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イナヒロハテンナンショウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イナヒロハテンナンショウ
長野県上伊那郡 2023年6月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae
: テンナンショウ属 Arisaema
: イナヒロハテンナンショウ
A. inaense
学名
Arisaema inaense (Seriz.) Seriz. ex K.Sasamura et J.Murata (2008)[1]
シノニム
  • Arisaema amurense Maxim. var. inaense Seriz. (1981)[2]
  • Arisaema ovale Nakai var. inaense (Seriz.) J.Murata (1986)[3]
和名
イナヒロハテンナンショウ(伊那広葉天南星)[4]

イナヒロハテンナンショウ(伊那広葉天南星、学名:Arisaema inaense)は、サトイモ科テンナンショウ属多年草[4][5][6][7]

は1個で、仏炎苞は葉より下につき、仏炎苞筒部にいちじるしく隆起する白色の縦状の条線が多数あって、仏炎苞舷部につづく。小型の株は雄花序をつけ、同一のものが大型になると雌花序または両性花序をつける雌雄偽異株で、雄株から雌株に完全に性転換する[5]

特徴

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地下の球茎には腋芽が単生して子球に発達し、中心から2方向に並ぶ。植物体の高さは25-50cmになる。偽茎部は葉柄部とほぼ同じ長さ、葉はふつう1個で、葉身は5-7個に分裂し、小葉間の葉軸はあまり発達しない。小葉は狭楕円形で、先端はとがり、縁は全縁になる。偽茎の開口部は襟状に波打つ[4][5][6][7]

花期は、5-6月、仏炎苞は葉の展開の後に開く。花序柄は短く、仏炎苞は葉身より下部につく。仏炎苞はやや緑色を帯びた淡紫褐色で、仏炎苞筒部にいちじるしく隆起する白色の縦状の条線が多数ある。仏炎苞口辺部は狭く開出し、仏炎苞舷部は倒卵形で立ち上がり、筒部の細くて平行な条線が続いて目立ち、舷部先端はとがり、舷部は筒部より長い。花序付属体は柄があり、太い棒状になって伸び、先端は淡紫褐色でやや頭状にふくらんで、仏炎苞筒部から短く突出する。果実は秋に赤く熟す。染色体数は2n=26[4][5][6][7]

分布と生育環境

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日本固有種中部地方長野県および岐阜県に分布し[8]、山地のブナ帯林下の沢沿いなどに生育する[7]。2021年には石川県で分布が確認された[9]

名前の由来

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和名イナヒロハテンナンショウは、木曽駒ヶ岳伊那谷側山麓で採集された標本に基づき、芹沢俊介スウェーデン語版 (1981) によって命名された[10]

種小名(種形容語)inaense も芹沢によるもの。芹沢は初め、本種をアムールテンナンショウ Arisaema amurense変種に位置づけられていたヒロハテンナンショウ A. amurense var. robustum(現、A. ovale)の姉妹群として、A. amurense var. inaense と命名した[10]。2008年には、K.Sasamura et J.Murata によってに階級移動され、A. inaense となった[11]

種の保全状況評価

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絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト

(2020年、環境省)

  • 長野県(2014年)絶滅危惧種IA類(CR)
  • 岐阜県(2015年)絶滅危惧種I類

[12]

2018年2月に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)による国内希少野生動植物種に指定された。環境大臣の許可を受けて学術研究等の目的で採取等をしようとする場合以外は、採取、損傷等は禁止されている。併せて、商業的に個体の繁殖をさせることができる特定第一種国内希少野生動植物種に指定された[13]

類似種

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ギャラリー

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脚注

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  1. ^ イナヒロハテンナンショウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ イナヒロハテンナンショウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ イナヒロハテンナンショウ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ a b c d 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.46
  5. ^ a b c d 邑田仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 (2018)、『日本産テンナンショウ属図鑑』pp.153-154
  6. ^ a b c 邑田仁(2015)「サトイモ科」『改訂新版 日本の野生植物 1』pp.97-98
  7. ^ a b c d 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.191
  8. ^ 『日本の固有植物』pp.176-179
  9. ^ 瀬野純一、「石川県新産のイナヒロハテンナンショウ(サトイモ科)とその特徴」, The Journal of Japanese Botany,『植物研究雑誌』,Vol.96, No.6, pp.348-351, (2021)
  10. ^ a b 芹沢俊介、「日本産テンナンショウ属の再検討(4):ヒロハテンナンショウ群とシコクヒロハテンナンショウ群」、『植物分類・地理』Acta Phytotaxonomica et Geobotanica, Vol.32, No.1-4, pp.22-30, (1981).
  11. ^ TOMIKI KOBAYASHI, KAZUYUKI SASAMURA, KUNIAKI WATANABE, JIN MURATA, “Arisaema inaense and A. nagiense, Two Diploid Species of the A. ovale Group (Araceae)”, Acta Phytotaxonomica et Geobotanica, Vol.59, Issue 1, pp.37-43, (2008)
  12. ^ イナヒロハテンナンショウ、日本のレッドデータ検索システム、2022年6月8日閲覧
  13. ^ a b 国内希少野生動植物種一覧2022、自然環境・生物多様性、環境省、2022年
  14. ^ ヒロハテンナンショウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  15. ^ 邑田仁(2015)「サトイモ科」『改訂新版 日本の野生植物 1』p.97
  16. ^ ナギヒロハテンナンショウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  17. ^ a b 邑田仁(2015)「サトイモ科」『改訂新版 日本の野生植物 1』p.98
  18. ^ ナギヒロハテンナンショウ、日本のレッドデータ検索システム、2022年6月8日閲覧
  19. ^ シコクヒロハテンナンショウ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  20. ^ シコクヒロハテンナンショウ、日本のレッドデータ検索システム、2022年6月8日閲覧

参考文献

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