コンテンツにスキップ

Oyezプロジェクト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Oyez Projectから転送)
Oyez.org
URL www.oyez.org
言語 英語
ジャンル 合衆国最高裁判所の判例データベース
運営者 コーネル大学法情報学研究所英語版 (本部設置)、Justiaイリノイ工科大学シカゴ・ケント・ロースクール英語版 (3団体の共同運営)[1]
設立者 ジェリー・ゴールドマン (Jerry Goldman、米国政治学者)[2][3]
営利性 非営利[疑問点]
登録 不必要
現在の状態 現行
ライセンス
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの CC BY-NC 4.0 (著作権表示・非営利)[4]

The Oyez Project(オーイェイ・プロジェクト[注 1])または Oyez.org合衆国最高裁判所 (連邦最高裁) に関連する情報を収集・発信するアメリカ合衆国のアーカイブメディアである[1]。連邦最高裁では1955年10月より口頭弁論の音声記録を開始しており[6]、この音声ファイルとその書き起こしを全量オンライン公開していることでOyezは特に知られている[7][8]。2020年現在、14,000時間超の音声データと6,600万単語超の書き起こしを収録している[9]

"Oyez" のフレーズは商標登録されており、権利者名は Oyez, Inc. で登録されている。Oyezのウェブサイト上で公開された全てのコンテンツは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの「CC BY-NC 4.0」(要著作権者表示、非営利の場合のみ無許諾で全面使用可) で配布されている[4]

沿革

[編集]

活動を開始したのは1980年代であり[9]、米国政治研究を専門とするジェリー・ゴールドマン (Jerry Goldman)[2][3]が主導した。ゴールドマンはノースウェスタン大学の名誉教授 (2020年現在[2]) であり、Oyezの黎明期には同大学の学部生らが様々なアーカイブシステムの開発に勤しんだ[9]。その後、同大学のメンバーらによってウェブベースのシステムが構築されることとなった[9]。この開発初期段階でプロジェクトは "Oyez, Oyez, Oyez" と呼ばれていた[9]。これは合衆国裁判所保安官英語版が行う日々の審理開始を合図する掛け声に由来する[10]

このようにしてノースウェスタン大学内部で活動していたOyezであるが、2011年にはイリノイ工科大学シカゴ・ケント・ロースクール英語版に、そして2016年にはコーネル大学法情報学研究所英語版 (略称: LII) へと拠点を遷した[9]。2020年現在、Oyezはコーネル大学LII、Justia、およびイリノイ工科大学シカゴ・ケント・ロースクールの3団体によって共同運営されている[1]

そのほか、アメリカ国立科学財団から技術面で支援を、また全米人文科学基金から複数回に渡って資金面で助成を受けている[9]。さらにGoogle社からの助成により、2011年に合衆国最高裁の全データ収集を完了している[9]。2013年ごろにはiPhone向けモバイルアプリケーションをリリースした[3]

評価・批判

[編集]

Oyezは1998年、アメリカ法曹協会Silver Gavel Awards英語版を受賞した[11]

Oyezは2006年に国営メディアのボイス・オブ・アメリカ (VOA) 上で「今週のウェブサイト」として特集された[10]

2000年アメリカ合衆国大統領選挙フロリダ州得票数を巡る「ブッシュ対ゴア事件」では、Oyezの報じ方に疑問が呈されたことがある。Oyezはウェブサイト上で、9人の合衆国最高裁判事が7対2で「フロリダ州の投票を再計算すべきとのフロリダ州最高裁判決は違憲」と報じた[12]。しかし2007年、ワシントン大学政治学教授のScott Lemieuxは、"OYEZ: NOT TRUSTWORTHY?" (Oyezは信頼できない?) と題した批評をリベラル系政治オンラインメディアのThe American Prospect英語版に投稿し、Oyezの「7対2」とした表記を「ウソ」だと指摘している。9名の合衆国最高裁判事のうち、スティーブン・ブライヤー判事とデイヴィッド・スーター判事の2名はフロリダ州最高裁の判決に対して賛否両論であり、違憲7名にカウントすべきでないとLemieuxは主張している。"...Oyez, normally a valuable resource, is..." (Oyezは基本的には有益な情報源ではあるが...) とことわりを入れた上で、「7対2」でブッシュ支持との合衆国最高裁判決が右派 (つまりブッシュの所属する保守系の共和党支持者) によって繰り返し悪用されている点を問題指摘している[13]

注釈

[編集]
  1. ^ プロジェクト名としてのOyezの発音は "OH-yay" と公式表記されており、末尾の "z" は発音しない[1]。なお、Oyezの由来となった合衆国裁判所の審理開始の掛け声は、"o-yay" (オーイェイ)、"o-yez" (オーイエズ) のほか "o-yes" (オーイエス) と複数のバリエーションがある[5]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d About Oyez” [Oyezについて] (英語). Oyez. 2020年9月22日閲覧。
  2. ^ a b c JERRY GOLDMAN | Professor Emeritus” [ジェリー・ゴールドマン | 名誉教授] (英語). ノースウェスタン大学. 2020年9月22日閲覧。
  3. ^ a b c Once Under Wraps, Supreme Court Audio Trove Now Online” [埋もれていた最高裁の音声記録がオンライン公開へ] (英語). NRP (2013年4月24日). 2020年9月22日閲覧。
  4. ^ a b License” [ライセンス] (英語). Oyez. 2020年9月22日閲覧。
  5. ^ Frequently Asked Questions” [よくある質問] (英語). Oyez. 2003年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月22日閲覧。
  6. ^ Transcripts and Recordings of Oral Arguments (March 2018)” [口頭弁論の書き起こしと音声記録 (2018年3月)] (英語). 合衆国最高裁判所. 2020年9月22日閲覧。 “The Archives' collection contains audio recordings of Supreme Court oral arguments from 1955 through the immediately preceding October Term.”
  7. ^ U.S. Supreme Court Research” [合衆国最高裁に関する調査方法] (英語). サンフランシスコ大学ロースクール図書館. 2020年9月22日閲覧。
  8. ^ U.S. Supreme Court Oral Arguments: Online Sources for Supreme Court Oral Arguments” [アメリカ合衆国最高裁判所口頭弁論: 最高裁口頭弁論のオンライン情報源] (英語). コーネル大学図書館. 2020年9月22日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h The History of Oyez” [Oyezの沿革] (英語). Oyez. 2020年9月22日閲覧。
  10. ^ a b Website of the Week: Oyez Features Audio Recordings of US Supreme Court” [今週のウェブサイト: 合衆国最高裁の音声記録を扱うOyez]. VOA (2006年1月30日). 2012年1月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月22日閲覧。
  11. ^ Rawles, Lee (2017年7月1日). “Silver Gavel Awards have honored outstanding depictions of law in media for 60 years” (英語). ABA Journal. アメリカ法曹協会 (ABA). 2020年9月22日閲覧。
  12. ^ Bush v. Gore | 531 US 98 (2000)” (英語). Oyez. 2020年9月22日閲覧。 “Breyer, Thomas, Souter, Kennedy, Scalia, O'Connor, Rehnquistの7名が違憲、Ginsburg, Stevensの2名が合憲 (per curiam opinionによる)。”
  13. ^ Lemieux, Scott (2007年6月27日). “OYEZ: NOT TRUSTWORTHY?” [Oyezは信頼できない?] (英語). The American Prospect英語版. 2020年9月22日閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]