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ラスターデータは、[[航空写真]]や[[衛星画像]]などの[[リモートセンシング]]技術による写真やセンサーで受け、デジタル化された画像や、地図などをスキャニングした画像などのデータである。写真の場合はそのままでは位置によってずれが生じるため、[[空中三角測量法]]にもとづいた幾何学補正処理を行う。このように処理された画像はオルソ画像とも呼ばれる。
ラスターデータは、[[航空写真]]や[[衛星画像]]などの[[リモートセンシング]]技術による写真やセンサーで受け、デジタル化された画像や、地図などをスキャニングした画像などのデータである。写真の場合はそのままでは位置によってずれが生じるため、[[空中三角測量法]]にもとづいた幾何学補正処理を行う。このように処理された画像はオルソ画像とも呼ばれる。


ベクターデータは、[[測量]]や地図のトレース、[[CAD]]データなどからの変換によって得られる。点座標と、それらから構成される[[ポリゴン]]やポイント、ラインなどによって表現する方法ためのデータである。
ベクターデータは、[[測量]]や地図のトレース、[[CAD]]データなどからの変換によって得られる。点座標と、それらから構成される[[ポリゴン]]やポイント、ラインなどによって表現するデータである。


日本では、地理情報標準 (JSGI) が[[ISO]]/TC 211で策定されたISO 19100シリーズを元に作成されており、一部は[[JIS]] X 7100シリーズとして発行されている。
日本では、地理情報標準 (JSGI) が[[ISO]]/TC 211で策定されたISO 19100シリーズを元に作成されており、一部は[[JIS]] X 7100シリーズとして発行されている。
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=== 地図の表示 ===
=== 地図の表示 ===
GISの最も基本的な機能は地図を表示することである。現在のシステムではさらに、縮尺の指定、地図の移動や回転、地図の重ね合わせなどの高度な機能も兼ね備えている。縮尺については、現在のコンピュータはモニターや解像度などの問題から正確性を欠いている。
GISの最も基本的な機能は地図を表示することである。現在のシステムではさらに、縮尺の指定、地図の移動や回転、地図の重ね合わせ、色の変更、線の太さの変更などの高度な機能も兼ね備えている。


GISの縮尺は、一般的に、他のシステムの図形表示よりも縮尺の幅が広い。対応している縮尺はシステムによって異なるが、通常の地図の縮尺よりも広範囲にとることもできる。
GISの縮尺は、一般的に、他のシステムの図形表示よりも縮尺の幅が広い。対応している縮尺はシステムによって異なるが、通常の地図の縮尺よりも広範囲にとることもできる。縮尺の正確性についてはモニタの解像度を設定(一部のソフトは未対応)することにより解決する。

表示された地図は上下左右に移動したり、回転させることができるものもある。


地図の重ね合わせは紙の地図では時間がかかった処理を大幅に短縮することが可能になった。この機能により、様々な空間情報の相関関係が目に見えるようになった。また、重ね合わせるだけではなく横などに並べて表示するシステムもある。
地図の重ね合わせは紙の地図では時間がかかった処理を大幅に短縮することが可能になった。この機能により、様々な空間情報の相関関係が目に見えるようになった。また、重ね合わせるだけではなく横などに並べて表示するシステムもある。
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** [http://www.mapinfo.jp/ MapInfo]
** [http://www.mapinfo.jp/ MapInfo]
** [http://www.microimages.com/ TNTmips, TNTlite]
** [http://www.microimages.com/ TNTmips, TNTlite]
** [http://www.takumimap.com// TakumiMap]
** [http://www.takumimap.com/ TakumiMap]
** [http://www.mapquest.co.jp/ MapQuest]
** [http://www.mapquest.co.jp/ MapQuest]
** [http://www.supermap-japan.com/ SuperMap]
** [http://www.tcgmap.jp/m3products/m3_1.htm 地図太郎]


* オープンソース、シェアウェア等
* オープンソース、シェアウェア等
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** [http://thuban.intevation.org/ Thuban]
** [http://thuban.intevation.org/ Thuban]


=== GIS データの入手 ===
=== GISデータ ===
*官公庁
* 国土地理院
** [http://zgate.gsi.go.jp/ 地理情報クリアリングハウス]
** [[国土地理院]]
*** [http://zgate.gsi.go.jp/ 地理情報クリアリングハウス]
** [http://sdf.gsi.go.jp/ 数値地図(空間データ基盤)]
*** [http://sdf.gsi.go.jp/ 数値地図(空間データ基盤)]
*** [http://www1.gsi.go.jp/geowww/globalmap-gsi/main.html 地球地図] 「みんなの地球地図プロジェクト」では、Shape形式で公開されている。
* 国土交通省
** [[国土交通省]]
** [http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ 国土数値情報ダウンロードサービス] - 地形、土地利用、公共施設、道路、鉄道等国土に関する様々な地理的情報がダウンロードできる
*** [http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/ 国土数値情報ダウンロードサービス] 地形、土地利用、公共施設、道路、鉄道等国土に関する様々な地理的情報がダウンロードできる
* 総務省統計局
** [[総務省]]統計局
** [http://gisplaza.stat.go.jp/GISPlaza/ 統計GISプラザ] - 全国の国勢調査データがダウンロードできる (Shape形式、G-XML形式)
*** [http://gisplaza.stat.go.jp/GISPlaza/ 統計GISプラザ] 全国の国勢調査データがダウンロードできる (Shape形式、G-XML形式)
** MIRC
*** [http://www.mirc.jha.jp/products/ 海岸線・海底地形データ]
*民間
**[[アルプス社]]
**[[インクリメント・ピー]]
**[[NTT-ME]]
**[[国際航業]]
**[[昭文社]]
**[[ゼンリン]]
**[[東京デジタルマップ]]
**[[パスコ]]
**[[北海道地図]]


[[Category:地理学|ちりじょうほうしすてむ]]
[[Category:地理学|ちりじょうほうしすてむ]]

2007年1月19日 (金) 16:37時点における版

地理情報システム(ちりじょうほうしすてむ) (GIS, Geographic Information System) は、コンピュータ上に地図情報やさまざまな付加情報を持たせ、作成・保存・利用・管理し、地理情報を参照できるように表示機能をもったシステム。人工衛星、現地踏査などから得られたデータを、空間、時間の面から分析・編集することができ、科学的調査、土地、施設や道路などの地理情報の管理、都市計画などに利用される。韓国語では、GISを地理情報体系と訳している。

コンピュータの発展にともなって膨大なデータの扱いが容易になり、リアルタイムでデータを編集(リアルタイム・マッピング)したり、シミュレーションを行ったり、時系列のデータを表現するなど、従来の紙面上の地図では実現不可能であった高度な利用が可能になってきている。

歴史

3万5千年前頃、フランスラスコーの近くにある洞窟にクロマニョン人が動物の絵を描いている。動物の絵とともに、これを狩った際の位置や数などの記録が残されている。これは端的に現代の地理情報システムの構造を示している。即ち、図形情報と、これに関連する属性情報である。

1700年代には、調査手法として地形図の作成手法が開発され、科学や国勢調査データを用いた初期の主題図も用いられる。

20世紀に入ると、フォトリソグラフィーの技術により、地図をレイヤーに分割するようになる。1950年代ワシントン大学で研究が始まった。

1967年には、世界で初めて動作可能な地理情報システムが、カナダオンタリオ州オッタワで開発された。ロジャー・トムリンソンに開発されたシステムは、カナディアンGIS (CGIS) と命名され、Canada Land Inventory の収集するデータを保存、分析するのに用いられた。分析用に分類機能も追加されていた。これはメインフレーム上のシステムで、商業的に入手可能ではなかった。

マイクロコンピュータの発達により、ESRI、MapInfo、CARISなどがCGISの機能を取り込んだ地理情報システムを開発する。これは空間情報と属性情報を分離し、属性情報をデータベースの形式で管理する形態である。1980年代頃からUNIXワークステーションやパーソナルコンピュータで開発されている。20世紀末頃になると、それまで多種多様であったシステムやデータ、データ変換方式に標準化が導入されるようになり、インターネットに配信されるようになる。

日本では昭和50年代から研究が始まっている。

データ

データ形式

地理情報システムで使われるデータは多岐に渡っている。大きく分類すると、地図や衛星写真、航空写真などの図形情報、地物に関連する属性情報、使用している座標系や縮尺、精度などのメタ情報などに大別される。

2次元の図形情報は、大きく分けてラスターデータベクターデータがある。

ラスターデータは、航空写真衛星画像などのリモートセンシング技術による写真やセンサーで受け、デジタル化された画像や、地図などをスキャニングした画像などのデータである。写真の場合はそのままでは位置によってずれが生じるため、空中三角測量法にもとづいた幾何学補正処理を行う。このように処理された画像はオルソ画像とも呼ばれる。

ベクターデータは、測量や地図のトレース、CADデータなどからの変換によって得られる。点座標と、それらから構成されるポリゴンやポイント、ラインなどによって表現するデータである。

日本では、地理情報標準 (JSGI) がISO/TC 211で策定されたISO 19100シリーズを元に作成されており、一部はJIS X 7100シリーズとして発行されている。

地形を3次元的に表現するためのTINデータ形式がある。これは、三角面を組み合わせて地形を表現する形式である。

測地系と座標系

座標系に関しては、これまで日本国内では主に日本測地系が使われてきたが、今平成14年4月1日付で施行された改正測量法規の発効により、世界測地系に基づく日本測地系2000(Japanese Geodetic Datum 2000, JGD2000)へ移行しつつある。

クリアリングハウス

地理情報システム(GIS)の分野では、インターネットなどの通信ネットワークを活用した地理的情報の流通機構全体を指す。日本では、提供可能なデータを所有している先行省庁によるクリアリングハウスの構築及び運用を行うこととされているため、国土地理院などが地理情報クリアリングハウス、ノードサーバーの構築、メタデータの整備などの技術支援を関係省庁に行っている。

主な機能

GISの主な機能を概略すると、地図の表示機能、図形の作成・編集機能、属性の作成・編集機能、検索機能、空間解析機能、主題図作成機能、印刷機能などがある。

地図の表示

GISの最も基本的な機能は地図を表示することである。現在のシステムではさらに、縮尺の指定、地図の移動や回転、地図の重ね合わせ、色の変更、線の太さの変更などの高度な機能も兼ね備えている。

GISの縮尺は、一般的に、他のシステムの図形表示よりも縮尺の幅が広い。対応している縮尺はシステムによって異なるが、通常の地図の縮尺よりも広範囲にとることもできる。縮尺の正確性についてはモニタの解像度を設定(一部のソフトは未対応)することにより解決する。

地図の重ね合わせは紙の地図では時間がかかった処理を大幅に短縮することが可能になった。この機能により、様々な空間情報の相関関係が目に見えるようになった。また、重ね合わせるだけではなく横などに並べて表示するシステムもある。

図形の作成・編集機能

一般的な図形作成プログラムと同様に、様々なベクターデータをマウスやキーボードを用いて描いたり、ラスターデータを取り込んだりすることができる。

GISに特徴的なデータとして、シンボルとラインシンボルがある。これは、地図記号などを表現するために用いられる。シンボルは点であるが、ラインシンボルは線路など線の地図記号に使われる。

属性の作成・編集機能

ひとつの図形はひとつ、または複数の属性データに関連付けられることがある。現在の大規模なGISでは、属性データはリレーショナルデータベースで管理されることが多い。

検索機能

住所や属性情報から地図上の位置を特定する。

空間解析機能

バッファ機能と呼ばれる、指定した距離や属性から範囲や領域を検索したり、ネットワーク解析とよばれる、道路やパイプラインなどのネットワーク構造の空間データから最短探索や隣接解析を行う機能がある。

  • 面復元
  • 最短経路探索
  • セールスマン巡回問題
  • ボロノイ図作成

主題図作成機能

特定の目的を持って作られた地図のことを主題図という。 例えば、土地の利用状況を知りたいときに、土地を地目別に色塗り表示した地図。

印刷およびコピー機能

  • 印刷
  • 範囲指定印刷
  • 縮尺指定印刷
  • クリップボードへのコピー

GISの応用

GISは研究や軍事利用から始まったが、現在では民間企業や政府、教育などで広く使われている。日本においては、1980年代後半から1990年代初頭において、まず、計量地理学からのアプローチがあり、その機能の研究や統計パッケージと一体とした主題図の作成ツールとしての利用がなされてきた。現在では、システムやソフトウェアの開発を得意とする情報工学からのアプローチと固定資産税システム評価と都市計画へのGISの利用方法を探る建築学土木工学都市工学からのアプローチが主流となっている。阪神淡路大震災以降、にわかに災害を対象とした調査研究がGISによって行われてきたが、その後、その機能面からの評価が高まるにつれ、特に政府、自治体からの利用の試みが増えてきているほか、法人のエリアマーケティング分析など営業支援ツールとしての利用など民間分野においても活用の期待が高まっている。

GISの発展

地理情報システムは情報技術革命により初めて可能となり、低コストで様々な地理情報利用が実現できる。地理情報システムの発展過程の第一段階はデジタルデータの採集だ。それにより、検索性に優れ、より新しい地理情報を大量に提供できるようになる。現在そのようなデータは、あらゆる機関で地理情報の全面的なデジタルへの移行を完了した。

第二段階は、地理情報の管理段階である。第一段階で収集されたデータを業務分類することにより、施設管理システム、カーナビゲーションシステム、オンライン地図等のシステムが実現される。この段階では、地理情報システムの管理機能を利用でき、地理情報の流通も可能になり、業務の効率が向上し、サービスの質も改善される。

今、あらゆる地理情報関連作業単位が電子的に処理され、分析される最先端の第三段階に入ろうとしている。地理情報システムをベースに簡単に様々な情報の交換ができ、多くの企業システムや電子政府に関するアプリケーションが統合される。企業と政府も含めたデジタル・エコノミーの可能性が開かれることになる。地理情報システムを利用して、国民は各政府部門や各企業を意識することなく、必要なサービスや情報を入手できる。行政と企業は業務の効率化と質の向上が得られ、知識経済のメリットを享受できる。また、行政と企業内では、透明性と正確性が向上し情報の質が高まり、職員の仕事や改革に対する意欲が高まる。

地理情報システム利用ポイントは、地理情報システムとデジタル化された複数のシステムが接続、統合され、必要な作業のすべてを一つの場で可能にすることであり、行政にも企業にも国民にも大きなメリットをもたらすということである。そこで重要な役割を果たすのがXML (GML/G-XML) だ。XMLは異なるシステム間で特別なコードを書くことなく、データを自由にやり取りすることを可能にする。XMLはメインフレームや個別業務などの枠を超えたオープンなプロトコルである。 小売り、金融業界などで、XMLは積極的に利用されている。地理情報システムの推進もXMLが鍵を握っている。XMLにより、様々なデバイスやシステムが統合され、ユーザーは様々な利益を享受できる。そのためXMLベースにした地理情報システムは電子政府に向いていると言える。

地理情報システムを利用する電子政府は将来の経済発展における重要な要素である。実際、国土地理院においても「電子国土」という理念を提唱し、普及啓発に努めている。長期的な視点のみならず、ペーパーレス化や電子行政開示など、一年間、半年間で実現できる地理情報システム目標設定も必要である。地理情報システムは、電子政府と企業システム利用分野で必ずや主導的な役割を果たす。

GISの未来

OGC 標準と日本の標準

世界標準を推し進める団体として、Open Geospatial Consortium (OGC) がある。 日本では、国土地理院が中心となって、地理情報標準(JSGI) を、ISO/TC 211で策定された国際標準(ISO 19100シリーズ)を基に作成しており、 一部はJIS X 7100シリーズとして発行されている。

時間次元の導入

時間次元を導入することにより、数日、数ヶ月、数年間などにわたる変化を分析することが可能になる。

日本における政策

2002年に小泉内閣の下で作成された e-Japan重点計画 - 2002では、地理情報システム(GIS)の推進が盛り込まれた。国土地理院では、数値地図の電子化などの推進、地理情報クリアリングハウス(検索システム:http://zgate.gsi.go.jp/ )、GISを推進するための情報やサンプルアプリケーションをウェブサイトで公開する「電子国土ポータル(http://cyberjapan.jp/ )」などを運営している。さらに国土地理院では、電子政府の一端である電子申請を促進するため、「国土交通省の所管する法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」(平成15年国土交通省令第25号)第3条第5項第4号に基づき、申請に地図の添付を必要とする手続について、申請者・受理者両者が背景の地図を用意することなく、申請すべき上乗せ情報だけを電子的にやり取りすることで可能とする地理情報システム「電子申請用添付地図作成支援・確認サービス」 (http://tenpuchizu.gsi.go.jp/ ) を2004年3月31日から国土交通省総合政策局情報管理部情報企画課行政情報システム室の協力を得て運用している。

参考

関連項目

文献

  • 柴崎亮介『地理情報システム(GIS)入門―GISに強くなるための24章―』(日 測量協会1995)
  • 町田 聡『新訂 GIS・地理情報システム 入門&マスター』(山海堂2004)
  • 後藤真太郎・谷謙二・酒井聡一・加藤一郎『MANDARAとEXCELによる市民のためのGIS講座-パソコンで地図を作ろう-』(古今書院 2004)

外部リンク

GIS アプリケーションプログラム

GIS用データ