EMD SD40-2形ディーゼル機関車

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EMD SD40-2
ユニオン・パシフィック鉄道の3045号
基本情報
製造所 GM-EMDGMD
製造年 1972年 - 1986年
製造数 3,957両
主要諸元
軸配置 C-C
軌間 1,435 mm
全長 20.98 m
3.13 m
高さ 4.75 m
機関車重量 167 t
台車中心間距離 13.26 m
固定軸距 4.1 m
車輪径 1.02 m
燃料搭載量 12,000 - 15,100リットル
動力伝達方式 電気式
機関 EMD 645E3型
発電機 AR10型オルタネーター
主電動機 D77/78型直流駆動用モーター
歯車比 62:15
最高速度 105 km/h
出力 3,000馬力 (2,240kW)
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EMD SD40-2は、1972年1月から1986年2月の間にアメリカGM-EMDが製造した6動軸の電気式ディーゼル機関車である。

従来のSD40の発展形としてDash 2シリーズのコンセプトを取り入れており、モジュール化された電子式制御システムやHT-C形台車の採用など、数多くの改良が加えられている。車体形状はフード・ユニット、軸配置は3軸台車のC-C。搭載するディーゼルエンジンの出力は3,000馬力(2,240kW)である。

その経済性と信頼性の高さからアメリカ合衆国とカナダを中心に多くの鉄道会社が導入し、輸出車を含む約4000両が生産された。BNSF鉄道ユニオン・パシフィック鉄道(UP)、カナディアン・パシフィック鉄道(CP)などが特に多数の本形式を所有している。

解説[編集]

それまでアメリカには3,600 PS(2,680 kW)級のSD45SD45-2ゼネラル・エレクトリック(GE)製のU36B/Cアルコ製のC636といったディーゼル機関車が存在していた。しかし、これらの機関車は信頼性に難があり、1970年代のオイルショック以降は高出力故の経済性の悪さも問題視されるようになっていた。このため、高い信頼性と経済性を持ち合わせる機関車として開発されたのが本形式である。

運転台のないBユニットも改造により誕生しており、1980年代初期にバーリントン・ノーザン鉄道が事故からの復旧車として3両が運転台を撤去する改造を受けたほか、CPもノーフォーク・サザン鉄道(NS)から導入した従来車の運転台の窓を埋めたものを少数保有している。

後述のとおり輸出されたものも多数に上る。イギリス国鉄59形英語版は車体こそ両運転台・箱形車体で外観は全く異なるものの、機器類はSD40-2がベースとなっている。

車体[編集]

SD38-2、SD40-2、SD45-2の各型式で共通した台枠が使用されている。従来車でも同様にSD38SD39、SD40、SD45の各形式が共通の台枠であるが、Dash 2の各形式の台枠は従来車よりも約0.9m(3フィート)長く、連結器端部間長さは20.98m(68フィート10インチ)である。

上部構造は、同じ645E3型エンジンを使用するSD38-2と同じである。ロング・フードはSD38・SD40より18インチ(46cm)長いが、SD38-2とSD40-2は台枠が長いため、車体端部のポーチ(デッキ)が従前の車種よりも広くなっている。フード上のラジエターファンは3個であり、SD38-2より1個多くなっている。

台車はDash 2の6動軸車の標準となるHT-C型台車を採用しているが、コンレールの所有車については旧来のフレキシコイル台車を装備している。これは、HT-C型台車を装備したアムトラックSDP40F脱線事故が頻発したためである。

新製時の所有者[編集]

アメリカ合衆国
鉄道会社 両数 車両番号 備考
アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道(ATSF) 187 5020-5192, 5200-5213 大多数をBNSF鉄道が承継
イリノイ・セントラル・ガルフ鉄道(ICG) 4 6030-6033 6031号は6200号に改造。6033号は1994年2月6日ミシシッピ州フローラでの事故により廃車
オナイダ・アンド・ウェスタン鉄道
(Oneida and Western Railroad)
8 9950-9957 のちBCレール743-750に。749はGEトランスポーテーション・システム(GECX)749に。
カンザス・シティ・サザン鉄道(KCS) 46 637-692 637号はSD40-2の落成1号機
クリンチフィールド鉄道(CRR) 5 8127-8132 CSXトランスポーテーションが承継
ケネコット・ユタ・カッパー 7 101-107
コンレール 167 6358-6524 フレキシコイル台車装備
サザン鉄道(SOU) 128 3201-3328 ハイフード仕様。ノーフォーク・サザン鉄道が承継
シーボード・コースト・ライン鉄道(SCL) 54 8040-8066, 8087-8094, 8133-8161 CSXトランスポーテーションが承継
シカゴ・アンド・ノース・ウェスタン鉄道(CNW) 135 6801-6935 大多数をユニオン・パシフィック鉄道(UP)が承継
シカゴ・ロック・アイランド・アンド・パシフィック鉄道(IR) 10 4790-4799 のちICGの6040-6049に。6両はウィスコンシン・アンド・サザン鉄道が承継
スー・ライン鉄道(SOO) 57 757-789, 6600-6623 大多数をカナダ太平洋鉄道が承継
セント・ルイス・サンフランシスコ鉄道(SLSF) 8 950-957 BNSF鉄道が承継
ノーフォーク・アンド・ウェスタン鉄道(N&W) 162 1625-1652, 6073-6207 一部がハイフード仕様。ノーフォーク・サザン鉄道が承継
バーリントン・ノーザン鉄道(BN) 779 900-925, 930-961, 980, 996, 6325-6385, 6700-6799, 6824-6836, 6917-6928, 7000-7291, 7832-7940, 8000-8181 大多数をBNSF鉄道が承継
ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道(B&O) 20 7600-7619 CSXトランスポーテーションが承継
ミズーリ・カンザス・テキサス鉄道(MKT) 37 600-636 大多数をユニオン・パシフィック鉄道(UP)が承継
ミズーリ・パシフィック鉄道(MP) 306 790-838, 3139-3321, 6020-6073 大部分がダイナミック・ブレーキなし。一部がUPで、残る大部分はカナディアン・ナショナル鉄道(CR)が承継
ミルウォーキー鉄道(MILW) 90 21-30, 171-209, 3000-3040 各鉄道会社が承継
ユニオン・パシフィック鉄道(UP) 686 3123-3239, 3243-3304, 3335-3399, 3410-3583, 3609-3808, 8000-8002, 8035-8099 改番を経た継続使用機、リース契約終了機あり。3200-3410はボンネット部が長いスヌート・ノーズ仕様。
ルイビル・アンド・ナッシュビル鉄道(L&N) 191 1259-1278, 3554-3612, 8000-8039, 8067-8086, 8095-8126, 8133-8162 CSXトランスポーテーションが承継
カナダ
鉄道会社 両数 車両番号 備考
BCレール 17 751-767
アルゴマ・セントラル鉄道 6 183-188
オンタリオ・ノースランド鉄道 8 1730-1737
カナダ太平洋鉄道(CP) 484 5560, 5565-5879, 5900-6069
カナディアン・ナショナル鉄道(CN) 123 5241-5363 カナディアン・セーフティ・キャブを装備し、正面窓は4枚。SD40-2Wとされる。
ケベック・ノース・ショア・アンド・ラブラドール鉄道 44 221-264
輸出車
鉄道会社 両数 車両番号 備考
Boke Project (ギニア) 3 107-109
Ferrocarriles Unidos del Sureste (メキシコ) 4 601-604
メキシコ国鉄 (メキシコ) 103 8700-8798, 13001-13004
イギリス国鉄 (イギリス) 15 59001-005, 59101-104, 59201-206 (59形) 両運転台の欧州仕様。メーカー型式はJT26CWR-SS。メンディップ・レールEWSが運用。

派生形式[編集]

SD40T-2[編集]

SD40-2の冷却システムを変更したもので、屋根付近にあった吸気口を地面に近い高さにあるデッキ付近に移している。長大トンネルにおいて天井に溜まる排熱を吸い込まず、新鮮な空気を取り入れることができるよう配慮されている。サザン・パシフィック鉄道とその子会社2社が導入した。

SD40-2W[編集]

カナディアン・ナショナル鉄道の5321号。

SD40-2WはSD40-2のカナダ仕様である。製造はGMのカナダ子会社であったディーゼル・ディビジョン・オブ・ゼネラルモーターズ・オブ・カナダ(DDGM、現エレクトロ・モーティブ・カナダ)。オンタリオ州ロンドン工場で1975年5月から1980年12月までの間に123両が製造された。

SD40-2との相違点はカナディアン・コンフォート・キャブと呼ばれる運転室を採用したことで、外観ではショート・フードの幅が車幅と同じになっている。主要諸元に大きな変更はない。

改造車[編集]

América Latina Logística(ALL)のBB33-7MPの台車部分の拡大。

多数の車両が他形式へと改造された。ブラジルのFerrovia Central Atlantico(FCA、1,000mm軌間)で使用するために、8動軸のBB40-2に改造されたものもある。

逆に、SD40から本形式へと改造されたものもある。

関連項目[編集]