国鉄5680形蒸気機関車

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鉄道作業局 172(後の鉄道院 5682)

5680形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道作業局・鉄道院・鉄道省に在籍したテンダ式蒸気機関車である。

概要[編集]

元は、鉄道作業局1895年(明治28年)に自局の神戸工場で4両[1]を製作した車軸配置4-4-0(2B)形で2気筒単式の飽和式テンダ機関車で、形式はAJ形、番号は170 - 173(後にD7形)と称した。私鉄国有化を受けて1909年(明治42年)に実施された鉄道院の車両形式称号規程では、5680形5680 - 5683)に改番された。

当時、神戸で汽車監察方を務めていた、リチャード・フランシス・トレビシックの指導により製作されたもので、車軸、タイヤ、煙管、缶板等の材料や、蒸気ドームやその座金、圧力計、給油器、注水器等の部品はイギリスから輸入した。

形態的には、歩み板は前端から後端まで一直線に通されており、縁室前板の形状は彼の流儀の前板のみを下広がりとしたもので、弁装置ジョイ式である。軸距等の寸法は、5130形に近いが、シリンダの径やストロークは5500形と同じで、ボイラも5300形や5500形に近かった。ボギー式の先台車は、横方向の復元用に板ばねを用いたアダムズ式ではなく、緩衝ゴムのクッションを利用した方式である。

当初の配置は中央西線で、大正中期には銚子に配置され、総武線で使用されていた。その後、仙台鉄道局に移り、1922年(大正11年)7月に全車が廃車された。

主要諸元[編集]

  • 全長 : 14,227mm
  • 全高 : 3,658mm
  • 全幅 : 2,334mm
  • 軌間 : 1,067mm
  • 車軸配置 : 4-4-0(2B)
  • 動輪直径 : 1,397mm
  • 弁装置 : ジョイ式基本型
  • シリンダー(直径×行程) : 406mm×559mm
  • ボイラー圧力 : 9.8kg/cm2
  • 火格子面積 : 1.29m2
  • 全伝熱面積 : 81.3m2
    • 煙管蒸発伝熱面積 : 74.6m2
    • 火室蒸発伝熱面積 : 6.7m2
  • ボイラー水容量 : 2.8m3
  • 小煙管(直径×長サ×数) : 44.5mm×3,200mm×167本
  • 機関車運転整備重量 : 31.70t
  • 機関車空車重量 : 28.87t
  • 機関車動輪上重量(運転整備時) : 21.54t
  • 機関車動輪軸重(第1動輪上) : 11.18t
  • 炭水車重量(運転整備) : 21.44t
  • 炭水車重量(空車) : 12.29t
  • 水タンク容量 : 7.75m3
  • 燃料積載量 : 2.03t
  • 機関車性能
    • シリンダ引張力 : 5,490kg
  • ブレーキ装置 : 手ブレーキ真空ブレーキ

脚注[編集]

  1. ^ 製造番号は付されていないが、2 - 5に相当する。

参考文献[編集]

  • 臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会
  • 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社
  • 臼井茂信「機関車の系譜図 3」1972年、交友社
  • 金田茂裕「形式別 日本の蒸気機関車 III」エリエイ出版部刊
  • 金田茂裕「日本蒸気機関車史 官設鉄道編」交友社刊