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テネシー州の大区分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テネシー州の旗。3つの星は、この州の3つの大区分を象徴している。

テネシー州の大区分(テネシーしゅうのだいくぶん)、ないし、グランド・ディヴィジョンズ・オブ・テネシー (Grand Divisions of Tennessee) は、アメリカ合衆国テネシー州を構成する3つの地理的区分であり、それぞれは州の面積の概ね3分の1を占め、地理的のみならず文化的、法的、経済的にも異なる特色をもっている。この大区分は、州の憲法州法によって法的に承認されており、テネシー州の旗においても3つの目立つ星として表現されている[1]

東部英語版中部西部英語版からなる大区分は、「three states of Tennessee(テネシー3州)」とか「the three Tennessees(3つのテネシー)」などと称されることもある[2]

定義

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テネシー州の大区分を示した地図、上から東部テネシー中部テネシー西部テネシー

東部中部西部から成る3大区分は、テネシー州法である「Tennessee Code Annotated Title 4, Chapter 1, Part 2 ("Grand Divisions and State Capital")」に定められており[3]、そこでは「eastern, middle, and western」として3大区分が言及されている。この法令には、それぞれの地方に所属するが列挙されている。

東部テネシーと中部テネシーの境界線は、この州の初期の歴史において、交通や通商上の大きな障害となっていたカンバーランド高原の上に引かれている[4]。この境界線は、中部標準時東部標準時時間帯の境界に近い[5]。東部テネシーは、ブレッドソー郡カンバーランド郡マリオン郡の3郡を除いて東部標準時に含まれており、中部テネシーと西部テネシーは全域が中部標準時に含まれている。アラバマ州ミシシッピ州を経てケンタッキー州へと北流するテネシー川の流れは、中部テネシーと西部テネシーの境界を成しており、それはハーディン郡の北部郡境から始まるが、テネシー川が郡域を貫流するこの郡は、全域が西部テネシーに属している。

各区分への郡の帰属は、州の立法によって変更される場合がありえるが、最初期の法制である「The Acts of Tennessee 1835-1836, Chapter 3, "An Act to establish a Supreme Court in pursuance of the 2nd sec., art. 6, of the Constitution of the United States"」によって大区分が設定されて以来、実際におこなわれた変更はわずかなものにとどまっている[6]。最も新しい境界線の修正は、ペリー郡を西部から中部に移した1965年におこなわれた[7]。それ以前の20世紀における定義の変更によって、シクアッチー郡が東部テネシーから中部テネシーへ、マリオン郡とカンバーランド郡が中部テネシーから東部テネシーへと移された[6]

統計

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大区分 人口[8]
2020年英語版国勢調査
最大都市 面積 mi2 (km2) 所属群数
東部テネシー 2,470,105 ノックスビル 13,558 sq mi (35,120 km2) 33 (list)
中部テネシー 2,883,086 ナッシュビル 17,009 sq mi (44,050 km2) 41 (list)
西部テネシー 1,557,649 メンフィス 10,650 sq mi (27,600 km2) 21 (list)
テネシー州 6,910,840 ナッシュビル 41,217 sq mi (106,750 km2) 95 (list)

特徴

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3つの大区分は、地方ごとに地理的にも文化的にも特異性をもっている[9]。東部テネシーの景観は、州の東側の州境であるグレート・スモーキー山脈英語版を含むアパラチア山脈や、東部テネシーの主要都市であるノックスビル、チャタヌーガトライシティーズ英語版が位置するリッジ・アンド・バレー地方英語版、起伏の多いカンバーランド山脈英語版から成っている。東部テネシーと中部テネシーは、カンバーランド高原を境としている。州都であるナッシュビルがある中部テネシーは、なだらかな丘陵と流量豊富な河谷特徴となっている。西部テネシーは、テネシー川ミシシッピ川の間の地域であり、3大区分の中で最も標高が低い。当地は、自然地理学的地域区分ではメキシコ湾海岸平野英語版の一部となり、比較的平坦な地形が特徴となっている。メンフィスを別にすれば、当地の土地利用は農業が卓越している。歴史的には綿花が西部テネシーの主要作物であった[4]

3大区分は地域ごとに、自然地理学的にも経済的にも様々な相違を抱えていたため、南北戦争の際にはテネシー州内で大きな分断が生じた英語版綿花生産と結びついたプランテーション農業のシステムは、奴隷制度が西部テネシーの経済にとって非常に重要であったことを意味しており、当地の有権者たちはアメリカ合衆国からの離脱英語版を強く支持した。プランテーションが存在はしていたものの、さほど重要ではなかった中部テネシーでは、離脱への支持はさほど強くなかった。山がちで、プランテーションがほとんど存在せず、奴隷制度が経済的に重要ではなかった東部テネシーにおいては、有権者たちは離脱に強く反対した。テネシー州は全体としてユニオンから離れてアメリカ連合国に加わったが、南北戦争中も戦後も、東部テネシーはユニオン支持の心情や活動が優る地域であり続けた。この地方では、共和党が政治を支配していた。南北戦争前も戦時中も、東部テネシーでは、北部アラバマ英語版など、ユニオン側に友好的だった他の地域とともに、ニカジャック英語版州として連合国から離脱し、合衆国に再加盟しようとする動きがあった[10]

かつての奴隷制度の歴史の名残もあり、西部テネシーではアフリカ系アメリカ人の人口比率が高い。2020年の国勢調査では、西部テネシーにおける黒人の人口比率は 37% であったが、中部テネシーでは 12%、東部テネシーでは 6%に過ぎなかった[11]

法的意義

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テネシー州憲法英語版は、州最高裁判所英語版の5人の判事について、2人を超えて同じ大区分から選任することはできないと定めている。州最高裁は、定期的に各区分を巡回し、西部テネシーのジャクソン、中部テネシーのナッシュビル、東部テネシーのノックスビルでそれぞれ開催される[12]。同様の規則は、州法制のいくつかの分野にもある。以下はその例である。

  • かつて存在したテネシー州公共サービス委員会英語版は、州全体の選挙で委員を選出していたが、各大区分から委員を1名ずつ選ぶことになっていた[13]
  • 10名から成るテネシー州教科書委員会 (Tennessee Textbook Commission) について、州法は、おもに職業的教育者から成るこの委員会に、教育関係の職についていない3名の委員を、各大区分から1名ずつ選んで加えることを定めている[14]
  • 上訴裁判所の判事の人数についても、州法は各大区分から選ばれる特定の人数を定めている。

象徴的表象

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1905年に採用されたテネシー州の旗のデザインについて、これを制作したリロイ・リーヴズ (LeRoy Reeves) は、「純白の3つの星は州の3大区分を表彰している (The three stars are of pure white, representing the three grand divisions of the state)」と書き記した。彼の説明によれば、青い円の中に置かれた3つの星は、「三者が一つに結ばれた、解くことのできない三位一体 (three bound together in one—an indissoluble trinity)」の象徴である[1]

テネシー州は、かつては観光誘致の宣伝でも大区分を取り上げていた。1960年代に州境で来訪者を迎えていた看板には、「Welcome to the Three States of Tennessee(テネシー3州へようこそ)」という語句が記されていた[15][16]。しかし、このスローガンは、メンフィス出身ながら東部テネシーから強い支持を得ていた共和党の州知事ウィンフィールド・ダン英語版によって、セクショナリズムを助長しかねないという懸念から廃止された[16]

2002年の記念硬貨

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2002年50州25セント硬貨シリーズの一環として発行された、テネシー州25セント硬貨の裏面。

2002年アメリカ合衆国造幣局が発行した、テネシー州を記念する25セント硬貨には、3大区分それぞれの音楽的伝統を讃えるデザインが施され[17]、それぞれの地域特有の特定の音楽様式と結びついたものとなった。東部テネシーはアパラチアのブルーグラス、中部テネシーはカントリー・ミュージックグランド・オール・オプリ、そして西部テネシーはデルタ・ブルースである[18]。この25セント硬貨には、3大区分を表象する3つの星の下に、ナッシュビルと中部テネシーのカントリー・ミュージックを描いたギター、東部テネシーのブルーグラスの伝統を示すフィドルと楽譜、メンフィスやミシシッピ・デルタ英語版(西部テネシーの一部)のブルースを表すトランペットが描かれた[17]

脚注

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  1. ^ a b Tennessee Department of State. “Tennessee Symbols and Honors” (PDF). Tennessee Blue Book, 2005–2006. p. 516. 2024年4月27日閲覧。
  2. ^ Williams, Amanda Colleen (2020年1月10日). “The Three States of Tennessee” (英語). Songlife. 2023年12月13日閲覧。
  3. ^ Table of Contents”. Tennessee Code Unannotated. 2024年4月27日閲覧。
  4. ^ a b Advanced Geography Part Three: Physical Regions”. Tennessee History for Kids. May 22, 2013閲覧。
  5. ^ Astor, Aaron (2015). The Civil War Along Tennessee's Cumberland Plateau. Charleston, South Carolina: The History Press. p. 11. ISBN 978-1-62619-404-5. LCCN 2015-932376. https://books.google.com/books?id=yme4CAAAQBAJ May 31, 2021閲覧。 
  6. ^ a b Lee, Ronald (March 3, 1998). “Three Grand Divisions of Tennessee”. Tennessee GenWeb Project. 2024年4月27日閲覧。
  7. ^ Advanced Geography Part Two: Grand Divisions, Rivers and Cities”. Tennessee History for Kids. May 22, 2013閲覧。
  8. ^ U.S. Census website”. United States Census Bureau (2010年). 2019年12月29日閲覧。
  9. ^ Tennessee Department of State. “A History of Tennessee” (PDF). Tennessee Blue Book, 2005–2006. p. 353. 2024年4月27日閲覧。
  10. ^ 12 proposed U.S. states that didn't make the cut from The Week
  11. ^ Mabry, Lisa M.; Mirvis, David M. (January 2010). “The Three Tennessees: Child and Infant Health in the Three Grand Divisions of Tennessee”. Tennessee Medicine (Tennessee Medical Association): 35–38. http://www.tnmed.org/tennessee-medicine-magazine/archives/2010/Tennessee-Medicine-January-2010.pdf. 
  12. ^ Tennessee State Constitution, Article VI, Section 2” (PDF). Tennessee Blue Book. p. 547. 2024年4月27日閲覧。
  13. ^ Sanford, Valerius. "Tennessee Public Service Commission". Tennessee Encyclopedia of History and Culture.
  14. ^ Adams, Josh; Sisk, Chas (Jun 5, 2013). “TN book commission faces scrutiny after lawmakers say textbooks show bias”. The Tennessean. http://www.wbir.com/rss/article/276839/2/TN-book-commission-faces-scrutiny-after-lawmakers-say-textbooks-show-bias 
  15. ^ Summitt, Pat (November 3, 2003). “Three-Part Harmony: The Lady Vols coach sings the praises of her state's trio of distinct regions”. Sports Illustrated. http://sportsillustrated.cnn.com/magazine/features/si50/states/tennessee/essay/. 
  16. ^ a b Jolley, Harmon (August 24, 2011). “Welcome to East Tennessee; Some Wanted Separate State at Time of Civil War”. The Chattanoogan. 2024年4月27日閲覧。
  17. ^ a b Tennessee quarter celebrates musical heritage - ウェイバックマシン(2017年6月7日アーカイブ分)(Cate, Matthew (January 15, 2002). "Tennessee quarter celebrates musical heritage". Scripps Howard Foundation Wire.)
  18. ^ University of Tennessee. “Tennessee Newspaper Digitization Project 1836-1922”. National Endowment for the Humanities. May 23, 2013閲覧。

関連項目

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外部リンク

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