まつゆき型巡視艇

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まつゆき型巡視艇
海洋教室として活用されていた、PC42 たまゆき。2021年頃に撤去され現存しない。
海洋教室として活用されていた、PC42 たまゆき。2021年頃に撤去され現存しない。
基本情報
種別 23メートル型PC
運用者  海上保安庁
就役期間 1964年 - 1985年
前級 みねゆき型
次級 はまぎり型
要目
満載排水量 39.00トン
総トン数 64.00トン
全長 21.0 m
最大幅 5.10 m
深さ 2.60 m
吃水 0.95 m
主機 池貝-ベンツMB820Db
ディーゼルエンジン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 2,200馬力
速力 26.5ノット
航続距離 240海里
乗員 10名 (最大搭載人員)
兵装 ブローニングM2 12.7mm機銃×1挺
※一部艇
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まつゆき型巡視艇(まつゆきがたじゅんしてい、英語: Matsuyuki-class patrol craft)は、海上保安庁巡視艇の船級。区分上はPC型、公称船型は23メートル型[1][2]

来歴[編集]

海上保安庁の23メートル型PCは、マッカーサー書簡による追加建造分も含めて昭和25年度に大量建造されたはつなみ型では国内造船所各社で分担して建造したものの、独立回復後の「しののめ」以降は、いずれも墨田川造船と東造船所によって建造されてきた。これに対し、昭和38年度計画では、日立造船が新規に設計した高速巡視艇が建造されることになった。これが本型である[1][2]

設計[編集]

船型をレイズド・デッキ型とし、没水部船型をV型とするのは昭和33年度計画艇(「はなゆき」およびみねゆき型)と同様であるが、上記の経緯より、本型は線図から日立造船神奈川工場で新規に設計されている。最大の特徴が船質で、従来の23メートル型PCがいずれも木造艇であったのに対し、本型では、外板は台湾の二重張りだが、肋骨・縦通材・上甲板・隔壁・上部構造物をアルミニウム合金とする、いわゆるアル骨木皮構造を採用した[2]。これにより、同じ大きさの木造艇と比して、船体重量は約5トンの軽量化となっていた。なお昭和41年度計画艇より、機関室・舵取機室・前部居住区など底部構造を強化したことから、排水量は3トンの増加となったが、速力にはほとんど影響しなかった。また昭和42年度計画の7番艇より上部構造と配置を変更し、操舵室に海図室を組み入れて荒天時の乗員保護を図っていることから、これらをうみぎり型と区別することもある[1]

主機関としては、特130トン型PSあかぎ」と同型の池貝-ベンツMB820Dbディーゼルエンジン(単機出力1,100馬力)を搭載した。同機は国産高速ディーゼルエンジンとしては最も信頼性に優れ実用的であるとされており、25ノットの常用速力を達成した[2]。またこの機関構成では最低速力が10ノット近くという高速になってしまうことから、昭和41年度計画の5番艇よりスリップ運転装置が導入された[1]。ただしこのスリップ運転装置は、当時の技術では信頼性が充分でなく、実運用上はあまり使われなかったとされている[3]

同型船一覧[編集]

計画年度 # 船名 建造 竣工 解役
昭和38年度 PC-40 まつゆき 日立造船神奈川工場 1964年3月28日 1979年6月6日
昭和40年度 PC-41 しまゆき 1966年1月31日 1981年1月12日
PC-42 たまゆき 1966年2月7日 1981年1月9日
PC-43 はまゆき 1966年3月24日 1981年2月9日
昭和41年度 PC-44 やまゆき 1967年3月15日 1982年1月29日
PC-45 こまゆき 1982年1月23日
昭和42年度 PC-46 うみぎり 1968年3月15日 1983年1月31日
PC-47 あさぎり 1983年2月5日
昭和44年度 PC-49 さぎり 1970年3月31日 1985年1月22日
PC-50 せとぎり 1970年3月5日 1985年3月8日
PC-51 はやぎり 1985年2月8日

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d 徳永陽一郎、大塚至毅『海上保安庁 船艇と航空 (交通ブックス205)』成山堂書店、1995年、95-96頁。ISBN 4-425-77041-2 
  2. ^ a b c d 「海上保安庁全船艇史」『世界の艦船』第613号、海人社、2003年7月、94頁、NAID 40005855317 
  3. ^ 海上保安庁装備技術部船舶課計画係「海上保安庁の船艇ができるまで (特集 海上保安庁)」『世界の艦船』第628号、海人社、2004年7月、156-159頁、NAID 40006239106