して得られる原子時を自由原子時 (EAL) と呼ぶ。

世界時 (UT) は平均太陽日に基づいた時間尺度である。平均太陽日は地球回転の変動を可能な限り補正して一様に進むように定義した太陽日である。

  • UT0 は特定の観測地での地球自転に基づく時刻である。UT0 は恒星や地球外の電波源日周運動の観測から得られる。
  • UT1 は UT0 から観測地の経度に表れる極運動の効果を補正して計算される。UT1 は地球の自転に不規則性があるために一様な歩度からずれる。
  • 協定世界時 (UTC) は TAI から整数秒だけずれている。UTC は閏秒という1秒を必要に応じて導入することで UT1 との差が0.9秒以内に保たれている。今日まで挿入された閏秒は常に正の値であった。

ある地域の地方時または常用時は、一日の始まりがその場所での深夜に始まるように、UTC に対して四捨五入された固定値(通常は1時間の整数倍)だけずれている時刻である。詳しくは標準時を参照のこと。また、一年に2回、時刻を特定値(通常は1時間)だけ変更する場合がある。これについては夏時間を参照のこと。

惑星運動の計算に用いられる時刻系

暦表時力学時座標時は全て惑星の運動を計算するための一様な時刻を与える時刻系である。

  • 暦表時 (ET) は暦表秒、すなわち回帰年のある整数分の1で定義された秒に基づく時刻系で、現在は使われない。暦表秒は1956年から1967年まで SI 秒の基準であった。暦表時は1984年に廃止された。地球表面での用途については ET は地球力学時 (TDT) で置き換えられ、TDT はその後地球時 (TT) として再定義された。天体暦の計算用途には、ET は太陽系力学時 (TDB) で置き換えられた。しかし TDB の定義では不足があったため、太陽系全体での用途については太陽系座標時 (TCB) で、また地球近傍での用途には地球座標時 (TCG) で再度置き換えられている。実際には天体暦の計算は Teph と呼ばれる TCB と線形的に関係する時刻が使われているが、これは公式には定義されていない。
  • 地球力学時 (TDT) は暦表時に代わる時刻系で、暦表時との連続性を維持していた。TDT は一様に進む原子時に基づく時間間隔を持ち、SI秒を単位とした。TDT は国際原子時 (TAI) と結び付いていたが、TAI の原点の定義には若干任意性があったため、TDT は TAI と32.184秒という定数秒だけずれを持たせていた。このずれによって暦表時との連続性が保たれた。地球力学時は現在は地球時として再定義されている。
  • 太陽系力学時 (TDB) は TDT と同様の時刻系だが、原点を太陽系重心に移すための相対論的補正を含んでいる。TDB は TT に対して周期的項のみ異なっている。この差は最大でも10ミリ秒程度で、多くの用途では無視できる。1991年に、時空座標の間の関係を明確にするために、異なる座標系に基づく新たな時刻系が導入された。地球時は地球表面での時刻である。地心座標時は地球中心での座標時である。太陽系座標時は太陽系の重心での座標時である。太陽系力学時は太陽系重心での力学時である。
  • 地球時 (TT) はかつて地球力学時と呼ばれていた時刻系である。地球時は現在は地球表面での座標時として定義されている。
  • 地心座標時 (TCG) は地球の重心に空間座標の原点を持つ座標時である。TCG は TT と以下の式で線形に結び付いている: TCG - TT = LG * (JD -2443144.5) * 86400 秒、ここでスケール差 LG は 6.969290134e-10 と定義される。
  • 太陽系座標時 (TCB) は太陽系重心に空間座標の原点を持つ座標時である。TCB は TT と歩度や他の周期項が異なっている。周期項を無視し、長い期間にわたって平均すると、両者は以下の関係にある: TCB - TT = LB * (JD -2443144.5) * 86400 秒。IAU によるスケール差 LB の最も良い評価値は 1.55051976772e-08 である。

その他の時刻

ユリウス日紀元前4713年1月1日のグリニッジ標準時での正午から数えた経過日数である。通常は直前の正午からの経過時間を日の小数で表す。これは天文学に便利なように、観測夜間に日が変わることを防ぐ目的で決められている。

修正ユリウス日 (MJD) は MJD = JD - 2400000.5 で定義される。それゆえ MJD での1日は常用日と同じく深夜から始まる。ユリウス日は UT,TAI,TDT などを使って表せるため、正確に表す際には例えば MJD 49135.3824 TAI などと表す。

地磁気地方時 (MLT) は地球の磁軸を基準に定めた時刻系である。電離層や磁気圏の研究で用いられる。

関連項目

外部リンク

参考文献

  • Explanatory Supplement to the Astronomical Almanac, P. K. Seidelmann, ed., University Science Books, 1992, ISBN 0-935702-68-7