独立器官

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独立器官」(どくりつきかん)は、村上春樹短編小説

概要[編集]

村上は『文藝春秋』2013年12月号から2014年3月号まで、「女のいない男たち」と題する連作の短編小説を続けて掲載した。本作品は2014年3月号に発表されたその4作目。同年4月18日発売の『女のいない男たち』(文藝春秋)に収録された。

あらすじ[編集]

「僕」と渡会(とかい)医師はジムで知り合った。彼は52歳になるがこれまで結婚したことはない。六本木で、父親から引き継いだ「渡会美容クリニック」を経営している。渡会にとって、同時に二人か三人のガールフレンドを持つのは当たり前のことだった。彼のクリニックには優秀な男性秘書がいて[注 1]、渡会の込み入ったスケジュールを調整してくれていた。

ある日、渡会は思いもよらず深い恋に落ちる。彼が恋に落ちてしまった相手は16歳年下で、結婚していた。2歳年上の夫は外資系IT企業に勤めており、5歳の子供が一人いた。

それから渡会はジムに姿を見せなくなった。2ヶ月が過ぎ渡会の秘書から電話がかかってくる。彼の名前は後藤といった。低く滑らかな声で彼は話し、その声は「僕」にバリー・ホワイト[注 2]の音楽を思い出させた。電話で後藤は、渡会が先週の木曜日に亡くなったことを告げた。その日の夕方、「僕」と後藤は青山通りの裏にあるカフェテリアで落ち合った。

別れ際に後藤は、「谷村さん、厚かましいようですが、ひとつ僕からお願いがあります。どうか渡会先生のことをいつまでも覚えてあげて下さい」と言った。「僕は思うのですが、僕らが死んだ人に対してできることといえぱ、少しでも長くその人のことを記憶しておくくらいです。でもそれは口で言うほど簡単ではありません。誰にでもできることではありません」[注 3]

そのとおりだと「僕」は言った。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 語り手である「僕」は、この男性秘書に関して「もちろんゲイだった」と述べている[1]
  2. ^ 村上朝日堂ホームページにもバリー・ホワイトに言及した箇所がある。村上は言う。「いついかなるときでも車のラジオから流れてきたらハッピーという曲は、僕の場合何を隠そう(じゃーん!)バリー・ホワイトの『愛のテーマ』です。あれが聴こえるとですね、ついついステアリングの上でぱたぱたぱたとリズムをとってしまいます。」[2]。なお、「愛のテーマ (Love's Theme) 」はインストゥルメンタル曲である。
  3. ^ 村上朝日堂ホームページで読者からの手紙に対し、村上は次のような返答をしたことがある。「死んでしまった人たちのために、あなたにできることは、彼女たちをいつまでも覚えていることです。彼女たちがこの世界に存在したことを、覚えておいてあげるわけですね。これはあなたがいま考えているほど、簡単なことではありません。人間の記憶というのは、じつに身勝手なものだし、時というのは想像以上に重みをもつものだからです。でも努力すればできます。努力してみてください。」[3]

出典[編集]

  1. ^ 『女のいない男たち』単行本、129頁。
  2. ^ スメルジャコフ対織田信長家臣団朝日新聞社、2001年4月、読者&村上春樹フォーラム189。
  3. ^ 『スメルジャコフ対織田信長家臣団』前掲書、読者&村上春樹フォーラム387。

関連項目[編集]