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定年退食

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定年退食』(ていねんたいしょく)は、藤子・F・不二雄読切漫画作品。1973年(昭和48年)『ビッグコミックオリジナル』(小学館)9月5日号に掲載された[1]高齢化社会を取り扱った作品。

米澤嘉博SF映画ソイレント・グリーン』との共通性を指摘している[2]

2023年にNHK BSプレミアムBS4Kで放映される『藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ』の一遍としてドラマ化される[3][4][5]#ドラマ版参照。

ストーリー

高齢者の人口比が増大した近未来の社会。国家は広がり続ける汚染地域[注 1]による食料不足、医療供給、年金給付の問題にあえいでいた。政府は配給制度を中心に食料や医療制度の厳格な管理をする一方、定員法を制定して一定年齢以上の高齢者は国家の保障を打ち切っていた。

主人公の老人は、まもなく定年法の2次定年を迎える年齢であった。友人の吹山は、「定年延長の申込書にで印をつけると、抽選に当選できる」という噂を主人公に吹き込む。一笑に付す主人公だが、吹山と共に区役所に申請に向かった彼もまた、ひそかに申込書に爪で印をつけた。帰宅後、2次定年延長の当選発表があるまで、主人公はテレビを見たり、庭の小鳥のロボットを修理したりして過ごす。

夕方になり2次定年延長の当選者が発表されたが、主人公の番号は掲載されていない。主人公はいてもいられず区役所に向かい、何かの間違いではないかと窓口に詰め寄るが、隣の窓口では吹山が激高していた。吹山をなだめる主人公だが、そこへ奈良山首相の緊急演説が始まる。奈良山首相は、定年の引き下げと定年延長の縮小を宣言する。

翌日、外出する主人公だが、カードの期限が切れているためロボットにも対応されない。公園のベンチで吹山は相変わらず噂を話すが、そこへ吹山の孫が席を譲るよう迫る。立腹する吹山に、主人公はこの世界に自分たちの席が無いことを諭すのだった。

登場人物

安彦
まもなく2次定年を迎える老人。毎日老化防止のために塩コーヒーを飲んでいる[注 2]ほか、料理の一部を保存する「節食」をするなど、非常に健康に気を遣っている。
吹山
主人公の友人。主人公にあてにならないをたびたび持ちかけてくる。彼もまもなく2次定年を迎えるため、2次定年の延長を求めている[注 3]
疑り深い一面もあり、2次定年特別延長抽選の不正を糾弾しようと役所の職員に詰め寄るシーンもある[6]
吹山の孫
流行の丸刈り[注 4]を行っている。この時代ではを伸ばすことが普通であり、頭を刈った者は「無髪族」と呼ばれており、それは体制への反抗の意志でもあるらしい。
奈良山首相
急速な扶養能力の低下に伴い、自分たちの未来でもあるという事実を交えながら、定員法の更なる縮小を宣告する。

ドラマ版

藤子・F・不二雄 SF短編ドラマの1作としてドラマ化された。

出演[3][4][5]

出演する加藤は、本作を現代版「楢山節考」と評すると共に、ドラマ化の50年前にこの未来を見通してた藤子を評している[4]。加藤の弁では、真面目な役でのドラマ主演は初めてとのこと[4]。また、旧友でもある井上との共演を喜んでいる[4]

影響が指摘される作品

  • 「定年忌」 - 平山夢明の短編小説。短編集『他人事』(2010年、集英社文庫)収録。「高齢者に対する国の保障などがなくなった日本」という本作に類似した設定の作品であり、よりブラックジョーク的な作品[8]
  • 「TEMPEST」 - 浅野いにおの短編漫画。短編集『浅野いにお短編集 ばけものれっちゃん/きのこたけのこ』(2018年、小学館)収録。あとがきにて浅野自身が本作についても触れている[9]

脚注

  1. ^ 要因は登場しないが、作中のテレビでは配給する食料への満腹剤などの各種薬剤の添加や、養殖されたトンボ放流が報じられている。
  2. ^ 3頁目で「塩を入れると塩基カフェロイドが出来て、老化防止に役立つ」と語っているが、下記の吹山から聞いた話と言うことで、家族に「あの人の言うことじゃね」と一笑に付されている。
  3. ^ 7頁目で「毎月申し込んでこれが12回め、最後のチャンス」と言っており、誕生日が近いことを示唆しているが、主人公同様明確な年齢描写は無い。
  4. ^ ドラマ版では短髪になっている。

出典

  1. ^ 文庫版「藤子・F・不二雄異色短編集2」収録。
  2. ^ 米沢嘉博「第11章 F、SFプロパーへの道」『藤子不二雄論』河出書房新社河出文庫〉、2014年。ISBN 978-4309412825 
  3. ^ a b “藤子・F・不二雄さんのSF短編漫画10作品が実写ドラマ化 NHKで来春放送”. 北國新聞. (2022年12月9日). https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/933364 2022年12月9日閲覧。 
  4. ^ a b c d e 藤子・F・不二雄のSF短編が実写ドラマ化、キャストに塚地、加藤茶、又吉”. お笑いナタリー (2022年12月9日). 2022年12月9日閲覧。
  5. ^ a b c 藤子・F・不二雄のSF短編マンガがNHKで実写ドラマ化、「流血鬼」など10作品”. コミックナタリー (2022年12月9日). 2022年12月9日閲覧。
  6. ^ 15頁目。
  7. ^ 岡崎体育 藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ「テレパ椎」に出演決定!”. ソニー・ミュージックアーティスツ (2022年12月9日). 2022年12月10日閲覧。
  8. ^ 後味の悪い小説~救いのなさと恐怖。この「毒」は、癖になる~”. THE21オンライン(PHP研究所 (2020年9月3日). 2022年12月9日閲覧。
  9. ^ 前田隆弘 (2019年7月19日). “老後2000万時代に読む藤子F「定年退食」、そして浅野いにお「TEMPEST」”. マンバ. 2022年12月10日閲覧。