交響曲第5番 (プロコフィエフ)
交響曲第5番 変ロ長調 作品100は、ソビエト連邦の作曲家セルゲイ・プロコフィエフが作曲した交響曲である。プロコフィエフの作品の中でも最も人気のある作品のひとつである。
概要
[編集]プロコフィエフは元来政治には無関心であったが、1941年にヒトラー率いるドイツ第三帝国が独ソ不可侵条約を一方的に破棄してソ連に攻め入る現実を見て、かつてない祖国愛に目覚めたという。そして作曲家として何らかの形で祖国に貢献する道や方法を考え始め、こうした状況下で生まれたのがこの交響曲第5番であった。
作曲は1944年に、モスクワ郊外のイヴァノヴォにある作曲家たちの山荘で一気呵成に行われ、わずか1ヶ月あまりでピアノ・スコアが書かれ、さらに続く1ヶ月でオーケストラのスコアが完成されたという。
初演は1945年1月13日、モスクワのモスクワ音楽院大ホールにて、プロコフィエフ自身の指揮とモスクワ国立交響楽団の演奏で行われ、ソヴィエト全域にわたってラジオで中継された。またこの日のプログラムは、『古典交響曲』、交響的物語『ピーターと狼』と交響曲第5番という、オール・プロコフィエフ・プログラムであった。初演は大成功を収め、同年11月にはセルゲイ・クーセヴィツキーの指揮とボストン交響楽団の演奏によるアメリカ初演も行なわれた。
後にプロコフィエフはこの交響曲について、以下のように述べている。
- 「戦争が始まって、誰も彼もが祖国のために全力を尽くして戦っているとき、自分も何か偉大な仕事に取り組まなければならないと感じた。」
- 「わたしの第5交響曲は自由で幸せな人間、その強大な力、その純粋で高貴な魂への讃美歌の意味を持っている。」(1951年)[1]
楽器編成
[編集]フルート 2、ピッコロ 1、オーボエ 2、イングリッシュホルン 1、クラリネット 2、E♭管クラリネット 1、バスクラリネット 1、ファゴット 2、コントラファゴット 1、ホルン 4、トランペット 3、トロンボーン 3、チューバ 1、ウッドブロック、タンブリン、トライアングル、小太鼓、シンバル、大太鼓、タムタム、ティンパニ、ハープ、ピアノ、弦五部
三管編成である。
演奏時間
[編集]約45分
曲の構成
[編集]- 第1楽章 - Andante 変ロ長調、4分の3拍子。ソナタ形式。
- 第1主題は4分の3拍子を基本としながらも、実際は変拍子に近い。同時に旋律も様々な楽器に受け継がれていく。第2主題は4分の4拍子で、構成面・音響面ともに第1主題と対比されている。
- 第2楽章 - Allegro marcato ニ短調、4分の4拍子。三部形式。
- 第3楽章 - Adagio ヘ長調、4分の3拍子。三部形式。
- 前楽章とは対照的に抒情的で落ち着いた歌謡的な主題を持つ。主部は広い音域をもった美しい旋律で、長いフレーズの中で様々な楽器に紡がれてゆく。中間部は第55小節から始まり、葬送行進曲風の楽節を内包している。
- 第4楽章 - Allegro giocoso 変ロ長調、2分の2拍子。ロンド形式。A-B-A-C-A-Coda
脚注
[編集]- ^ 田代薫訳『プロコフィエフ 自伝/随想集』音楽之友社、2010年、223ページ
外部リンク
[編集]- 交響曲第5番 作品100の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト。PDFとして無料で入手可能。