4-クロロアニリン

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4-クロロアニリン
4-Chloroaniline
識別情報
CAS登録番号 106-47-8 チェック
PubChem 7812
ChemSpider 7524 チェック
KEGG C14450 チェック
ChEMBL CHEMBL15888 ×
特性
化学式 C6H6ClN
モル質量 127.57154 g/mol
外観 無色ないし琥珀色の結晶性固体[1]
匂い 軽い芳香[1]
密度 1.43 g·cm−3
融点

72.5 °C, 346 K, 163 °F

沸点

232 °C, 505 K, 450 °F

への溶解度 3,900mg/L[2]
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
主な危険性 メトヘモグロビン血症の誘発[1]
引火点 113°C
発火点 685°C[3]
半数致死量 LD50 300-420mg/kg(ラット、経口)[1]
関連する物質
関連物質 2-クロロアニリン
3-クロロアニリン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

4-クロロアニリン: 4-Chloroaniline)は、アニリンのベンゼン環の4位の水素塩素に置き換わった有機化合物で、化学式はClC6H4NH2パラクロロアニリン: p-Chloroaniline、略称PCA)とも呼ばれる。

製法[編集]

通常はアニリンの塩素化ではなく、クロロベンゼンニトロ化して得た4-ニトロクロロベンゼン水素化することによって製造される[4]

用途[編集]

農薬、アゾ染料顔料化粧品医薬品などの製造中間体[1]樹脂架橋剤として[2]幅広く使用される。

代謝[編集]

PCAは皮膚から速やかに吸収され、主に以下の経路で代謝される。

  • o-位でのC-ヒドロキシ化により、2-アミノ-5-クロロフェノールが生じる。その後硫酸抱合を受け、硫酸2-アミノ-5-クロロフェニルとなり、そのまま排泄されるか、さらにN-アセチル化を経て硫酸N-アセチル-2-アミノ-5-クロロフェニルになり排泄される。
  • N-アセチル化により、主として血中で4-クロロアセトアニリドになり、4-クロログリコールアニリドを経て、尿中で4-クロロオキサニル酸となる。
  • N-酸化によって4-クロロフェニルヒドロキシアミンになり、さらに赤血球中で4-クロロニトロソベンゼンになる。

ヒトをはじめとする動物では、主に尿により排出される。PCAおよびその抱合体はは曝露後30分で検出され、72時間で排泄はほぼ完了する。代謝物はヘモグロビンおよび肝臓腎臓タンパク質に結合する。反復曝露によりチアノーゼおよびメトヘモグロビン血症を引き起こす。次いで、肝臓・腎臓・脾臓に、ヘモジデリン沈着などの影響を生じる。動物実験では、雄ラットに脾臓の線維肉腫および骨肉腫、雌ラットには脾腫瘍の前がん状態、雄マウスには、肝細胞がんと血管肉腫が確認された。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 国際化学物質簡潔評価文書 (PDF)
  2. ^ a b 化学物質の環境リスク評価 第2巻 (PDF)環境省
  3. ^ 国際化学物質安全性カード
  4. ^ Gerald Booth (2007). "Nitro Compounds, Aromatic". In: Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, John Wiley & Sons: New York, doi:10.1002/14356007.a17_411