白澤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
白澤の日本でのイメージ
鳥山石燕今昔百鬼拾遺』の「白澤」
城間清豊の白澤之図

白澤または白沢(はくたく)は、中国に伝わる、人語を解し万物に精通するとされる聖獣である。

「澤」と「沢」は同字の旧字体と新字体(当用漢字体)であり、新字体を使う現代日本語では「白沢」を使うのが本則である[1]が、部分的に旧字体を使う書籍などで(新字体の文章中であっても)旧字体の「白澤」が使われることがある[2]

三才図会』によると、東望山に白澤と呼ぶ獣が住んでいた。白澤は人間の言葉を操り、治めるものが有徳であれば姿をみせたと言う[3]。(『佩文韻府』や『淵鑑類函』ではこれを『山海経』からの引用とするが、実際の『山海経』にこのような文はない)。の高い為政者の治世に姿を現すのは麒麟(きりん)や鳳凰(ほうおう)に似ている。

黄帝東海地方を巡行したおりに、恒山に登ったあとに訪れた海辺で出会った[2][4]と言われる。白澤は1万1520種に及ぶ天下の妖異鬼神について語り、世の害を除くため忠言した[4]と伝えられる。

図画[編集]

古くは中国の『三才図会』にその姿が記され、日本では『和漢三才図会』にも描かれているが、獅子に似た姿である。

鳥山石燕は『今昔百鬼拾遺』でこれを取り上げているが、その姿は1対のに似た角をいただき、下顎に山羊髭を蓄え、額にも瞳を持つ3眼、更には左右の胴体に3眼を描き入れており、併せて9眼として描いている。

白澤が3眼以上の眼を持つ姿は石燕以降と推測され、それより前には3眼以上の眼は確認できない。たとえば『怪奇鳥獣図巻』(出版は江戸時代だがより古い中国の書物を参考に描かれた可能性が高い)の白澤は2眼である。この白澤は、麒麟の体躯を頑丈にしたような姿で描かれている[2]

為政者と白澤[編集]

白澤は徳の高い為政者の治世に姿を現すとされることと、病魔よけになると信じられていることから、為政者は身近に白澤に関するものを置いた。中国の皇帝は護衛隊の先頭に「白澤旗」を掲げたといわれる。

また、日光東照宮拝殿将軍着座の間の杉戸に白澤の絵が描かれている。

白澤図[編集]

医学などの祖とされる中国の伝説上の三皇五帝の一人である黄帝が、東方巡行した折に白澤に遭遇したとされる。白澤は黄帝に1万1520種の妖異鬼神について語り、黄帝はこれを部下に書き取らせた。この書を『白澤図』という。ここでいう妖異鬼神とは人に災いをもたらす病魔や天災の象徴であり、白澤図にはそれらへの対処法も記述されており、単なる図録ではなく今でいうところの防災マニュアルのようなものである。

また、後世、白澤の絵は厄よけになると信仰され、日本でも江戸時代には道中のお守りとして身につけたり、病魔よけに枕元においたりした。

獅と白澤[編集]

本草綱目』は、獅(ライオン)の別名を「白澤」とする説について言及している[5](その記述があるのは『説文解字』だとされているが確認できない[6])。ただし『瑞応図』を元に、獅と白澤は異なると結論づけている。

白澤が出てくる文献[編集]

日本[編集]

中国[編集]

  • 葛洪抱朴子』極言:「(黄帝)窮神奸、則記白澤之辞。」
  • 『開元占経』巻一一六:「『瑞応図』曰:黄帝巡於東海、白澤出、達知万之情、以戒於民、為除災害。」
  • 杜佑通典』巻第一百七・禮六十七・大駕鹵簿:「次清遊隊、白澤旗二(分左右、各一人執、二人引、二人夾也)」「左右領軍白澤文」(白澤旗や白澤の模様が天子の軍に使われることを言う)
  • 雲笈七籤』巻一百・軒轅本紀:「帝巡狩、東至海、登桓山、於海浜得白澤神獣、能言、達於万物之情。因問天下神鬼之事。自古精気為物・游魂為変者、凡万一千五百二十種、白澤言之、帝令以図写之、以示天下。」
  • 新唐書』巻三十四 志第二十四 五行一:「韋後妹嘗為豹頭枕以辟邪、白澤枕以辟魅、伏熊枕以宜男、亦服妖也」(韋皇后の妹が魔除けのため白澤の枕を使用したことをいう。もとは唐の張鷟『朝夜僉載』に見える話[7])
  • 「白澤図」「白澤図考」(いずれも逸書であり現存しない。『玉函山房輯佚書』に諸書の引用する「白澤図」の逸文を集めてある[8]

白澤が出てくる作品[編集]

出典[編集]

  1. ^ 広辞苑』「はくたく【白沢】」
  2. ^ a b c 伊藤清司 監修・解説『怪奇鳥獣図巻』2001 工作舎、底本: 作者・年代不詳(江戸時代)、底本の該当箇所の典拠:『雲笈七籤』の「軒轅本紀」
  3. ^ 三才図会』巻92・鳥獣4・白澤。「東望山有澤獣者、一名曰白澤、能言語。王者有徳、明照幽遠、則至。昔黄帝巡守至東海、此獣有言為時除害。」
  4. ^ a b 雲笈七籤』の「軒轅本紀」
  5. ^ Wikisource reference 本草綱目 獣之二 獅』 - ウィキソース
  6. ^ 説文解字を「白澤」で検索
  7. ^ 張鷟 『朝夜僉載』巻5。
  8. ^ 馬国翰 『玉函山房輯佚書』巻77・白澤図。