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垂足曲線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Pに対する曲線Cの垂足の幾何学的な構築

垂足曲線(すいそくきょくせん、: pedal curve)は、曲線接線に対する、固定された直交射影が成す曲線である[1][2][3][4][5]。より正確に言えば、平面曲線Cと点P (Pedal point)について、Pを通るC接線の垂足(接線と垂線の交点)X軌跡を垂足曲線という。逆に、曲線C上の任意の点Rで接する接線Tのある垂線が、ある点Pを通るなら、その接線の垂足は垂足曲線を成す。

垂足曲線を補完するために、四角形PXRY長方形となるように点Yを取る。点Yの軌跡はcontrapedal curveと呼ばれる。

曲線のorthotomicは、P拡大の中心として垂足を2倍に拡大した曲線である。これは、Pを接線T鏡映した点の軌跡である。

垂足曲線は、曲線Cnの垂足曲線をCn+1として、C0,C1,C2,C3...と定義していったときの一連の曲線の最初の曲線である。この曲線内で、CnC0の n th positive pedal curveという。逆にC0Cnのn番目の負垂足線 (nth negative curve) または逆垂足曲線と呼ばれる[6][7][8][9][10]

方程式

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直交座標によるアプローチ

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P原点とする。また、曲線CF(x, y)=0とする。C上の点R=(x0, y0)の接線は次の形で書くことができる。

このとき位置ベクトル(cos α, sin α)線分PX(接線の垂線)と平行で長さが等しい。したがって、X極座標(p, α) と表せる。(p, α)(r, θ)で置き換えると極形式の垂足曲線の形を得る[11]

楕円(黒)の垂足曲線(赤)。楕円はa=2,b=1で垂足曲線は4x2+y2=(x2+y2)2

例として、楕円の垂足曲線を挙げる[12]。楕円の方程式は次の式で表される。

楕円上の点R=(x0, y0)における接線は

である。これを上記の形に書き換えると次のようになる。

楕円の方程式からx0, y0消去英語版して

を得る。(r, θ)に置き換えると

となる。この式は容易にデカルト座標の方程式に置き換えることができる。

極方程式によるアプローチ

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P原点とする。曲線Cを極座標r=f(θ)で与える。R=(r, θ)C上の点、X=(p, α)を前項と同様に定義する。ψを接線及び動径偏角として、

より

これらの方程式は(r, θ)を垂足曲線の等式の変数(p, α)に置き換えることができる[13]

例として、r = a cos θの垂足曲線を考える[14]

であるから

と、

が成り立つ。これらを解いて、

垂足方程式によるアプローチ

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曲線の垂足座標による表示と垂足曲線は深い関係にある。原点Pをpedal pointとして取る。R における動径と曲線の成す角ψは、垂足曲線の対応するXにおける角と等しい。pを垂線の長さ(Pから垂足Xまでの距離PX)、qを対応する垂足曲線のPを通る垂線の長さとすれば、三角形相似より、

これより、曲線の垂足方程式をf(p, r)=0として、垂足曲線の垂足方程式は次の式で表せる[15]

この式から曲線のnth positive/negative pedal curveの垂足方程式は簡単に求めることができる

パラメトリック方程式によるアプローチ

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同じ楕円のContrapedal curve
楕円のエボリュート曲線の垂足曲線。楕円のcontrapedal curveと一致する。

とする。また、接線ベクトルと法線ベクトル英語版に分解して次のように書く。

,

RX方向のベクトルとなる。

tパラメタとして曲線cの垂足曲線のパラメトリック方程式

で表される(c'が0または定義できない点は無視する)。

曲線を媒介的に定義して、pedal pointが(0,0)である曲線の垂足曲線は、

と表せる。contrapedal curveは次の式で与えることができる。

同じpedal pointでは、contrapedal curveは曲線の縮閉線の垂足曲線と一致する。

幾何学的な性質

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Pを通る直線と、曲線の接線が直角を成すような剛体移動を考える。この角の頂点Xは曲線とPの垂足曲線をたどる。角が動けばPに対する動く方向はPXと平行になり、Rの動く方向は接線T (=RX)に平行になる。したがって瞬間中心は、PXPを通る垂心と、RXRを通る垂線の交点Yである。Xにおける垂足曲線の接線はXYXを通る垂線と一致する。

直径をPRとする円は長方形PXRYに外接し、またXYを直径に持つ。したがって円と垂足曲線はどちらもXYと直交し、Xで接する。 故に、垂足曲線はもとの曲線上の点をRとして、直径をPRとする円の包絡線となる。

直線YRは曲線の法線であり、その包絡線は曲線の縮閉線である。故にYRは縮閉線の接線で、YPを通る縮閉線の接線の垂足である。つまりYは縮閉線の垂足曲線である。よってcontrapedal curveは元の曲線の縮閉線の垂足曲線であることが従う。

CPを中心に2倍縮小した図形をC'とする。 Rに対応する点R'は長方形PXRYの中心であり、R'におけるC'の接線はPY,XRと平行な直線で、長方形を二等分する。Pから発射され、R'C'に衝突して反射する交線はYを通る。この反射された交線はCの垂足曲線と直交する直線であるXYと一致する。垂足曲線に直交する直線の包絡線は、反射された交線の包絡線、C'火線英語版となる。 これは、曲線の火線はorthotomicの縮閉線と一致することの証明に使われる。

前述の様に、PRを直径とする円が垂足曲線に接する。この円の中心R'はである。

D'C',D'の共通接線で鏡映の関係にある合同な曲線として、輪転曲線英語版の定義の様に、C'上を滑らせずに転がす。ニ曲線が点R'で接するとすれば、 Pと対応する点はXとなる。また輪転曲線は垂足曲線となる。同様に、曲線のorthotomicは輪転曲線の鏡映像の輪転曲線となる。

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蝸牛形 - の垂足曲線

Cであるとき、上記の議論から蝸牛形は以下の様な定義ができる。

  • 円の垂足曲線。
  • ある固定点と円上の点を直径の両端とする円の包絡線。
  • 中心が円上にあり固定点を通る円の包絡線。
  • 同半径の円上を転がる円の輪転曲線。

円の火線は蝸牛形の縮閉線である。

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有名な曲線の垂足曲線を挙げる[16]

曲線 方程式 垂足点 垂足曲線
円周上の点 カージオイド
任意の点 蝸牛形(リマソン)
放物線 焦点 頂点における接線
放物線 頂点 ディオクレスのシッソイド
デルトイド 中心 Trifolium
楕円または双曲線 焦点 副円
楕円または双曲線 中心  (Hippopede
直角双曲線 中心 ベルヌーイのレムニスケート
対数螺旋 対数螺旋
正弦波螺旋 (別の正弦波螺旋)

関連項目

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出典

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  1. ^ 窪田忠彦『近世幾何学』岩波書店、1947年、148頁。doi:10.11501/1063410 
  2. ^ 沢田吾一『微分積分学綱要』富山房、1930年、141-143頁。doi:10.11501/1031308 
  3. ^ 窪田忠彦『歯車の幾何学』河出書房、1948年、15頁。doi:10.11501/1159825 
  4. ^ 掛谷宗一『積分学』岩波書店、1946年、78-79頁。doi:10.11501/1229809 
  5. ^ ジョージ・サーモン 著、小倉金之助 訳『初等幾何學 第2卷 空間之部』山海堂、1915年、308頁。doi:10.11501/1082037 
  6. ^ 下田卯市『微分積分学』大倉書店、1922年、486-491頁。doi:10.11501/960420 
  7. ^ 寺沢寛一『微分学講義』積善館、1910年、340-345頁。doi:10.11501/828996 
  8. ^ Edwards p. 165
  9. ^ 藤原松三郎『数学解析 第1篇』内田老鶴圃、1940年、148頁。doi:10.11501/1212195 
  10. ^ 垂足線と言う語はシムソン線を指す場合もある。
  11. ^ Edwards p. 164
  12. ^ Follows Edwards p. 164 with m=1
  13. ^ Edwards p. 164-5
  14. ^ Follows Edwards p. 165 with m=1
  15. ^ Williamson p. 228
  16. ^ Edwards p. 167

参考文献

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  • Differential and integral calculus: with applications by George Greenhill (1891) p326 ff. (Internet Archive)
  • J. Dennis Lawrence (1972). A catalog of special plane curves. Dover Publications. p. 60. ISBN 0-486-60288-5. https://archive.org/details/catalogofspecial00lawr/page/60 
  • "Note on the Problem of Pedal Curves" by Arthur Cayley

外部リンク

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