アルゴールの城にて

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『アルゴールの城にて』(Au château d'Argol)は、 1938年に出版されたジュリアン・グラックJulien Gracq)長編小説。グラックの処女小説であり、アンドレ・ブルトンに激賞され、「シュルレアリスムの帰結点」と評された。

日本版初訳は、1956年に青柳瑞穂訳で(題は『アルゴオルの城』人文書院)、三島由紀夫らにも影響を与えた。

出版背景[編集]

この小説は、1937年に書かれたグラックの処女小説である。 最初にガリマール社に持ち込まれたが、出版を拒否された。 グラック(出版に際してこの筆名をつけた)は、ジョゼ・コルティ社に原稿を持ち込み、1938年1月に出版された。以後、グラックの全ての単行本は、ジョゼ・コルティ社から出版されることになる。

なお、本格的に本書が読まれるようになったのは、第二次世界大戦後、『陰鬱な美青年』や『シルトの岸辺』でグラックが作家としての地位を確立して以後のことだった。

あらすじ[編集]

本書は比較的短めの長編小説(ロマン)であり、アルベール、エルミニアン、ハイデの3人の登場人物の関係に焦点が当てられる。 ブルターニュにある神秘的なアルゴールの城を購入したアルベールは、親友のエルミニアンから訪問を受ける。エルミニアンは美しいハイデという女性を同伴していた。 やがて、パルジファルワーグナーオペラ)を背景にしながら、3人の登場人物の間に生まれた愛憎によって物語が展開していく。アルベールとハイデは宿命的に惹かれ、それを感じたエルミニアンは、ハイデを泉のそばで凌辱する。それをきっかけに、ハイデは服毒自殺し、一人城館を立ち去ろうとしたエルミニアンをアルベールは背後から短剣で突き刺すのだった。

参考文献[編集]