トランスジェンダー・フラッグ

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トランスジェンダー・フラッグ英語: Transgender Flag)は、トランスジェンダーのプライド、多様性、トランスジェンダーの人権のシンボルとなっているレインボー・フラッグのひとつ。

フラッグの概要[編集]

世界中の幅広いLGBTコミュニティはレインボー・フラッグを使用してきたが、世界中のさまざまなトランスジェンダーの個人、組織、コミュニティは、単一のデザインだけを使用してきたわけではない。もっとも一般的な旗は、ブルー、ピンク、白を使用したものであるが、他にも数種類の旗が使用され、認められてきた[1]。現在でも、これらの旗に代わる旗が提案されている[2]。さまざまな旗は、トランスジェンダーのプライド、多様性、人権英語版追悼などを表すために、個人、組織、コミュニティ、そして支援者たちによって使用されている。

トランスジェンダー・プライド・フラッグ(Monica Helms)[編集]

トランスジェンダー・プライド・フラッグ

もっとも有名なデザインにトランスジェンダー・プライド・フラッグがある[3]。アメリカのトランス女性であるMonica Helms英語版によって1999年にデザインされ[4][5]、アメリカのアリゾナ州フェニックスで2000年に行われたプライド・パレードで初めて使用された[6]

この旗のデザインは、トランスジェンダーコミュニティを表しており、2本の水色、2本のピンク、そして中央の1本の白という5本の水平ストライプで構成されている。

Helmsは、トランスジェンダー・プライド・フラグに込められた意味を次のように説明している[7][8]

上下のストライプは、男の子の伝統的な色であるライトブルーです。その隣のストライプは、女の子の伝統的な色であるピンクです。真ん中のストライプは、ジェンダーの移行中の人たちや、自分自身をニュートラルまたは未定義の性別を持つと考えている人たちのための白です。

イギリスでは、トランスジェンダー追悼の日ブライトン・アンド・ホヴ議会がこの旗を掲げている[9]ロンドン交通局も、2016年のトランスジェンダー認知週間に向けて、ロンドン地下鉄55 Broadway英語版本社で旗を掲げた。

トランスジェンダー追悼の日を記念して、2012年11月19日と20日に初めて、サンフランシスコのカストロ地区 (普段はラインボーフラッグが掲揚されている)の大きな公共の旗竿で掲揚された[10][11][12]。この旗揚げ式では、地元のドラッグクイーンであるLa Monistatが主催者を務めた[13]

2014年8月19日、Monica Helmsはトランスジェンダー・プライド・フラグのオリジナルをスミソニアン国立アメリカ歴史博物館に寄付した[14]

フィラデルフィアは、2015年にアメリカでトランスジェンダー・プライド・フラッグを掲げた最初の郡政府となった。フィラデルフィアの第14回Annual Trans Health Conference英語版に敬意を表してフィラデルフィア市庁舎で掲げられ、会議期間中に渡って、アメリカとフィラデルフィア市の旗の隣に掲げられた。その後Michael Nutter英語版市長は、トランスコミュニティがフィラデルフィアで受け入れられたことを祝う演説を行った[15]

2019年1月、 バージニア州議会議員のは、トランスジェンダーコミュニティへの支持を示すために、 ワシントンD.C.のオフィスの外でトランスジェンダープライドフラグを掲げた[16][17]。2019年3月、多数の民主党員および独立議員がトランスジェンダー認知週間中の国際トランスジェンダー認知の日に向けて、オフィスの外にトランスジェンダー・フラッグを掲揚した[18][19]

トランスジェンダー・プライド・フラグのバリエーション[編集]

Monica Helmsのオリジナルのトランスジェンダープライドフラグのデザインに加えて、さまざまなコミュニティがトランスジェンダーのアイデンティティの各側面を反映した記号や要素を追加することで、独自のバリエーションの旗を作成している。たとえば、アメリカ合衆国の国旗カントンに追加した旗は、アメリカ人のトランスジェンダーのアイデンティティを表す[20]

ブラック・トランス・フラグ[編集]

「ブラックトランスフラグ(英語: Black Trans Flag)」と呼ばれる別の種類のトランスジェンダー・プライド・フラッグは、トランスアクティビストで作家のRaquel Willis英語版がデザインしたもので、元の白いストライプの代わりに、中央に黒いストライプがある。Willisは、より大きなトランスジェンダー運動とは対照的に、黒人のトランスコミュニティが直面する差別、暴力、殺人などのより高いレベルを表すシンボルとして作成し、最初に彼女のFacebookアカウントに投稿した[21]。この旗は、第1回のBlack Trans Liberation Tuesdayの一環として、アメリカの黒人のトランスジェンダーの活動家によって2015年8月25日に初めて使用された[22][23]。Black Trans Liberation Tuesdayは、Black Lives Matter運動と同時開催され、年間を通じて殺害された黒人トランスジェンダー女性のために開催されたイベントである。この旗は、ノンバイナリの人々の象徴部分の白いストライプを取り除いたという点で軽い批判を受けた。

その他のトランスジェンダー・フラグのデザイン[編集]

長年にわたり、いくつかのトランスジェンダーフラグがさまざまなトランスジェンダーの個人、組織、コミュニティで採用されてきた。このような代替のフラグがいくつも提案されてきた[24]

イスラエルのトランスジェンダーおよびジェンダークィアの旗

イスラエルのトランスジェンダーおよびジェンダークィアの旗[編集]

3番目のデザインは、イスラエルでトランスジェンダーとジェンダークィアコミュニティによって使用されている[25]。このフラグは、ネオングリーンの背景(公共の場所で目立つようにするため)と、中心に位置する黒で描かれた金星、火星、火星記号(⚧)がトランスジェンダーの人々を表している。

トランス・フラッグ(Michelle Lindsay)[編集]

オンタリオ州では、オタワのグラフィックデザイナーのMichelle Lindsayがデザインした「Trans Flag」として知られる旗が使用されている。これは、女性を表すサンセットマゼンタの上部と、男性を表すオーシャンブルーの下部の2つのストライプに、金星と火星の記号と、トランスジェンダーの人たちを表すストローク記号の付いた火星のシンボル(⚧)を重ねたシンボルを加えたデザインである。

トランス・フラッグは、オタワの2010年トランスジェンダー追悼の日(Ottawa's 2010 edition of the Trans Day of Remembrance)に、トオタワ地域のトランスコミュニティによって最初に使用された。このイベントには、オタワ警察サービス英語版がこの旗を発表し掲揚する式典が含まれてた[26]。この式典は、2011年のオタワとガティノー合同でのトランスジェンダー追悼の日のイベントでも再度行われ、このときは、オタワ救急隊英語版オタワ市庁舎英語版ガティノー市庁舎英語版の3箇所でもトランス・フラッグが掲揚された。トランスジェンダー追悼の日の一環として、公式のオタワ・ガティノー地域でトランス旗を掲揚するグループのリストは毎年増加している[要出典]。トランス・フラグは、Peterborough Pride Paradeの一部でも使用されている[27]

トランスジェンダー・プライド・フラグ(Johnathan Andrew)[編集]

このトランスジェンダー・プライド・フラグは、1999年にトランス男性のためのウェブサイト「Adventures in Boyland」(1999-2004)を運営していたJohnathan Andrew("Captain John")によってデザインされた。

1999年、「Adventures in Boyland」というFtMのトランスのためのウェブサイトを運営し、「Captain John」というハンドルネームで知られているサンフランシスコのトランス男性のJohnathan Andrewは、トランスジェンダーコミュニティ内で自分のアイデンティティがトランスだとする人たちのための旗をデザインして公開した。このトランスジェンダー・プライド・フラッグは、ピンクとブルーが交互に並ぶ7本のストライプからなり、左上の部分に金星と火星を組み合わせたラベンダー色のシンボル(⚥)を配置している。他のページ上のAndrewの色の象徴性のデザインに関する説明は、Monica Helmsの有名な旗のデザイン非常に類似している。Andrewは、トランスジェンダー・プライド・フラッグに関して、ウェブサイト上で次のように説明していた[28]

And finally, an AiB Exclusive--the Transgender Pride Flag (c)1999. Yes, indeedy--it's about time we had our own symbol to represent the community, ain't it? Bears have theirs. Leathermen have theirs. Why can't we have ours? And might we say that we feel these designs, designed by your friendly neighborhood Captain, embodies all aspects of our identities. Whether we're transgender or transsexual, going from male (blue) to female (pink) or from female (pink) to male (blue), or just somewhere in between, both flag designs capture the subtlties and the strengths of our spirits (and the white accents in between the lines are the--supposedly--the little triumphs that happen upon us during our journies to become whole (the flag as a whole)). The lavender-colored sex symbol--not to be confused with The Artist Currently Not Known as Purple's symbol--can also designate FtM/MtF/or Intersexed/Both/Shifting. As you can see, both flag designs/symbols can be used to encompass all types of gender variation. Hell, who knows, maybe it just might catch on (and Cpt. John will be elated--even more so when he get [sic] credit for the design).

現在オークランドに住んでいるAndrewは、最近、デザインについて次のようにコメントした。「私がこの旗をデザインしたのは、当時、標準的なレインボー・フラッグ、ベアー・プライド・フラッグ英語版レザー・プライド・フラッグ英語版以外には何もなかったからです。Googleが現在のような姿で存在する以前でしたが、私はトランスジェンダー・プライド・フラッグが見つかるのを期待してインターネットをくまなく探しました、結局見つかりませんでした。そこで、アーティスト/デザイナーとして、コミュニティのために自分でデザインすることにしました。フラグ自体は、(トランス)コミュニティ全体を表すことを目的としていて、私は自分のサイトでデザインを「初めてのトランス・プライド・フラグ」として公開し、いくつかのトランスサイトが取り上げてくれました。当時、私たちはみな、プライド・ウェブリングを通して相互リンクしている固く結ばれたサイトのコミュニティでした。そうしたかったのですが、旗を生産するための資金はありませんでした。」[29]

Trans Kaleidoscope[編集]

2014年、「Trans Kaleidoscope(トランス万華鏡)」として知られる新しいトランスジェンダー・フラッグがToronto Trans Alliance(TTA)で作られた。2020年11月20日、トランスジェンダー追悼の日のセレモニーで、トロント市庁舎英語版で掲揚された。このセレモニーでMonica HelmsとMichelle Lindsayのトランスジェンダー・プライド・フラッグではなくこの旗が選ばれたのは、TTAのメンバーの投票によるものである[30]。Trans Kaleidoscopeは、TTAのウェブサイトでは次のように説明されている。

「段階的な色は、スペクトル全体の幅広いジェンダー・アイデンティティの範囲を表現しており、それぞれの色は以下を表しています。

  • ピンク:女性または女性らしい人たち(women/femaleness)
  • 紫:自分のジェンダー・アイデンティティが男性と女性の組み合わせだと感じる人たち
  • 緑:自分のジェンダー・アイデンティティが男性でも女性でもないと感じる人たち
  • 青:男性または男性らしい人たち(men/maleness)

黄色の円は、インターセックスの人たちを表しています。

黒い境界線を持つ新しい白い記号は、トランスのシンボルを男性と女性のシンボルで拡張したもので、組み合わされたシンボルは、男性と女性を組み合わせたジェンダー・アイデンティティを持つ人を表し、(矢印もバーもない)平らなポールは、男性でも女性でもないジェンダー・アイデンティティを表しており、すべての人を認めて包含すること表現しています。」 [31]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ History of the Pride Flag”. transgendersociety.yolasite.com. 2016年11月2日閲覧。
  2. ^ Trans* flag”. 2016年11月2日閲覧。
  3. ^ A Storied Glossary of Iconic LGBT Flags and Symbols Matt Petronzio, 13 June 2014.
  4. ^ Brian van de Mark (2007年5月10日). “Gay and Lesbian Times”. 2012年9月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月3日閲覧。
  5. ^ Fairyington, Stephanie (2014年11月12日). “The Smithsonian's Queer Collection”. The Advocate. 2015年6月5日閲覧。
  6. ^ "Transgender Flag Flies In San Francisco's Castro District After Outrage From Activists" by Aaron Sankin, HuffingtonPost, 20 November 2012.
  7. ^ "Transgender Flag Flies In San Francisco's Castro District After Outrage From Activists" by Aaron Sankin, HuffingtonPost, 20 November 2012.
  8. ^ The History of the Transgender Flag”. point5cc.com (2015年4月23日). 2015年7月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月9日閲覧。
  9. ^ Council flagpoles now celebrate diversity and druids; The Daily Telegraph, 4 April 2011.
  10. ^ "Transgender Flag Flies In San Francisco's Castro District After Outrage From Activists" by Aaron Sankin, HuffingtonPost, 20 November 2012.
  11. ^ Wilkey, Robin (2012年10月23日). “Controversy Erupts Over San Francisco's Famous Rainbow Flag”. Huffington Post. http://www.huffingtonpost.com/2012/10/23/castro-rainbow-flag_n_2007257.html 
  12. ^ USA - Transgender Pride flag raised for the first time in the Castro - ウェイバックマシン(2019年7月25日アーカイブ分)
  13. ^ FOF #991 – La Monistat Keeps it Fresh!”. Feast of Fun. 2020年10月18日閲覧。
  14. ^ Kutner. “A Proud Day at American History Museum as LGBT Artifacts Enter the Collections”. Smithsonian Institution. 2014年8月28日閲覧。
  15. ^ Philadelphia Raises the Transgender Pride Flag for the First Time”. The Advocate. 2020年10月18日閲覧。
  16. ^ Martinez (2019年1月5日). “Rep. Jennifer Wexton Hangs Transgender Pride Flag Outside Her Capitol Hill Office”. Time. 2019年1月7日閲覧。
  17. ^ Transgender pride flag hung in Congress by Rep. Jennifer Wexton”. NBC News (2019年1月4日). 2019年1月7日閲覧。
  18. ^ Tim Fitzsimons, Sanders, Pelosi, Ocasio-Cortez hang transgender pride flags in Congress, MArch 26, 2019, NBCNews
  19. ^ Tracy Gilchrist, Pelosi, Ocasio-Cortez, Sanders, & Dozens Hang Trans Flags for Support, 27 March 2019, The Advocate Lizzie Helmer, Dozens of Dem Reps Are Displaying Transgender Pride Flags Outside Their Offices This Week 28 March 2019, IJR
  20. ^ History of the Pride Flag”. 2016年11月2日閲覧。
  21. ^ Black Trans Flag”. 2016年11月2日閲覧。
  22. ^ Willis, Raquel (2016年8月23日). “Black Trans Liberation Tuesday Must Become an Annual Observance”. Rewire News. https://rewire.news/article/2016/08/23/black-trans-liberation-tuesday-must-be-annual/ 2016年10月25日閲覧。 
  23. ^ Talusan, Meredith (2015年8月26日). “Black Lives Matter Calls Attention To Killed Black Trans Women On National Day of Action”. Buzzfeed News. https://www.buzzfeed.com/meredithtalusan/black-lives-matter-trans-liberation-tuesday 2016年10月25日閲覧。 
  24. ^ Putting Out the Trans Flags”. 2016年11月3日閲覧。
  25. ^ GoTrans. “יום הזיכרון בתמונות - Trans* memorial day in pictures”. gogay.co.il. gogay. 2009年11月20日閲覧。
  26. ^ Ottawa Police observe the Transgender Day of Remembrance”. Orleans Star (2010年11月21日). 2013年9月3日閲覧。
  27. ^ Trans Flag web site”. 2013年9月3日閲覧。
  28. ^ Wayback Machine: Adventures in Boyland”. 2001年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月19日閲覧。
  29. ^ History of the Pride Flag”. 2017年6月19日閲覧。
  30. ^ Trans activists clash over flag raising at Toronto City Hall" by HG Watson”. Daily Xtra (2014年11月20日). 2016年9月25日閲覧。
  31. ^ Which Flag Should be Raised at TDOR?”. torontotransalliance.com. 2016年9月25日閲覧。