コンテンツにスキップ

「ハドレー循環」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
冗長なとこがあったので箇条書きに変えてみた。
1行目: 1行目:
[[File:Atmospheric circulation ja.png|thumb|right|240px|地球の大気循環のモデル]]
[[File:Atmospheric circulation ja.png|thumb|right|240px|地球の大気循環のモデル]]


'''ハドレー循環'''(ハドレーじゅんかん、{{lang-en|Hadley circulation}}とは、[[赤道]]付近で上昇した空気が緯度30度付近北上した後、下降し地表付近を南下して赤道に戻る循環のこと<ref name="haneda">[http://www.jma-net.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20130930.pdf 大気大循環とジェット気流,羽田空港 WEATHER TOPICS,東京航空地方気象台,2013年9月]</ref><ref name=Mizuno>{{Cite book|和書 |author = [[水野一晴]] |year = 2016 |title = 気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から |publisher = [[NHK出版]] |page = 195 |isbn = 978-4-14-091240-9}}</ref>。
'''ハドレー循環'''(ハドレーじゅんかん、{{lang-en|Hadley circulation}}, Hadley cell)とは、[[赤道]]付近で上昇した空気が上空を北上した後、緯度30度付近で下降し低空を南下して赤道に戻る循環のこと<ref name="haneda">[http://www.jma-net.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20130930.pdf 大気大循環とジェット気流,羽田空港 WEATHER TOPICS,東京航空地方気象台,2013年9月]</ref><ref name=Mizuno>{{Cite book|和書 |author = [[水野一晴]] |year = 2016 |title = 気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から |publisher = [[NHK出版]] |page = 195 |isbn = 978-4-14-091240-9}}</ref>。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[1735年]]に{{仮リンク|ジョージ・ハドレー|en|George Hadley}}(George Hadley)は[[偏西風]]と[[貿易風]]の原因として、赤道付近で暖められた空気は[[密度]]が低くなって上昇し、上空を両[[極]]に向かって移動し、冷却され密度が高くなって下降し、地表付近を通って赤道に戻るという循環を提案した<ref name="haneda"/><ref>[http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2011/2011_05_0055.pdf 風のいろいろ,廣田勇,日本気象学会機関紙「天気」,2011年5月]</ref>。赤道付近は両極付近よりも[[自転]]速度が速いため、赤道から極に輸送された空気は地表から見ると西風('''偏西風''')となり、極から赤道に輸送された空気は東風('''貿易風''')となる。
[[1735年]]に{{仮リンク|ジョージ・ハドレー|en|George Hadley}}(George Hadley)は[[偏西風]]と[[貿易風]]の原因として、赤道付近で暖められた空気は[[密度]]が低くなって上昇し、上空を両[[極]]に向かって移動し、冷却され密度が高くなって下降し、地表付近を通って赤道に戻るという循環を提案した<ref name="haneda"/><ref>[http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2011/2011_05_0055.pdf 風のいろいろ,廣田勇,日本気象学会機関紙「天気」,2011年5月]</ref>。地球[[自転]]による地表の移動速度の影響により、赤道から極へ向かう空気は地表から見ると西風('''偏西風''')となり、極から赤道へ向かう空気は東風('''貿易風''')となる。


しかし、実際の空気の流れを観測してみると赤道付近で空気は確かに上昇しているが、この空気は極までは運ばれず緯度30度付近で下降してしまう<ref name="haneda"/>。の循環の機構はハドレーの提案したものと合ているため、この循環ハドレー循環と呼んでいる。
実際の空気の流れを観測してみると赤道付近で空気は確かに上昇しているが、この空気は緯度30度付近で下降してしまう<ref name="haneda"/>。ただしその循環の機構はハドレーの提案したものと合致している。現在では赤道周辺を起点とし低緯度地域を廻る循環のみがハドレー循環と呼ばれている。


ハドレー循環では、
ハドレー循環により貿易風が収束するため赤道付近には常に強い[[上昇気流]]が存在し、低圧部となっていて雨が多いが、緯度30度付近は常に乾燥した[[下降気流]]が存在し、[[亜熱帯高圧帯]]となっていて雨が少なく乾燥気候となっている。また、亜熱帯高圧帯から赤道方向へ風が吹き、貿易風(北半球では北東、南半球では北西方向)として赤道に戻る{{Sfn|田中|2017|p=229}}。


・上空では、低緯度→高緯度方向に地球自転速度を加味した向きに流れる。
ハドレー循環と同様の機構により弱いながらも緯度60度付近で上昇して極で下降する循環が存在する。これを[[極循環]]という<ref name="haneda"/>。

・地表近くでは上空とは逆(高緯度→低緯度、地球自転に抗う向きに偏る)に流れる。貿易風(北半球では北東、南半球では北西方向)と呼ばれる{{Sfn|田中|2017|p=229}}。

・赤道付近には常に強い[[上昇気流]]が存在し、これは地表近くでみると低圧部(低気圧)であり雨が多い。

・緯度30度付近で[[下降気流|下降]]する。これは[[亜熱帯高圧帯]]と呼ばれ、熱帯を取り巻く低~中緯度地域の乾燥気候の主要原因となる。


ハドレー循環と同様の機構により、やや弱いながらも緯度60度付近で上昇して極周辺で下降する循環が存在する。これを[[極循環]]という<ref name="haneda" />。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2020年9月9日 (水) 01:26時点における版

地球の大気循環のモデル

ハドレー循環(ハドレーじゅんかん、英語: Hadley circulation, Hadley cell)とは、赤道付近で上昇した空気が上空を北上した後、緯度30度付近で下降し低空を南下して赤道に戻る循環のこと[1][2]

概要

1735年ジョージ・ハドレー英語版(George Hadley)は偏西風貿易風の原因として、赤道付近で暖められた空気は密度が低くなって上昇し、上空を両に向かって移動し、冷却され密度が高くなって下降し、地表付近を通って赤道に戻るという循環を提案した[1][3]。地球自転による地表の移動速度の影響により、赤道から極へ向かう空気は地表から見ると西風(偏西風)となり、極から赤道へ向かう空気は東風(貿易風)となる。

実際の空気の流れを観測してみると赤道付近で空気は確かに上昇しているが、この空気は緯度30度付近で下降してしまう[1]。ただしその循環の機構はハドレーの提案したものと合致している。現在では赤道周辺を起点とし低緯度地域を廻る循環のみがハドレー循環と呼ばれている。

ハドレー循環では、

・上空では、低緯度→高緯度方向に地球自転速度を加味した向きに流れる。

・地表近くでは上空とは逆(高緯度→低緯度、地球自転に抗う向きに偏る)に流れる。貿易風(北半球では北東、南半球では北西方向)と呼ばれる[4]

・赤道付近には常に強い上昇気流が存在し、これは地表近くでみると低圧部(低気圧)であり雨が多い。

・緯度30度付近で下降する。これは亜熱帯高圧帯と呼ばれ、熱帯を取り巻く低~中緯度地域の乾燥気候の主要原因となる。


ハドレー循環と同様の機構により、やや弱いながらも緯度60度付近で上昇して極周辺で下降する循環が存在する。これを極循環という[1]

脚注

  1. ^ a b c d 大気大循環とジェット気流,羽田空港 WEATHER TOPICS,東京航空地方気象台,2013年9月
  2. ^ 水野一晴『気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から』NHK出版、2016年、195頁。ISBN 978-4-14-091240-9 
  3. ^ 風のいろいろ,廣田勇,日本気象学会機関紙「天気」,2011年5月
  4. ^ 田中 2017, p. 229.

参考文献

  • 田中博『地球大気の科学』共立出版〈現代地球科学入門シリーズ〉、2017年。ISBN 978-4-320-04711-2 

関連項目