翼竜

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翼竜目
生息年代: 三畳紀後期–白亜紀後期, 220–65 Ma
ソルデスの復元図
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 翼竜上目 Pterosauromorpha
: 翼竜目 Pterosauria
学名
Pterosauria
Kaup1834
亜目

翼竜 (よくりゅう、: pterosaur[1], winged lizard, pterodactyl[2]、学名: Pterosauria) は、中生代に生息していた爬虫類の一目、翼竜目に属する動物の総称。初めて空を飛んだ脊椎動物である。

分類

爬虫類主竜類(主竜形類)に含まれる。なお、恐竜も主竜類に含まれるが、翼竜と恐竜は三畳紀中期(あるいはそれ以前)に分岐した別のグループである。しかし両者はラゴスクス類を共通祖先として持つ極めて近縁な動物群である(鳥頸類)。翼竜と鳥類との類縁関係は恐竜を経由した間接的なものであり、叔父と甥のようなものである。一般的には嘴口竜亜目翼指竜亜目の2群に分けられ、代表的な種としてはランフォリンクスプテラノドンケツァルコアトルスなどが知られている。2009年、両亜目の特徴をあわせもつ新種の翼竜ダルウィノプテルスが発見され、両亜目間の進化の謎を解くカギとして注目されている[3]

空の生態系における頂点に君臨した翼竜も魚竜首長竜、恐竜と同様に白亜紀末の大量絶滅からは逃れられず、絶滅した。

発見史

翼竜が最初に報告されたのは1784年、イタリア人博物学者コジモ・アレッサンドロ・コリーニによってであった。当初はその分類の帰属や生態にさまざまな説が飛び交い、哺乳類や水生動物であると考えられていたこともあるが、初めて翼竜が空を飛ぶ爬虫類だとしたのは、19世紀フランスの博物学者ジョルジュ・キュヴィエである。これまでに60以上の属が発見されている。

特徴

大きさは小鳥ぐらいの大きさから翼開長12メートルを超えるものまでさまざまである。どれも大きな頭部と翼、それに対して小さな胴体をもつ。長い尾を持つものも、全く尾を持たないものもある。

は膜構造であったと考えられている。つまり、長く伸びた前足の指によって薄い膜を広げているという、コウモリの翼に似た構造である。ただし、コウモリであれば親指以外の全ての指が膜を支えているのに対し、翼竜の翼は第4指(第5指は退化)と脚の間だけに膜が張っている。翼から独立している指の数が多かったのでコウモリよりずっと自由に物をつかめたはずだが、指1本だけで膜を支えた翼では飛行の自由さなどの点でコウモリには及ばないものであったと思われる。しかしその一方、飛膜には神経や筋肉が張り巡らされていたと思われる痕跡もあり、膜の形状を変化させることにより高度な飛行制御を行えた可能性も指摘されている。また、歩行や地上活動に関しては後述するように鳥類には大きく劣っていたが、足跡の研究からは翼竜が蹠行性の四足歩行をしており、地上でははい回ることしかできないコウモリより地上適応性が高かったことが示唆されている。背心骨を有している。

体重は非常に軽く、翼開長12メートルに及ぶケツァルコアトルスでも70キログラムほどだったとみられる。

飛行などについて

「十分はばたけるだけの筋肉は持たなかったのではないか」、「翼が膜構造であるために嵐などの強風の中では翼が破れて飛行出来なかったのではないか」という説もある。しかし、その後の研究で全く羽ばたかなかったという説はほぼ否定され、現生の鳥類から見ても大型種は滑空が主だが多少なりとも羽ばたいたことは間違いないと考えられている[4]

上記の体重も含めて、骨格構造は飛行のために特殊化しており、陸上生活への適応は低く、鳥類のような活発な歩行などはほとんどできなかったとされている。歩行姿勢は、前肢も使っての四足歩行であった可能性が高いことが近年の研究で判明しつつある(嘴口竜亜目#生態の項も参照)。 飛行制御を行うだけの高度な知能や、それだけの脳を使うために内温性(恒温動物)であったことや体温を維持する羽毛を持っていた可能性などが指摘されている。

ラゴスクス類から翼竜への進化の中途過程を示す発見は未だなされておらず、最古の翼竜化石は既に翼竜としての特徴を備えていたため、その起源には謎が多い。そんな中2020年に内耳の研究に基づき、ラゲルペトン(やその近縁種)が翼竜の祖先筋だったとする仮説が提唱された[5]三畳紀からジュラ紀にかけてはランフォリンクスなど、小型で尾の長い嘴口竜亜目に属するものが多かったが、嘴口竜亜目はジュラ紀末に多くが絶滅し、衰退(最後の化石記録は以前はジュラ紀末期までだったが、白亜紀前期のものも僅かだが発見されるようになった)。白亜紀後期にはプテラノドンやケツァルコアトルスなど大型で尾の短い翼指竜亜目に属するものばかりになった(翼指竜亜目は嘴口竜亜目からジュラ紀後期に進化し、白亜紀前期にかけては多様性の頂点を迎えて小型の種も多かったが、後期にはその多様性を減少させていた)。この頃には鳥類が飛行を始めていたようなので、小型種は鳥類との競争に敗れ、異なるニッチにある大型種が残ったとも言われている。

分類体系

おもな属

プテラノドン
ランフォリンクス Rhamphorhynchus
ジュラ紀に出現した。長い尾の先が菱形になっていたが、これは飛行時にの役割をしたのではないかとする説がある。翼開長は最大175センチメートル。
プテロダクティルス Pterodactylus
ジュラ紀に出現した。翼開長は50 - 75センチメートルほど。
プテラノドン Pteranodon
白亜紀北アメリカに出現した。翼開長は7~9メートルにも及ぶ大型の翼竜で、大きなくちばしをもち、頭部の後ろにも大きな突起がある。
ケツァルコアトルス Quetzalcoatlus
白亜紀の北アメリカに出現した。翼開長は10メートルを超え、目下空を飛んだ最大の動物とされている。属名はアステカ神話のケツァルコアトルに由来する。

脚注

  1. ^ /ˈtɛɹəˌsɔɹ/
  2. ^ /tèrədˈæktl/
  3. ^ 天宮陽史 2013, p. 110.
  4. ^ 天宮陽史 2013, p. 111.
  5. ^ 『翼竜につながる特徴 三畳紀の二足歩行爬虫類―国際チーム』 (2020:JIJI.COM)

参考文献

  • 天宮陽史、スペース探査室 編 編『宇宙137億年の謎が2時間でわかる本 宇宙はこうして宇宙になった!』河出書房新社〈KAWADE夢文庫〉、2013年。ISBN 978-4309498706 

関連項目