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オジギソウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オジギソウ
オジギソウ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : ネムノキ亜科 Mimosoideae
: オジギソウ属 Mimosa
: オジギソウ M. pudica
学名
Mimosa pudica L.
和名
オジギソウ/ネムリグサ
英名
sensitive plant

オジギソウ(お辞儀草、含羞草、学名Mimosa pudica)は、マメ科ネムノキ亜科[注 1]の植物の一種。別名はネムリグサ(眠り草)、ミモザ

なお、ミモザは本来オジギソウの学名に由来する植物名であるが、日本語ではほぼアカシア類の花を呼ぶ名としてのみ使われており、本来は誤用である。種小名のpudicaは、ラテン語で「内気な」を意味する。

分布

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南アメリカ原産で、世界中に帰化している[1]。日本では沖縄で帰化植物として野外で繁殖しており[1]、江戸時代後期にオランダ船によって日本へ持ち込まれたといわれている。

特徴

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茎は木質化し、基部はやや横に這い、先端は斜めに立ち上がる。茎には多くの逆棘があり、節ごとに葉を出す。葉は偶数二回羽状複葉であるが、羽状に小羽片を並べた小葉が四枚、葉柄の先端にやや集まってつく特徴がある。

本来は多年草であるが、耐寒性が低いため日本の園芸では一年草扱いにすることが多い。5月頃に種子を蒔くと、7-10月頃にピンクの花が開花する。背丈は高くならないが、棘が多いのでやっかいである。

花粉は風や蜂などによって媒介される[2]

葉は、天敵によって傷付けられた際、水分の蒸発防止、昼夜の就眠運動によって開閉する[2]

運動

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葉が閉じる様子のビデオクリップ
内側に閉じるオジギソウの葉

葉は偶数羽状複葉で、接触、熱、風、振動といった刺激によって小葉が先端から1枚ずつ順番に閉じ、最後に葉全体がやや下向きに垂れ下がる。この一連の運動は、見る見るうちに数秒で行なわれる。この運動は、特定の部位の細胞が膨圧(細胞の液胞中の水やその他の含有物によって細胞壁にかかる力)を失うことによって起こる。このような運動を接触傾性運動英語版と呼ぶ[3]

オジギソウが刺激されると茎の特定部位が刺激され、カルシウムイオンを含む化学物質が放出される。この化学物質が葉の付け根の葉枕に到達すると0.1秒後に葉が運動する[4]。カリウムイオンは液胞から水を排出させ、水は細胞外に拡散する。これによって細胞の圧が失われて収縮し、この異なる部位間での膨圧の差によって葉が閉じ、葉柄が収縮する。このような特徴は、マメ科ネムノキ亜科内で極めて一般的である。刺激は近くの葉にも伝達される。

再度、葉が開くには閉じてから30分程度かかる[2]

なぜオジギソウがこの特性を進化させたのかは不明である。

他のネムノキ類同様に、葉は夜間になると葉を閉じて垂れ下がる[5]。これを就眠運動という。

2022年、埼玉大学などの研究チームは、葉が動いておじぎをする意義はバッタの食害への防御であるとつきとめた[6][4]

化学成分

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毒性アルカロイドミモシンを含む。ミモシンは抗増殖効果やアポトーシス誘導作用を示すことが明らかにされている[7]。抽出物は糞線虫英語版 (Strongyloides stercoralis) のフィラリア型幼虫を1時間以内に動かなくする[8]。根の水抽出物は、タイコブラ英語版 (Naja Kaouthia) の毒の致死性に対して顕著な中和効果を示した[9]。コブラの毒の筋毒性と酵素活性を阻害していると考えられる。

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七『日本帰化植物写真図鑑 Plant invader 600種』全国農村教育協会、2001年7月26日。ISBN 4-88137-085-5  p.152
  2. ^ a b c NParks”. www.nparks.gov.sg. ナショナル・パークス・ボード英語版(シンガポール国立公園局). 2023年3月17日閲覧。
  3. ^ Kanzawa Lab”. www.mls.sophia.ac.jp. 上智大学神澤研HP. 2023年3月17日閲覧。
  4. ^ a b オジギソウは、どのようにして、何のために葉を動かすのか? -「光る」「おじぎをしない」オジギソウを用いて、虫害防御高速運動を解明-”. 埼玉大学 www.saitama-u.ac.jp. 2023年3月17日閲覧。
  5. ^ Raven, Peter H.; Evert, Ray F.; Eichhorn, Susan E. (January 2005). “Section 6. Physiology of Seed Plants: 29. Plant Nutrition and Soils”. Biology of Plants (7th ed.). New York: W. H. Freeman and Company. p. 639. ISBN 978-0-7167-1007-3. LCCN 2004-53303. OCLC 56051064. https://books.google.co.jp/books?id=8tz2aB1-jb4C&pg=PA58&redir_esc=y&hl=ja 
  6. ^ (ぶらっとラボ)オジギの力で、無礼な虫退散:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞. 2023年1月23日閲覧。
  7. ^ Antiproliferative effect of mimosine in ovarian cancer”. Journal of Clinical Oncology. 2010年1月13日閲覧。
  8. ^ Robinson RD, Williams LA, Lindo JF, Terry SI, Mansingh A (1990). “Inactivation of strongyloides stercoralis filariform larvae in vitro by six Jamaican plant extracts and three commercial anthelmintics”. West Indian Medical Journal 39 (4): 213–217. PMID 2082565. 
  9. ^ Monimala Mahanta, Ashis Kumar Mukherjee (2001). “Neutralisation of lethality, myotoxicity and toxic enzymes of Naja kaouthia venom by Mimosa pudica root extracts”. Journal of Ethnopharmacology 75 (1): 55–60. doi:10.1016/S0378-8741(00)00373-1. PMID 11282444. 

関連項目

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