フローリング

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フローリング床
アジアンウォルナットの定尺幅広無垢板を使った床

フローリングフロアリングflooring)とは、主に木質系材料からなる床板で表面加工などの加工を施したもの[1]。ただし英語の flooring は単に『床材』という意味であり、リノリウムや和室のも英語では flooring である。

歴史

1913年北海道から主としてヨーロッパに輸出されたナラ材の端材を処理するため製造が始まったとされる。

種類と規格

ISO

国際標準化機構(ISO)には十数種のフローリングに関する規格がある[1]

  • ISO631:1975 Mosaic parquet panels - General characteristics[1]
  • ISO1072:1975 Solid wood parquet - General characteristics[1]
  • ISO1324:1985 Solid wood parquet - Classification of oak strips[1]
  • ISO2036:1976 Wood for manufacture of wood flooring - Symbols for mark ing according to species[1]

など

JAS

日本農林規格(JAS)では単層フローリングと複合フローリングに分類される[1]

単層フローリング 

凹凸のついた実材

単層フローリングとはひき板を基材とする構成層が1(単層)のフローリングをいう(ただし、裏面に防湿・不陸緩和を目的として積層材料を接着したものを含む)[1]。単層フローリングは、さらにフローリングボード(根太張用又は直張用)、フローリングブロック(直張用)、モザイクパーケット(直張用)に分類される[1]

住宅において一般的なフローリングはフローリングボードであり、主として無垢フローリングを指す。原木を切断加工したのみのいわゆる「無垢材」を継いで用いるのが一般的である。

フローリングホードのうち根太張用のものは側面加工として「さねはぎ加工」を施す[1]。小幅の長尺材を、一方の側面が凸、他方の側面が凹になった本実(ほんざね)加工とし、これを多数噛み合わせて床全体を隙間無く覆う。これを実矧ぎ(さねはぎ)ないし実継ぎ(さねつぎ)と称する。

フローリングホードのうち根太張用以外のものは側面加工として「あいじゃくり加工」を施す[1]

複合フローリング 

複合フローリングの施工

単層フローリング以外のフローリングで根太張や直張に用いられるフローリングをいう[1]

一層以上の基材の表面に、0.3~2mm程度の厚さの化粧加工用の木材を張ったもの。加工材の普及に伴い、施工が増加しており、一般的な住宅の主流となっている。

基材には合板を用いることが多いが、集成材、単板積層材中密度繊維板をはじめとするファイバーボードなど多様な材料が用いられている。さらにマンションでの階下への遮音性能を高めるため、基材の下にゴム・ウレタン等のクッション材を貼り付けた「遮音フローリング」も存在する。基材にスリットが入っているため、上に乗った際に床が沈み込むのが特徴である。施工後暫くは、曲りに木が馴染むまで音鳴りする事がある。

化粧加工については、無垢材の突板を張り合わせることもあるが、床材としての耐久性を保つため、WPC(プラスティックと混成した木材)をはじめとする特殊加工化粧材が用いられることも多い。

複合フローリングの規格では根太張用で厚さが21mm以下のものは「さねはぎ加工」を側面に施すこととされている[1]

狂いが無垢材と比較すると少なく、施工・メンテナンス・取り扱いも無垢材に比べると容易。多くは塗装されており、カラーバリエーションも豊富。(但し、表層を越える傷が付いた場合、見た目が極端に悪くなる。)

床暖房の表面に張る場合は、表面塗装や含水率が一般のものと異なる。電気式の床暖房構造を内蔵した製品もある。

製品単体形状上の分類

定尺フローリング
規定の長さで統一したフローリング。複合フローリング・WPC床材では大半を占める。長さ・幅はメーカー・製品により多様。
乱尺フローリング
一片の長さが様々なフローリング。無垢材が殆ど。幅はメーカー・製品により多様。

無垢フローリング

楢無垢材の定尺フロア(150mm×1820mm)
欧州パインの無垢材フロア。幅広長尺(150mm×4000mm)

合板を使用せず、原木を切断加工したのみのいわゆる「無垢材」を用いたフローリングで、日本農林規格の分類上は単層フローリングである。自然志向・高級志向のクライアントに人気がある。

樹種
長さ
  • 広葉樹のフローリングは、1枚の長さが1820mmのものが多い。
  • 針葉樹のフローリングは、1枚の長さが4000mm程度のものが多い。
幅は様々であるが、幅が広くなるほど材料が揃えにくくなるため、高額になる傾向にある。
厚さ
厚さは15mmが一般的であるが、針葉樹では30mmのものも流通している。
ジョイント
継ぎ手のない完全な無垢材一枚ものをOPC、縦方向に3~5枚程度の板を継いだものをUNI、縦横に継ぎ手のある集成材のように見えるタイプをFJLと呼ぶ[2]。いずれも単層フローリングであり、無垢フローリングである。パインなどの針葉樹はまっすぐな植林材を利用するため、流通しているのはOPCがほとんどだが、ナラチークなどの広葉樹では、もっとも流通しているものはUNIタイプで、良材が必要となる一枚もの(OPC)は高価で、流通量も少ない。
表面処理
  • 広葉樹のフローリングの場合、表面に樹脂系塗料(ウレタン等)やオイルステイン(自然塗料)が塗布されている製品が多い。無塗装のものも流通している。
  • 針葉樹のフローリングは、基本的に無塗装で流通しており、現場でオイルステインや天然ワックス等を塗布することが多い。
  • 塗装とは別に、表面に焼きを入れたり、ナグリや浮造風の凸凹処理を施して味わいを出すこともある。
経年変化
無垢ならではの風合いがあり、経年変化によってより深い趣を演出できる。一方で、寒暖や乾湿などの影響を受けやすく、変形しやすい。住宅の温度や湿度管理によっては実材間での隙間や不陸が生じたり、突き上げや音鳴りが生じたりすることも多い。
施工
膨張による突き上げを防止するため、施工時に0.5m程度のパッキンを噛ませながら、隙間を開けて施工する場合がある。これを「目透かし(スペーサー)」と称する。
隙間
天然無垢材は湿度等による材の伸縮が大きく、乾燥すると隙間ができやすい。

ラミネートフローリング

日本国外ではラミネートフローリング(Laminate Flooring)と呼ばれる釘・接着剤を使用せず、サネを嚙合わせて並べて置いていくタイプのフローリングが一般消費者のDIY市場に流通しており、日本でも業者向けにではあるが徐々に浸透してきている。日本で流通しているラミネートフローリングの表面は酸化アルミニウムでコーティングしてあり、基材は高密度繊維板であるものが多い。

縁甲板

縁甲板を使った客車

フローリングに酷似した床材として「縁甲板」がある。ともに細長く加工した長尺板を実矧ぎで張り合わせたもので、厳密に両者を区分することは不可能であるが、両者が使用された時期、使用場所、仕上げ程度などは完全に断絶しているため、両者が混同されることは全くと言っていいほどない。

縁甲板は、廊下や縁側などの住宅の板の間に使用されたほか、明治以後に洋風建築が普及するにつれ、洋間の床材として用いられるようになった。安価に広い面積に施工できるため、体育館、公会堂、演芸場、病院、学校、事務所、駅舎など多くの建築物の床に盛んに用いられた。

素材はスギ、マツ、ヒノキなどが多く、一般的には根太材に直接釘で打ち付けられるため、実材の上に釘の頭がはっきり見える場合も多い。仕上げは鉋がけ、紙やすりがけなどがあり、上に塗料が塗られることがあるが、総じて安価な仕上げであり、フローリングのように美観・耐久性を重んじた仕上げがされることは多くない。

戦後、重化学工業が発展し、ビニル床シートやビニル床タイルが普及するにつれて、競合する縁甲板はすたれていった。ちょうど同じ時期に洋間中心の住宅が増加し、フローリングが普及していったとのは対照的である。

施工

日本農林規格は、フローリングの工法を根太張と直張に分類する。

根太張

フローリング材を床組を構成する根太の上に直接貼り付ける工法である。釘打により貼り付けることが一般的だが、最近では接着剤を併用する場合が多い。釘打工法は、下地により根太(ねだ)工法と捨張工法がある。

直張

フローリング材を接着剤のみで下地に施工する方法である。下地がモルタル面や捨て張りされている場合等、下地が平面で、強度を有する場合でないと用いえない。一般的には直貼り専用のフローリング材が用いられる。コンクリート建造物等の躯体床面に強度がある場合、根太や各種下地工法を省く事ができる。

体育館等、強度が求められる場合、鋼製床組上に下地材を捨て張りした後に直張を行うのが一般的。多くは、無垢材を用いビス止め→ダボを打ち→研磨→塗装の工程を採る工法を採る。

並べ方

定尺張
定尺の材料を用い、決まった長さに加工した「張り出し」を作り、その繰り返しで張る。
例1:900mmの材料で、900mm・675mm・450mm・225mmの張りだしを作り、順に並べ、その繰り返しで張る張り方。(定尺階段張り(4段))
例2:900mmの材料を450mm・900mmの張りだしを作り、順に並べ、その繰り返しで張る張り方。(レンガ張り)
乱尺張
定尺の材料をランダムな長さに加工した「張り出し」を作り、張る。階段状に張る場合もある(乱尺階段張)。乱尺の材料の場合必然的に乱尺張りになる。
網代張
網代編状に定尺フローリングを並べる。
その他
  • 複数の幅の材料を用いて張る。(列毎に幅の違うものを張る)
  • ヘリンボーン(Herringbone pattern)、魚のウロコ状の模様。ヘリンボーン張りが出来るのは、交互に凸凹サネ加工がされているヘリンボーン張り専用の製品に限られる。
  • 塗装品で、違った色合いの製品、複数色で張る。(ランダム・ポイント・ライン等)

保守

住戸におけるフローリングは住民が日々最も接触している部分であることから、設計段階から住民の生活を考慮し、使用される材質(種別)から施工方法までを選択する必要がある。また、メンテナンスによっても後々の状態を左右する事を認識し使用する事が必要である。

  • 水拭きは極力避ける。木材なので水には弱い。
  • 木材なので当然傷が生じる(材質によっては爪より柔らかい)。傷が気になる場合はカーペットを敷いたり家具の下にクッション材を付けたりする必要がある。
ワックスがけ
一部のフローリングでは、表面保護と将来的な見た目のため、最低でも数年に1回はワックス掛けが推奨される。無垢フローリングの場合は合成ワックスは推奨されない。またラミネートフローリングはワックス不要である。ワックスがけについては、フローリングのメーカーに確認したほうが良い。

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 資料2 日本農林規格の見直しについて「フローリング」”. 農林水産省. 2018年11月17日閲覧。
  2. ^ 無垢フローリングでUNIとはなんですか?”. 大利木材株式会社. 2015年12月10日閲覧。

関連項目