RAS症候群
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RAS症候群(英: RAS syndrome)とは、頭字語などの略語や熟語を使うときに、元の言葉の一部である単語を重ねて使ってしまうことを指す。
概要[編集]
RASは「Redundant Acronym Syndrome」の略であるため、「RAS症候群」を直訳すると冗長頭字語症候群症候群となる。つまり、RAS症候群(Redundant Acronym Syndrome syndrome)という言葉自体、syndrome の頭文字Sと症候群が重複しており、ひとつの「症例」となっている。
RAS症候群という名称自体は2001年に『ニュー・サイエンティスト』誌で使われ、一般に広まった[1][2]。
日本語においては、外国語の文字と日本語の文字が混在することになるため、このような現象がさらに起こりやすい。特に、頭字語を多用するコンピュータ業界では数多く見られる。
例[編集]
太字が意味の重複した単語。
- BB弾 - Ball Bullet (由来が二種類有り Ball bearing の場合はRAS症候群ではない)。
- BMI指数 - Body Mass Index
- DCコミックス - Detective Comics
- DVDディスク - Digital Versatile Disc
- FTPプロトコル - File Transfer Protocol
- HAART療法 - Highly Active Anti-Retroviral Therapy
- HDDドライブ - Hard Disk Drive
- HIVウイルス - Human Immunodeficiency Virus
- HTML言語 - Hyper-Text Markup Language
- ISBN番号 - International Standard Book Number
- ITテスト - Integration Test
- IT技術 - Information Technology
- JIS規格 - Japanese Industrial Standards
- MMCカード - Multi Media Card
- PDFフォーマット - Portable Document Format
- RV車/SUV車 - Recreational Vehicle/Sport Utility Vehicle
RAS症候群の原因[編集]
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RAS症候群のような表現を人が使ってしまう原因としては、以下のようなものが考えられる。
- 円滑な意思疎通
- ある程度の冗語は、意思疎通を円滑にすると考えられる(あるいは、話し手がそう考える)。話し言葉での好例は、ABCをアルファ、ブラボー、チャーリーなどと発音する、無線通信などで使われる通話表(フォネティックコード)である。いくつかのRAS症候群は、冗長性の原則の構文上の例であると見なせるかもしれない。これらは、略語が持つ意味を明確にする働きを持っているとも考えられる。
- 語源を知らない
- 特に日本語で顕著であるが、外国語から入ってきた略語は、その省略の元となった語句の意味を考えないで使われることがあるため。
- 系列的派生語の存在
- 「HTTP」の例で言えば、「HTTPサーバ」、「HTTPクライアント」、などの一連の用語により、「HTTP」が、プロトコルを指す略語ではなく、あたかも独立した一連の関連したものを指す語のような感じがあるため、その伝で派生させてしまうと、それらのプロトコルは「HTTPプロトコル」ということになってしまう。
- 同格の語の有無
- 「JIS規格」の例では、「ISO規格」、「IEC規格」などとの釣り合いの点から、「JIS」ではなく冗長な「JIS規格」という表現が選好されるのではないかと思われる。「Y.S.C.C.横浜」はRAS症候群を避けるために「Y.S.C.C.」というクラブ名を用いるとJリーグのクラブ名のクラブ名称表記の方針に反する名称(日本語で地域名を入れる方針)に見えるおそれがあるためとみられる。
脚注[編集]
- ^ Newman, Stanley (December 20, 2008). "Sushi by any other name", Windsor Star, p. G4.
- ^ “Feedback” (fee required). New Scientist. (2001年4月7日). p. 108 2006年12月8日閲覧。