電話恐怖症

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電話恐怖症(でんわきょうふしょう、英語telephonophobia(テレフォノフォビア)、telephobiaPhone Phobia)は、電話をかけるまたは取ることを嫌悪したり恐れたりするいわゆる「電話恐怖」を指す[1]。電話恐怖症は社交恐怖または社交不安の一種と考えられており[1]、聴衆との関わりに関連し批判や判断または笑いものにされることに関連する恐怖から生じるという点で共通するスピーチ恐怖症と比較され得る[2]

他の恐怖や恐怖症によく見られるように、電話での会話やそれに対応する困難に対する恐怖の深刻さは広範囲に及ぶ[1]。1993年には、英国の約250万人が電話恐怖症にかかっていることが報告された[3]。英国のオフィスワーカーを対象にした2019年の調査ではベビーブーマーの40%、ミレニアル世代の70%が電話が鳴ると不安を覚えると明らかになった[4]

「電話不安」(telephone apprehension)という用語は軽度の電話恐怖症を指し、患者は電話の使用に不安を感じるが実際の恐怖症ほど深刻ではない[5]

電話恐怖症に苦しんでいる人は、面と向かっての会話は問題ない場合があるが電話越しに行うのは困難である。

原因[編集]

電話を受けることへの恐怖は、電話への応答や行動への恐怖や実際の呼び出し音への恐怖と多岐にわたる。電話の呼び出し音は喋る、演じる、意見を交わす必要があることに関連する思考を特徴とする一連の不安を生み出す可能性がある[2][6]。患者は相手方を脅迫的または威圧的と認識する場合がある[7]。不安は、発信者が悪いまたは動揺する知らせを伝える可能性もしくは発信者が迷惑電話主の可能性の懸念によって引き起こされる場合がある。

電話をかけることへの恐怖は、迷惑になることを恐れて電話をかける適切な時間を見つけることへの懸念と関連する可能性がある[6]。数人を知っている家庭やオフィスに電話をかける患者は、応答した人の声が誰かを認識できず、結果的に恥ずかしい思いをするかもしれないと心配するかもしれない[6]。一部の患者は、現実または電話の向こう側の認識上の聴衆の前で「演技」しなければならないことを心配する場合がある。これは職場で電話を使用する必要がある人にとって特に問題となる[6]

あらゆる状況で電話を使用することへの恐怖(通話の発信または受信のいずれか)は、音質の低下に対する不安および一方または他方の当事者が発言内容を理解できず、誤解を招くか、繰り返したりさらなる説明を行ったりまたは他の潜在的に厄介な形態の交渉を行わなければならなくなることを懸念している。これらの恐怖は、多くの場合コントロール感の喪失を恐れている個人、そして電話回線を介することによるボディーランゲージの欠如に関連している[6][7]。患者は通常、会話で適切に答えられなかったり[1]、何も言えない自分を見て、恥ずかしい沈黙、どもりや吃音につながる恐れがあると報告している[1][6]。衝撃的な知らせを受けたり不快な怒りの電話に耐えたりしたことなどの過去の経験も、恐怖を生み出す一因となった可能性がある[2]

症状[編集]

電話恐怖症の人にはさまざまな症状が見られるが、不安を伴うことが多い。これらの症状には、弱い胃腸、汗にまみれた手の平[2]、急速な動悸、息切れ、吐き気、口の渇き、震えなどがある。患者はパニック、恐怖感を経験する可能性があり[8]、その結果過呼吸とストレスなどのパニック発作を起こし得る。これらの否定的で動揺する症状は、電話をかけたり受けたりすることの考えと、そうする行動の両方によって生じる可能性がある。

影響[編集]

同僚が電話での会話を容易に聞くことができるオープンプランオフィスは電話恐怖症の患者に著しい課題をもたらす。

電話は、他人に連絡したり重要で便利なサービスにアクセスしたりするために重要である。その結果、この恐怖症は多大なストレスを引き起こし、個人の私生活、仕事生活、社会生活に影響を与える[2]。患者はイベントの日程計画や情報の明確化など多くの行動を避ける[9]。電話の使用はキャリアの中で重要な役割を果たし得るため、職場では緊張が生じる[7]

対処および回避戦略[編集]

対処戦略は、事前に会話を計画し発言する必要があることのリハーサルや書き留めを行う[2][6]。不安を軽減するには、電話をかけるためのプライバシーを確保する必要がある。そうすることで患者は会話が聞かれることを心配する必要がない[6]

回避戦略の関連行動として、他の人(例:自宅の身内)に電話をかけるように頼むことや、もっぱら留守番電話のみを使用することなどがある[1]。電子テキストベースの通信(インターネット電子メール、テキストメッセージ)の使用が普及したことで、多くの患者は電話よりもストレスがかなり少ないと感じる代替通信手段を得ることができた[6]。同時に、デジタル通信で育った若い世代は電話をかけることも受けることも「押し付けがましい」とますます感じるようになり、「彼らなりのペースで会話に参加できる」メディアを使用することを好む[10]。2019年の調査では、英国のミレニアル世代のオフィスワーカーの61%が、「オフィスに自分1人しかいない時に電話が鳴ると身体的な不安誘発行動を示す」と報告した[4]

患者が自身の電話恐怖症の性質を友人に説明することは、メッセージに答えられないことが無礼またはやりとりしたくないと誤解されないようにするために役立つ可能性がある。

治療[編集]

この種の恐怖症は通常、 認知行動療法(CBT)、心理療法行動療法曝露療法などさまざまな療法で治療できる[8]

練習は恐怖を克服する上で重要な役割を果たし得る。簡単な通話から始めて次第に難度を上げ、ゆっくりとしたペースで電話の使用を増やしていくことは患者にとって有益となり得る。たとえば、簡単な自動通話から始めて、家族や友人との通話へとステップアップし、話す時間と話をする人の範囲をさらに広げていく[7]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f Marshall, John R. (1995). “Telephone Phobia”. Social Phobia: From Shyness to Stage Fright. New York: BasicBooks. ISBN 0-465-07896-6. https://books.google.com/books?id=2CpVOVXPdJUC&pg=PA30&dq=%22telephone+phobia%22&lr=#v=onepage&q=%22telephone%20phobia%22&f=false 
  2. ^ a b c d e f Doctor, Ronald M. (2000). The Encyclopedia of Phobias, Fears, and Anxieties. New York: Facts On File. p. 493. ISBN 0-8160-3989-5. https://archive.org/details/encyclopediaofph00doct/page/493 
  3. ^ Keeble, Richard (2001). The Newspapers Handbook (3rd ed.). London: Routledge. p. 64. ISBN 0-415-24083-2. https://books.google.com/books?id=EMANAAAAQAAJ&pg=PA64&dq=%22telephone+phobia%22&lr=#v=onepage&q=%22telephone%20phobia%22&f=false 
  4. ^ a b Phone anxiety affects over half of UK office workers” (英語). Face for Business. 2019年5月3日閲覧。
  5. ^ Fielding. “Telephone apprehension: a study of individual differences in attitudes to, and usage of the telephone.”. 2013年4月3日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i Scott, Susie (2007). Shyness and Society: the illusion of competence. Basingstoke: Palgrave Macmillan. pp. 105–9. ISBN 9781403996039 
  7. ^ a b c d Rowlands, Barbara (1993年8月24日). “Health: Don't call me, please, and I won't call you: To most of us, the ringing of the phone is at least a potential pleasure. But to some it is a source of anguish.”. The Independent. https://www.independent.co.uk/life-style/health-and-families/health-news/health-dont-call-me-please-and-i-wont-call-you-to-most-of-us-the-ringing-of-the-phone-is-at-least-a-potential-pleasure-but-to-some-it-is-a-source-of-anguish-barbara-rowlands-reports-1463066.html 2013年4月3日閲覧。 
  8. ^ a b Telephonophobia”. Right Diagnosis. 2013年4月3日閲覧。
  9. ^ "Break the bipolar cycle: a day-by-day guide to living with bipolar disorder", by Elizabeth Brondolo, Xavier Amador, p. 179
  10. ^ Buchanan, Daisy (2016年8月26日). “Wondering why that millennial won't take your phone call? Here's why”. The Guardian. https://www.theguardian.com/commentisfree/2016/aug/26/whatsapp-phone-calls-smartphone-messaging-millennials 2019年5月3日閲覧。 

関連項目[編集]